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魔王への試練
呼ばれてないのにアレ参上
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「は~い、ストップ」
と。
俺にキスしようとしていた、リオンの唇が。
褐色のものに遮られた。
この声……どこかで……。
って。
げえっ!? 暗黒大魔神、ゼロ……!? 何でここに!?
†††
「…………」
うっかり魔神の素手にキスしてしまったらしいリオンが、めちゃくちゃ嫌そうな顔をして、ゴシゴシ唇を拭ってる。
汚物は消毒しないと。
っていうか、何で魔神がこんなとこに居るんだよ!? ハウスに戻れ、ハウス!
「アンタとは、二度と会わないんじゃなかったか……!?」
「えー? 君は二度と向こうの世界には帰れないとは言ったけど。わたしがこちらに来られない、なんてひとことも言った覚えはないねぇ。魔界はわたしが管理してる世界のひとつなのだし、ここにも行き来は自由に決まってるじゃないか。まあ、わたしもそれなりに忙しい身だから、そうそう来れないのが残念だけどねー」
忙しいなら来なくていい。つーか、金輪際来るな。
チックショー!! もう二度と会わなくて済むと思っていたものを……!!
「き、……いや、……魔神……?」
リオンが目を見開いて、魔神を見た。
「いかにも」
褐色の肌、腰まである黒い髪。目は金色。際立って整った顔立ち。頭には巻いた大きな角。黒い服は、今日は燕尾服だった。なのに、今回は手袋はしてない。しろよ。リオンが直接肌に口、触れちまってかわいそうだろ。
わざとか? わざとかもしれない。何せ、性格がアレだからな。
魔神の爪は、黒くて長かった。顔とか掻いたら刺さりそう。あんな長くて日常生活に困らないのだろうか。家事とかしたら割れそう。それとも、付け爪だったりして? 俺はこまめに切るほうだが。
……ん? そういや俺、ここ来てから、爪切った覚えがないな。爪、伸びてないんだよな。不老不死だからか?
「このわたしが、巷でウワサの、最高最強、超絶美形のー、」
魔神はドクロをあしらった禍々しい杖を、魔女っ子アニメのように振ってみせた。
……やめろ。黒薔薇の花びらを散らすな。誰が掃除すると思ってるんだ。宿の人だぞ。可哀想に。
「暗黒大魔神、ここに降臨っ☆」
こっち見てウインクすんな。
うぜえ。
†††
「この方が、魔神様なのか……? あの、ユウキをこの世界の魔王にしたという……?」
さすがのリオンも、驚愕を隠せないようだ。
そりゃ驚くよな。暗黒大魔神がこんな超絶痛いヤツとか想像もしねーわ。もっと威厳を持てと言いたい。
「そう。リオン君、わたしは君を魔族にしてあげるために、わざわざやって来たのだよ。平に、感謝したまえ」
魔神は嫌がらせのように薔薇の花びらを撒き散らしながら。
舞うように、くるくる回ってる。いっそ、そのまま回り続けてバターにでもなっちまえ。溶けて消えろ。
うわ。
魔神がこっちを見て、嬉しそうに笑いやがった。うっぜ。
「それは……真ですか? どうか、魔族に成る方法をご教授ください!」
リオンは興奮して前のめりだ。
魔神はにんまりと笑ってみせた。
目は笑ってない。
「成るの自体は、簡単だよ。そのための業は充分溜まっているし、一瞬で済む。……でも、それには条件がある」
うわ。すっげー嫌な予感か……。
「コレキヨ君が、世界征服に成功したら。リオン君を、魔王に次ぐ力を持つ魔族にしてあげようじゃないか!」
……何で俺のほうに条件をつけるんだよ!?
そこは普通、リオンにだろ!?
あ、こいつ、普通じゃなかった。クソが!
†††
「……ちょい、質問いいすかー?」
手を挙げる。
「はいコレキヨ君。どうぞ」
「世界征服って、どのレベルでの征服? 人類鏖とか? 四つの国の国王の首級とって、中央教会は殲滅、とか?」
それはちょっと……いや、無理だ。
悪人ならまだしも、罪のない人々を巻き込むのはダメだろ。
と。
俺にキスしようとしていた、リオンの唇が。
褐色のものに遮られた。
この声……どこかで……。
って。
げえっ!? 暗黒大魔神、ゼロ……!? 何でここに!?
†††
「…………」
うっかり魔神の素手にキスしてしまったらしいリオンが、めちゃくちゃ嫌そうな顔をして、ゴシゴシ唇を拭ってる。
汚物は消毒しないと。
っていうか、何で魔神がこんなとこに居るんだよ!? ハウスに戻れ、ハウス!
「アンタとは、二度と会わないんじゃなかったか……!?」
「えー? 君は二度と向こうの世界には帰れないとは言ったけど。わたしがこちらに来られない、なんてひとことも言った覚えはないねぇ。魔界はわたしが管理してる世界のひとつなのだし、ここにも行き来は自由に決まってるじゃないか。まあ、わたしもそれなりに忙しい身だから、そうそう来れないのが残念だけどねー」
忙しいなら来なくていい。つーか、金輪際来るな。
チックショー!! もう二度と会わなくて済むと思っていたものを……!!
「き、……いや、……魔神……?」
リオンが目を見開いて、魔神を見た。
「いかにも」
褐色の肌、腰まである黒い髪。目は金色。際立って整った顔立ち。頭には巻いた大きな角。黒い服は、今日は燕尾服だった。なのに、今回は手袋はしてない。しろよ。リオンが直接肌に口、触れちまってかわいそうだろ。
わざとか? わざとかもしれない。何せ、性格がアレだからな。
魔神の爪は、黒くて長かった。顔とか掻いたら刺さりそう。あんな長くて日常生活に困らないのだろうか。家事とかしたら割れそう。それとも、付け爪だったりして? 俺はこまめに切るほうだが。
……ん? そういや俺、ここ来てから、爪切った覚えがないな。爪、伸びてないんだよな。不老不死だからか?
「このわたしが、巷でウワサの、最高最強、超絶美形のー、」
魔神はドクロをあしらった禍々しい杖を、魔女っ子アニメのように振ってみせた。
……やめろ。黒薔薇の花びらを散らすな。誰が掃除すると思ってるんだ。宿の人だぞ。可哀想に。
「暗黒大魔神、ここに降臨っ☆」
こっち見てウインクすんな。
うぜえ。
†††
「この方が、魔神様なのか……? あの、ユウキをこの世界の魔王にしたという……?」
さすがのリオンも、驚愕を隠せないようだ。
そりゃ驚くよな。暗黒大魔神がこんな超絶痛いヤツとか想像もしねーわ。もっと威厳を持てと言いたい。
「そう。リオン君、わたしは君を魔族にしてあげるために、わざわざやって来たのだよ。平に、感謝したまえ」
魔神は嫌がらせのように薔薇の花びらを撒き散らしながら。
舞うように、くるくる回ってる。いっそ、そのまま回り続けてバターにでもなっちまえ。溶けて消えろ。
うわ。
魔神がこっちを見て、嬉しそうに笑いやがった。うっぜ。
「それは……真ですか? どうか、魔族に成る方法をご教授ください!」
リオンは興奮して前のめりだ。
魔神はにんまりと笑ってみせた。
目は笑ってない。
「成るの自体は、簡単だよ。そのための業は充分溜まっているし、一瞬で済む。……でも、それには条件がある」
うわ。すっげー嫌な予感か……。
「コレキヨ君が、世界征服に成功したら。リオン君を、魔王に次ぐ力を持つ魔族にしてあげようじゃないか!」
……何で俺のほうに条件をつけるんだよ!?
そこは普通、リオンにだろ!?
あ、こいつ、普通じゃなかった。クソが!
†††
「……ちょい、質問いいすかー?」
手を挙げる。
「はいコレキヨ君。どうぞ」
「世界征服って、どのレベルでの征服? 人類鏖とか? 四つの国の国王の首級とって、中央教会は殲滅、とか?」
それはちょっと……いや、無理だ。
悪人ならまだしも、罪のない人々を巻き込むのはダメだろ。
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