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魔王への試練
勇者との再会
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「勇者様は、十年くらい昔から、ここの救世主だったんだ。おかげで魔族が減って、治安がよくなって、このリンデンは豊かな町だった。……でも、殺しすぎたんだ。最近は特に、何かにとり憑かれたように魔族を殺してた。悪鬼になるのも時間の問題じゃないかな。ここにはもう魔族が出なくなったから、屋敷を売り払って、他の町に行ったよ。兄弟から、今は西の町にいるって聞いたけど……」
NPC、もといナイは四つ子で。東西南北、各方面の町の案内をしているという。
名前はそれぞれ、ミチ、サキ、アン、ナイ。
お、おう……頑張れ。
「勇者様がいなくなってから、ここも治安が悪くなってしまったんで、おれも転職を考えてるんだ。……この状態で、再び魔族が襲ってきたらひとたまりもないよ」
と、ナイは肩を震わせた。
「ありがとう、ナイ。俺は勇者様に用があるんだ。……これ、何かの役に立てて。すぐにでもこの町からは逃げたほうがいい」
50モッコリと、100モッコリで売れる宝石の入った袋を握らせた。
「ちょ、これ、いくらなんでも多すぎだよ、」
……こんなんじゃ、少なすぎるくらいだ。
あまり大金すぎても、そのせいで襲われたりしたら、悪いから。
†††
通路から、一度魔界に戻った。
見送ってくれた魔族がまだいて、ぎょっとした顔をした。
『魔王様、お早いお帰りで……、』
「悪竜公に伝えろ。勇者はもう北にはいない。俺は西に向かうと!」
伝えてすぐ、西に移動したら。
『魔王様!』
バルトが出迎えてくれた。
『火急の御報せがありまして、直ぐにも御元へ馳せ参じようと思案していた次第で、』
西の町周辺に勇者が現れて。
中級魔族の中でも高レベルだったカーミラが退治されたという。
ナイの兄弟の話は正しかった。
「新たに魔族を送るのは取りやめ、できるものは魔界へ帰還させろ。すぐに向かう。通路はどこだ?」
『はっ、こちらへ』
案内されて。
急いで人間界へ向かった。
通路から出ると。
ギャイィィィン、と空気を震わせるような、物凄い力で刀を打ち付けあう音。
真紅のマントをはためかせ、白馬に乗った白い騎士の鎧を着けた男と。黒い騎馬を繰る、首のない黒い騎士の魔族、デュラハンが戦っていた。
すごい。
人間が、上級魔族を圧倒してるなんて。
などと、見事な剣技に見惚れている場合じゃなかった。
……げっ、デュラハンのHPがヤバい! 見れば、レッドゾーンに突入している。
リオンは無傷だというのに。
圧倒どころか一方的だ。上級魔族が瀕死の重傷じゃないか!
†††
「やめろ!」
二人の間に割って入り、両方の剣を篭手で受け止めた。重い。
瀕死のデュラハンは、すぐに魔界へ次元移動させた。HPの回復まではしてやれなかった。ごめんな。
……うわ、魔界屈指の硬さを誇るドラゴンの篭手に、ヒビが入ってる。
肉体強化もしておいて良かった。してなかったら、多分骨とか折れてたな。
レベルは俺の方がずっと上だっていうのに。
本気を出した勇者の攻撃、めちゃくちゃこええ。
「……小鳥……?」
まるで悪鬼のような形相をしていた男が。俺を視界に入れた途端、驚いたように目を見開いて。
その身を覆っていたどす黒い殺気が、嘘のように消えていった。
そして、俺の装備を見て。泣き笑いのような顔で言った。
「その服、……指輪……。まだ、身につけていてくれたのだね……?」
……ああ、リオンだ。
俺の知ってる、優しい勇者のリオン。逢いたかった。
「ああ。ネックレスもある、ほら」
ローブから引っ張り出して、見せた。
「その、髪の色は? 瞳も、肌も違うが……、これは、姿変えの魔法?」
頬に触れられる。優しい手つきで。
「そう、姿変えと、気配遮断だ。……急で悪いが。リオンに、大事な話があるんだ。二人っきりになれるとこ、知らないか?」
リオンは、目を瞬かせた。
NPC、もといナイは四つ子で。東西南北、各方面の町の案内をしているという。
名前はそれぞれ、ミチ、サキ、アン、ナイ。
お、おう……頑張れ。
「勇者様がいなくなってから、ここも治安が悪くなってしまったんで、おれも転職を考えてるんだ。……この状態で、再び魔族が襲ってきたらひとたまりもないよ」
と、ナイは肩を震わせた。
「ありがとう、ナイ。俺は勇者様に用があるんだ。……これ、何かの役に立てて。すぐにでもこの町からは逃げたほうがいい」
50モッコリと、100モッコリで売れる宝石の入った袋を握らせた。
「ちょ、これ、いくらなんでも多すぎだよ、」
……こんなんじゃ、少なすぎるくらいだ。
あまり大金すぎても、そのせいで襲われたりしたら、悪いから。
†††
通路から、一度魔界に戻った。
見送ってくれた魔族がまだいて、ぎょっとした顔をした。
『魔王様、お早いお帰りで……、』
「悪竜公に伝えろ。勇者はもう北にはいない。俺は西に向かうと!」
伝えてすぐ、西に移動したら。
『魔王様!』
バルトが出迎えてくれた。
『火急の御報せがありまして、直ぐにも御元へ馳せ参じようと思案していた次第で、』
西の町周辺に勇者が現れて。
中級魔族の中でも高レベルだったカーミラが退治されたという。
ナイの兄弟の話は正しかった。
「新たに魔族を送るのは取りやめ、できるものは魔界へ帰還させろ。すぐに向かう。通路はどこだ?」
『はっ、こちらへ』
案内されて。
急いで人間界へ向かった。
通路から出ると。
ギャイィィィン、と空気を震わせるような、物凄い力で刀を打ち付けあう音。
真紅のマントをはためかせ、白馬に乗った白い騎士の鎧を着けた男と。黒い騎馬を繰る、首のない黒い騎士の魔族、デュラハンが戦っていた。
すごい。
人間が、上級魔族を圧倒してるなんて。
などと、見事な剣技に見惚れている場合じゃなかった。
……げっ、デュラハンのHPがヤバい! 見れば、レッドゾーンに突入している。
リオンは無傷だというのに。
圧倒どころか一方的だ。上級魔族が瀕死の重傷じゃないか!
†††
「やめろ!」
二人の間に割って入り、両方の剣を篭手で受け止めた。重い。
瀕死のデュラハンは、すぐに魔界へ次元移動させた。HPの回復まではしてやれなかった。ごめんな。
……うわ、魔界屈指の硬さを誇るドラゴンの篭手に、ヒビが入ってる。
肉体強化もしておいて良かった。してなかったら、多分骨とか折れてたな。
レベルは俺の方がずっと上だっていうのに。
本気を出した勇者の攻撃、めちゃくちゃこええ。
「……小鳥……?」
まるで悪鬼のような形相をしていた男が。俺を視界に入れた途端、驚いたように目を見開いて。
その身を覆っていたどす黒い殺気が、嘘のように消えていった。
そして、俺の装備を見て。泣き笑いのような顔で言った。
「その服、……指輪……。まだ、身につけていてくれたのだね……?」
……ああ、リオンだ。
俺の知ってる、優しい勇者のリオン。逢いたかった。
「ああ。ネックレスもある、ほら」
ローブから引っ張り出して、見せた。
「その、髪の色は? 瞳も、肌も違うが……、これは、姿変えの魔法?」
頬に触れられる。優しい手つきで。
「そう、姿変えと、気配遮断だ。……急で悪いが。リオンに、大事な話があるんだ。二人っきりになれるとこ、知らないか?」
リオンは、目を瞬かせた。
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