上 下
23 / 64
魔王様のレベル上げ

悪竜公ドラクⅠ

しおりを挟む
「……入れ、」

『失礼、』
ノックの後。一礼して、きびきびと入ってきたのは、黒い軍服の男だ。

『北の伯爵家より、ドラクが参上仕りました。以後、お見知りおきを。此度の魔王様は着任早々、大変精力的に職務を果たされておられると伺い、このドラク、心より感服しております』


いきなり真顔で嫌味かよ、と思ったが。こんな短期間でこれだけレベルを上げた魔王は初めてだという。
本気で褒めてたのかよ。

でもそれ、連続で公爵が協力してくれてるからだよな。
しかも、またも公爵が来るとか。


俺の舌も、なかなか優秀だな!


†††


『永遠なる忠誠を』

ドラクは跪いた。
黒い角に、やはり黒の大きな翼。プラチナブロンドにアイスブルーの目。顔色は白い。白皙の美貌ってやつだ。
なんか、超ロシア人っぽいイメージなんだが。北の魔族だからか?


北の悪竜公、ドラク。レベル6666。

うわあ、ドラゴンだよドラゴン!!!!! ドラゴンブレス吐くって! すげえ!!
ドラゴン形態時は、どんな魔法も攻撃も跳ね返す、魔界最高強度を誇る竜の皮膚になるとか。かっけー!

『……魔王様?』
気付けば、ドラクの手を握り締めていた。

……つい、テンションMAXになって浮かれてしまった。だってマジモンのドラゴンだし。上がるだろそりゃ。ドラゴン形態、見たいし。


『畏くも、魔王様に拙の精気をお使いくださる機会を賜り、』
「……そう、かしこまらずともよい」

あんまりガチガチに応対されると、こっちまでかしこまっちまう。
そんなじゃ肩凝っちゃうぞ。

『甚だ光栄にございます。しかし、どうにも性分ゆえ。……さらば、魔王様に申し上げたいことがございます』
サラバ? いざ去らば友よ、の?

……ああ、そうであれば、か。普通に言ってくれよ。
何だ?


「赦す。話せ」


†††


応接セットに座って。
ガルムから貰ったチャイを飲みながら、話を聞く。


『魔王様におかれましては既にご存知でおられましょうが。北の伯爵家は、人間界にある、同じく北の国へ魔族を送り込んでおります』

人間界と魔界は表裏一体、同じような位置関係にあるらしい。

次元移動の魔法が使えない弱い魔族でも通過できる、人間界への道を繋げた通路があるそうだ。公爵たちは、より強大な力を得るため、東西南北それぞれの通路から、人間界へ、配下の魔族を送り込んでいる。
魂や精気、血肉を奪ったり、操って労働させたり、商人に化けて商売をしてるのもいる……と、スレイに教わったっけ。


お恥ずかしながら、とドラクは俯いた。
『……ここ十年ほど、拙の領地の魔族が人間に狩られており、手をこまねいているのです』

下級魔族を送り込んでも、戻ってこない。それが、もう十年近く続いている。
しかし下級は数がやたら多いし、弱いので、人間に狩られることは想定内だと楽観視していたが。

中級魔族も、犠牲になった。
最近になって上級魔族が調査に乗り出し。命からがら報告に戻り、やっと判明したという。

一人の人間が、魔族を狩っていた、と。


『その時点で、彼奴は”勇者”の称号を得ておりました』

ここ十年ほど前に、北の国に現れた勇者?
……まさか。じゃないよな?

だって、あいつはまだ、19歳で。十年前なら、まだたったの9歳だろ?


ドラクは、その時の映像を見せてくれた。
荒んだ目をして、魔族を斬っている、まだ若い少年の姿。

それは。
知っている表情とは違っていたが、間違いなく。


……北の勇者、リオン。


†††


『先代の魔王様を亡き者にしたのも、この”北の勇者”にございます』


先代魔王は、自ら勇者を堕落させてやろうと誘惑をしに行き。
あっさり返り討ちにあったらしい。

廊下に飾ってあった、先代魔王の肖像を思い返す。
……女性だったな……。

黒髪黒目、エキゾチックな美貌でグラマラスな。
今にもこぼれそうなオッパイの、太股までスリットが入ったセクシーな黒いドレスをまとっていた。
怠惰な性格で、まだレベルもそんなに高くなかったらしい。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜

シュガーコクーン
ファンタジー
 女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。  その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!  「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。  素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯ 旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」  現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。

異世界転生!ハイハイからの倍人生

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は死んでしまった。 まさか野球観戦で死ぬとは思わなかった。 ホームランボールによって頭を打ち死んでしまった僕は異世界に転生する事になった。 転生する時に女神様がいくら何でも可哀そうという事で特殊な能力を与えてくれた。 それはレベルを減らすことでステータスを無制限に倍にしていける能力だった...

推しの完璧超人お兄様になっちゃった

紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。 そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。 ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。 そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。

平凡ハイスペックのマイペース少年!〜王道学園風〜

ミクリ21
BL
竜城 梓という平凡な見た目のハイスペック高校生の話です。 王道学園物が元ネタで、とにかくコメディに走る物語を心掛けています! ※作者の遊び心を詰め込んだ作品になります。 ※現在連載中止中で、途中までしかないです。

赤ん坊なのに【試練】がいっぱい! 僕は【試練】で大きくなれました

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はジーニアス 優しい両親のもとで生まれた僕は小さな村で暮らすこととなりました お父さんは村の村長みたいな立場みたい お母さんは病弱で家から出れないほど 二人を助けるとともに僕は異世界を楽しんでいきます ーーーーー この作品は大変楽しく書けていましたが 49話で終わりとすることにいたしました 完結はさせようと思いましたが次をすぐに書きたい そんな欲求に屈してしまいましたすみません

魔女の呪いで男を手懐けられるようになってしまった俺

ウミガメ
BL
魔女の呪いで余命が"1年"になってしまった俺。 その代わりに『触れた男を例外なく全員"好き"にさせてしまう』チート能力を得た。 呪いを解くためには男からの"真実の愛"を手に入れなければならない……!? 果たして失った生命を取り戻すことはできるのか……! 男たちとのラブでムフフな冒険が今始まる(?) ~~~~ 主人公総攻めのBLです。 一部に性的な表現を含むことがあります。要素を含む場合「★」をつけておりますが、苦手な方はご注意ください。 ※この小説は他サイトとの重複掲載をしております。ご了承ください。

主人公の兄になったなんて知らない

さつき
BL
レインは知らない弟があるゲームの主人公だったという事を レインは知らないゲームでは自分が登場しなかった事を レインは知らない自分が神に愛されている事を 表紙イラストは マサキさんの「キミの世界メーカー」で作成してお借りしています⬇ https://picrew.me/image_maker/54346

処理中です...