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魔王様のレベル上げ
冷血公ガルムⅠ
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「入れ」
ノックの音に応え。
一礼して部屋に入ってきたのは、小柄な麗人だった。
小柄といっても、そこは魔族だからか、俺より大きいんだが。
角を含めて4メートル近くありそうだったリンゼの次だから、余計にそう感じるのかも。
『東の公爵家より参じました、ガルムと申します。魔王様には、このような形で初めてお目通り仕る無礼をお許しください』
ガルムは優雅に腰を折ってみせた。
おいおい、また公爵家かよ。
味で選ぶと、そうなるのか? レベルが高いほど美味なのか?
リンゼの前に味わったスレイも、わりといい家柄だそうだしな。
†††
ガルムは腰より長い黒髪を三つ編みにまとめ、浅黒い肌に金色の目のアジアンビューティ、といった感じだ。甘くはなく、精悍な顔をしている。
黒い、インドの民族衣装……クルタだっけ? みたいな服を身に着けている。
額に大きな傷があるのがもったいない。角は無いようだ。
冷血公、ガルム。レベル4270。
リンゼより数百歳若い公爵だ。スキルは暗殺系が多い。得意武器も暗器や鞭のようだ。
確かにすらっとしてるし、アサシン姿とかよく似合いそうだ。
……ん?
「第三の、眼?」
それって。遠くとか未来が見えるとかいうヤツだったっけか。
ソマリとか、ファンタジーで見た気がする。
ガルムは動揺したようだ。
『さすがは魔王様。ご慧眼、感服いたします』
額の線が、左右に見開かれた。
これも、金色の目だった。なるほど、実際に目がもう一個あったのか。
慧眼なわけじゃなくて、ステータス見ただけなんだが。
「おお……」
俺が動くと、額の目の視線もついてくる。
ガルムは思わずといったように、くすくすと笑った。
可愛い笑顔だったが、すぐに顔色を変えた。
額の目も、さっと閉じて。
『……し、失礼を』
「よいよい。……ガチガチだな。肩の力を抜き、気楽に話すのを赦す」
肩をもんでやる。
あ、かってーな。しかもこれ、筋肉じゃねえか。
魔族はどいつもこいつもいい身体しやがってチクショウ。俺も魔族なのに!
『ま、魔王様、そんな、畏れ多い、』
あわあわしてる。
どこが冷血なんだ。可愛いじゃねえか。
そういえば、南の国はもう記録したし。この際だ。他の国もチェックしてみよっかな。
「ガルム、おまえの国を案内してくれないか?」
『……はい、喜んで!!』
ガルムは金色の瞳を輝かせ、俺の手を取った。
どっかのやる気満々な居酒屋の返事みてえだな。
†††
オリエンタルなにおいがするぜー。
いや、カレー臭というか。
そこらじゅうに美味そうな匂いが漂っている。
東の国は、全体的に石造りっぽい建物が多かった。
イメージ的に、アンコールワットみたいな感じか? 行ったことはないが。
中央の魔王城周辺もそうだったが、暑くも寒くもない、丁度いい気候だ。人間界はやたら寒かったのに。魔界のくせに過ごしやすいとはどういうことだ。
いや、そのほうがいいけど。俺的には。
『人間界でスパイスは通常、魔除けと言われておりますが、我々の好物なのですよ』
ああ、オレンジにクローブ刺すお守りなら知ってる。何に使うのか知らないけど。
あちこちの道端で住民が、大きなすり鉢でスパイスをごりごりしてた。いい匂いだ。薫り立つこれは、……何だろう。カレーに使うスパイスなのは間違いないんだが。
しかしカレー臭、というと違うものを思い浮かべそうだな。
いーなー。カレー食いてえ……。
『魔王様もお好きでしたら、是非、いかがですか?』
「いいのか?」
昼ごはんに誘われたので、喜んでついてった。
マハラジャの宮廷っぽい建物が、東の伯爵家の住居だった。
使用人一同をあげて歓待してくれるらしい。
うわー、魔王様がいらっしゃったー、と大騒ぎになった。
そんな大袈裟な、と思うが。なにしろ今の俺はこの魔界で一番偉い魔王なんで、そこはしかたない。
よきにはからえー。
ノックの音に応え。
一礼して部屋に入ってきたのは、小柄な麗人だった。
小柄といっても、そこは魔族だからか、俺より大きいんだが。
角を含めて4メートル近くありそうだったリンゼの次だから、余計にそう感じるのかも。
『東の公爵家より参じました、ガルムと申します。魔王様には、このような形で初めてお目通り仕る無礼をお許しください』
ガルムは優雅に腰を折ってみせた。
おいおい、また公爵家かよ。
味で選ぶと、そうなるのか? レベルが高いほど美味なのか?
リンゼの前に味わったスレイも、わりといい家柄だそうだしな。
†††
ガルムは腰より長い黒髪を三つ編みにまとめ、浅黒い肌に金色の目のアジアンビューティ、といった感じだ。甘くはなく、精悍な顔をしている。
黒い、インドの民族衣装……クルタだっけ? みたいな服を身に着けている。
額に大きな傷があるのがもったいない。角は無いようだ。
冷血公、ガルム。レベル4270。
リンゼより数百歳若い公爵だ。スキルは暗殺系が多い。得意武器も暗器や鞭のようだ。
確かにすらっとしてるし、アサシン姿とかよく似合いそうだ。
……ん?
「第三の、眼?」
それって。遠くとか未来が見えるとかいうヤツだったっけか。
ソマリとか、ファンタジーで見た気がする。
ガルムは動揺したようだ。
『さすがは魔王様。ご慧眼、感服いたします』
額の線が、左右に見開かれた。
これも、金色の目だった。なるほど、実際に目がもう一個あったのか。
慧眼なわけじゃなくて、ステータス見ただけなんだが。
「おお……」
俺が動くと、額の目の視線もついてくる。
ガルムは思わずといったように、くすくすと笑った。
可愛い笑顔だったが、すぐに顔色を変えた。
額の目も、さっと閉じて。
『……し、失礼を』
「よいよい。……ガチガチだな。肩の力を抜き、気楽に話すのを赦す」
肩をもんでやる。
あ、かってーな。しかもこれ、筋肉じゃねえか。
魔族はどいつもこいつもいい身体しやがってチクショウ。俺も魔族なのに!
『ま、魔王様、そんな、畏れ多い、』
あわあわしてる。
どこが冷血なんだ。可愛いじゃねえか。
そういえば、南の国はもう記録したし。この際だ。他の国もチェックしてみよっかな。
「ガルム、おまえの国を案内してくれないか?」
『……はい、喜んで!!』
ガルムは金色の瞳を輝かせ、俺の手を取った。
どっかのやる気満々な居酒屋の返事みてえだな。
†††
オリエンタルなにおいがするぜー。
いや、カレー臭というか。
そこらじゅうに美味そうな匂いが漂っている。
東の国は、全体的に石造りっぽい建物が多かった。
イメージ的に、アンコールワットみたいな感じか? 行ったことはないが。
中央の魔王城周辺もそうだったが、暑くも寒くもない、丁度いい気候だ。人間界はやたら寒かったのに。魔界のくせに過ごしやすいとはどういうことだ。
いや、そのほうがいいけど。俺的には。
『人間界でスパイスは通常、魔除けと言われておりますが、我々の好物なのですよ』
ああ、オレンジにクローブ刺すお守りなら知ってる。何に使うのか知らないけど。
あちこちの道端で住民が、大きなすり鉢でスパイスをごりごりしてた。いい匂いだ。薫り立つこれは、……何だろう。カレーに使うスパイスなのは間違いないんだが。
しかしカレー臭、というと違うものを思い浮かべそうだな。
いーなー。カレー食いてえ……。
『魔王様もお好きでしたら、是非、いかがですか?』
「いいのか?」
昼ごはんに誘われたので、喜んでついてった。
マハラジャの宮廷っぽい建物が、東の伯爵家の住居だった。
使用人一同をあげて歓待してくれるらしい。
うわー、魔王様がいらっしゃったー、と大騒ぎになった。
そんな大袈裟な、と思うが。なにしろ今の俺はこの魔界で一番偉い魔王なんで、そこはしかたない。
よきにはからえー。
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