魔王転生～勇者と魔族と人間と神、男の精気でレベルアップ！？

魔王転生

北の町リンデンにて

「あんた、トシはいくつなんだ？」
俺よりも頭ひとつ以上は高い長身を見上げる。


まだイマイチ、現実感がわかないのは。こいつの現実離れした美貌のせいかもしれないな。フルＣＧファンタジー映画の主人公が、そのまま抜け出てきた感じだ。

「私かい？　先日19になった。婚姻はまだだが」

ハイ、爽やか笑顔のティーンエイジャーでしたァーーーーーー！！！
それで女殺し千人斬りとか、何歳からオンナ食ってやがったんだテメー！

その若さが憎い。憎しみで人が殺せたら……！


「そうか。俺は29だ」

お前、10も年上のヤローをお子様扱いしやがったんだぞ。
驚け青二才！　そして敬え！

勇者は目を瞠った。
「たったの29だと？　魔族ならば、赤ん坊も同然ではないか！」

……別の意味で驚かれちまった。くそ。


魔族は、千年単位軽く生きるらしい。
ああ、そりゃ俺なんか、赤ん坊だよな。バブー。


†††


「ここは、北の町リンデンです」

町の名前しか以下略は、まだ同じ場所にいた。
あいつ、一日中あそこにいるのか？　大変だな……。

「おーい、そろそろ外からのお客も来ないだろう。あがっていいぞ」
おっさんから言われ。

NPCは、お疲れさんでしたー、と帰っていった。

あれ、仕事だったのかよ！？
心の底から、お勤めご苦労さんだな……。


「基本的な知識はまだないようだね？」
と。
親切な勇者サマは、ご機嫌で町の案内をしてくれた。
装備の買い方とか、薬草の効果とか。冒険の備えには何を買えばいいかとか。


気になっていた謎のモッコリは、通貨の単位だった。

店で、だいたいのレートをチェックする。
飴玉・HP小回復がひとつ１ソチン。薬草・HP中回復が20ソチン。毒消しの青汁・HP大回復が１チンチン。
宿に素泊まりが５チンチン、食事つきは７～10チンチン。棍棒が10チンチン。布の服が15チンチン。
初心者の刀は１モッコリ。魔術師のローブが３モッコリ。金の兜が40モッコリで金の鎧は100モッコリ、金の剣は200モッコリか。

まあ、だいたいの感覚で言えば、１ソチンが十円で、1チンチンが五百円、１モッコリが一万円くらいの価値ってとこか？

……単位の名前がいかがわしく聞こえるのは、俺の心が汚れているせいだろう。たぶん。


雑貨屋の姉ちゃんが。
「はい合計○モッコリ、おつりは○チンチンと○ソチンね！」

なんて、何度も声を張り上げているのは、なんか……。やめて差し上げろ！　と止めたくなる。何というか、心に来るものがある。特に最小単位。
いや、別に小さくねえけどよ！


スタート時点で10000モッコリって持ってたってことは、かなりサービスだったのか。しかし、レベル１でそんな大金持たされてもな。
盗賊とかに奪われたらどうすんだアホか。狩られるわ。そんなボーナス敵、誰でも狩るっつーの。超弱いキングメタルスライムかっての。


†††


「とてもよく似合うよ、小鳥」
勇者は、自分の見立てで着替えさせた俺を見て。満足そうに笑った。


MPが上昇する効果のある魔術師のローブ、同じくMPが上昇する効果のある魔術師の靴。アクセサリーはHP自動回復効果のある指輪にMP自動回復効果のあるネックレス。
今つけてる装備とか回復の薬草とか、全て勇者が代金を出したものだ。

金は持ってるって言ったんだが、気付けばすでに代金を支払われていたのだ。
支払いもスマートすぎる19歳であった。さすが、女殺しの称号は伊達じゃない。

……年齢誤魔化してるか、俺みたいに転生したとかじゃないよな？


「ええと……、悪いな。色々買わせちまって」
指輪とかネックレスなんか、目んたま飛び出るくらいの値段だった。

俺の最盛期の年収超える額の指輪とかねーわ……。

「君のためならこれくらい、安いものだ」
さらっと髪をかきあげる。

やだ、イケメン。キュン死しそう。
しねえけど。


魔王である俺を口説いてどうするんだ。
勇者のクセに。