上 下
7 / 64
魔王転生

勇者様、レベル150

しおりを挟む
はあ? 勇者、レベル150!?

レベル上限、いくつまでありやがるんだこの世界。
俺、まだたったの1だぞ!?

っていうか、先が長すぎるわ!!


「しかし、こやつは魔王ですぞ!」
「勇者様、どうか討伐を!」
「勇者様!」
言い募る村人AからH達に。

白馬に乗った麗しの王子様……じゃなかった勇者様は俺を見て。
いたわしそうに目を細めた。

「この少年は、まだだ。ましてや敵意もなく無抵抗の者を殺すこと、まかりならぬ」


†††


ん? 少年なのか、俺。
転生して、凛々しい美少年になってたりすんのか?

……っていうか、無垢? ナニが?
え、まさか。俺が童貞なの、見てわかるのか? えっち!


なんか、勇者様がうっとりした顔で俺のこと見てるんだが。こいつ、ソッチのケがあるのか? と、よく見てみたら。
備考欄に”千人斬り”とか”女殺し”ってあった。

おいおい、マジかよ勇者様。
それはアッチの方の意味で? 主に下半身事情というか。

くっそ、リア充爆発しろ! このエロ勇者!

まあ、女好きなら性的な意味で襲われる心配はないだろう。
安心したわ。


エロ勇者は、颯爽と馬を降りて。自分の羽織っていたマントを俺の肩にかけてくれた。
わあ、人肌がぬくい。勇者様優しいじゃん。さすが女殺し。俺は女じゃないから殺されないけど。

「魔王の身はこの私、北の勇者リオンが預かろう」
そう言って。
俺の身体をマントで包んで。軽く、ひょいと持ち上げられた。

力持ちだな。さすが勇者レベル150。

そのまま馬に跨って。
颯爽と、駆けて行くのはいいんだが。


俺、どこに引っ立てられるんですかー!?


†††


「ここは、北の町リンデンです」

町に入った時、入り口に立っていた青年が町の名を紹介した。
人が町に入る度に同じセリフを繰り返しているようだ。

ああ、RPGとかによくいる、町の名前しか言わないNPCか。
異世界にもいるのか……。


「……窮屈な思いをさせてしまってすまない。大事無いか?」

勇者が心配そうな顔をして、俺の頭を撫でてくる。
って俺、何歳設定なんだ?

まあ、見た目がガキだから、魔王でも討伐せずにお目こぼししてくれたんだろうし、ひとまずはラッキー、と思っておこう。
勇者様としては、職業倫理的にどうかと思うが。


「どこか、痛いところは?」

黙ったまま、首を横に振ってみせる。
とりあえずは、様子見である。下手な発言は避けよう。

今んとこ、コイツの前ではお子様のふりをして。かわいこぶっておいた方が得策かもしれない。いのちだいじに。だって俺、まだレベル1だからな!


勇者は、ほっとしたように微笑んだ。
「良かった。私の家へ向かうけれど、食べ物の好き嫌いはあるかな?」

聞かれて、首を傾げた。

こっちの食糧事情、まだまったく把握してない状態だからな。とりあえず片っ端から試してみないことには、何も言えない。
考え込む俺を見て。勇者はダダ甘な笑みを浮かべた。

「ふふ、まるで舞い降りたばかりの天使のようだな」

……うげー。
なんじゃそら。天使じゃねえっての。魔王だっつってんだろ!?

どんだけ今の俺の姿、可愛いんだよ? くっそ、早く確認してみてえな。鏡どこよ?


†††


町からしばらく奥へ入ったところに、勇者の家があるという。


「あれが私の家だよ」
イエー。

は? 家? 嘘だろ。……これって、城じゃねえの?


勇者の家は、城のように立派だった。これは家と言っていい規模ではない。某夢の国にある城よりでけえ。
見上げると、首が痛くなりそう。

勇者レベル150だからか?
倒したモンスターでそんな金、儲かってんのか?


召使いとかが、大勢お迎えに出てきてるし。
見られるか、リアルメイド! と思ったら、使用人は男ばっかだった。

まさか女だと惚れられて仕事にならないので男だけなのか? さすが女殺し千人斬り。パねえわ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる

クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。

実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは

竹井ゴールド
ライト文芸
 日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。  その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。  青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。  その後がよろしくない。  青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。  妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。  長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。  次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。  三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。  四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。  この5人とも青夜は家族となり、  ・・・何これ? 少し想定外なんだけど。  【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】 【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】 【2023/6/5、お気に入り数2130突破】 【アルファポリスのみの投稿です】 【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】 【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】 【未完】

某国の皇子、冒険者となる

くー
BL
俺が転生したのは、とある帝国という国の皇子だった。 転生してから10年、19歳になった俺は、兄の反対を無視して従者とともに城を抜け出すことにした。 俺の本当の望み、冒険者になる夢を叶えるために…… 異世界転生主人公がみんなから愛され、冒険を繰り広げ、成長していく物語です。 主人公は魔法使いとして、仲間と力をあわせて魔物や敵と戦います。 ※ BL要素は控えめです。 2020年1月30日(木)完結しました。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

【完結】父を探して異世界転生したら男なのに歌姫になってしまったっぽい

おだししょうゆ
BL
超人気芸能人として活躍していた男主人公が、痴情のもつれで、女性に刺され、死んでしまう。 生前の行いから、地獄行き確定と思われたが、閻魔様の気まぐれで、異世界転生することになる。 地獄行き回避の条件は、同じ世界に転生した父親を探し出し、罪を償うことだった。 転生した主人公は、仲間の助けを得ながら、父を探して旅をし、成長していく。 ※含まれる要素 異世界転生、男主人公、ファンタジー、ブロマンス、BL的な表現、恋愛 ※小説家になろうに重複投稿しています

完結·助けた犬は騎士団長でした

BL
母を亡くしたクレムは王都を見下ろす丘の森に一人で暮らしていた。 ある日、森の中で傷を負った犬を見つけて介抱する。犬との生活は穏やかで温かく、クレムの孤独を癒していった。 しかし、犬は突然いなくなり、ふたたび孤独な日々に寂しさを覚えていると、城から迎えが現れた。 強引に連れて行かれた王城でクレムの出生の秘密が明かされ…… ※完結まで毎日投稿します

処理中です...