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帰路、カルデアポリへ

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「突然倒れた者は全て、国家反逆罪で死罪、または生涯幽閉すべきだろう」
「そんな……、倒れた者の全てが有罪であるのは確実なのですか?」

レオニダス王の厳しい発言に、セルジオス王が驚いている。


「総てをる、天上人殿の下された罰である。万に一つの間違いはない」
断言して。

俺を見て、辛そうな顔をして言った。
「残酷に思われるでしょう。しかし、この国の将来を思えば、あえて罰は厳しくすべきです」


確かに国家反逆罪には間違いないし。
それはそうかもしれないけど。

俺が犯人をジャッジしたみたいに言われても困る。


「偉い人の命令で仕方なく手伝わされた人も? 家族とかを人質に脅されてたとしても?」

それに、俺が指定したのは。
あくまでも”ここに来る途中にあった罠を張った奴”だけだ。

他にもペトロスの協力者がいるかもしれない、と言うと。


「む、」
レオニダス王は言葉に詰まって。
「罪人の沙汰はセルジオス王当人に任せようではないか」


あ、投げた。


*****


「はい、それぞれの罪に相応しい処分を与えるつもりです。……しかし、天上人、とは……?」
セルジオス王は俺を見て困惑してる。

セルジオス王にも、異世界人だって説明していいのかな?
どうやって説明しようか迷ってたら。


「言葉通りさ。ゼノンが天から攫って来たんだ。どう見ても天使だろ?」
アドニスがにやにやしながら言った。

俺が天上人だと思い込んでるセルジオス王はともかく。
何でゼノンまで頷いてるの?


「道理で! これまで男にしか興味の無かった私が心惹かれるわけだ。やはり二人揃って我が国に嫁……痛い!」
ゼノンが手を広げながら近寄って来るセルジオス王の脛を容赦なく蹴った。

痛そうなんだけど。
どうも同情し切れないのは、どう見ても、ゼノンに蹴られて嬉しそうなんだよな……。

ドMかな?


レオニダス王に、どうしてもペトロスの死罪は免れないだろう、って残念そうに言われた。
それは仕方ないだろうな。

ゼノンとレオニダス王のお陰で怪我人とか出なかったものの。落とし穴で国賓が大怪我したかもしれないし。
下手すれば死人も出てたかもしれないんだ。

それに、二人が少なからず苦痛を感じたのは本当のことだ。

因果応報。
そのバチは当たって欲しい。


裏工作して王を追い落とそうとするのは大罪だというのは俺だってわかってる。
それを可哀想だから許してあげて、なんて言うつもりはないし。

部外者である俺が口出しする権利も無い。
そこまで博愛主義でもないし。

俺も、ペトロスは極刑が相応しいと思うよ。


でも無理矢理脅されて悪事をやらされた人は、すでに二人の苦痛の倍の苦しみを受けたってことで相殺にしてやって欲しい。
甘すぎるかな?


*****


「しかし、痩せ我慢をしていたのがばれて、恥ずかしい限りだ」
レオニダス王は照れたように鼻の頭を掻いていた。

大木放り投げた後の全身筋肉痛のことかな? でも、筋肉痛がその日に来るうちはまだ若いって親父が言ってたよ。
年を取ると、数日後に来るんだって。

ゼノンも確かに、と苦笑してる。


おお、何だか友好的な雰囲気かも!
このまま仲良くなって、和平条約結ばないかなあ。

こうして知り合った相手と敵対するところとか見たくないし。
戦争はよくない。

でも個人でなく、国を挟んじゃうとそう簡単にはいかないのかも。
難しいな。

黒騎士で、国を守る立場であるゼノンは本当に大変だ。


「くぁ、」
あ、やばい。

あくびが出ちゃった。
慌てて手で押さえたけど。

「ん? 眠いのか?」
どうにか頷いた。

すっかりゼノンに完全に体重を預けてしまっている。


さすがに王様の目の前で寝入っちゃったら失礼だってば!
理性ではそうわかっていても、目が勝手に閉じていってしまうのを止められない。

俺も、ずっと気が張ってたのかも。
それとも、自覚は無いものの、魔法で精神力を使ったせいかな?

意識が……。


*****


そのまま眠ってしまったようだ。


「んにゃ?」
気が付いたら、カルデアポリに向かう帰りの馬車の中だった。

寝てしまった俺に気付いたセルジオス王が、このまま城に泊まってけばいい、というのを固辞して。
強引に帰ってきちゃったんだそうだ。

泊まったら夜這いされそうだったから?
ああ、確かに。

あの様子だと、ゼノンに構ってほしくて部屋に忍んできそうな雰囲気あるな。
そんな状況じゃ、落ち着いて寝られないだろうし……。


あ、アドニスも一緒に帰ってるところ?
そりゃそうだ。

レオニダス王はディティコの城に残って、そのまま泊まっていくらしい。

格好良いけど、年齢的体格的立場的に狙われそうにないもんな。
安全圏だ。羨ましい。


「結局俺、セルジオス王には男だってバレなかったのかな……?」

バレてない初見の時点でも求婚されちゃったけど。
あんなに喋ったのに男だってバレないとか、それはそれでもの悲しい。

「スオウは罪なほど美しいからな。性別など超越している」
自分の言葉に納得してしみじみと頷いている。


いくら何でもそれは持ち上げ過ぎじゃない?

でも、ゼノンが相変わらずで。
安心してしまうのは何故だろう……。


*****


帰り道は当然ながら、落とし穴などの妨害もなく。
スムーズに通れたようだ。


それでも、カルデアポリに到着したのは真夜中も過ぎてからだった。

こんな時間で部屋取れるかなって思ったけど。
すでに前もって予約して、部屋を押さえておいたらしい。


電話も無いのにどうやって予約したんだと思ったら。
遠い相手と通信するための魔法は何種類かあるんだとか。伝言の魔法生物を飛ばしたり、魔法の石で通信したり。

そんな便利な魔法があったら、そりゃ科学も進歩しないよ……。

それを使って、俺がモグラたちに攫われた時、アドニスに連絡したんだ。
なるほど。


そういえば。
モグラたち、元気かな?

またこっちの領土に穴を空けてないといいけど。
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