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異世界の食生活及び世界観

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さて。
異世界のご飯はどんな感じかと身構えていたけど。


スープは匂いも味もコンソメっぽくて。
パンにジュース、オムレツ。

率直に言って、だった。


普通といっても、それはメニュー的な話で。
味は美味しいし、普段食べるものよりずっと良い素材を使ってそう。

肉もあった。
生肉じゃなく、ちゃんと火が通ってる。


食べ物に関してはそんな違わないようで、ホッとする。

牛も馬、鶏もいるようだし。
食生活自体はあまり変わらないのかも。

狼や犬、猫やライオンもいる世界だしな。
全然違う感じ……例えば主食がゲテモノ系だったら神様を恨んでるところだ。

こうした生活環境も近い者同士だから、大丈夫だと思って引き合わせたのかも。


*****


今のところ、ざっと見た感じでも、文明的な開きはあるように思える。

人間はみんな獣耳。
あと、神様が実在する。違いはそのくらいかな?

細かい風習とかはまだわかんないけど。
食事のマナーも、あまり違いはなさそうだ。

基本的に音を立てない。
ナイフとフォーク、スプーンに箸っぽいのもあるようだ。

でも、さすが王子様というか。ゼノンの仕草は綺麗なものだった。


「こちらの料理は口に合ったかな?」
「うん、美味しかった。ごちそうさまでした」

ゼノンもホッとした顔をした。
まずは様子見で。あまり変わった食材ではなくこちらで良く食べられる、スタンダードな料理を出すように指示したようだ。

色々考えてくれてるんだ。
優しいなあ。


俺、チョロいのかな。

異世界に一人って状況が寂しくて。
それで優しくされてほだされちゃったのかもしれない。


「そうだ。言葉も通じるようになったのだから、あちらの世界とここの違いを、わかる範囲で良いので教えて欲しい」
出来るだけ不便のないよう過ごして欲しいから、と言うけど。

いや、文化の違いまではどうにもならないと思うよ?


*****


あっちの生活はどんなものかを、おおまかに説明したら。


天界パラディソスに住んでいたのか……? 貴族ではなく、やはり天使アポストロス……」
ゼノンは真顔で言った。

天使って何だよ。
何がやっぱりなんだか。

誰かを好きになったのは初めてだって言うから、フィルター掛かりまくって見えてるのか?


話だけ聞けば、天国みたいな所に思えたかもしれない。
でも、そこまでいい世界でもないと思う。

不況らしいし。
日本はここ百年くらい戦争してないけど、外国ではテロだのクーデターだの年中戦争してるし。

外国の話を聞くと、日本に生まれて良かったと思った。

それでも、不満が無い訳じゃない。
俺はまだ高校生で払う税金は消費税くらいだし、扶養家族だからよく知らないけど。

税金とか、色々値上がりして大変みたいだし。
俺が減ったことで食い扶持が減って楽になったかもな。

アハハ、なんて……笑えないっての。


こっちじゃ名字は貴族じゃないと名乗れないし、綺麗な布の服を着てたし。
食事のマナーもちゃんとしてたから。

ゼノンは俺のことを貴族だと思ってたようだ。

俺は貴族じゃなくて庶民だよって言ったけど。
庶民なら働かないと食べていけないし、こんなに手や足の裏が柔らかくない、と言われてしまった。


そこは常識が違うとしか言えない。
こっちは、男なら子供の頃から剣を握らされるような世界だろ?

……うーん、でも。
うちは共稼ぎだったし、一応都内の一軒家だし。裕福な方だったのかもしれない。

家庭の事情で働かないといけなくて、高校にも通えない家庭もあるって聞く。
学校で禁止されてるのもあって、バイトしたこともない。

でも、さすがに本物の王族とか貴族と比較したら、貧乏だと思うよ?


*****


ゼノンは自動車の話にも驚いてた。
電車や飛行機にも。

こっちじゃ移動手段、馬車だもんな。

テレビや電話はないけど、魔法で通信は出来るとか。
ゲームはトランプみたいなカードやチェスみたいなものくらいしか無いし、ゲーセンとか遊園地みたいな娯楽施設も無くて、娯楽はダンスパーティーくらいだとか。

ダンスなんか、俺、ジェンカくらいしか踊れないよ?


元の世界では筆記用具や本が無くても、スマホかパソコンがあればだいたいなんでも調べられるし。
世界の裏側の人にも文字や映像、音声が送れる。

電気で明かりは灯るし。
ご飯は炊飯器があるし、レンジで冷凍食品もある。

冷暖房もスイッチ一つ。掃除もロボットがするし。
洗濯もスイッチ押すだけ。

お風呂もそうだな。
こっちにはボイラーっぽいのはあるみたい。噂に聞く五右衛門風呂みたいなのじゃなくて良かった。


そうか、言われてみたら、随分便利な世界に住んでたんだなあ。

でも、昭和時代の初期にはほとんど何もなかったって先生が言ってた。
信じられない。

スマホとか、俺が生まれた時からあったじゃん。


「馬には乗れるか?」

「え、無理。ポニーくらいしか乗ったことない」
後は動物園で引馬に乗ったくらいだ。


「では馬車を出そう。この国を案内しよう」


*****


馬が二頭だけど。
昨日乗った馬車よりは小型の馬車だった。

こっちの方が早く走れるんだそうだ。


御者も、昨日と同じ人だ。
ゼノンは御者に、今日行くコースを話してる。

この国って、どのくらいの規模なのかな?
日本は世界的に見れば小さな島国だけど、実際自動車で移動するとけっこう掛かるんだよな。

東京名古屋間で6時間くらいだっけ?

この世界の中央にあるっていうカルデアポリからここまでだいたい6時間くらいだろうから、一つの国が北海道くらいの規模かな?
国境とか国の形によるけど。

起きてれば、国境とか見れたのかな。ちょっともったいないことしたかも。


「ここの地図とかないの? 世界地図とか」
訊いてみると、ゼノンの耳がビッ、と立った。

「何故”地図”のことを知っている? ……我が国の最高機密情報だぞ!?」

「ええっ!?」
いきなりスパイ容疑!?
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