10 / 68
1
異世界の食生活及び世界観
しおりを挟む
さて。
異世界のご飯はどんな感じかと身構えていたけど。
スープは匂いも味もコンソメっぽくて。
パンにジュース、オムレツ。
率直に言って、普通だった。
普通といっても、それはメニュー的な話で。
味は美味しいし、普段食べるものよりずっと良い素材を使ってそう。
肉もあった。
生肉じゃなく、ちゃんと火が通ってる。
食べ物に関してはそんな違わないようで、ホッとする。
牛も馬、鶏もいるようだし。
食生活自体はあまり変わらないのかも。
狼や犬、猫やライオンもいる世界だしな。
全然違う感じ……例えば主食がゲテモノ系だったら神様を恨んでるところだ。
こうした生活環境も近い者同士だから、大丈夫だと思って引き合わせたのかも。
*****
今のところ、ざっと見た感じでも、文明的な開きはあるように思える。
人間はみんな獣耳。
あと、神様が実在する。違いはそのくらいかな?
細かい風習とかはまだわかんないけど。
食事のマナーも、あまり違いはなさそうだ。
基本的に音を立てない。
ナイフとフォーク、スプーンに箸っぽいのもあるようだ。
でも、さすが王子様というか。ゼノンの仕草は綺麗なものだった。
「こちらの料理は口に合ったかな?」
「うん、美味しかった。ごちそうさまでした」
ゼノンもホッとした顔をした。
まずは様子見で。あまり変わった食材ではなくこちらで良く食べられる、スタンダードな料理を出すように指示したようだ。
色々考えてくれてるんだ。
優しいなあ。
俺、チョロいのかな。
異世界に一人って状況が寂しくて。
それで優しくされてほだされちゃったのかもしれない。
「そうだ。言葉も通じるようになったのだから、あちらの世界とここの違いを、わかる範囲で良いので教えて欲しい」
出来るだけ不便のないよう過ごして欲しいから、と言うけど。
いや、文化の違いまではどうにもならないと思うよ?
*****
あっちの生活はどんなものかを、おおまかに説明したら。
「天界に住んでいたのか……? 貴族ではなく、やはり天使……」
ゼノンは真顔で言った。
やっぱり天使って何だよ。
何がやっぱりなんだか。
誰かを好きになったのは初めてだって言うから、フィルター掛かりまくって見えてるのか?
話だけ聞けば、天国みたいな所に思えたかもしれない。
でも、そこまでいい世界でもないと思う。
不況らしいし。
日本はここ百年くらい戦争してないけど、外国ではテロだのクーデターだの年中戦争してるし。
外国の話を聞くと、日本に生まれて良かったと思った。
それでも、不満が無い訳じゃない。
俺はまだ高校生で払う税金は消費税くらいだし、扶養家族だからよく知らないけど。
税金とか、色々値上がりして大変みたいだし。
俺が減ったことで食い扶持が減って楽になったかもな。
アハハ、なんて……笑えないっての。
こっちじゃ名字は貴族じゃないと名乗れないし、綺麗な布の服を着てたし。
食事のマナーもちゃんとしてたから。
ゼノンは俺のことを貴族だと思ってたようだ。
俺は貴族じゃなくて庶民だよって言ったけど。
庶民なら働かないと食べていけないし、こんなに手や足の裏が柔らかくない、と言われてしまった。
そこは常識が違うとしか言えない。
こっちは、男なら子供の頃から剣を握らされるような世界だろ?
……うーん、でも。
うちは共稼ぎだったし、一応都内の一軒家だし。裕福な方だったのかもしれない。
家庭の事情で働かないといけなくて、高校にも通えない家庭もあるって聞く。
学校で禁止されてるのもあって、バイトしたこともない。
でも、さすがに本物の王族とか貴族と比較したら、貧乏だと思うよ?
*****
ゼノンは自動車の話にも驚いてた。
電車や飛行機にも。
こっちじゃ移動手段、馬車だもんな。
テレビや電話はないけど、魔法で通信は出来るとか。
ゲームはトランプみたいなカードやチェスみたいなものくらいしか無いし、ゲーセンとか遊園地みたいな娯楽施設も無くて、娯楽はダンスパーティーくらいだとか。
ダンスなんか、俺、ジェンカくらいしか踊れないよ?
元の世界では筆記用具や本が無くても、スマホかパソコンがあればだいたいなんでも調べられるし。
世界の裏側の人にも文字や映像、音声が送れる。
電気で明かりは灯るし。
ご飯は炊飯器があるし、レンジで冷凍食品もある。
冷暖房もスイッチ一つ。掃除もロボットがするし。
洗濯もスイッチ押すだけ。
お風呂もそうだな。
こっちにはボイラーっぽいのはあるみたい。噂に聞く五右衛門風呂みたいなのじゃなくて良かった。
そうか、言われてみたら、随分便利な世界に住んでたんだなあ。
でも、昭和時代の初期にはほとんど何もなかったって先生が言ってた。
信じられない。
スマホとか、俺が生まれた時からあったじゃん。
「馬には乗れるか?」
「え、無理。ポニーくらいしか乗ったことない」
後は動物園で引馬に乗ったくらいだ。
「では馬車を出そう。この国を案内しよう」
*****
馬が二頭だけど。
昨日乗った馬車よりは小型の馬車だった。
こっちの方が早く走れるんだそうだ。
御者も、昨日と同じ人だ。
ゼノンは御者に、今日行くコースを話してる。
この国って、どのくらいの規模なのかな?
日本は世界的に見れば小さな島国だけど、実際自動車で移動するとけっこう掛かるんだよな。
東京名古屋間で6時間くらいだっけ?
この世界の中央にあるっていうカルデアポリからここまでだいたい6時間くらいだろうから、一つの国が北海道くらいの規模かな?
国境とか国の形によるけど。
起きてれば、国境とか見れたのかな。ちょっともったいないことしたかも。
「ここの地図とかないの? 世界地図とか」
訊いてみると、ゼノンの耳がビッ、と立った。
「何故”地図”のことを知っている? ……我が国の最高機密情報だぞ!?」
「ええっ!?」
いきなりスパイ容疑!?
異世界のご飯はどんな感じかと身構えていたけど。
スープは匂いも味もコンソメっぽくて。
パンにジュース、オムレツ。
率直に言って、普通だった。
普通といっても、それはメニュー的な話で。
味は美味しいし、普段食べるものよりずっと良い素材を使ってそう。
肉もあった。
生肉じゃなく、ちゃんと火が通ってる。
食べ物に関してはそんな違わないようで、ホッとする。
牛も馬、鶏もいるようだし。
食生活自体はあまり変わらないのかも。
狼や犬、猫やライオンもいる世界だしな。
全然違う感じ……例えば主食がゲテモノ系だったら神様を恨んでるところだ。
こうした生活環境も近い者同士だから、大丈夫だと思って引き合わせたのかも。
*****
今のところ、ざっと見た感じでも、文明的な開きはあるように思える。
人間はみんな獣耳。
あと、神様が実在する。違いはそのくらいかな?
細かい風習とかはまだわかんないけど。
食事のマナーも、あまり違いはなさそうだ。
基本的に音を立てない。
ナイフとフォーク、スプーンに箸っぽいのもあるようだ。
でも、さすが王子様というか。ゼノンの仕草は綺麗なものだった。
「こちらの料理は口に合ったかな?」
「うん、美味しかった。ごちそうさまでした」
ゼノンもホッとした顔をした。
まずは様子見で。あまり変わった食材ではなくこちらで良く食べられる、スタンダードな料理を出すように指示したようだ。
色々考えてくれてるんだ。
優しいなあ。
俺、チョロいのかな。
異世界に一人って状況が寂しくて。
それで優しくされてほだされちゃったのかもしれない。
「そうだ。言葉も通じるようになったのだから、あちらの世界とここの違いを、わかる範囲で良いので教えて欲しい」
出来るだけ不便のないよう過ごして欲しいから、と言うけど。
いや、文化の違いまではどうにもならないと思うよ?
*****
あっちの生活はどんなものかを、おおまかに説明したら。
「天界に住んでいたのか……? 貴族ではなく、やはり天使……」
ゼノンは真顔で言った。
やっぱり天使って何だよ。
何がやっぱりなんだか。
誰かを好きになったのは初めてだって言うから、フィルター掛かりまくって見えてるのか?
話だけ聞けば、天国みたいな所に思えたかもしれない。
でも、そこまでいい世界でもないと思う。
不況らしいし。
日本はここ百年くらい戦争してないけど、外国ではテロだのクーデターだの年中戦争してるし。
外国の話を聞くと、日本に生まれて良かったと思った。
それでも、不満が無い訳じゃない。
俺はまだ高校生で払う税金は消費税くらいだし、扶養家族だからよく知らないけど。
税金とか、色々値上がりして大変みたいだし。
俺が減ったことで食い扶持が減って楽になったかもな。
アハハ、なんて……笑えないっての。
こっちじゃ名字は貴族じゃないと名乗れないし、綺麗な布の服を着てたし。
食事のマナーもちゃんとしてたから。
ゼノンは俺のことを貴族だと思ってたようだ。
俺は貴族じゃなくて庶民だよって言ったけど。
庶民なら働かないと食べていけないし、こんなに手や足の裏が柔らかくない、と言われてしまった。
そこは常識が違うとしか言えない。
こっちは、男なら子供の頃から剣を握らされるような世界だろ?
……うーん、でも。
うちは共稼ぎだったし、一応都内の一軒家だし。裕福な方だったのかもしれない。
家庭の事情で働かないといけなくて、高校にも通えない家庭もあるって聞く。
学校で禁止されてるのもあって、バイトしたこともない。
でも、さすがに本物の王族とか貴族と比較したら、貧乏だと思うよ?
*****
ゼノンは自動車の話にも驚いてた。
電車や飛行機にも。
こっちじゃ移動手段、馬車だもんな。
テレビや電話はないけど、魔法で通信は出来るとか。
ゲームはトランプみたいなカードやチェスみたいなものくらいしか無いし、ゲーセンとか遊園地みたいな娯楽施設も無くて、娯楽はダンスパーティーくらいだとか。
ダンスなんか、俺、ジェンカくらいしか踊れないよ?
元の世界では筆記用具や本が無くても、スマホかパソコンがあればだいたいなんでも調べられるし。
世界の裏側の人にも文字や映像、音声が送れる。
電気で明かりは灯るし。
ご飯は炊飯器があるし、レンジで冷凍食品もある。
冷暖房もスイッチ一つ。掃除もロボットがするし。
洗濯もスイッチ押すだけ。
お風呂もそうだな。
こっちにはボイラーっぽいのはあるみたい。噂に聞く五右衛門風呂みたいなのじゃなくて良かった。
そうか、言われてみたら、随分便利な世界に住んでたんだなあ。
でも、昭和時代の初期にはほとんど何もなかったって先生が言ってた。
信じられない。
スマホとか、俺が生まれた時からあったじゃん。
「馬には乗れるか?」
「え、無理。ポニーくらいしか乗ったことない」
後は動物園で引馬に乗ったくらいだ。
「では馬車を出そう。この国を案内しよう」
*****
馬が二頭だけど。
昨日乗った馬車よりは小型の馬車だった。
こっちの方が早く走れるんだそうだ。
御者も、昨日と同じ人だ。
ゼノンは御者に、今日行くコースを話してる。
この国って、どのくらいの規模なのかな?
日本は世界的に見れば小さな島国だけど、実際自動車で移動するとけっこう掛かるんだよな。
東京名古屋間で6時間くらいだっけ?
この世界の中央にあるっていうカルデアポリからここまでだいたい6時間くらいだろうから、一つの国が北海道くらいの規模かな?
国境とか国の形によるけど。
起きてれば、国境とか見れたのかな。ちょっともったいないことしたかも。
「ここの地図とかないの? 世界地図とか」
訊いてみると、ゼノンの耳がビッ、と立った。
「何故”地図”のことを知っている? ……我が国の最高機密情報だぞ!?」
「ええっ!?」
いきなりスパイ容疑!?
13
お気に入りに追加
1,248
あなたにおすすめの小説
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
迷子の僕の異世界生活
クローナ
BL
高校を卒業と同時に長年暮らした養護施設を出て働き始めて半年。18歳の桜木冬夜は休日に買い物に出たはずなのに突然異世界へ迷い込んでしまった。
通りかかった子供に助けられついていった先は人手不足の宿屋で、衣食住を求め臨時で働く事になった。
その宿屋で出逢ったのは冒険者のクラウス。
冒険者を辞めて騎士に復帰すると言うクラウスに誘われ仕事を求め一緒に王都へ向かい今度は馴染み深い孤児院で働く事に。
神様からの啓示もなく、なぜ自分が迷い込んだのか理由もわからないまま周りの人に助けられながら異世界で幸せになるお話です。
2022,04,02 第二部を始めることに加え読みやすくなればと第一部に章を追加しました。
美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました
SEKISUI
BL
ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた
見た目は勝ち組
中身は社畜
斜めな思考の持ち主
なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う
そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される
「隠れ有能主人公が勇者パーティから追放される話」(作者:オレ)の無能勇者に転生しました
湖町はの
BL
バスの事故で亡くなった高校生、赤谷蓮。
蓮は自らの理想を詰め込んだ“追放もの“の自作小説『勇者パーティーから追放された俺はチートスキル【皇帝】で全てを手に入れる〜後悔してももう遅い〜』の世界に転生していた。
だが、蓮が転生したのは自分の名前を付けた“隠れチート主人公“グレンではなく、グレンを追放する“無能勇者“ベルンハルト。
しかもなぜかグレンがベルンハルトに執着していて……。
「好きです。命に変えても貴方を守ります。だから、これから先の未来も、ずっと貴方の傍にいさせて」
――オレが書いてたのはBLじゃないんですけど⁈
__________
追放ものチート主人公×当て馬勇者のラブコメ
一部暗いシーンがありますが基本的には頭ゆるゆる
(主人公たちの倫理観もけっこうゆるゆるです)
※R成分薄めです
__________
小説家になろう(ムーンライトノベルズ)にも掲載中です
o,+:。☆.*・+。
お気に入り、ハート、エール、コメントとても嬉しいです\( ´ω` )/
ありがとうございます!!
BL大賞ありがとうございましたm(_ _)m
推しの完璧超人お兄様になっちゃった
紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。
そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。
ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。
そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。
親友と同時に死んで異世界転生したけど立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話
gina
BL
親友と同時に死んで異世界転生したけど、
立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話です。
タイトルそのままですみません。
ぼくは男なのにイケメンの獣人から愛されてヤバい!!【完結】
ぬこまる
BL
竜の獣人はスパダリの超絶イケメン!主人公は女の子と間違うほどの美少年。この物語は勘違いから始まるBLです。2人の視点が交互に読めてハラハラドキドキ!面白いと思います。ぜひご覧くださいませ。感想お待ちしております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる