45歳童貞、コミュ障フリーターが異世界で魔法使いに転生したらケモ耳ショタになった上、皇帝に囲われてしまいました。

篠崎笙

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建国記念日をつくろう。

皇妃:朝の会議はティータイム

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「おはよう、カナメ」
額にキスをされて。

まだ、眠いけど。
お返しに、おはようと言ってガイウスの頬にキスする。

Deusデウスbenedīcatベネディーカト
神の加護を。


ガイウスは、幸せそうに笑った。
その顔を見ると、俺も幸せになる。

「まだ眠いだろう。もう少し寝ていなさい。私は仕事に行ってくるよ」
よしよし、と頭を撫でられる。

ガイウスの手は気持ちいいので、眠くなってしまう。

「ん、いってらっしゃい。お仕事、頑張って」
手を振って。


「くぁあ……、」

いけない。
あくびが出てしまった。

まだ眠いけど。
ガイウスも頑張ってるし、俺も起きよう。


着替えて、寝室の続きの間で運ばれてきた朝食を食べていたら、ノックの音がして。
「どうぞー」

「失礼します。おはようございます、カナメ様」
騎士長官だ。

朝から元気……でもないな。何かしょんぼりしてる。

「どうしたの?」
「いえ、幸せだった時間を噛み締めていただけです……」

悲しい別れでもあったみたいな顔してるけど。
大丈夫ならいいか。


ごちそうさま、と席を立って。
会議室に移動する。


*****


「おはようございます」
「おはよう」

按察官はもう来ていた。早いなあ。
神祇官は今日、お祈りのためお休みだ。


建国記念日兼、皇帝生誕祭(仮)のメインイベントは夕方から開催する闘技会、という事で決定した。
残るは、前後の出し物だ。

試合後にガイウスに回復をかけて、閉会の挨拶とかをする予定だけど。
ガイウス、大忙しで大変だ。


「とりあえず国民の休日と、記念闘技会は決定したけど。開始の花火とか、パレードや他の出し物の方はどんな感じかな?」
「パレードは全て許可が下りました。他の出し物は、聖歌隊や大道芸人等から申し込みが多数来ておりますので精査し、順次許可を出したいと思います」

さすが、仕事が早い……。


「花火の件ですが。大量の火薬を使う場合、色々と細かい許可が必要なのです。危険物になりますので、それは私の裁量で決められません。皇帝や執政官コンスルのサインを頂かないと……」
「じゃあ、俺が貰ってくるね。ついでに、何か持ってくものあったら渡して」

「ありがとうございます。助かります」

按察官は他にも仕事があって忙しいのだ。
皇帝に渡す書類とかも受け取る。

騎士長官の許可はもう貰っている。
あまりそうは見えないけど、騎士マギステル長官エクィトゥムという職は、けっこう偉いのだ。

それが何で俺の護衛なんてしてるのかは謎だ。


*****


お茶を飲みながら。

「最近は、朝のこの打ち合わせの時間が楽しみで……」

按察官の言葉に、騎士長官がうんうん頷いている。
忙しいもんな……。


「カナメ様との打ち合わせを、部下からとても羨ましがられてますよ」
「俺も俺も。肩に乗せてた時とか特に」

そうなの? 皆そんなに忙しいのか。
大変だなあ。

「部下の人にクッキー持ってく?」

料理長に頼んで、作ってもらった。
チョコクッキーとか、美味しいと評判だ。

「お気遣いいただいてありがとうございます。皆、大変喜ぶと思います」


この世界には、ビスケットはあったけど、クッキーは無かったのだ。

ビスケットの起源は古くからあって。
紀元前2000年頃、古代ギリシャ・ローマ時代から食べられていたという。

ラテン語で「二度焼かれたbis coctusパンpanis」という意味だ。
保存食として日持ちさせるために焼いたパンを二度焼いたことから誕生したといわれるお菓子である。


ポルトガルを通して日本に入って、16世紀の日本では「びすかうと」、明治時代には「重焼麺包」と呼んでいた。

こっちのビスケット、というかビスコッティは硬くて、ワインやコーヒー、ジェラートなどに浸して、柔らかくなったものを食べることが多い。


ちなみに材料は同じだけど、糖分と脂肪分が全体の40%以上を占めるのがクッキーで以下がビスケットと決まっている。
サブレも好きなので、今度作ってもらう予定だ。

ビスケットはだいたいバターまたはショートニングと薄力粉の配合比率を1:2の割合で作るけど、サブレーはほぼ1:1で作る。
そうするとあの特徴的なほろほろとした食感が生まれるのだ。


「今度、プリンも作ってもらうんだ。会議の時出してくれるって」
「それは楽しみですねえ」


和やかに朝の会議は終わった。


*****


騎士長官と、政務室に向かった。

ノックをしたら、「どうぞ」と声がして。
兵士が扉を開けた。

あれ? 今の声、ガイウスじゃなかったなあ。


「ガイウス、ちょっといいかな?」
顔を出すと。

「皇妃様もご機嫌麗しく。大変結構なことでございます」
執政官コンスルのデキムスがたいへんご丁寧な礼をしたので、思わず頭を下げた。

今日は居たのか。
いつも忙しくて走り回ってる執政官。


デキムス・クラウディウス・マルケッルス・ピウス 性別:男 年齢:310歳 状態:幸福
職業:執政官コンスル/政務 レベル470 HP11080/12000 MP420/500
スキル:元素魔法レベル95(火・風・土・闇)・次元魔法レベル80・神聖魔法レベル90・黒魔法レベル150、体術レベル180・剣技レベル150、犬属共通言語、帝王学、貴族の心得、交渉術、算術、経済学、乗馬、登攀、目利き
装備:執政官の制服・執政官のマント・執政官の靴・騎士の剣・肌着・財布・鞄(書類)
所持金:10アウレ5デナリ10セス50アス
備考:毒耐性、麻痺耐性、呪い耐性、精神魔法無効
称号:元エトルリア国王(国王レベル300)、鉄の忠誠心


元国王なんだよな、この人。
添え名は『誠実さ、神への畏敬、家族と国家への献身』を表す『Pius』。

ガイウスよりも年上で。かなり仕事ができそう、というかできる人だ。
結婚式のときに挨拶したけど。未だに緊張する。


「どうした、何か問題でも?」
俺を見て、嬉しそうにしっぽを振ってるガイウスに訊かれて。

「オープニングセレモニーとかで花火をあげるのには、色々なとこの許可がいるっていうから、来たんだけど……」

ガイウスは首を傾げた。
あ、オープニングセレモニーって言ってもわかんないか。いけね。

ええと、開催最初の催し物?


「ああ、それは……」

「わたくしの管轄ですね」
執政官は、にっこりと笑った。

「あの、『建国記念日兼、皇帝生誕祭(仮)』開始の合図としてですね、盛大に花火を上げたいと思ったんですけど」

「花火。夜の方が綺麗に見えるのでは?」
確かにそうである。

「何か、開始の合図的な派手な演出が他に思いつかなくて……」
「では、大砲を撃つのはいかがですかな? 勿論、空砲ですが。花火は夜に移動、というのではいけませんか?」


おお。
「移動は大丈夫だと思います。空砲発射の許可をいただけますか?」

「勿論。記念すべき日です。皇帝陛下の御力を示すためにも、盛大に行いましょう。ああ、朝の会議、でしたか。わたくしも参加してよろしいでしょうか? 恐らく色々な手続きを短縮できるかと」
「あ、ハイ……」


朝の会議に、執政官も参加することになった。
俺、この人苦手なんだよなあ……。
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