45歳童貞、コミュ障フリーターが異世界で魔法使いに転生したらケモ耳ショタになった上、皇帝に囲われてしまいました。

篠崎笙

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45歳童貞、異世界へ行く

俺氏、剣術指南役から目を付けられる。

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皇妃様が見学に来てるって! 美人!? 美人か!? などと期待させてしまったようですまない。

本当に皇妃なんだけど。
この姿じゃ、信じられないか……。


大きな盾とグラディウスを持ち、魚のような兜を被っているのは魚兜闘士 ムルミッロだ。そのまんまだね。

顔を出しているのは網闘士レティアリイだな。
鎧は肩を覆うガレールスだけで、網や銛、とどめ用の短剣ミセリコルデで戦う。

素顔をさらすので、だいたい見目のいい若者がやるとか。


みんな、ほぼ裸に革靴だ。
でも、犬人にが見えないことに気付いた。


「何で皆、しっぽ短いの?」

「ああ、弱点ですからねぇ。掴まれないよう、切り落としちまうんですよ」
がはは、と豪快に笑ってるけど。笑えないよ!

ひえええ。
思わず自分のしっぽを抱きかかえる。


闘技会は神に奉げる試合なので、真剣を使って戦うから大怪我することもあるし、練習でも生傷が絶えないようだ。
命がけだな。

ここの剣闘士は奴隷じゃないけど。
パロスになれば、大金をもらえるから、みんな頑張っているようだ。


剣闘士の序列は剣術指南役ドクトレ自由剣闘士ルディアリウス武装剣闘士パロス熟練剣闘士ウェテラヌス訓練生ディスキプルスの順に称号があり、パロスは筆頭剣闘士プリームス・パールス、次席剣闘士と続き、第三から第八まである。

それでも、パロスまで行けるのは、限られた強者だけだ。


*****


「……あれ?」


「どうしました?」

灰色の髪に、眼帯の男。ほぼ裸の人たちの中、服を身に着けていて。
しっぽは長い。

その一人だけ、動きが全然違った。


「あの眼帯の人、すごい強そう」
指し示すと。

「ああ、ドクトレのルプスですか。さすがお目が高い! あの男は強いですよ」

騎士長官のテンションが上がった。
騎士長官も名前を知ってるレベルの人なんだ。


剣術指南役ドクトレルプス、か。
引退した剣闘士とは思えないくらい、ギラギラした感じがするけどなあ。

うわあ。
剣闘士レベルMAXだ……。290歳か。

MAX同士だけど、ガイウスとどっちが強いんだろ?


「先の戦いでも、かなりの戦功を上げたので、陛下も司令官にならないかと誘われたんですが。自分にはこっちの世界がお似合いだと剣闘士に戻り、目を怪我してから引退して。ドクトレになったんですよ」

おお。
孤高の剣闘士……。


「ルプス殿!」
騎士長官が声を掛けると、こちらに来た。

「おお、オクタ……騎士長官殿ではないか。久しぶりだな。その子は?」


「この方は、我がアルバ帝国筆頭魔術師で、陛下のツガイであらせられるぞ。頭が高い」
偉そうに言った。

「ふ、また冗談ばかり……、」
軽口を叩くような仲なんだ、とほっこりしていたら。


「っ!?」
ルプスは、俺を見た途端、真顔になり。


グラディウスを構えた。


は、魔王ではないか!?」


え? バレた!?
何で!?


*****


「はあ?」
騎士長官は呆れた声を出したけど。


ルプスは警戒したままで。
「子供には持ちえぬ、とてつもない魔力を感じるぞ。……特級魔術師どころではあるまい。さらに上……かつて封じられた魔王、いやそれ以上ではないか?」

うわ、鑑定眼持ちだ。

断言しないあたり、職業とか、詳細は見れないんだろうけど。
魔力レベルとかは見えるようだ。無限大だもんな……。


「この方は、神のお力により異界から召喚された魔術師で、子供の姿をされているだけだ。……カナメ様、」
こっちを見た。

大人の姿を見せた方がいい、ということだろう。
うん、と頷いて。

騎士長官の肩から降りる。


おぺら-てぃおoperatioあえたすaetasゆべんとすjuventus
青年の姿になると。

ヒューッ、と口笛が。
美人! 美人の狐ちゃんだ! と剣闘士たちが騒いでいる。

ええ……、美人? この顔、イケメンじゃないの?


ルプスはギロリと後ろを振り返り、剣闘士たちに命じた。
「貴様等全員、コロッセオ10週! 直ちにだスビトー!」


わあ、鬼教官スパルタだー。


*****


異世界では、30まで清らかな身体だと魔法使い、35だと大魔法使いになる。
40になってもそうだと魔道士、45で大魔道士になるのだと言い訳をした。


ルプスには、同情だか哀れみだか憐憫だかが複雑に入り混じった、何とも微妙な顔をされて。
騎士長官にまで微妙な顔をされた。

童貞なのは真実なので、悲しい。


「皇妃様に大変な無礼を働き、まことに申し訳ない……。考えてみれば、魔王であれば、あのガイウス陛下が見逃すはずもありませんでした」
頭を下げられた。

いや、本当は、魔王なのは事実なんだけども。

「気にしないで。いいから」

「何故、子供の姿で?」
ルプスに訊かれて。

「そういやそうだ。……持ち運びやすいから?」
騎士長官も俺を見た。

確かによく持ち運ばれてるけども。

「だってこの姿だと、ガイウスがすぐえっちなことす……、な、何でもないです!」
うっかり正直に言ってしまい、恥ずかしくなって、しっぽで顔を覆う。


散々からかわれた後。
騎士長官とルプスが近況報告とかし合って。

何で俺を魔王だと思ったか、という話になった。

「この国には現在、強力な魔法を使う魔術師マグスがいないのに、気付かれましたか?」
ルプスに訊かれて。

「そうなの?」
騎士長官を見たら、頷いた。

ガイウスも元素魔法や黒魔法を使うし、神祇官も白魔法と神聖魔法、騎士長官も元素魔法と低レベルだけど次元魔法を持ってるから。
魔法を使う人は普通にいっぱい居るのかと思った。


でも、今、を職業としている人は居ないそうだ。


*****


アルバ帝国は今年でちょうど、建国百年になるらしい。

それまでに他の国を制圧したり、吸収したりする際には、数人の魔術師がガイウスのサポートをしていた。
その内の一人が、建国後も戦いを求め、己の力に酔い、より強い力を求めるようになって。

他の魔術師の魔力を奪い取って”魔王”になったという。


ガイウスをはじめ、騎士長官やルプス達も応戦したが。
かなりの強敵で。

しばらく膠着状態が続いた。

次元魔法の使い手が、自分の命と引き換えに、魔王を別の世界に送ったが。
魔王は『百年後に必ず戻ってくる。その時、この国は終わりだと思え』と言い残して消えた。


「カナメ様からは、そやつ以上の魔力を感じたもので、つい勘違いを……」
「えっ、じゃあもうすぐその人、戻って来ちゃうかもしれないの!? 危険じゃん! 修行しなきゃ!」


今まで魔法を使わないような平和な世界に居たので、戦い慣れてないし。
魔法も全部把握してる訳じゃない、と言うと。

「このルプスでよろしければ、魔術の指南をさせていただけませんか?」
と申し出た。

命と引き換えに次元魔法を使ったのは、ルプスの親友だったという。
なので、自分も魔法には多少心得があるというけど。

…………?


ルプス・ポンペイウス・マグヌス・モルス 性別:男 年齢:290歳 状態:高揚
職業:剣術指南役/剣闘士レベルMAX
HP9500/10000 MP725/850
スキル:元素魔法レベル80・次元魔法レベル80・黒魔法レベル80・神聖魔法レベル30、体術・剣技レベルMAX、犬属共通言語、乗馬、登攀、探知、心眼、鑑定
装備:剣闘士のチュニック・剣闘士のマント・剣闘士の靴・木剣・肌着・財布
所持金:3アウレ10デナリ60セス
備考:毒耐性、麻痺耐性、呪い耐性、精神魔法無効
称号:熊殺し、月桂冠を掲げる者、元筆頭百人隊長プリムス・ピルス


多少って何だっけ?

けっこう色々使えてない?
添え名が死神morsって……。ursus殺しoccisio……。こわっ。


「じゃあ、お願いします……」
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