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プロローグ
45歳童貞コミュ障フリーター、死す。
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『ぶっちゃけ間違って死なせてしまってすまん』
外を歩いてたら、落ちていたビニール袋に引っ掛かって転んで。
そこにクレーン車が通り掛かって。
たぶん、そのまま轢かれたんだと思う。
ものすごく痛かった。
早く救急車来てくんないかな、って思ってた。
で。
気がついたらここに居たんだけど。
*****
何も無い、白い空間に、黒い、もふもふの犬がお座りしている。
犬は、自分は俺の住む世界の神だと名乗った。
んでもって、手違いで俺を死なせてしまったことを謝っているようだ。
謝罪に聞こえないけど。
『侘びに、大サービスで好きな職業につける世界へ送ってやろう』
……それは侘びに入るのだろうか。
45歳、フリーターですからね。
まともな職にありつけるのは、そりゃ嬉しいけど。
好きな職業か。
「魔法使い……」
『んむ?』
犬……神様は首を傾げた。
「童貞のまま30歳になったら魔法使いになれるって話なのに、俺はなれなかった……。諦めて風俗行こうとしたら、会社が倒産してそれどころじゃなくなって貯金も食いつぶし、その日暮らしみたいなフリーターに……そして、45歳になった今! 小金を貯めて、今日こそは風俗に行って童貞卒業しようと思ったらこれだよ! これはもう童貞を卒業してはいけないという運命に違いないよ! だから俺は魔法使いの王様、魔王になりたいんだ!!」
魔法使いの王様って、魔王でいいんだっけ。……何か違うような気がする。
まあいいか。
『お、おう……、』
引かれた。ドン引きされてしまった。
俺は神様を引かせた男。
何だか強そう。
「いっそ童貞を失ったら魔法が使えなくなる制限とかあってもいい。その世界の王様とかに頼られちゃうような超強い魔法が使えるといいな。そんでもって、モッテモテで女の子からキャーキャー言われるような見た目だとなおいいです。超モテても振るの。魔法が使えなくなっちゃうから」
女の子にモテてみたい。そして振ってみたい。
一度たりともモテたことがない45歳童貞が抱く、ちっちぇ夢である。
『注文細かいのう。……まあよかろう。すべてかなえてやる』
げんなりしている。
俺は神様をげんなり……もういいや。
犬って、意外と表情豊かなんだな。初めて知った。
「やったー、神様太っ腹!」
しばし目を閉じておれ、というので目を閉じて待つ。
*****
幸い、というか。
俺にはもう家族も居ないし、友達というか仲の良い人間も居ない。
だってテレビとか見ないから、共通の話題とか無いし。
俺が死んで困るのは……バイト先の店長と、アパートの大家さんくらいか。
あまり荷物は無いけど。死んだんじゃ仕方ないよな。
遺品処理お願いします。
あとは俺を轢いたクレーン車の運転手、か。
でも一般道をあからさまに速度オーバーで走るのが悪い。反省するべし。
俺なんて、世の中的には要らないってカテゴリーに入るような人間なのに。
あんな無茶な希望を聞いてくれるなんて。
神様は優しいなあ。
外を歩いてたら、落ちていたビニール袋に引っ掛かって転んで。
そこにクレーン車が通り掛かって。
たぶん、そのまま轢かれたんだと思う。
ものすごく痛かった。
早く救急車来てくんないかな、って思ってた。
で。
気がついたらここに居たんだけど。
*****
何も無い、白い空間に、黒い、もふもふの犬がお座りしている。
犬は、自分は俺の住む世界の神だと名乗った。
んでもって、手違いで俺を死なせてしまったことを謝っているようだ。
謝罪に聞こえないけど。
『侘びに、大サービスで好きな職業につける世界へ送ってやろう』
……それは侘びに入るのだろうか。
45歳、フリーターですからね。
まともな職にありつけるのは、そりゃ嬉しいけど。
好きな職業か。
「魔法使い……」
『んむ?』
犬……神様は首を傾げた。
「童貞のまま30歳になったら魔法使いになれるって話なのに、俺はなれなかった……。諦めて風俗行こうとしたら、会社が倒産してそれどころじゃなくなって貯金も食いつぶし、その日暮らしみたいなフリーターに……そして、45歳になった今! 小金を貯めて、今日こそは風俗に行って童貞卒業しようと思ったらこれだよ! これはもう童貞を卒業してはいけないという運命に違いないよ! だから俺は魔法使いの王様、魔王になりたいんだ!!」
魔法使いの王様って、魔王でいいんだっけ。……何か違うような気がする。
まあいいか。
『お、おう……、』
引かれた。ドン引きされてしまった。
俺は神様を引かせた男。
何だか強そう。
「いっそ童貞を失ったら魔法が使えなくなる制限とかあってもいい。その世界の王様とかに頼られちゃうような超強い魔法が使えるといいな。そんでもって、モッテモテで女の子からキャーキャー言われるような見た目だとなおいいです。超モテても振るの。魔法が使えなくなっちゃうから」
女の子にモテてみたい。そして振ってみたい。
一度たりともモテたことがない45歳童貞が抱く、ちっちぇ夢である。
『注文細かいのう。……まあよかろう。すべてかなえてやる』
げんなりしている。
俺は神様をげんなり……もういいや。
犬って、意外と表情豊かなんだな。初めて知った。
「やったー、神様太っ腹!」
しばし目を閉じておれ、というので目を閉じて待つ。
*****
幸い、というか。
俺にはもう家族も居ないし、友達というか仲の良い人間も居ない。
だってテレビとか見ないから、共通の話題とか無いし。
俺が死んで困るのは……バイト先の店長と、アパートの大家さんくらいか。
あまり荷物は無いけど。死んだんじゃ仕方ないよな。
遺品処理お願いします。
あとは俺を轢いたクレーン車の運転手、か。
でも一般道をあからさまに速度オーバーで走るのが悪い。反省するべし。
俺なんて、世の中的には要らないってカテゴリーに入るような人間なのに。
あんな無茶な希望を聞いてくれるなんて。
神様は優しいなあ。
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