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キノコマスター、結婚する。
結婚式
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「では、そろそろ行こうか。私の花嫁殿」
「うわ、」
ひょい、と持ち上げられてしまった。いわゆる、お姫様抱っこで。
……かなり恥ずかしいんだけど。
でもこれは、古来からある、結婚式での決まりらしい。
”花嫁の控え室”から教会を出るまでは、花嫁には一歩も歩かせてはいけない。
花嫁のこれからの人生は、こうして花婿が守る、と。
その力を周囲に示すためだそうだ。
花婿より花嫁の方が大きい場合、大変そうだ。
この世界、わりと大柄な女の人が多いし。
それでも軽く抱えられるくらいパワフルな、ムッキムキの筋肉男がモテるのかな?
俺は無理だ。
子供のファビオですら、潰されそうだったし。
なるほど、小さい女性がモテるというのは、結婚式で抱えやすいからかも。
晴れの日にふらついて落っことしたりしたら一大事だもんな。
俺のマントが短めなのも、抱えた時に邪魔にならないようにだと気付いた。
*****
教会の外観や内装は、異世界でも、あまり変わりはないみたいだ。
テレビで見た、大聖堂みたいな感じ。もちろんサイズはこっちの方がでかいけど。
キリストやマリア像、十字架などの代わりに、中央にある祭壇の奥には、片目を閉じた青年の像があった。
あれが善神ディオスの像か。
半身は魔王になったので、その半分の目で人類の行く末を見守っている、という理由で片目を閉じているらしい。
神父が教典を手に、祭壇の前で待っている。神父って言うのかは知らないけど。
こっちの神父服は魔法使いみたいな格好なんだ……。とんがり帽子だ。
両脇にいる招待客? は領主たちと、バルの親戚とか、関係者かな?
アダンにエリアス、ウィルフレドもいる。
みんな正装している。みんな派手な格好だ。
だいたい黒スーツに白いネクタイな元の世界とは全然違う。女の人の場合、花嫁より目立たないように、白いドレスは避けるんだっけ。こっちは色とりどりだ。
ウィルフレド、美形なのもあるけど。肌の色といい、この国じゃ目立つなあ。普段、ローブのフードを頭から被ってるのはそのためかも。
祭壇の前に立って。
そっと腕から降ろされた。
バルの手は、俺の腰を支えたままだ。
神父は、教典の内容を読み上げた。
「バルタサール=ウルタード。貴方はその生涯を通し、伴侶の幸福、生活を支え、その人生の全てを背負うことを誓いますか?」
「ポルスープエスト」
こちらでは、永久の愛を誓うんじゃなく、伴侶の人生を背負うことを誓う。
”ポルスープエスト”っていうのは承諾の言葉だそうで。俺も同じ言葉で良いらしい。
結婚式のことを聞いたのは昨日の今日なので、今朝、詰め込みで進行とかエリアスから聞いて、何回か練習してみたけど。
上手く言えるか、緊張してしまう。
「ユーキ・タカナシ。貴方は伴侶にその身を委ね、共に暮らすことを誓いますか?」
「ポルスープエスト」
よし。言えた。
まずは一つ、クリアだ。
あー、ドキドキした。……バル、何でほっとした顔してんの? 俺がちゃんと言えるが、心配してくれたのかな?
*****
「では、誓いのシークロを」
神父の合図で。
指輪係の人が、箱を二つ、持ってきた。
ん? シークロって何だ?
日本語に変換されなかったな。
指輪じゃないの?
エリアスは”誓いの指輪”を贈り合う、って言ってたよな? 異世界も同じなんだ、と思ったような気がするけど。俺の記憶違いかな?
良く見れば、バルの前に置かれた箱。指輪にしては、大きい箱だな……。
バルの指は赤ん坊の手首くらいありそうなので、こっちも通常の指輪の箱より大きいんだけど。
まず俺が、バルの左手の薬指に、指輪をはめる。
左手なのは、左手は心臓に近いからで。薬指なのは、約束をする時に使う指だからだそうだ。約束を破れば左手の薬指や心臓を奪われてもかまわない、という印だとか。
なにそれこわい。
こっちは結婚に関して、色々物騒な決まりがあるんだな……。
バルは、自分の左薬指にはまった指輪を満足そうに見て。
箱から、腕輪くらいの大きさのでかい指輪を取り出した。……箱、あと三つあるように見えるんだけど。どういうことだよ。
っていうか。その指輪、でかくない?
それ、俺の指からすっぽ抜けちゃわない? と。俺は内心焦って挙動不審になりかけてたけど。
周囲から、何と小さな……、と感嘆するような声が聞こえた。
いや、大きいよ!?
ぶかぶかだよ!?
*****
それは、やっぱり指輪じゃなく、腕輪だったようだ。
……指輪を交換するんじゃなかったのか?
これはちょっと予想外だった。
飾りの入った、細い輪が連なった腕輪を両腕に。それと、何故か両足首にもはめられた。
動くとシャラシャラ音がする。鎖には、ここの国旗とかで見る、紋章が入った飾りもついていた。
誓いの腕輪と……足輪? 何だこれ。
まあいいや。後で聞いてみるか。
「今日、新たに夫婦となる二人に祝福あれ」
神父の声に。
招待客たちが、祝福あれ、と復唱した。
これで教会での式は、終了のようだ。
再びバルの腕に抱え上げられて、教会の外に出ると。
教会の階段の下、広場には国民が大勢集まっていて、口々に国王の結婚を祝ってくれてる。
カゴから花びらを撒いている。
花びらが、雪のようだ。
「うわ、」
ひょい、と持ち上げられてしまった。いわゆる、お姫様抱っこで。
……かなり恥ずかしいんだけど。
でもこれは、古来からある、結婚式での決まりらしい。
”花嫁の控え室”から教会を出るまでは、花嫁には一歩も歩かせてはいけない。
花嫁のこれからの人生は、こうして花婿が守る、と。
その力を周囲に示すためだそうだ。
花婿より花嫁の方が大きい場合、大変そうだ。
この世界、わりと大柄な女の人が多いし。
それでも軽く抱えられるくらいパワフルな、ムッキムキの筋肉男がモテるのかな?
俺は無理だ。
子供のファビオですら、潰されそうだったし。
なるほど、小さい女性がモテるというのは、結婚式で抱えやすいからかも。
晴れの日にふらついて落っことしたりしたら一大事だもんな。
俺のマントが短めなのも、抱えた時に邪魔にならないようにだと気付いた。
*****
教会の外観や内装は、異世界でも、あまり変わりはないみたいだ。
テレビで見た、大聖堂みたいな感じ。もちろんサイズはこっちの方がでかいけど。
キリストやマリア像、十字架などの代わりに、中央にある祭壇の奥には、片目を閉じた青年の像があった。
あれが善神ディオスの像か。
半身は魔王になったので、その半分の目で人類の行く末を見守っている、という理由で片目を閉じているらしい。
神父が教典を手に、祭壇の前で待っている。神父って言うのかは知らないけど。
こっちの神父服は魔法使いみたいな格好なんだ……。とんがり帽子だ。
両脇にいる招待客? は領主たちと、バルの親戚とか、関係者かな?
アダンにエリアス、ウィルフレドもいる。
みんな正装している。みんな派手な格好だ。
だいたい黒スーツに白いネクタイな元の世界とは全然違う。女の人の場合、花嫁より目立たないように、白いドレスは避けるんだっけ。こっちは色とりどりだ。
ウィルフレド、美形なのもあるけど。肌の色といい、この国じゃ目立つなあ。普段、ローブのフードを頭から被ってるのはそのためかも。
祭壇の前に立って。
そっと腕から降ろされた。
バルの手は、俺の腰を支えたままだ。
神父は、教典の内容を読み上げた。
「バルタサール=ウルタード。貴方はその生涯を通し、伴侶の幸福、生活を支え、その人生の全てを背負うことを誓いますか?」
「ポルスープエスト」
こちらでは、永久の愛を誓うんじゃなく、伴侶の人生を背負うことを誓う。
”ポルスープエスト”っていうのは承諾の言葉だそうで。俺も同じ言葉で良いらしい。
結婚式のことを聞いたのは昨日の今日なので、今朝、詰め込みで進行とかエリアスから聞いて、何回か練習してみたけど。
上手く言えるか、緊張してしまう。
「ユーキ・タカナシ。貴方は伴侶にその身を委ね、共に暮らすことを誓いますか?」
「ポルスープエスト」
よし。言えた。
まずは一つ、クリアだ。
あー、ドキドキした。……バル、何でほっとした顔してんの? 俺がちゃんと言えるが、心配してくれたのかな?
*****
「では、誓いのシークロを」
神父の合図で。
指輪係の人が、箱を二つ、持ってきた。
ん? シークロって何だ?
日本語に変換されなかったな。
指輪じゃないの?
エリアスは”誓いの指輪”を贈り合う、って言ってたよな? 異世界も同じなんだ、と思ったような気がするけど。俺の記憶違いかな?
良く見れば、バルの前に置かれた箱。指輪にしては、大きい箱だな……。
バルの指は赤ん坊の手首くらいありそうなので、こっちも通常の指輪の箱より大きいんだけど。
まず俺が、バルの左手の薬指に、指輪をはめる。
左手なのは、左手は心臓に近いからで。薬指なのは、約束をする時に使う指だからだそうだ。約束を破れば左手の薬指や心臓を奪われてもかまわない、という印だとか。
なにそれこわい。
こっちは結婚に関して、色々物騒な決まりがあるんだな……。
バルは、自分の左薬指にはまった指輪を満足そうに見て。
箱から、腕輪くらいの大きさのでかい指輪を取り出した。……箱、あと三つあるように見えるんだけど。どういうことだよ。
っていうか。その指輪、でかくない?
それ、俺の指からすっぽ抜けちゃわない? と。俺は内心焦って挙動不審になりかけてたけど。
周囲から、何と小さな……、と感嘆するような声が聞こえた。
いや、大きいよ!?
ぶかぶかだよ!?
*****
それは、やっぱり指輪じゃなく、腕輪だったようだ。
……指輪を交換するんじゃなかったのか?
これはちょっと予想外だった。
飾りの入った、細い輪が連なった腕輪を両腕に。それと、何故か両足首にもはめられた。
動くとシャラシャラ音がする。鎖には、ここの国旗とかで見る、紋章が入った飾りもついていた。
誓いの腕輪と……足輪? 何だこれ。
まあいいや。後で聞いてみるか。
「今日、新たに夫婦となる二人に祝福あれ」
神父の声に。
招待客たちが、祝福あれ、と復唱した。
これで教会での式は、終了のようだ。
再びバルの腕に抱え上げられて、教会の外に出ると。
教会の階段の下、広場には国民が大勢集まっていて、口々に国王の結婚を祝ってくれてる。
カゴから花びらを撒いている。
花びらが、雪のようだ。
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