巨人の国に勇者として召喚されたけどメチャクチャ弱いのでキノコ狩りからはじめました。

篠崎笙

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キノコマスター、王様のキノコをGETする。

キノコに舌鼓を打つ

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その日の夕食は、晩餐会みたいな感じだった。

シャンデリアも眩しい豪華な食堂にセントロ王国の領主たちが勢揃いして。
みんな笑顔で乳キノコレーチェオンゴのシチューに舌鼓を打っていた。


「私の可愛い子猫ちゃんリンドガティートはマエステロデオンゴスでね。このシチューのレーチェオンゴは、彼が狩ったものだ」
バルが得意げになってるのが何となく可愛い。

でも、俺のことを”可愛い子猫ちゃん”って言うの、いい加減、やめて欲しいんだけどな……。

領主たちは老獪そうなオッサンばかりだから、もう顔には出さないだろうけど。
絶対、おかしいと思ってるよ?

「それは素晴らしい。レーチェオンゴというのは、滅多にお目にかかれない貴重なものだったかと。大変美味なるものですね」
「善き片翼を得られたご様子で。おめでとうございます」

長い会議が終わった解放感からか、それとも料理が美味しいせいか。みんな、朗らかに笑っている。


細かいことは気にしないことにしたのかな?
それが一番だ。


*****


それにしても。
何で俺は、バルの隣りに座ってるんだろう。

バルは国王様だよな? この国で一番偉い。マジでキングなわけで。

長細いテーブルの端っこに、豪華な椅子が並んでて。そこにバルと俺。
側近のエリアスが、テーブルの左側に。領主たちもテーブルの両脇にそれぞれ分かれて座ってる。
テレビで見た、会議で社長とか一番偉い人が座ってる位置じゃないか?

バルに手招きされて、座ったのがこの席だった。膝の上じゃないだけまだマシなんだろうけど。
これ、めちゃくちゃ上座じゃないか!

俺、一応、この国での立場は”生贄”だったよな?
でも、俺は正確にはスデステ村の村人じゃないから、異世界から来た客って扱いになってるとか?

本当はバルのことも”陛下”って呼んだ方がいいんだろうけど。
バルって呼ばないと返事しない、とか、拗ねたみたいに言うし!


まあいいか。
シチュー美味しい。肉も柔らかいや。

……村の人たち、ちゃんとご飯食べられてるかなあ。
俺が狩ったキノコやお化けウサギの肉はまだ残ってるだろうけど。


”勇者”として呼ばれたせいか。最初こそは歩くキノコカミナルオンゴに苦戦するほど弱かったものの、色んなキノコを狩ってるうちにレベルが上がっていって。
いつの間にか、村人よりも強くなってたらしい。

村人たちじゃ数人がかりでもお化けウサギを倒すのも難しい、というか。無傷で倒すなんて無理なんだって。
だからお化けウサギを持って帰った時は、本当に喜ばれた。


俺には何故か、最初からキノコの名前とか特性が、ひと目見ただけでわかった。
キノコの達人になれたのもそのおかげだ。

もしかしたら、レベルアップを報せるのと一緒に、旅の魔法使いがつけてくれたのかもしれない。
だったら言葉がわかるような魔法をかけて欲しかった、と思ってたけど。
バルがかけたアレがその魔法なら、かけられなくて良かった。

村人たちはキノコの知識がないから、毒のあるキノコを食べてしまって中毒になったこともあったらしい。
それでも、決死の覚悟で森に入っては狩りをしていたようだ。


そもそもモンスターと戦ってレベルを上げるって行為自体、ゲームを知ってる異世界人な俺くらいしか理解してなかったみたいだった。
俺も異世界に来て初めてレベルアップを経験したんだけど。

……スデステ村の人たち、よく今まで生活できてたな。


*****


「ご機嫌麗しゅう、陛下の片翼どの。マエステロデオンゴスということは、もう陛下のキノコを召し上がったので?」
ほろ酔いでご機嫌な様子の、ヒゲが立派な領主が声を掛けてきた。

他の領主から、笑い声が上がってる。


ん? 片翼って? もしかして、俺のこと?
子猫だの翼だの、異世界はよくわかんない例えをするよな。

「バルの、キノコ……?」


あ、そうか。
もしかして、シモ系の話? 何かニヤニヤしてるし。

オッサンって、そういうの好きだよな……。まあ俺も嫌いじゃないけど。
友達とも、バカ丸出しなシモネタで盛り上がったものだ。ほぼDTばっかだから、妄想のエロ話が主だった。


しかし、何で俺がバルのキノコを食べるって話になるんだ?

キノコマスターは、股間のキノコまで守備範囲じゃないぞ。
そもそも食用じゃないし。

もいじゃったら大惨事だろ。
いろんな意味で。


手元にあったグラスの飲み物を飲み干した。

……うわ、苦い。
何だこれ?


「ノルデステ卿? 優輝様はまだ結婚前なのですよ」
エリアスに睨まれて、オッサン領主はそれは申し訳ない、と肩を窄めた。

結婚前の男はシモネタ禁止ってか?
固いこというなよ。


「キノコっていうより、タケノコだった」

こう、根元がずっしりした感じ、と身振りで示したら。
領主達、大爆笑だった。

さすがはキノコの達人、とか言われた。


何だよ。
タケノコはキノコじゃないぞ。


何で、おめでとうコールになってるんだ?

式が楽しみだとか。
何だろ。


……何か、やたら眠くなってきた。


「誰です、優輝様にセルベッサを飲ませたのは!」


遠くで。
エリアスが怒ってる声がしたような気が。
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