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異世界の王様、日本へ行く。
王様、民家に泊まる
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「ええと。暑くない? クーラー大丈夫?」
「私は問題ないが。優輝は暑いのか?」
夏に、人とくっついて寝るなんて暑苦しそうだけど。
バルは何かさらっとした感じで、心地いいからか、俺も、暑くはないけど。
……わかってて、わざと聞いてるのかな?
「優輝、」
キスをされそうになって。慌ててバルの口を手で覆った。
「ちょ、あの、ウチは壁が薄くて、隣の部屋の親父のイビキも聞こえるくらいだし。それに、この下は祖母ちゃんの部屋で、」
聞こえたらどうしようって焦ってたら。
頬を撫でられて。
「わかっている。せっかく今まで待ったのだからね。ここで奪うことはしない」
気になって集中できないだろうし、昼までゆっくり睦み合うこともできないだろうから、と。
耳元で囁かれる。
……何か、すごいエロイこと言われてる気がする。
うう。
あっちに戻った時がこわい。
「……おやすみ」
額に、そっとおやすみのキスをされた。
「ん、おやすみ」
俺も返した。
俺が困るから、やめてくれたのに。
何だか物足りなく思ってしまうなんて。我ながら身勝手だなあ。
もし、ウィルフレドが乱入してなくて、ここに戻されてなかったら。
あの夜。
最後までしてたのかな?
……考えるのはやめよう。恥ずかしくなってきた。
*****
目が覚めたら。
バルが至近距離でおはよう、と言って微笑んだ。自宅で、バルの美貌を見るのは、なんか不思議な感じがする。
そんな、じっと俺の顔を見るのやめて欲しい。寝顔もしっかり見られてたのか。
照れる。
「うん、おはよう」
おはようのキスに、俺も応えた。
バルが壁側で、俺はすぐ後ろがベッドの端っこだったから、寝惚けて落ちそうなものなのに。
ずっと支えててくれたのかな。
調べるため、その辺を歩くのにはどのような格好をしたらいいかと聞かれて。
ファッション雑誌を出して、バルに似合いそうな服を選ぶ。
セレブの休日みたいな、品の良さそうなのが似合うと思う。
でも、何を着ても似合いそうなんだよな。
同じベッドに寝てたの、バレてるかもしれないけど。
俺用の布団をわざと乱して、こっちで寝たように工作してみたり。
そんな俺を、バルはにこにこしながら見ていた。
布団を畳んでいたら.
バルは甚平を脱いで、素っ裸になっていた。
甚平を畳もうとして困惑してる。
何か可愛い。
……おいおい、縮んでも大きいな……。
「俺がやっとくから貸して、」
「すまない」
バルから甚平を受け取って、適当に畳んだ。
後で洗うから、適当でいいんだけど。その適当がわかんないみたいだ。
だいたい魔法で着替えちゃうし、お手伝いさんがいるからな。
*****
パタパタと、階段を上がってくる音が聞こえた。
「……あんた行ってよ」
「ええっ、気まずいことになってたらどうするんだ」
「たとえそうでも、男同士なら大丈夫でしょ、」
「そんな、男でも困るよ」
ドアの外から、気まずそうな親父と母ちゃんの声が聞こえた。
それを聞いて、なるほど、とバルが苦笑してる。
全部筒抜けだっての。
まったく。
ノックの音がして。
「えー、そろそろ朝食の時間だが、二人とも起きてるかな……?」
そんな、恐る恐る覗かなくても。
隣と下に家族がいるのに、朝まで全裸で抱き合ってたりする訳ないだろ。
「起きてるよー」
「おはようございます」
バルはもう、セレブの休日風な服に着替えている。
やっぱり似合ってて格好いい。
*****
味噌汁にご飯、焼き魚。だし巻き卵。
朝は、純日本風のご飯だったので、バルが感動していた。納豆は駄目だったけど、豆腐は気に入ったようだ。
朝食を食べた後。
親父と一緒に出ることにした。
「お世話になりました。またしばらく後、挨拶に伺います」
バルは玄関まで見送りに出た母ちゃんと祖母ちゃんに、日本風のお辞儀をしてみせた。
「いえいえ、何のお構いもできませんで……」
「またいらっしゃいね」
「じゃ、俺もちょっと案内するから。行ってきます」
母ちゃんと祖母ちゃんに手を振って。
三人でバス停に向かった。
夏休みなので、バスは空いている。
バスに乗る時に、親父が一日乗車券を二枚買って渡してくれた。
「あちこち回るなら必要だろう?」
「そっか。ありがと」
俺は今月末まで使える定期があるけど。
そういえばバルはこっちの通貨を持ってなかった。さすが社会人。
「お気遣い、ありがたくいただきます」
バルは親父にお礼を言って。
受け取ったカードを、不思議そうに見ている。
「これを提示すれば、この乗り物に何度も乗れる、というものかな?」
すぐに理解してる。
「うん。何日も乗るなら、全国で使える青春18きっぷとかもあるけど。今日だけでいいの?」
「一日で全てを見ようとは思っていないが。君の暮らした世界を、少しでも知りたいと思ってね」
うわあ、笑顔が眩しい。
バル、キラキラしすぎだよ。
抑えて抑えて。
他の乗客からめちゃくちゃ注目されてるし。
親父は不自然に目を逸らしている。
息子の夫が息子に甘い言葉を囁いているのを目の当たりにしてしまった、その心境はいかに。
思わず心の中で手を合わせる。
ごめんな? バルはこれで通常営業なんだ。これでもまだ、抑えてる方なんだよ……。
「私は問題ないが。優輝は暑いのか?」
夏に、人とくっついて寝るなんて暑苦しそうだけど。
バルは何かさらっとした感じで、心地いいからか、俺も、暑くはないけど。
……わかってて、わざと聞いてるのかな?
「優輝、」
キスをされそうになって。慌ててバルの口を手で覆った。
「ちょ、あの、ウチは壁が薄くて、隣の部屋の親父のイビキも聞こえるくらいだし。それに、この下は祖母ちゃんの部屋で、」
聞こえたらどうしようって焦ってたら。
頬を撫でられて。
「わかっている。せっかく今まで待ったのだからね。ここで奪うことはしない」
気になって集中できないだろうし、昼までゆっくり睦み合うこともできないだろうから、と。
耳元で囁かれる。
……何か、すごいエロイこと言われてる気がする。
うう。
あっちに戻った時がこわい。
「……おやすみ」
額に、そっとおやすみのキスをされた。
「ん、おやすみ」
俺も返した。
俺が困るから、やめてくれたのに。
何だか物足りなく思ってしまうなんて。我ながら身勝手だなあ。
もし、ウィルフレドが乱入してなくて、ここに戻されてなかったら。
あの夜。
最後までしてたのかな?
……考えるのはやめよう。恥ずかしくなってきた。
*****
目が覚めたら。
バルが至近距離でおはよう、と言って微笑んだ。自宅で、バルの美貌を見るのは、なんか不思議な感じがする。
そんな、じっと俺の顔を見るのやめて欲しい。寝顔もしっかり見られてたのか。
照れる。
「うん、おはよう」
おはようのキスに、俺も応えた。
バルが壁側で、俺はすぐ後ろがベッドの端っこだったから、寝惚けて落ちそうなものなのに。
ずっと支えててくれたのかな。
調べるため、その辺を歩くのにはどのような格好をしたらいいかと聞かれて。
ファッション雑誌を出して、バルに似合いそうな服を選ぶ。
セレブの休日みたいな、品の良さそうなのが似合うと思う。
でも、何を着ても似合いそうなんだよな。
同じベッドに寝てたの、バレてるかもしれないけど。
俺用の布団をわざと乱して、こっちで寝たように工作してみたり。
そんな俺を、バルはにこにこしながら見ていた。
布団を畳んでいたら.
バルは甚平を脱いで、素っ裸になっていた。
甚平を畳もうとして困惑してる。
何か可愛い。
……おいおい、縮んでも大きいな……。
「俺がやっとくから貸して、」
「すまない」
バルから甚平を受け取って、適当に畳んだ。
後で洗うから、適当でいいんだけど。その適当がわかんないみたいだ。
だいたい魔法で着替えちゃうし、お手伝いさんがいるからな。
*****
パタパタと、階段を上がってくる音が聞こえた。
「……あんた行ってよ」
「ええっ、気まずいことになってたらどうするんだ」
「たとえそうでも、男同士なら大丈夫でしょ、」
「そんな、男でも困るよ」
ドアの外から、気まずそうな親父と母ちゃんの声が聞こえた。
それを聞いて、なるほど、とバルが苦笑してる。
全部筒抜けだっての。
まったく。
ノックの音がして。
「えー、そろそろ朝食の時間だが、二人とも起きてるかな……?」
そんな、恐る恐る覗かなくても。
隣と下に家族がいるのに、朝まで全裸で抱き合ってたりする訳ないだろ。
「起きてるよー」
「おはようございます」
バルはもう、セレブの休日風な服に着替えている。
やっぱり似合ってて格好いい。
*****
味噌汁にご飯、焼き魚。だし巻き卵。
朝は、純日本風のご飯だったので、バルが感動していた。納豆は駄目だったけど、豆腐は気に入ったようだ。
朝食を食べた後。
親父と一緒に出ることにした。
「お世話になりました。またしばらく後、挨拶に伺います」
バルは玄関まで見送りに出た母ちゃんと祖母ちゃんに、日本風のお辞儀をしてみせた。
「いえいえ、何のお構いもできませんで……」
「またいらっしゃいね」
「じゃ、俺もちょっと案内するから。行ってきます」
母ちゃんと祖母ちゃんに手を振って。
三人でバス停に向かった。
夏休みなので、バスは空いている。
バスに乗る時に、親父が一日乗車券を二枚買って渡してくれた。
「あちこち回るなら必要だろう?」
「そっか。ありがと」
俺は今月末まで使える定期があるけど。
そういえばバルはこっちの通貨を持ってなかった。さすが社会人。
「お気遣い、ありがたくいただきます」
バルは親父にお礼を言って。
受け取ったカードを、不思議そうに見ている。
「これを提示すれば、この乗り物に何度も乗れる、というものかな?」
すぐに理解してる。
「うん。何日も乗るなら、全国で使える青春18きっぷとかもあるけど。今日だけでいいの?」
「一日で全てを見ようとは思っていないが。君の暮らした世界を、少しでも知りたいと思ってね」
うわあ、笑顔が眩しい。
バル、キラキラしすぎだよ。
抑えて抑えて。
他の乗客からめちゃくちゃ注目されてるし。
親父は不自然に目を逸らしている。
息子の夫が息子に甘い言葉を囁いているのを目の当たりにしてしまった、その心境はいかに。
思わず心の中で手を合わせる。
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