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キノコマスター、修行する。
黒衣の騎士との出会い
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散々な目に遭って、途方に暮れていた俺の前に、謎のイケメンが現れた。
胞子のせいで、目がかすんでいたのに。その姿は何故か、くっきりと見えた。
金色の髪に、蒼い目。色白で、彫像みたいに整った顔立ち。黒い、騎士みたいな全身鎧を身に着けていて。黒いマントを羽織っていた。腰には剣。
イケメンは、俺を見て。驚いたように、目を見開いていた。……と思ったら、さっといなくなって。
またすぐに戻って来た。
たまたま通りかかったところで、胞子を浴びて全身胞子まみれ上、涙で顔面ぐしゃぐしゃ、キノコもぐしゃぐしゃ、という悲惨な状態だった俺を、見るに見かねたのかもしれない。
どこからかキノコを持って来て、渡してくれたのだ。
これを持っていけ、って感じで、微笑みながら頭を撫でられたので、たぶん小さい子供だと思われたのだろう。
実際、この世界では俺の身長は小学校低学年の子供並みのようだし。
そのキノコは、かなり稀少なものだったらしく。
その晩は、村人も大喜びで迎えてくれた。
*****
次の日になって。再びキノコ狩りにチャレンジしようと森へ行った。
そしたら、黒衣のイケメンが現れて。俺に、にこっと微笑みかけた。
美形の笑みは、男でもドキッとしてしまうのだと知った。危うく別の世界の扉が開くところだったぜ。今異世界にいるんだけど。
にこやかに俺に何か言ったけど。さっぱりわからなかった。
困って、首を傾げてみせたら、俺が言葉がわからないことを察してくれたようだ。
それからしばらく、イケメンは身振り手振りで、俺に歩くキノコの倒し方を教えてくれた。
後ろで見守ってくれて。
うっかりレベルの高いやつに手を出してしまって危ない時は、フォローもしてくれた。
ネトゲとかでよくある、初心者を育てるのが趣味な人か、それとも子供だと思って親切にしてくれているのか?
何でここまで親切にしてくれるのか、疑問だったが。正直、ありがたかった。
異世界で初めて、人の優しさに触れた感じだ。ぶっちゃけ理不尽な扱いされててやさぐれてたし。
でも、歩くキノコくらいなら余裕で倒せるようになった頃。
イケメンは、姿を見せなくなってしまった。
荷物は持ってなかったから、てっきり近所に住んでる人だろうと思ってたけど。
もしかしたら、旅の途中だったのかもしれない。
それを、あんまり俺が情けないから、せめて歩くキノコくらい倒せるようになるまでは留まって、面倒見てくれてたのかも。
そういえば、あの人の名前も、職業も知らないことに気づいた。
また会えると思ってたから。
全身鎧にマント、腰に剣を装備してたし。たぶん、職業は剣士か騎士だろう。
鎧なのに、音も無く移動してたから、忍者かも。なんてな。
お別れの言葉くらい、覚えておけばよかった。もし、言われてたとしても、わからなかったから。
またどこかで会えるといいけど。
それには、一人で旅立てるほど強くならなくちゃいけない。
*****
歩くキノコはもう食べ飽きた、と。
いい加減うんざりした様子の村人に言われて。
次は、レベルアップして”這い寄るキノコ”にチャレンジしてみた。
村の近くの森には、キノコくらいしか倒せる敵がいないのだ。
回復の薬草だって安いものじゃないし。凄まじく苦いし。そうそう無茶な真似はできない。
這い寄るキノコを発見して。
とりあえず、棍棒で思いっきり殴ったらオーバーキルだったようで、破裂してしまった。
力加減が難しい。
2.3個叩いている内に手加減を覚え、ほぼ無傷で狩ることができた。
売る場合は、傷が少ないほうが高く売れるからな。
這い寄るキノコはわりと美味しいらしく、しばらくの間は好評だった。
そうして、様々なキノコ狩りをしつつ。
レベルをじわじわ上げていって。
ついに今日。
全てのキノコを倒し、キノコマスターになった訳だ。やったぜ。
旅の魔法使いは、レベルアップしたらファンファーレでわかるようにしてくれたようなんだけど。
ついでに言葉もわかるようにしてほしかったな……。
キノコマスターになってわかったことがあった。
黒衣のイケメンと初めて会った時、ひょいと気軽に寄越してくれたあのキノコ。
小さいのに物凄く素早くて強い、高レベルの稀少キノコ、”チャンピニョン”だったんだ。
あのイケメン、相当強い剣士か騎士だったんだな。
さっと行ってあれを狩って、さっと戻って来たんだから。
腰の剣も高級そうで、切れ味も良さそうだったっけ。
あれくらいの装備があれば、俺ももうちょっとはなあ、と、無いものねだりをしてもしょうがないので。
日々地道にキノコを狩るのだった。
*****
キノコを倒しまくり。
村に入れる生活費から余った金で、剣を買った。
それと、急所を覆うプレートアーマー。薬草も少々。
安物だが、剣の切れ味はそこそこだ。
これからは、剣の練習もしなくちゃ。
せめて剣道部とかならまだ良かったんだろうが。俺、背が高いからって勧誘されたバレーボール部では顔面ブロッカーだったし。頭もよくないし。
その辺に転がってるような、いたって普通の男子高校生だっていうのに。
何でこんな俺が勇者なんかに選ばれたんだ? って未だに疑問だ。
人選ミスじゃね?
早く、元の世界に帰りたいよ。
胞子のせいで、目がかすんでいたのに。その姿は何故か、くっきりと見えた。
金色の髪に、蒼い目。色白で、彫像みたいに整った顔立ち。黒い、騎士みたいな全身鎧を身に着けていて。黒いマントを羽織っていた。腰には剣。
イケメンは、俺を見て。驚いたように、目を見開いていた。……と思ったら、さっといなくなって。
またすぐに戻って来た。
たまたま通りかかったところで、胞子を浴びて全身胞子まみれ上、涙で顔面ぐしゃぐしゃ、キノコもぐしゃぐしゃ、という悲惨な状態だった俺を、見るに見かねたのかもしれない。
どこからかキノコを持って来て、渡してくれたのだ。
これを持っていけ、って感じで、微笑みながら頭を撫でられたので、たぶん小さい子供だと思われたのだろう。
実際、この世界では俺の身長は小学校低学年の子供並みのようだし。
そのキノコは、かなり稀少なものだったらしく。
その晩は、村人も大喜びで迎えてくれた。
*****
次の日になって。再びキノコ狩りにチャレンジしようと森へ行った。
そしたら、黒衣のイケメンが現れて。俺に、にこっと微笑みかけた。
美形の笑みは、男でもドキッとしてしまうのだと知った。危うく別の世界の扉が開くところだったぜ。今異世界にいるんだけど。
にこやかに俺に何か言ったけど。さっぱりわからなかった。
困って、首を傾げてみせたら、俺が言葉がわからないことを察してくれたようだ。
それからしばらく、イケメンは身振り手振りで、俺に歩くキノコの倒し方を教えてくれた。
後ろで見守ってくれて。
うっかりレベルの高いやつに手を出してしまって危ない時は、フォローもしてくれた。
ネトゲとかでよくある、初心者を育てるのが趣味な人か、それとも子供だと思って親切にしてくれているのか?
何でここまで親切にしてくれるのか、疑問だったが。正直、ありがたかった。
異世界で初めて、人の優しさに触れた感じだ。ぶっちゃけ理不尽な扱いされててやさぐれてたし。
でも、歩くキノコくらいなら余裕で倒せるようになった頃。
イケメンは、姿を見せなくなってしまった。
荷物は持ってなかったから、てっきり近所に住んでる人だろうと思ってたけど。
もしかしたら、旅の途中だったのかもしれない。
それを、あんまり俺が情けないから、せめて歩くキノコくらい倒せるようになるまでは留まって、面倒見てくれてたのかも。
そういえば、あの人の名前も、職業も知らないことに気づいた。
また会えると思ってたから。
全身鎧にマント、腰に剣を装備してたし。たぶん、職業は剣士か騎士だろう。
鎧なのに、音も無く移動してたから、忍者かも。なんてな。
お別れの言葉くらい、覚えておけばよかった。もし、言われてたとしても、わからなかったから。
またどこかで会えるといいけど。
それには、一人で旅立てるほど強くならなくちゃいけない。
*****
歩くキノコはもう食べ飽きた、と。
いい加減うんざりした様子の村人に言われて。
次は、レベルアップして”這い寄るキノコ”にチャレンジしてみた。
村の近くの森には、キノコくらいしか倒せる敵がいないのだ。
回復の薬草だって安いものじゃないし。凄まじく苦いし。そうそう無茶な真似はできない。
這い寄るキノコを発見して。
とりあえず、棍棒で思いっきり殴ったらオーバーキルだったようで、破裂してしまった。
力加減が難しい。
2.3個叩いている内に手加減を覚え、ほぼ無傷で狩ることができた。
売る場合は、傷が少ないほうが高く売れるからな。
這い寄るキノコはわりと美味しいらしく、しばらくの間は好評だった。
そうして、様々なキノコ狩りをしつつ。
レベルをじわじわ上げていって。
ついに今日。
全てのキノコを倒し、キノコマスターになった訳だ。やったぜ。
旅の魔法使いは、レベルアップしたらファンファーレでわかるようにしてくれたようなんだけど。
ついでに言葉もわかるようにしてほしかったな……。
キノコマスターになってわかったことがあった。
黒衣のイケメンと初めて会った時、ひょいと気軽に寄越してくれたあのキノコ。
小さいのに物凄く素早くて強い、高レベルの稀少キノコ、”チャンピニョン”だったんだ。
あのイケメン、相当強い剣士か騎士だったんだな。
さっと行ってあれを狩って、さっと戻って来たんだから。
腰の剣も高級そうで、切れ味も良さそうだったっけ。
あれくらいの装備があれば、俺ももうちょっとはなあ、と、無いものねだりをしてもしょうがないので。
日々地道にキノコを狩るのだった。
*****
キノコを倒しまくり。
村に入れる生活費から余った金で、剣を買った。
それと、急所を覆うプレートアーマー。薬草も少々。
安物だが、剣の切れ味はそこそこだ。
これからは、剣の練習もしなくちゃ。
せめて剣道部とかならまだ良かったんだろうが。俺、背が高いからって勧誘されたバレーボール部では顔面ブロッカーだったし。頭もよくないし。
その辺に転がってるような、いたって普通の男子高校生だっていうのに。
何でこんな俺が勇者なんかに選ばれたんだ? って未だに疑問だ。
人選ミスじゃね?
早く、元の世界に帰りたいよ。
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