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J・J
ツガイと収穫
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「玉ねぎやミカンの皮も薬になるんだよ。あと、皮と実の間が一番栄養があるっていうね」
「丸ごと食べるが?」
それなら栄養も多く摂取できるものと思ったが。
「青い梅の種とかには毒があるから、種ごと食べるのはやめといたほうがいいよ……」
さすが、専門だけあって詳しいものだ。
これまで青い実は口にしたことがなかった。本能で危険を察知していたのかもしれない。
やけに食用茸などを多く採取していると思ったら、病人に食べさせるための食事も考えているという。
栄養をとって暖かくし、安静にしているのが一番だそうだ。
カンポウ薬、という薬は代謝を上げ、回復の手助けをする程度のものらしい。
長く服用しなければいけないが、副作用も少ないと。
よく効く薬には、それだけ副作用も強いものが多いようだ。
魔法も、万能ではない。
死人は蘇らないし、あまりに深い傷は完治しない。
薬は魔力も消費しないようだし、併用してうまく使えば便利になるだろう。
†‡†‡†
「こんなものも食べられるなんて、知らなかった……」
その辺に生えているような雑草なども、食用可だと言われ。
パーシーは二度見している。
「草食動物が食べているのなら見たことがあるが……」
これを、ヒトも食べるというのか?
ただの葉っぱだぞ?
「あ、これは生でも食べられるよ、はい」
ステビアという植物の葉を差し出され、食べてみる。
甘かった。
「甘い? 砂糖の何百倍も甘いハーブだよ。食べ過ぎるのは身体に悪いけど」
クロエの唇のほうが甘い、と思ったが。
口に出したら、実際に味わいたくなってしまう。
ここでヒトの姿になると全裸になる。俺は構わないが、クロエが恥ずかしい思いをするだろう。
言葉とステビアの葉を呑み込んだ。
毒草やカンポウ薬に使う薬草とやらも、クロエがその効能などを説明しながら採取していく。
この小さな頭に、どれだけ膨大な知識が詰まっているのかと感心する。
この知識量には、さすがにパーシーも敬意を持ったようだ。
喜んで使い走りをしている。
「試作には、これくらいでいいかな?」
いくつか持って来た籠いっぱいに収穫物が詰まっている。
「まだ持てるが」
背中に乗せれば、もう少し運べるだろう。
「……そろそろお腹すかない?」
パーシーの情けない声と共に腹の虫が響き。
この辺りで昼食を摂ることにした。
†‡†‡†
近くに居た鳥を呼び。
クロエに頼まれていたことを言う。
『どこか様子のおかしいものや、具合の悪いものが居たら、すぐに治してやるから俺のところに来るよう、森の皆に報せろ。今は城の辺りに居る』
ちょうど爪が剥がれて痛がっていた鳥が居たので、治した。
そうすると、我も我もと寄ってくる。
軽傷だろうが、皆治してやると。
鳥達は感謝し、何か異常があればすぐに報告する、と言って飛び立った。
「専門だっていうだけあって、すごい生き生きとしてたねー。……あ、これ美味い」
パーシーはハンバーガーというものを食べ、ご満悦だ。
丸いパンにハンバーグという、挽肉をこねて焼いたものを挟んだ料理をハンバーガーというらしい。
サンドイッチと何が違うのだろうか。形か。
揚げたポム・ド・テールはフライドポテトというのか。
美味そうだ。
俺も食事をしよう。
「具合の悪い奴はすぐに俺に言うよう、皆に報せてくれるそうだ」
「ありがとう」
どうやら鳥由来の病気があり、それは渡り鳥が媒介することが多いという。
鳥は、移動範囲も広い。
二番目に警戒すべき生き物が鳥だとクロエは言った。
熊の姿のままでクロエの傍に行き、口を開けると。
口の中にハンバーガーを入れてくれた。
ふむ。
サンドイッチとは違う食感だ。噛むと肉汁が溢れる。
「美味い」
「もふもふだー」
クロエは俺の毛皮を撫でている。気に入ってもらえたようで嬉しい。
鼻の頭を撫でられ、つい喉を鳴らしてしまった。
その音に驚いて、クロエは目を瞬かせているようだ。愛らしい。
†‡†‡†
「で、鳥よりも伝染病を警戒するべき生き物って何? 鼠?」
パーシーが身を乗り出す。
ああ、先程の話か。
警戒すべき生き物、とかいったか?
野犬も危険だが。鼠や蝙蝠だろうか?
クロエはパーシーを振り返り。
「蚊だよ。蚊」
「ムスティックゥ?」
「鼠もペストなど、病原菌を媒介するけど。一番伝染病を警戒すべきは、蚊なんだ。血を媒介して感染させるし空を飛ぶし、繁殖力も高い。マラリアやデング熱、ニホン脳炎などが有名かなあ」
ペストやマラリアなど、聞き覚えのない言葉は、向こうの有名な病気の名だそうだ。
ニホンは、クロエの居た国の名だという。
クロエはそんな危険な病気が蔓延している世界に住んでいたのか?
幸い、こちらにはそれは無いが。
いや、今まで存在を知られてないだけで、あったのか?
「蚊は世界で一番人間を殺した生き物でもあるんだよ」
なるほど、血を吸われる時に病気で伝染されるのだろう。
しかし、獣人は皮膚が分厚いし固いからか、ヒトの姿であってもムスティックに刺された事は無い。
念のため、とクロエは虫除けのハーブなどを採取していた。
「今日はもうこれで十分だよ」
収穫物を前に、クロエは満足そうだ。
「おお、いっぱい収穫できたね!」
「じゃあ戻るか」
荷物と二人を背に乗せ、夜の森の入り口まで戻った。
ヒトの姿になり、服を着る。
クロエはいつも俺の身体をじっと見ているが。
その視線は、欲望ではなく、憧れのようだ。
俺のような肉体が羨ましいようだが。
俺としては今の、腕の中にすっぽりと納まる愛らしい身体が好きなので、クロエが25歳にしてそんな身体であって嬉しいと思う。
「丸ごと食べるが?」
それなら栄養も多く摂取できるものと思ったが。
「青い梅の種とかには毒があるから、種ごと食べるのはやめといたほうがいいよ……」
さすが、専門だけあって詳しいものだ。
これまで青い実は口にしたことがなかった。本能で危険を察知していたのかもしれない。
やけに食用茸などを多く採取していると思ったら、病人に食べさせるための食事も考えているという。
栄養をとって暖かくし、安静にしているのが一番だそうだ。
カンポウ薬、という薬は代謝を上げ、回復の手助けをする程度のものらしい。
長く服用しなければいけないが、副作用も少ないと。
よく効く薬には、それだけ副作用も強いものが多いようだ。
魔法も、万能ではない。
死人は蘇らないし、あまりに深い傷は完治しない。
薬は魔力も消費しないようだし、併用してうまく使えば便利になるだろう。
†‡†‡†
「こんなものも食べられるなんて、知らなかった……」
その辺に生えているような雑草なども、食用可だと言われ。
パーシーは二度見している。
「草食動物が食べているのなら見たことがあるが……」
これを、ヒトも食べるというのか?
ただの葉っぱだぞ?
「あ、これは生でも食べられるよ、はい」
ステビアという植物の葉を差し出され、食べてみる。
甘かった。
「甘い? 砂糖の何百倍も甘いハーブだよ。食べ過ぎるのは身体に悪いけど」
クロエの唇のほうが甘い、と思ったが。
口に出したら、実際に味わいたくなってしまう。
ここでヒトの姿になると全裸になる。俺は構わないが、クロエが恥ずかしい思いをするだろう。
言葉とステビアの葉を呑み込んだ。
毒草やカンポウ薬に使う薬草とやらも、クロエがその効能などを説明しながら採取していく。
この小さな頭に、どれだけ膨大な知識が詰まっているのかと感心する。
この知識量には、さすがにパーシーも敬意を持ったようだ。
喜んで使い走りをしている。
「試作には、これくらいでいいかな?」
いくつか持って来た籠いっぱいに収穫物が詰まっている。
「まだ持てるが」
背中に乗せれば、もう少し運べるだろう。
「……そろそろお腹すかない?」
パーシーの情けない声と共に腹の虫が響き。
この辺りで昼食を摂ることにした。
†‡†‡†
近くに居た鳥を呼び。
クロエに頼まれていたことを言う。
『どこか様子のおかしいものや、具合の悪いものが居たら、すぐに治してやるから俺のところに来るよう、森の皆に報せろ。今は城の辺りに居る』
ちょうど爪が剥がれて痛がっていた鳥が居たので、治した。
そうすると、我も我もと寄ってくる。
軽傷だろうが、皆治してやると。
鳥達は感謝し、何か異常があればすぐに報告する、と言って飛び立った。
「専門だっていうだけあって、すごい生き生きとしてたねー。……あ、これ美味い」
パーシーはハンバーガーというものを食べ、ご満悦だ。
丸いパンにハンバーグという、挽肉をこねて焼いたものを挟んだ料理をハンバーガーというらしい。
サンドイッチと何が違うのだろうか。形か。
揚げたポム・ド・テールはフライドポテトというのか。
美味そうだ。
俺も食事をしよう。
「具合の悪い奴はすぐに俺に言うよう、皆に報せてくれるそうだ」
「ありがとう」
どうやら鳥由来の病気があり、それは渡り鳥が媒介することが多いという。
鳥は、移動範囲も広い。
二番目に警戒すべき生き物が鳥だとクロエは言った。
熊の姿のままでクロエの傍に行き、口を開けると。
口の中にハンバーガーを入れてくれた。
ふむ。
サンドイッチとは違う食感だ。噛むと肉汁が溢れる。
「美味い」
「もふもふだー」
クロエは俺の毛皮を撫でている。気に入ってもらえたようで嬉しい。
鼻の頭を撫でられ、つい喉を鳴らしてしまった。
その音に驚いて、クロエは目を瞬かせているようだ。愛らしい。
†‡†‡†
「で、鳥よりも伝染病を警戒するべき生き物って何? 鼠?」
パーシーが身を乗り出す。
ああ、先程の話か。
警戒すべき生き物、とかいったか?
野犬も危険だが。鼠や蝙蝠だろうか?
クロエはパーシーを振り返り。
「蚊だよ。蚊」
「ムスティックゥ?」
「鼠もペストなど、病原菌を媒介するけど。一番伝染病を警戒すべきは、蚊なんだ。血を媒介して感染させるし空を飛ぶし、繁殖力も高い。マラリアやデング熱、ニホン脳炎などが有名かなあ」
ペストやマラリアなど、聞き覚えのない言葉は、向こうの有名な病気の名だそうだ。
ニホンは、クロエの居た国の名だという。
クロエはそんな危険な病気が蔓延している世界に住んでいたのか?
幸い、こちらにはそれは無いが。
いや、今まで存在を知られてないだけで、あったのか?
「蚊は世界で一番人間を殺した生き物でもあるんだよ」
なるほど、血を吸われる時に病気で伝染されるのだろう。
しかし、獣人は皮膚が分厚いし固いからか、ヒトの姿であってもムスティックに刺された事は無い。
念のため、とクロエは虫除けのハーブなどを採取していた。
「今日はもうこれで十分だよ」
収穫物を前に、クロエは満足そうだ。
「おお、いっぱい収穫できたね!」
「じゃあ戻るか」
荷物と二人を背に乗せ、夜の森の入り口まで戻った。
ヒトの姿になり、服を着る。
クロエはいつも俺の身体をじっと見ているが。
その視線は、欲望ではなく、憧れのようだ。
俺のような肉体が羨ましいようだが。
俺としては今の、腕の中にすっぽりと納まる愛らしい身体が好きなので、クロエが25歳にしてそんな身体であって嬉しいと思う。
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