35 / 74
リヒト
甘い夜が始まる
しおりを挟む
『アンリ兄様、クロエを独り占めするなんてずるいです』
アンリと話し込んでいたら、メイベルが腕にしがみついてきた。
拗ねてふくれた顔も可愛らしい。
『メル、クロエは自分の知識をこの国のために役立てたいと思って話しているのだぞ。ありがたいと思いこそすれ、我儘を言って水を差してはいけない』
ルロイ王に注意されて、しゅんとしてる。
「メイベル、こっちの料理やお菓子の話をしてくれないかな? 他にも思い出せるかも」
と言うと。
花がほころぶような笑顔を向けた。
『喜んで! じゃあ、アンリ兄様も来てください。記録係ね!』
アンリの手も引いて。
並んで椅子に座る。
まだまだ子供だな、とルロイ王は言ってるけど。
メイベルも、国のためを思って、頑張ってると思うよ。
子供でいられるのは今のうちだけだし。
もう少し、甘えてもいいんじゃないかな。
外国にお嫁に行く、来年まで。
†‡†‡†
パイとタルトはあるけど、甘くはないのか。
タルトの生地はキッシュに使うとか。
料理長の作ったウサギのミートパイは絶品? それは是非食べてみたい。
今度差し入れてくれるって? 楽しみだ。
「魚のパイ包み焼きも良いけど、アップルパイも美味しいよ」
パイのつぼ焼きとかもいい。
魚は、塩釜焼きとかもあったな。
遠赤外線効果でふっくら焼けて、いい感じに塩味も染みて、美味しくなる。
『どれも美味しそう!』
『フルーツタルトというのも興味深い』
気付けば、周りにみんな集まって話を聞いている状況だった。
聞いてるだけでよだれが出そうとか言ってる。
料理もあらかた食べ尽くした感じだ。
食べきれないような量だったのに。獣人の胃袋ってすごい。
『そろそろ、俺のツガイを返して欲しいんだが?』
声に振り向けば。
ジャンは僕の背後に立っていた。
この中で一番の巨体なのに、音もなく移動するのはやめて欲しい。
驚くじゃないか。
『……今日は、約束の日だからな』
その言葉に、頬がカッと熱くなった。
そうだった。
とりあえず、ドニが退院したらって。
じゃあ、今夜は。
†‡†‡†
『約束って?』
小首を傾げたメイベルに。
『騒動がひと段落ついたら、名実共に夫婦になる、と約束した』
何で正直に言っちゃうかな!?
『え、お前、まだヤってなかったのかよ!?』
パーシヴァルが叫んだ。
ジャンですら、子供の耳もあるからはっきり言わなかったのに!
それで、どういう意味かを理解したみんなは。
笑っていいのかどう反応していいのか、といった微妙な顔をした。
うっかり訊いてしまったメイベルは、真っ赤になってる。
『で、では私たちは村に帰りますので。お世話になりました!』
唯一わかってないドニの手を引いて。
ドニの両親は慌てて退出し。
『ルイにベルナール、今日は城に泊まって行くがよかろう』
ルロイ王は妙な気の使い方をして。
『は、はい!』
『お言葉に甘えさせていただきます!』
二人はそれに追従した。
アンリは強張った顔で。
動揺しているのか、メモにひたすら謎の線を描いているし。
『後はいいから、もう家に帰ってゆっくり休むといいよ』
デュランは声が完全に笑っていた。
『では、失礼する』
ジャンは僕をひょいと抱き上げて。
悠々と食堂を出たのだった。
†‡†‡†
僕たちこれからエッチなことしまーす! って宣言したようなものじゃないか。
ような、じゃない。
間違いなく、宣言した。
うわあ。
恥ずかしすぎる……!!
『ロイも気が利く。記念すべきこの夜を、二人きりにしてくれるとはな』
ジャンは上機嫌だ。
ずっと我慢させてた訳だし。
実際に嬉しいんだろう。笑みを浮かべている。
でも僕は、今日がいわゆる初夜だって暴露された挙句に。
抱き上げられたまま城から家まで連れてかれて。
むちゃくちゃ恥ずかしいんですけど!!
玄関から中に入るなり。
もう我慢も限界、といった様子でキスをされた。
「んん、」
雰囲気からして、この場で押し倒されかねない、と怖くなった。
いくら今日は家に誰も居ないからって。
こんな場所じゃいやだ、とジャンの腕を叩く。
「……は、」
名残惜しげに唇が離れて。
額にキスをされる。
階段を段飛ばしする勢いで上っていく。
と思ったら、もう寝室に着いていた。早い。
†‡†‡†
ベッドにそっと寝かされて。
ジャンはむしり取るように自分の服を脱いで、あっという間に全裸になった。
ベッドに乗り上げると。
僕の服は、丁寧に脱がしていく。
今すぐにでも、抱きたいんだろう。
相当興奮しているのは、下半身を見ればわかる。
なのに、手つきはあくまでも優しくて。
愛されてるんだな、と感じられて。
嬉しくなる。
目が合って。
またキスをされて。
じっと見つめられて、目を閉じる。
最初の時の、やり直しだとわかる。
あの時は、訳もわからずにいたけど。今は違う。
僕も、わかった上で、目を閉じたんだ。
ジャンは僕の首筋に、軽く歯を立てた。
途端に背筋を駆け抜けていく、不思議な感覚。
怖気とは違う。痛みとも違う。
これは、何だろう。
『見た目は幼いが。成熟した、甘い果実のような匂いがした』
首や鎖骨に舌を這わされる。
何だかおかしい。
今までとは、何か違う感じだ。
「は、……あ、」
触れられる前から、胸の先が固くなってる。
まさか、もう感じてるのか? まだ、キスされたくらいなのに。
『今は更に、全身から芳香を放っているようだ。……狂おしいほど、甘い』
それって。
ツガイを誘惑するフェロモン?
アンリと話し込んでいたら、メイベルが腕にしがみついてきた。
拗ねてふくれた顔も可愛らしい。
『メル、クロエは自分の知識をこの国のために役立てたいと思って話しているのだぞ。ありがたいと思いこそすれ、我儘を言って水を差してはいけない』
ルロイ王に注意されて、しゅんとしてる。
「メイベル、こっちの料理やお菓子の話をしてくれないかな? 他にも思い出せるかも」
と言うと。
花がほころぶような笑顔を向けた。
『喜んで! じゃあ、アンリ兄様も来てください。記録係ね!』
アンリの手も引いて。
並んで椅子に座る。
まだまだ子供だな、とルロイ王は言ってるけど。
メイベルも、国のためを思って、頑張ってると思うよ。
子供でいられるのは今のうちだけだし。
もう少し、甘えてもいいんじゃないかな。
外国にお嫁に行く、来年まで。
†‡†‡†
パイとタルトはあるけど、甘くはないのか。
タルトの生地はキッシュに使うとか。
料理長の作ったウサギのミートパイは絶品? それは是非食べてみたい。
今度差し入れてくれるって? 楽しみだ。
「魚のパイ包み焼きも良いけど、アップルパイも美味しいよ」
パイのつぼ焼きとかもいい。
魚は、塩釜焼きとかもあったな。
遠赤外線効果でふっくら焼けて、いい感じに塩味も染みて、美味しくなる。
『どれも美味しそう!』
『フルーツタルトというのも興味深い』
気付けば、周りにみんな集まって話を聞いている状況だった。
聞いてるだけでよだれが出そうとか言ってる。
料理もあらかた食べ尽くした感じだ。
食べきれないような量だったのに。獣人の胃袋ってすごい。
『そろそろ、俺のツガイを返して欲しいんだが?』
声に振り向けば。
ジャンは僕の背後に立っていた。
この中で一番の巨体なのに、音もなく移動するのはやめて欲しい。
驚くじゃないか。
『……今日は、約束の日だからな』
その言葉に、頬がカッと熱くなった。
そうだった。
とりあえず、ドニが退院したらって。
じゃあ、今夜は。
†‡†‡†
『約束って?』
小首を傾げたメイベルに。
『騒動がひと段落ついたら、名実共に夫婦になる、と約束した』
何で正直に言っちゃうかな!?
『え、お前、まだヤってなかったのかよ!?』
パーシヴァルが叫んだ。
ジャンですら、子供の耳もあるからはっきり言わなかったのに!
それで、どういう意味かを理解したみんなは。
笑っていいのかどう反応していいのか、といった微妙な顔をした。
うっかり訊いてしまったメイベルは、真っ赤になってる。
『で、では私たちは村に帰りますので。お世話になりました!』
唯一わかってないドニの手を引いて。
ドニの両親は慌てて退出し。
『ルイにベルナール、今日は城に泊まって行くがよかろう』
ルロイ王は妙な気の使い方をして。
『は、はい!』
『お言葉に甘えさせていただきます!』
二人はそれに追従した。
アンリは強張った顔で。
動揺しているのか、メモにひたすら謎の線を描いているし。
『後はいいから、もう家に帰ってゆっくり休むといいよ』
デュランは声が完全に笑っていた。
『では、失礼する』
ジャンは僕をひょいと抱き上げて。
悠々と食堂を出たのだった。
†‡†‡†
僕たちこれからエッチなことしまーす! って宣言したようなものじゃないか。
ような、じゃない。
間違いなく、宣言した。
うわあ。
恥ずかしすぎる……!!
『ロイも気が利く。記念すべきこの夜を、二人きりにしてくれるとはな』
ジャンは上機嫌だ。
ずっと我慢させてた訳だし。
実際に嬉しいんだろう。笑みを浮かべている。
でも僕は、今日がいわゆる初夜だって暴露された挙句に。
抱き上げられたまま城から家まで連れてかれて。
むちゃくちゃ恥ずかしいんですけど!!
玄関から中に入るなり。
もう我慢も限界、といった様子でキスをされた。
「んん、」
雰囲気からして、この場で押し倒されかねない、と怖くなった。
いくら今日は家に誰も居ないからって。
こんな場所じゃいやだ、とジャンの腕を叩く。
「……は、」
名残惜しげに唇が離れて。
額にキスをされる。
階段を段飛ばしする勢いで上っていく。
と思ったら、もう寝室に着いていた。早い。
†‡†‡†
ベッドにそっと寝かされて。
ジャンはむしり取るように自分の服を脱いで、あっという間に全裸になった。
ベッドに乗り上げると。
僕の服は、丁寧に脱がしていく。
今すぐにでも、抱きたいんだろう。
相当興奮しているのは、下半身を見ればわかる。
なのに、手つきはあくまでも優しくて。
愛されてるんだな、と感じられて。
嬉しくなる。
目が合って。
またキスをされて。
じっと見つめられて、目を閉じる。
最初の時の、やり直しだとわかる。
あの時は、訳もわからずにいたけど。今は違う。
僕も、わかった上で、目を閉じたんだ。
ジャンは僕の首筋に、軽く歯を立てた。
途端に背筋を駆け抜けていく、不思議な感覚。
怖気とは違う。痛みとも違う。
これは、何だろう。
『見た目は幼いが。成熟した、甘い果実のような匂いがした』
首や鎖骨に舌を這わされる。
何だかおかしい。
今までとは、何か違う感じだ。
「は、……あ、」
触れられる前から、胸の先が固くなってる。
まさか、もう感じてるのか? まだ、キスされたくらいなのに。
『今は更に、全身から芳香を放っているようだ。……狂おしいほど、甘い』
それって。
ツガイを誘惑するフェロモン?
0
お気に入りに追加
757
あなたにおすすめの小説
【R18】満たされぬ俺の番はイケメン獣人だった
佐伯亜美
BL
この世界は獣人と人間が共生している。
それ以外は現実と大きな違いがない世界の片隅で起きたラブストーリー。
その見た目から女性に不自由することのない人生を歩んできた俺は、今日も満たされぬ心を埋めようと行きずりの恋に身を投じていた。
その帰り道、今月から部下となったイケメン狼族のシモンと出会う。
「なんで……嘘つくんですか?」
今まで誰にも話したことの無い俺の秘密を見透かしたように言うシモンと、俺は身体を重ねることになった。
ぼくは男なのにイケメンの獣人から愛されてヤバい!!【完結】
ぬこまる
BL
竜の獣人はスパダリの超絶イケメン!主人公は女の子と間違うほどの美少年。この物語は勘違いから始まるBLです。2人の視点が交互に読めてハラハラドキドキ!面白いと思います。ぜひご覧くださいませ。感想お待ちしております。
僕を拾ってくれたのはイケメン社長さんでした
なの
BL
社長になって1年、父の葬儀でその少年に出会った。
「あんたのせいよ。あんたさえいなかったら、あの人は死なずに済んだのに…」
高校にも通わせてもらえず、実母の恋人にいいように身体を弄ばれていたことを知った。
そんな理不尽なことがあっていいのか、人は誰でも幸せになる権利があるのに…
その少年は昔、誰よりも可愛がってた犬に似ていた。
ついその犬を思い出してしまい、その少年を幸せにしたいと思うようになった。
かわいそうな人生を送ってきた少年とイケメン社長が出会い、恋に落ちるまで…
ハッピーエンドです。
R18の場面には※をつけます。
異世界転移して美形になったら危険な男とハジメテしちゃいました
ノルジャン
BL
俺はおっさん神に異世界に転移させてもらった。異世界で「イケメンでモテて勝ち組の人生」が送りたい!という願いを叶えてもらったはずなのだけれど……。これってちゃんと叶えて貰えてるのか?美形になったけど男にしかモテないし、勝ち組人生って結局どんなん?めちゃくちゃ危険な香りのする男にバーでナンパされて、ついていっちゃってころっと惚れちゃう俺の話。危険な男×美形(元平凡)※ムーンライトノベルズにも掲載
【R-18】僕のえっちな狼さん
衣草 薫
BL
内気で太っちょの僕が転生したのは豚人だらけの世界。
こっちでは僕みたいなデブがモテて、すらりと背の高いイケメンのシャンはみんなから疎まれていた。
お互いを理想の美男子だと思った僕らは村はずれのシャンの小屋で一緒に暮らすことに。
優しくて純情な彼とのスローライフを満喫するのだが……豚人にしてはやけにハンサムなシャンには実は秘密があって、暗がりで満月を連想するものを見ると人がいや獣が変わったように乱暴になって僕を押し倒し……。
R-18には※をつけています。
俺の顔が美しすぎるので異世界の森でオオカミとクマから貞操を狙われて困る。
篠崎笙
BL
山中深月は美しすぎる高校生。いきなり異世界に跳ばされ、オオカミとクマ、2人の獣人から求婚され、自分の子を産めと要求されるが……
※ハッピーエンドではありません。
※攻2人と最後までしますが3Pはなし。
※妊娠・出産(卵)しますが、詳細な描写はありません。
インバーション・カース 〜異世界へ飛ばされた僕が獣人彼氏に堕ちるまでの話〜
月咲やまな
BL
ルプス王国に、王子として“孕み子(繁栄を内に孕む者)”と呼ばれる者が産まれた。孕み子は内に秘めた強大な魔力と、大いなる者からの祝福をもって国に繁栄をもたらす事が約束されている。だがその者は、同時に呪われてもいた。
呪いを克服しなければ、繁栄は訪れない。
呪いを封じ込める事が出来る者は、この世界には居ない。そう、この世界には——
アルバイトの帰り道。九十九柊也(つくもとうや)は公園でキツネみたいな姿をしたおかしな生き物を拾った。「腹が減ったから何か寄越せ」とせっつかれ、家まで連れて行き、食べ物をあげたらあげたで今度は「お礼をしてあげる」と、柊也は望まずして異世界へ飛ばされてしまった。
「無理です!能無しの僕に世界なんか救えませんって!ゲームじゃあるまいし!」
言いたい事は山の様にあれども、柊也はルプス王国の領土内にある森で助けてくれた狐耳の生えた獣人・ルナールという青年と共に、逢った事も無い王子の呪いを解除する為、時々モブキャラ化しながらも奔走することとなるのだった。
○獣耳ありお兄さんと、異世界転移者のお話です。
○執着系・体格差・BL作品
【R18】作品ですのでご注意下さい。
【関連作品】
『古書店の精霊』
【第7回BL小説大賞:397位】
※2019/11/10にタイトルを『インバーション・カース』から変更しました。
【完結済】(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。
キノア9g
BL
完結済。騎士エリオット視点を含め全10話(エリオット視点2話と主人公視点8話構成)
エロなし。騎士×妖精
※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。
気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。
木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。
色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。
ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。
捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。
彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。
少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──?
いいねありがとうございます!励みになります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる