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リヒト
プリマット国王との会談
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馬車から見えるのは、牧歌的な田園風景だけど。
城下町を歩く人々にも、あまり活気が見られない気がする。
壊れたままの商店もあった。
戦争があったのは、もう5年くらい前だっけ?
なのに。
まだ、戦争が終わったばかりみたいな風景だ。
†‡†‡†
お城に着いて。
王様は王座から立ち上がって、僕たちに握手を求めてきた。
『よく来てくれた。そして、我が国民を救済してくれたことに感謝する。私はジェローム・クリストフ・ベイロン。ここ、プリマット国の王だ』
「はじめまして。僕は黒江理人、これでも25歳。グラン・テール王国の医者です」
『なんと。いや、それでもまだ若いというのに、素晴らしい腕だ』
力強い手。
プリマット国王は、金髪で緑の目をした偉丈夫だった。
年齢は40くらいかな?
ということは。
戦争経験者というか、ルロイ王との平和条約を締結した王様、本人だ。
「ジャン=ジャック・フォスター 。グラン・テール王国の森林管理人兼医療助手で、クロエのツガイだ」
『ああ、君が”旋風の”J・Jか。噂は聞いているが、噂より男前だな』
国王は苦笑いでジャンと握手をしている。
どんな噂だろう。
旋風って?
ルロイ王からの手紙には、詳しいことまでは書かれてなかったようなので。
とりあえず、グラン・テール国どころか世界が滅びるかもしれない災害が訪れる、と占いで出て。
自分はそれを防ぐために召喚された異世界人だと説明した。
それにはプリマット国王も驚いていた。
この国のお抱え魔法使いには、占いの得意な人はいなかったようだ。
更に占いをしてみたところ、それが伝染病であることを知って。
自分には伝染病についての知識があったので、診療所を作って対策をしていた。
そこに、ボール村からグラン・テール国の森に迷い込んだ子供が運び込まれた。
その病原菌が発生した原因は、獣姦によるものと思われること。
患者や看病をする人が気を付けて、ウイルスをまき散らさないように対策すれば、感染の危険は極めて少ないこと。
罹ったら下手に熱を下げようとせず、安静にして、栄養をとらせて経過を見る。
抗体を持った人がいれば、その人の血液からワクチンを作り、ワクチンを打つなどの処置を施すよう、話した。
†‡†‡†
「今回の原因はそれでしたが。再びそのようなことがあれば、新たなウイルスが発生する可能性もあるので。そちらでも注意していただければ……」
ぼかしたのに。
『その、獣姦を法で禁止しろと?』
ジェローム王は、ジャンをちらちら気にしながらも、ストレートに言った。
「ジャンは獣ではなく獣人なので。変な病原菌は持ってません……」
念のため、調べてみたし。
そして、謎の分泌物には大腸菌は含まれてなかった。
どういうマジックなんだ。
どうなっちゃったんだ僕の腸内細菌。
『ああ、失礼。どうも生態というか、完全に人間として扱っていいのかどうか、疎くてね』
まあ、どういう生き物なんだか悩むのは理解できる。
僕も線引きが難しいと思う。
ネコ科の獣人は、タウリンを摂らないと目が悪くなるようだった。
普通の犬はブドウを食べると腎臓を悪くするんだけど。イヌ科の獣人なのにブドウ食べても平気だったりするし。
”解析”の魔法が無ければ、もうお手上げ状態だった。
『構わない。俺はクロエが来るまではろくに服も身に着けず、獣と共に森に棲んでいた』
謝罪は不要だとジャンは言った。
面倒なので、ほぼクマ姿だったという。
道理で出会った時、野性味が溢れていたはずだよ……。
†‡†‡†
晩餐に招待されて。
長らく続いていた戦争がどう終結したのか話してくれた。
人間対獣人、人間対人間という国同士の戦争は、昔からちょくちょく起こっていたらしい。
プリマット国王ジェロームは、終わりが見えないし、国力や国民が疲弊するのでなるべく戦争を終わらせたいと思っていた。
でも、軍人たちはやる気満々だし。どうしようかと頭を悩ませていた。
そんな時。
突如、国王の寝室にやってきたのが、先王を亡くし、跡を継いだばかりだというグラン・テール王国のルロイ王。
寝室前だけでなく、城の内外には護衛の兵が多く居たのにもかかわらず。誰にも見咎められることなく夜の闇に紛れて侵入してきたそうだ。
自分は狼の血が強い。
その気になればいつでも国王や重鎮の寝首を掻くことが可能だが。
これ以上大切な国民の血を流したくないので、戦争をやめないか、と言ってきたという。
ジェローム王もそれに賛成し。
どうにか軍部を黙らせ、プリマット国とグラン・テール王国で平和条約を結んだのが5年前。
その後、ルロイ王は美姫として評判であった長女のシャルロット姫を嫁がせることでラヴィーヌ国と平和条約を結んだという。
次女も嫁がせて。
他の獣人の国にも単身で乗り込み、説得して。
新しく得た知識は独り占めせず、全ての国に共有することを決めて。
そうやって、長かった戦争が終わったという。
フットワーク軽いな! 王様なのに。
それじゃルロイ王って、国家間の戦争を終わらせた英雄じゃないか。
かっこいいけど。
その時のアンリの胃を心配してしまう。
眉間に皺が刻まれるはずだよ。
†‡†‡†
『戦争が終わったのはいいが。見てわかる通り、我が国はまだ復興途中だ。優秀な医者もあまり育たない。打つ手がなく、見殺しにする形になった村の者達にも申し訳ないと思っている』
復興の為のお金は国家予算から回すけど。
長年の戦争のせいで、その予算も微々たるもので。
兵士を辞めさせて人員削減すると見廻る者もがいなくなり、町が荒れる。
給料を減らせば仕事を真面目にしないし。
色々することがあって、王様も大変だ。
早く復興が進むといいな。
城下町を歩く人々にも、あまり活気が見られない気がする。
壊れたままの商店もあった。
戦争があったのは、もう5年くらい前だっけ?
なのに。
まだ、戦争が終わったばかりみたいな風景だ。
†‡†‡†
お城に着いて。
王様は王座から立ち上がって、僕たちに握手を求めてきた。
『よく来てくれた。そして、我が国民を救済してくれたことに感謝する。私はジェローム・クリストフ・ベイロン。ここ、プリマット国の王だ』
「はじめまして。僕は黒江理人、これでも25歳。グラン・テール王国の医者です」
『なんと。いや、それでもまだ若いというのに、素晴らしい腕だ』
力強い手。
プリマット国王は、金髪で緑の目をした偉丈夫だった。
年齢は40くらいかな?
ということは。
戦争経験者というか、ルロイ王との平和条約を締結した王様、本人だ。
「ジャン=ジャック・フォスター 。グラン・テール王国の森林管理人兼医療助手で、クロエのツガイだ」
『ああ、君が”旋風の”J・Jか。噂は聞いているが、噂より男前だな』
国王は苦笑いでジャンと握手をしている。
どんな噂だろう。
旋風って?
ルロイ王からの手紙には、詳しいことまでは書かれてなかったようなので。
とりあえず、グラン・テール国どころか世界が滅びるかもしれない災害が訪れる、と占いで出て。
自分はそれを防ぐために召喚された異世界人だと説明した。
それにはプリマット国王も驚いていた。
この国のお抱え魔法使いには、占いの得意な人はいなかったようだ。
更に占いをしてみたところ、それが伝染病であることを知って。
自分には伝染病についての知識があったので、診療所を作って対策をしていた。
そこに、ボール村からグラン・テール国の森に迷い込んだ子供が運び込まれた。
その病原菌が発生した原因は、獣姦によるものと思われること。
患者や看病をする人が気を付けて、ウイルスをまき散らさないように対策すれば、感染の危険は極めて少ないこと。
罹ったら下手に熱を下げようとせず、安静にして、栄養をとらせて経過を見る。
抗体を持った人がいれば、その人の血液からワクチンを作り、ワクチンを打つなどの処置を施すよう、話した。
†‡†‡†
「今回の原因はそれでしたが。再びそのようなことがあれば、新たなウイルスが発生する可能性もあるので。そちらでも注意していただければ……」
ぼかしたのに。
『その、獣姦を法で禁止しろと?』
ジェローム王は、ジャンをちらちら気にしながらも、ストレートに言った。
「ジャンは獣ではなく獣人なので。変な病原菌は持ってません……」
念のため、調べてみたし。
そして、謎の分泌物には大腸菌は含まれてなかった。
どういうマジックなんだ。
どうなっちゃったんだ僕の腸内細菌。
『ああ、失礼。どうも生態というか、完全に人間として扱っていいのかどうか、疎くてね』
まあ、どういう生き物なんだか悩むのは理解できる。
僕も線引きが難しいと思う。
ネコ科の獣人は、タウリンを摂らないと目が悪くなるようだった。
普通の犬はブドウを食べると腎臓を悪くするんだけど。イヌ科の獣人なのにブドウ食べても平気だったりするし。
”解析”の魔法が無ければ、もうお手上げ状態だった。
『構わない。俺はクロエが来るまではろくに服も身に着けず、獣と共に森に棲んでいた』
謝罪は不要だとジャンは言った。
面倒なので、ほぼクマ姿だったという。
道理で出会った時、野性味が溢れていたはずだよ……。
†‡†‡†
晩餐に招待されて。
長らく続いていた戦争がどう終結したのか話してくれた。
人間対獣人、人間対人間という国同士の戦争は、昔からちょくちょく起こっていたらしい。
プリマット国王ジェロームは、終わりが見えないし、国力や国民が疲弊するのでなるべく戦争を終わらせたいと思っていた。
でも、軍人たちはやる気満々だし。どうしようかと頭を悩ませていた。
そんな時。
突如、国王の寝室にやってきたのが、先王を亡くし、跡を継いだばかりだというグラン・テール王国のルロイ王。
寝室前だけでなく、城の内外には護衛の兵が多く居たのにもかかわらず。誰にも見咎められることなく夜の闇に紛れて侵入してきたそうだ。
自分は狼の血が強い。
その気になればいつでも国王や重鎮の寝首を掻くことが可能だが。
これ以上大切な国民の血を流したくないので、戦争をやめないか、と言ってきたという。
ジェローム王もそれに賛成し。
どうにか軍部を黙らせ、プリマット国とグラン・テール王国で平和条約を結んだのが5年前。
その後、ルロイ王は美姫として評判であった長女のシャルロット姫を嫁がせることでラヴィーヌ国と平和条約を結んだという。
次女も嫁がせて。
他の獣人の国にも単身で乗り込み、説得して。
新しく得た知識は独り占めせず、全ての国に共有することを決めて。
そうやって、長かった戦争が終わったという。
フットワーク軽いな! 王様なのに。
それじゃルロイ王って、国家間の戦争を終わらせた英雄じゃないか。
かっこいいけど。
その時のアンリの胃を心配してしまう。
眉間に皺が刻まれるはずだよ。
†‡†‡†
『戦争が終わったのはいいが。見てわかる通り、我が国はまだ復興途中だ。優秀な医者もあまり育たない。打つ手がなく、見殺しにする形になった村の者達にも申し訳ないと思っている』
復興の為のお金は国家予算から回すけど。
長年の戦争のせいで、その予算も微々たるもので。
兵士を辞めさせて人員削減すると見廻る者もがいなくなり、町が荒れる。
給料を減らせば仕事を真面目にしないし。
色々することがあって、王様も大変だ。
早く復興が進むといいな。
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