オタク眼鏡が救世主として異世界に召喚され、ケダモノな森の番人に拾われてツガイにされる話。

篠崎笙

文字の大きさ
上 下
13 / 74
リヒト

魔法の才能

しおりを挟む
『驚いた。薬学を少々学んだだけなどと、ご謙遜を。専門でない話をここまでできるのは素晴らしい』
アンリは大喜びだった。


今日聞いたことを、早速あちこちに広めるという。
他の国にも?

情報を独占しないんだ。
パワーバランスが崩れると争いの元になるから?

異世界も、平和維持活動は大変だな。


『まだ子供だというのに、この知識量とは頼もしい。是非我が国の博士……いや賢者になっていただきたい。今からでも』

いや、子供じゃないし。
大学院生だし。

一応、博士号なら、論文出して認められれば取れる環境だったけども。


†‡†‡†


皆の年齢を聞いてみたら。

王様が22歳で。ジャンとは乳兄弟らしい。で、ジャンは23歳。なんと年下だった。
パーシヴァルも23歳。ジャンと同い年? 見えない。

当然、王様より年下なアンリは21歳だって?

嘘だろ……。若いとは思ってたけど。
みんな年下だったよ……。

でも、日本でぼーっと生きている同年齢の子たちよりは落ち着いてるし、知識もありそうなのは、成人になる年齢が16歳と早いのと、王族としての教育を受けてきたからかな?
などとぼーっと生きたまま院生になったダメ人間代表な僕が言ってみたり。

みんな、精神的にも、僕よりずっと大人だよな。


でも、まさか年下からあんな風に好き勝手されちゃってたとは……。
と、隣で話を聞いていたジャンを見上げたら。

『クロエがなりたいのなら、いいんじゃないか? 救世主としての任が終わったら、の話だが』
優しく微笑んで、理解のある夫みたいな発言するのやめろ。

賢者になりたいなんて、一言も言ってないから。


……あ。
「そういえば、救世主って具体的に何をするんですか? 何か覚えたりしなくてもいいんですか?」

剣とか魔法とか。
出来れば、の話だけど。


予言関係の話は、魔法使いのデュランに聞いたほうがいいだろう、と。
アンリがデュランを呼んでくれた。

まだ、どういった危機だかもわからない、って話だけど。


『救世主本人が目の前にいるのだ。もう少し詳しい占いも出来るのではないか?』

『ああ、そうかもね。じゃ、やってみようか』
軽いな。

みんなわくわくした様子で占いを見学しようとしてたけど。

気が散るから邪魔、と。
部屋からみんなを追い出した。


アンリは王族なのに……。
魔法使いって、立場は王佐より上なのかな?


†‡†‡†


『知っての通り、普通の魔法はあまり得意じゃないんだ。君が魔法を使えて覚えてくれるなら、正直助かるんだよね』
デュランは正直に言った。

王室付きの魔法使いっていうプライドは無いのか……。


占いと、一通りの攻撃魔法なら得意だという。
偏ってるなあ。

魔法使いになるには魔力だけでなく、魔法の才能が無いと使えないので、なり手が少なくて。
同僚を熱烈募集中なんだそうだ。


「可能なら是非、やってみたいです」
魔法とか、出来るなら使ってみたい。わくわくしてしまう。

『じゃ、手を出して、目を閉じて』

その通りにしたら、手を握られた。
冷たい手だ。

何だかピリッと、身体に軽い電流が流れたような感覚があった。


『……ん、才能はありそうだね。使えそうなのは、治癒系の魔法かな?』

おお。
魔法、使えそうなんだ。うれしいな。

後で使えるかどうか、一通りの魔法を試してみて、適性をみよう、という話になった。

「じゃあ、覚えた治療魔法で、この国の危機を救えるんですかね?」
『あ、そうだった。この国の未来のことを占うんだった……』


おいおい。
忘れちゃダメなやつだろそれは。


†‡†‡†


デュランは、被っていたローブを外した。

……ウサギ耳!?
それに、やたら若く見える。

クルミ色の肌に、こげ茶の髪と瞳。かわいらしい顔立ちだ。

見た目は、12歳から14歳くらいの子供みたいだな。
と思わずまじまじと見てしまったら。


デュランは苦笑して。
『ちょっと無茶した魔法の後遺症か、外見年齢が止まっちゃってさ。これでも、実年齢は60歳なんだ』

60歳!? 全然見えないよ。
女なら美魔女だけど、男の場合は美魔法使い? なんか違うか。

獣耳が常に出っ放しになっているのも、後遺症らしい。
失敗した魔法の後遺症、って。どんな魔法だったんだろう?


『子供だと思われて舐められるから、普段はローブを被ってる。……君も子供みたいに見られてるけど、J・Jより年上だよね?』
占いでわかったのかな?

「うわ、それ、どうかご内密に……!」
聞かれたら、犯られちゃうんです!

デュランに、こっちの事情を話すことにした。


『……なるほど。無理矢理ツガイにされて、子供だと思われてるからまだ一線は越えてないという訳か。……残念ながら、ツガイの繋がりを無かったことにする魔法はないな』
デュランは同情めいた視線を向けた。


リセットとか、不可能なのか……。
もうDNAレベルで強固に結ばれてしまっているそうだ。

クーリングオフ不可とか、ひどい。


†‡†‡†


「離ればなれになったら死んじゃうなら、ツガイと一緒に元の世界に行くことは?」

デュランは視線を中空に彷徨わせた。
占っているようだ。

『不可。身体の組成がすっかりこちらのものに変わってるから、あっちの世界の結界に弾かれる』

結界なんか張られてるんだ。
侵略とか、簡単に行き来できないように張られてるのかな。

……って。
「嘘。帰れないの!? もう二度と!?」

『残念ながら……』


そんな。
そっちの都合で呼び出しといて、そりゃないよ。


一番悪いのは。
受け入れたと勘違いして噛んで、勝手にツガイにしたジャンだけど。

召喚場所失敗したデュランにも、責任の一端はあると思う。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】転生して妖狐の『嫁』になった話

那菜カナナ
BL
【お茶目な挫折過去持ち系妖狐×努力家やり直し系モフリストDK】  トラック事故により、日本の戦国時代のような世界に転生した仲里 優太(なかざと ゆうた)は、特典により『妖力供給』の力を得る。しかしながら、その妖力は胸からしか出ないのだという。 「そう難しく考えることはない。ようは長いものに巻かれれば良いのじゃ。さすれば安泰間違いなしじゃ」 「……それじゃ前世(まえ)と変わらないじゃないですか」   他人の顔色ばかり伺って生きる。そんな自分を変えたいと意気込んでいただけに落胆する優太。  そうこうしている内に異世界へ。早々に侍に遭遇するも妖力持ちであることを理由に命を狙われてしまう。死を覚悟したその時――銀髪の妖狐に救われる。  彼の名は六花(りっか)。事情を把握した彼は奇天烈な優太を肯定するばかりか、里の維持のために協力をしてほしいと願い出てくる。  里に住むのは、人に思い入れがありながらも心に傷を負わされてしまった妖達。六花に協力することで或いは自分も変われるかもしれない。そんな予感に胸を躍らせた優太は妖狐・六花の手を取る。 ★表紙イラストについて★ いちのかわ様に描いていただきました! 恐れ入りますが無断転載はご遠慮くださいm(__)m いちのかわ様へのイラスト発注のご相談は、 下記サイトより行えます(=゚ω゚)ノ https://coconala.com/services/248096

小学生のゲーム攻略相談にのっていたつもりだったのに、小学生じゃなく異世界の王子さま(イケメン)でした(涙)

九重
BL
大学院修了の年になったが就職できない今どきの学生 坂上 由(ゆう) 男 24歳。 半引きこもり状態となりネットに逃げた彼が見つけたのは【よろず相談サイト】という相談サイトだった。 そこで出会ったアディという小学生? の相談に乗っている間に、由はとんでもない状態に引きずり込まれていく。 これは、知らない間に異世界の国家育成にかかわり、あげく異世界に召喚され、そこで様々な国家の問題に突っ込みたくない足を突っ込み、思いもよらぬ『好意』を得てしまった男の奮闘記である。 注:主人公は女の子が大好きです。それが苦手な方はバックしてください。 *ずいぶん前に、他サイトで公開していた作品の再掲載です。(当時のタイトル「よろず相談サイト」)

【完結】第三王子は、自由に踊りたい。〜豹の獣人と、第一王子に言い寄られてますが、僕は一体どうすればいいでしょうか?〜

N2O
BL
気弱で不憫属性の第三王子が、二人の男から寵愛を受けるはなし。 表紙絵 ⇨元素 様 X(@10loveeeyy) ※独自設定、ご都合主義です。 ※ハーレム要素を予定しています。

獣人の子供が現代社会人の俺の部屋に迷い込んできました。

えっしゃー(エミリオ猫)
BL
突然、ひとり暮らしの俺(会社員)の部屋に、獣人の子供が現れた! どっから来た?!異世界転移?!仕方ないので面倒を見る、連休中の俺。 そしたら、なぜか俺の事をママだとっ?! いやいや女じゃないから!え?女って何って、お前、男しか居ない世界の子供なの?! 会社員男性と、異世界獣人のお話。 ※6話で完結します。さくっと読めます。

異世界へ下宿屋と共にトリップしたようで。

やの有麻
BL
山に囲まれた小さな村で下宿屋を営んでる倉科 静。29歳で独身。 昨日泊めた外国人を玄関の前で見送り家の中へ入ると、疲労が溜まってたのか急に眠くなり玄関の前で倒れてしまった。そして気付いたら住み慣れた下宿屋と共に異世界へとトリップしてしまったらしい!・・・え?どーゆうこと? 前編・後編・あとがきの3話です。1話7~8千文字。0時に更新。 *ご都合主義で適当に書きました。実際にこんな村はありません。 *フィクションです。感想は受付ますが、法律が~国が~など現実を突き詰めないでください。あくまで私が描いた空想世界です。 *男性出産関連の表現がちょっと入ってます。苦手な方はオススメしません。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。 ★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

僕だけの番

五珠 izumi
BL
人族、魔人族、獣人族が住む世界。 その中の獣人族にだけ存在する番。 でも、番には滅多に出会うことはないと言われていた。 僕は鳥の獣人で、いつの日か番に出会うことを夢見ていた。だから、これまで誰も好きにならず恋もしてこなかった。 それほどまでに求めていた番に、バイト中めぐり逢えたんだけれど。 出会った番は同性で『番』を認知できない人族だった。 そのうえ、彼には恋人もいて……。 後半、少し百合要素も含みます。苦手な方はお気をつけ下さい。

処理中です...