オタク眼鏡が救世主として異世界に召喚され、ケダモノな森の番人に拾われてツガイにされる話。

篠崎笙

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リヒト

異世界との違い

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「そういえば、騎士たちの宿舎ってどこにあるの?」
パーシヴァルに聞いてみる。

『ああ、東側……城の端にあるあそこだよ。旗立ってるとこ』

パーシヴァルは指をさして、場所を示した。
城壁が続いていて。端のほうに、旗が見えた。


ああ、あそこか。
掲げてあるのは、騎士団の旗らしい。

騎士の宿舎、遠いな。
あそこから通ってくるのか。大変だ。

一般兵士は門番も兼ねてるので、城門の近くに宿舎があるそうだ。

騎士団の宿舎は、万が一隣国から襲撃があった場合に備えて、隣国側にあるんだとか。
張り巡らされた城壁の出入口は、正面と、騎士団の宿舎近くにしか無いみたいだ。

そっか。
最近まで戦争してたんだって言ってたな。

それで、他国からの攻撃に備えた造りになってるのか。


†‡†‡†


あっちが東側なら、海側が北になるのか?

環境が似てれば、文化も似るのかな? 東西南北も同じようにあるんだ。
地平線が見えるってことは、この世界も、球体のようだ。

地磁気もあって、方位磁石とかもあるなら、針が南北を示すだろう。


「ジャンさんの家はどこ?」
海側の、夜の森だったっけ? どの辺だろう。

かなり馬車を走らせてたし。
ここからジャンの家まで、けっこうな距離だった。

は、あの大きな木がある辺りだ』

うっ。
俺たちとか言い直したし。


森からぴょこんと飛び出たような、一際大きな木を示される。

あれは、杉の木かな?
ずいぶん立派な巨木だ。縄文杉みたい。

ジャンの家は樹木に隠れちゃって、ここからは見えないようだ。
残念。


夜の森は保護区域になっているので。
ジャンの小屋の他には、家が無かったようだ。

あんな静かな所に、独りで住んでて。
寂しくなかったのかな。


「移動が馬車って、大変そうだなあ。国の端から端まで、どのくらい掛かるんだろ?」

『移動魔法陣が設置してある場所なら、移動魔法で行けるよ?』
メイベルが言った。

移動魔法なら、魔法使いでなくても使えるとか。

「え? 超便利!」


ただし、悪用されかねないので、大勢では移動できないし、使える人は決まっているとのこと。
ですよねー。

特権階級のみ使えるサービスかな?

御者とかの仕事もなくなるので、滅多に使わないそうだ。
働く人に優しい……。


†‡†‡†


夕方になった。

今日は、塔から国の規模をだいたい説明されたのと。騎士団と兵士の宿舎、一階の半分くらいを案内されて終わった。
お城はかなり広いので、一日では回り切れないという。


また明日もメイベルが案内してくれるそうだ。

まだこの国に迫っている危機が何だか判明してないからかもしれないけど。
こんなのんびりしてて、いいのかな?


『お待ちしておりましたぞ!』

王佐、アンリに待ち侘びられていた。

異世界の話を色々聞きたいそうで。
夕食の前に、応接室で話をすることになった。

「先日も言いましたけど。薬についてちょっと学んだだけの学生ですから、あまり多くは期待しないでくださいね」
『ご存じの範囲でかまわないのです。そちらの生活をお聞きしたい』


そっか。
興味があるだけなら、力になれるかもしれないな。


†‡†‡†


王佐のアンリに、自分が知ってる限りの、身の回りのものとか、向こうの生活のことを話した。

もちろん、国や地域によって生活水準がかなり違うことから説明して。
僕が住んでいた日本は水資源も豊富で自然も多く、他国の文化を受け入れたり、昔は銅や銀などの鉱物も発掘して輸出や輸入もし、発展してきたこと。

敗戦から、もう80年くらい戦争してないことを話した。


飛行機に電車、自動車などの移動手段。
テレビや掃除機などの家電に興味津々だったけど。

僕はそれらが動く原理をよく知らないし。
材料を集めて、作って、組み立てるまでに色々大変だというと、残念そうだった。


こっちじゃ金属がそれほど重要視されてないのかな?
鎧など武器防具の他は、ほぼ生活用品に使用されてる。ボイラーもそうだけど、ヤカンとか鍋とか。

建物は基本的に木造か石造りで、鉄筋は使われてない。馬車は車輪も木製。

ガラスや陶器はあるけどプラスチックもゴムもない。
ゴムってどうやって作るんだっけ? ゴムの木の樹液に硫黄とか混ぜて粘性や結合力を上げたりしたような気が。

そもそもポリエチレンがない。
原油を蒸留分離してできるんだっけ?


石油も石炭も、何だかわからないという。
つまりガソリンもないのか。

原油は、掘れば出るかもしれないけど。
この世界では分解する微生物が存在しない時代がなかった場合、石油や石炭はできないからなあ。


マジックテープとジッパーは見本もあるし、どういう原理がわかるから仕組みを教えたら、衣装係が喜びそうだと言った。

コンクリートもだいたいわかるので、作り方と鉄筋コンクリートで建物の強度を上げる話もした。
アスファルトは、石油がないと無理だな。


綺麗な色の宝石は人気があるけど。
ダイヤモンドにそれほど価値がないのは、独占する会社が存在しないためか。

こっちとあっちで、色々違いを探すのも面白そう。
ダイヤはじゃらじゃら出るようなので、ダイヤモンドカッターについて話したら喜んでいた。


こっちは、魔法のおかげで生活が色々便利だったりするけど。
文明的には遅れているっぽい。

ものによっては中世レベルかも。
王制の国自体、そんなに残ってないし。
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