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リヒト
グラン・テール王国を一望する
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だだっ広い食堂には、王族の皆様がお揃いだった。
大きなテーブルの上座にルロイ王、補佐のアンリ、メイベルが並んでいて。
反対側に、僕とジャン。
王様と対面してるんだけど。いいのこれ?
国賓だから、いいのか。
パーシヴァルは城勤めの騎士で身分が違うから、同席はできないのかな?
食事は、騎士の住んでる寮というか館で済ませるそうだ。
ジャンは僕のツガイなので、同じく国賓扱いになるのか。
朝ご飯は多分パンと、オムレツっぽいのとマッシュポテトっぽいの、ベーコンっぽいのだった。
食べてみたら、味も食感もまんまそれだった。
それも、お高い材料使ってる感じ。
当然ながら、合成保存料とか化学調味料は使ってないんだろうな。
ここは異世界だけど。
生態系とかはそれほど変わらないのかな?
未知の植物とかあるかなあ?
未知の生物なら、目の前や隣にもいるけど。
何せ獣人だ。ファンタジー世界の生物だよな……。
†‡†‡†
『こちらの食べ物はお口に合いますか?』
昨日も焼き菓子を出された時に聞かれたんだけど。
またも心配そうにメイベルに聞かれる。
「うん、美味しいよ。元の世界の料理にそっくりで、驚いた」
『そちらの世界では、庶民でもこのような食事を?』
アンリが驚いて僕を見た。
そうだねどう見ても貧乏そうな庶民でごめんね!!
こっちじゃこれ、どれも王族じゃないと手の届かないような品なのかな。流通の関係?
「もちろん、品質がいいのか、ここのが美味しいですけど。料理自体はホテルの朝ご飯とか、一般家庭でも普通に出ますよ。ベーコンの代わりにソーセージとか」
マッシュポテトはあんまり出ないかな。
ホテルでローストビーフの付け合わせに出てくるのくらいしか見ない気がする。
フライドポテトならわりと見る。
家庭じゃ冷凍食品が多いだろうけど。
『宿屋でも? 救世主殿、後で詳しく異世界の話を伺ってもよろしいか?』
「お兄様、今日は僕が城内をご案内する約束ですよ!」
身を乗り出して食いつくアンリに、メイベルが頬を膨らませた。
かわいいな。
男だってことを忘れそうになる。
もう子供が生める身体らしいし、半分女の子って認識でいいんだろうか。
わりと文化レベルに差がありそうだけど。
話しちゃって、文化が発展してもいいのかな?
異世界の歴史に介入してもいいのかって問題があるけど。
そもそもこの国の危機を解決する救世主として召喚されたんだし、いいか。
どうせ、僕の持ってる知識なんて、たいしたことないから。
歴史的には誤差の範囲で片付くのかも。
なら、話してもいいよね。
†‡†‡†
『これが、辺りの景色を一望できる塔だよ!』
メイベルは、そう言いながら階段を上がっていった。
踊るような足取りで。
さすが獣人、というか十代というか。
元気いっぱいだ。
僕は百段くらいでへばったので、ジャンに背負われながら塔の最上階へ向かった。
これでもフィールドワークで足腰鍛えてたつもりなんだけどな。
その後ろを護衛役のパーシヴァルがついてくる。
お昼ご飯の入ったカバンも持ってる上に、全身鎧装備じゃ、きつくないのかな。重そう。
平気な顔をして上ってるけど。
騎士団で普段から鍛えてるから大丈夫なのか。
「わあ、」
広大な森のパノラマ。
その向こう、遥か遠くには海がきらめいて見える。
いい景色だ。
通る風も気持ち良い。
『そちらは”夜の森”で、その先が”悲しみの海”。その先にはロティ姉さまの暮らすラヴィーヌ国があるんだ』
メイベルは、少し寂しそうな顔で言った。
この国の三男……じゃなかった、長女であるシャルロット姫が嫁いだ国らしい。
今は王妃様だとか。
政略結婚とかだったのかな? 王族同士だもんな。
反対側には、城下町らしき建物とか、町や村らしき集落が見えた。
湖や川、農地や牧場っぽいのも見える。豊かな国だ。
昨日通った時は、森ばっかりで村とか民家を見なかったけど。主に人が住んでるのはこっち側だったのか。
その向こうは山と森で。
ここからは見えないけど、更にその先には隣国があるとか。広いなあ。
†‡†‡†
この国の領土の、約半分が森なんだそうだ。
森にはさまざまな動物がいて。果物や、食べられる植物も豊富にあるという。
それは、是非とも見てみたい。
でも、人を襲うような野犬がいるんだっけ?
ジャンと一緒なら平気かなあ。
そう思ってジャンのほうを見たら、にこっと笑った。
何その嬉しそうな笑顔。
慌ててメイベルに向き直った。
「牧場では、何を育ててるの?」
『牧場で育てているのは、主に鶏、鴨、牛、豚、羊、山羊かな? だけど、肉は森で暮らしてる動物のほうが美味しいと思う』
おお。
動物はそのまま同じなんだ。聞けて良かった。
「豚とかは、ドングリとか芋とかだけ食べさせると美味しくなるっていうけどなあ。雑食の肉は美味しくないって聞いたよ?」
だからタヌキとかは臭くてまずいんだそうだ。
昔話でいうタヌキは、アナグマのことで。アナグマは美味しいとか。
でも、野生の鹿は美味しいとも聞くな。鹿は草食動物だからかな?
『そうなんだ。こちらの森の動物は、森の恵みをいただいているので美味しいそうだけど……』
城で供される肉は、みな森で獲れたものだそうだ。
†‡†‡†
「うん。確かにあのベーコンは美味しかった」
『あの、ベーコンとは?』
メイベルはかわいらしく小首を傾げた。
ああ、こっちじゃ名前が違うのか。
さっき言った時は誰も突っ込まなかったから、通じてるのかと思ってた。
王族だし、人に聞くのは恥だと思ってるのだろうか。
「え-と、朝に出た、肉を焼いたやつ」
で、わかるかな?
『ああ、ラールのこと。燻製すると長持ちするし、美味しいよね』
ベーコンの名称は違うようだ。
でも、ソーセージは何となく通じていた。腸詰め肉で合ってるらしい。
冬季は雪に埋もれて厳しいので、保存食品は他にも色々あるとか。
バターやチーズもあるそうで。
幸い、こっちじゃ食べ物には困らないようでホッとする。
異世界なのに、食べ物に関してはそんなに違いを感じなかった。
獣人も、食べるものはそう変わらないのか。
大きなテーブルの上座にルロイ王、補佐のアンリ、メイベルが並んでいて。
反対側に、僕とジャン。
王様と対面してるんだけど。いいのこれ?
国賓だから、いいのか。
パーシヴァルは城勤めの騎士で身分が違うから、同席はできないのかな?
食事は、騎士の住んでる寮というか館で済ませるそうだ。
ジャンは僕のツガイなので、同じく国賓扱いになるのか。
朝ご飯は多分パンと、オムレツっぽいのとマッシュポテトっぽいの、ベーコンっぽいのだった。
食べてみたら、味も食感もまんまそれだった。
それも、お高い材料使ってる感じ。
当然ながら、合成保存料とか化学調味料は使ってないんだろうな。
ここは異世界だけど。
生態系とかはそれほど変わらないのかな?
未知の植物とかあるかなあ?
未知の生物なら、目の前や隣にもいるけど。
何せ獣人だ。ファンタジー世界の生物だよな……。
†‡†‡†
『こちらの食べ物はお口に合いますか?』
昨日も焼き菓子を出された時に聞かれたんだけど。
またも心配そうにメイベルに聞かれる。
「うん、美味しいよ。元の世界の料理にそっくりで、驚いた」
『そちらの世界では、庶民でもこのような食事を?』
アンリが驚いて僕を見た。
そうだねどう見ても貧乏そうな庶民でごめんね!!
こっちじゃこれ、どれも王族じゃないと手の届かないような品なのかな。流通の関係?
「もちろん、品質がいいのか、ここのが美味しいですけど。料理自体はホテルの朝ご飯とか、一般家庭でも普通に出ますよ。ベーコンの代わりにソーセージとか」
マッシュポテトはあんまり出ないかな。
ホテルでローストビーフの付け合わせに出てくるのくらいしか見ない気がする。
フライドポテトならわりと見る。
家庭じゃ冷凍食品が多いだろうけど。
『宿屋でも? 救世主殿、後で詳しく異世界の話を伺ってもよろしいか?』
「お兄様、今日は僕が城内をご案内する約束ですよ!」
身を乗り出して食いつくアンリに、メイベルが頬を膨らませた。
かわいいな。
男だってことを忘れそうになる。
もう子供が生める身体らしいし、半分女の子って認識でいいんだろうか。
わりと文化レベルに差がありそうだけど。
話しちゃって、文化が発展してもいいのかな?
異世界の歴史に介入してもいいのかって問題があるけど。
そもそもこの国の危機を解決する救世主として召喚されたんだし、いいか。
どうせ、僕の持ってる知識なんて、たいしたことないから。
歴史的には誤差の範囲で片付くのかも。
なら、話してもいいよね。
†‡†‡†
『これが、辺りの景色を一望できる塔だよ!』
メイベルは、そう言いながら階段を上がっていった。
踊るような足取りで。
さすが獣人、というか十代というか。
元気いっぱいだ。
僕は百段くらいでへばったので、ジャンに背負われながら塔の最上階へ向かった。
これでもフィールドワークで足腰鍛えてたつもりなんだけどな。
その後ろを護衛役のパーシヴァルがついてくる。
お昼ご飯の入ったカバンも持ってる上に、全身鎧装備じゃ、きつくないのかな。重そう。
平気な顔をして上ってるけど。
騎士団で普段から鍛えてるから大丈夫なのか。
「わあ、」
広大な森のパノラマ。
その向こう、遥か遠くには海がきらめいて見える。
いい景色だ。
通る風も気持ち良い。
『そちらは”夜の森”で、その先が”悲しみの海”。その先にはロティ姉さまの暮らすラヴィーヌ国があるんだ』
メイベルは、少し寂しそうな顔で言った。
この国の三男……じゃなかった、長女であるシャルロット姫が嫁いだ国らしい。
今は王妃様だとか。
政略結婚とかだったのかな? 王族同士だもんな。
反対側には、城下町らしき建物とか、町や村らしき集落が見えた。
湖や川、農地や牧場っぽいのも見える。豊かな国だ。
昨日通った時は、森ばっかりで村とか民家を見なかったけど。主に人が住んでるのはこっち側だったのか。
その向こうは山と森で。
ここからは見えないけど、更にその先には隣国があるとか。広いなあ。
†‡†‡†
この国の領土の、約半分が森なんだそうだ。
森にはさまざまな動物がいて。果物や、食べられる植物も豊富にあるという。
それは、是非とも見てみたい。
でも、人を襲うような野犬がいるんだっけ?
ジャンと一緒なら平気かなあ。
そう思ってジャンのほうを見たら、にこっと笑った。
何その嬉しそうな笑顔。
慌ててメイベルに向き直った。
「牧場では、何を育ててるの?」
『牧場で育てているのは、主に鶏、鴨、牛、豚、羊、山羊かな? だけど、肉は森で暮らしてる動物のほうが美味しいと思う』
おお。
動物はそのまま同じなんだ。聞けて良かった。
「豚とかは、ドングリとか芋とかだけ食べさせると美味しくなるっていうけどなあ。雑食の肉は美味しくないって聞いたよ?」
だからタヌキとかは臭くてまずいんだそうだ。
昔話でいうタヌキは、アナグマのことで。アナグマは美味しいとか。
でも、野生の鹿は美味しいとも聞くな。鹿は草食動物だからかな?
『そうなんだ。こちらの森の動物は、森の恵みをいただいているので美味しいそうだけど……』
城で供される肉は、みな森で獲れたものだそうだ。
†‡†‡†
「うん。確かにあのベーコンは美味しかった」
『あの、ベーコンとは?』
メイベルはかわいらしく小首を傾げた。
ああ、こっちじゃ名前が違うのか。
さっき言った時は誰も突っ込まなかったから、通じてるのかと思ってた。
王族だし、人に聞くのは恥だと思ってるのだろうか。
「え-と、朝に出た、肉を焼いたやつ」
で、わかるかな?
『ああ、ラールのこと。燻製すると長持ちするし、美味しいよね』
ベーコンの名称は違うようだ。
でも、ソーセージは何となく通じていた。腸詰め肉で合ってるらしい。
冬季は雪に埋もれて厳しいので、保存食品は他にも色々あるとか。
バターやチーズもあるそうで。
幸い、こっちじゃ食べ物には困らないようでホッとする。
異世界なのに、食べ物に関してはそんなに違いを感じなかった。
獣人も、食べるものはそう変わらないのか。
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