人生に絶望した俺が異世界で龍のツガイにされるなんてこれはきっと悪い夢に違いない。

篠崎笙

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おまけ:赤竜王の思い出

ツガイとの初めての夜

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「……この日が来るのを、待ってた」

湯の中、抱き締めて。
お互い、胸の鼓動が速まっているのを感じる。

ああ、良い匂いだ。撒かせた薔薇の花の芳香よりもかぐわしい。
ツガイの香りによる誘惑は、これほどまでに抗いがたいものなのか。


「これは?」
なだらかな胸に、無惨な傷痕が。

「心臓の、手術痕だよ。……あんま見ないで。気持ち悪いだろ?」
傷を恥じるように、身を捩るが。

「気持ち悪いわけがない。……これは、朔也が頑張った証だろう? これのお蔭で、今こうして健康でいられるのだし。……とても愛おしいものだよ」


成功率は、三割ほどだったと云う。
朔也はその可能性に果敢に賭け、見事生き残ったのだ。
それゆえに、殆ど人の訪れないあの山に登れるほど健康になり、私達はこうして出逢うことが適ったのである。

朔也を救い、私のもとへ寄越してくれた神に、心から感謝したい。


*****


「ひっ、」

朔也の胸の敏感な部分や、滑らかな内股に触れると。
触れる度に、びくりと身体を震わせる。

「……怖がらないで。ひどいことはしないから」

今すぐに、奥まで貫いて。
その肉の締め付けを味わってしまいたいけど。

愛しい君を、怖がらせたくはない。


朔也は頬を染め。恥じらいながら云った。
「わかってる、けど。怖いのは、仕方ないと思う。……は、初めてだし」

初めて。


こうして触れられるのも。何もかも初めてで。男の身で男を受け入れるのはとても怖ろしいだろうに。
それに耐え、私を受け入れようとしてくれているのだ。

何と健気なのだろう。
危うく、湯の中で放ってしまうところだった。


「そんな可愛いことを云う口は、こうして塞いでしまおう」

唇を、己のそれで塞ぎ。
朔也の、まだ何も知らぬ身体を暴いていく。


のぼせてしまう寸前まで、その手触りを愉しんだ。


*****


痛い思いはさせたくない。
身体の緊張を解く媚薬を使い、受け入れ易いよう、香油で慣らしてやらねば。

「ひゃ、」
指を差し入れると、びくりと身体をくねらせる。

中は狭く。指をきゅうきゅうと締めつけてくる。
早くここに自身を捻じ込んで、思う様腰を振りたい衝動を、必死に耐える。
己の欲望を優先してはいけない。


「ん、」

口付けをしながら。
少しずつ、そこを解してゆく。

私の背にしがみついていた手が、自分の股間を探ろうとするので、その手を掴む。

「……そこは、後で」
達した後だと、つらいという話だ。

快感だけ、与えたい。


「はぅ、……んんっ、」
指を動かす度に、淫らな水音が立つ。

随分余計な力が抜けてきた。

「ん、……は、あっ、あ、」
朔也の足が、自然に開いていっている。気持ち良くなっているようだ。


悩ましい視線を送られ。
たまらなくなる。


*****


「……可愛い、朔也。そろそろ、いいかな?」

「ぁん、」
指を引き抜いて。

朔也の胸の傷痕に、感謝の口付けを。

「朔也、心の底から君を愛している」
額に、愛を込めて口付けを。

「いや、……愛しているなんていう言葉では足りないくらいに、君が好きだ」
想いを告げ。

そして、朔也の愛らしい蕾を散らした。


「愛してる、朔也」
まだ狭い、熱く締めつけてくる肉の筒を、少しずつ穿っていく。

「ん、……あ、あっ、あ、」

痛みはないようだ。
漏れる声は、どこまでも甘い。

突くように腰を動かす度に、悩ましい声を上げて。

顔を仰け反らせ、綺麗な白い喉を晒している。
この喉に。しるしをつけたい。


「……朔也、鱗、つけていい?」

朔也は私の喉元を、そっと伺うように見た。
逆鱗がある場所である。

「ああ、そう。これだよ。でも、慣れないうちは俺のにはまだ触らないほうがいいかな」

今、逆鱗に触れられたら。
手加減が出来なくなって、抱き潰してしまいそうだ。


「いい?」
再び問うと。

朔也は恥ずかしそうに。いいよ、と頷いてみせた。


*****


首の後ろを龍化させ、鱗を剥がして。

朔也の喉に、当て。
逆鱗にする術を掛ける。

痛みは感じないはずだが。

「……どう?」
鱗をそっと撫でながら訊くと。


ああ、発情している。

頬を染め、目は潤み。乳首はつんと立って。
花茎も蜜袋も、破裂寸前のようだ。

「朱赫、……これ、どうにか、して……?」

愛しいツガイの、世にも色っぽいおねだりに。
全身全霊で応えよう、と思った。

「うん。お望み通りに、してあげるね」


「は、あ、あっ、あっ、……ん、」
腰を動かすたびに、可愛い声で鳴いている。

もっと泣かせたくて。
後ろから、細い腰を掴んで、腰を突き上げる。


愛おしい、私だけのツガイ。

私が初めてで。
私しか知らない身体。


「朔也、朔也、俺だけのものだよ。もう、離さないからね」
耳元で、囁く。

「こうやって、一日中、ずっと繋がっていたいくらいだ」


君を独り占めしたい。
こうして、腕の中に閉じ込めて。誰にの目にも見せたくないほど。

こんな激情は、生まれて初めてだ。
朔也が掴んでいる床単シーツにすら、妬いてしまいそうだ。


*****


本当は、ここに来た時に、鱗を着けて。犯して私だけのものにしてしまいたかったけれど。
陛下と望殿という先例があったので必死に我慢した、と告げると。

朔也は腰を捻って、手招きするので。
顔を寄せる。


よしよし、と頭を撫でてくれた。
いい子、と褒めるみたいに。

ああ、何て可愛らしいんだろう、私のツガイは。


「朔也、ああもう、大好き……!」
思わずぎゅっと抱き締めて。衝動のまま、腰を振った。

「あ、……そんなしちゃ、や、あっ、」


朔也が疲れ果てて、眠ってしまうまで。
止められなかった。
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