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おまけ:黄龍大帝
わたしのツガイとの運命の出逢い
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わたしは神により、生まれた時には既に黄龍大帝となるよう決められていた。
先代の王族が犯した罪により、大帝や四王だけでなく、王族のすべてが罰を受け。
王族すべて、輪廻転生することになったのだ。
そしてわたしと新しき四王は、神が発生させた卵より生じた。
故に、親は存在しない。親族も。
まだ幼体であったわたしに、皇帝代理の任は重いものだった。
模範となるべき先代皇帝も、それを支える四王もいない。皇帝不在の世界である。
文字通り、右も左もわからぬ状態に置かれ、苦労したが。
書庫にあった文献を読み漁り。畏れ多いと遠慮する大臣や官らをどうにか説得し。
先代の話を聞き出し、自分なりの皇帝像を作り上げ。
何とか皇帝代理としての対面を保てるように成ったと思う。
四王ら、部下もいるにはいるが。やはり、同じように成ったばかりであり、わたしを次代皇帝と慕っているのだ。頼るわけにもいかぬ。
重責を背負っていたのは、わたしだけではなかった。
まだ幼体である四王の双肩に、それぞれの国のすべてが掛けられていたのだから。
*****
わたしが成龍になり、代理ではない、皇帝の座に着いた時。
国民は心から安堵したという。
稀に見る、金色の龍。これは瑞兆に違いない、と。
先代皇帝の体色は、黄であった。
国民の期待を裏切るわけにいかない。わたしは、龍国の皇帝なのだから。
それからしばらく後。
羅刹国からの襲撃を跳ね除け、雷帝の名を世に轟かせた。
それには白龍王、元白の活躍あってこそだが。
元白はその戦いで命を落とし、生まれ変わったため、しばらくは子供の姿でいなくてはならなくなった。
身体の幼さには精神も引き摺られる。つまり、頭の中身も幼くなってしまった。
好奇心の強いやんちゃ坊主である。
小さく、まだ力も弱い。
地上や異世界に行って捕らえられたりしないよう、気をつけねば。
そう思っていた矢先であった。
元白が、脱走したのは。
捜索に出ようとしたら。
びしょ濡れの元白が飛び込んでくるなり、俺の恩人が死にそうだから助けて、と号泣したのだ。
話を聞けば。
龍の顎と呼ばれている、異世界への出入り口のひとつ。そこに水が溜まっていて、風に吹かれた勢いで落ちてしまい、驚いて、溺れてしまったところ。
そして、人間がそこに飛び込んで来て、自分を助けてくれたのだと云うのだ。
*****
たまたま美術品の整理に来ていた朱赫も一緒に異世界へ出てみると。
確かに、小さな子供が、龍の顎に溜まっていた水の中へと静かに沈みかけていたところであった。
顔色は白く、瀕死の状態に思われた。
壁には鉤のついた太い紐があった。それを上に投げるのに体力を使い果たしたのだろう。
元白を優先し、助けるために。
まだ子供である龍姿の元白など、人にとってみれば、ただの爬虫類にしか見えぬだろうに。
「陛下、濡れますよ。私が、」
「かまわん、元白の恩人だ」
子供を救い出そうとする朱赫を制し。わたしが水の中に入り、子供をすくい上げた。
水は、凍るほどに冷たかったが。
この子供は、か弱い人の身で、ここに入り。溺れていた元白を助けてくれたのだ。
まだ人に、かような慈悲の心があろうとは。
そして。
抱き上げて、わかった。
この芳香。
この子供こそ、わたしの唯一のツガイである、と。
「朱赫、これは、この子供は。わたしのツガイだ……!」
黄龍大帝となるべくして生まれ、400年。
ようやく、待ちに待ったツガイが現れたのだ。
よもや異世界に産まれ落ちていたとは思わなんだ。
道理で見つからぬ筈である。
「まことですか、では、急ぎ蘇生を施しましょう」
朱赫は子供の背負っていた荷物を抱え、飛んだ。
*****
急いで皇宮に戻り。
濡れた衣服を脱がせ、自分も脱ぎ、水気を飛ばす。
朱赫は元白に、とりあえず濡れた服を着替えなさい、と背を押した。
自分も濡れたので、着替えてくるという。
「陛下、彼の荷物は乾かして、倉庫に保管しておきますね」
「ああ、そうしてくれ」
もう、元の世界になど帰してやるつもりなどないが。
黒く美しい髪。色の白い肌。細い手足、華奢な身体。
どれもが魅力的に見える。
何と愛らしい子だろう。
たまらず、口付けてしまった。
柔らかい唇。
腕に抱き、氷のように凍えた身体を温めるが。
意識は戻らない。龍気を与えようにも、何故か拒否されてしまう。
仕方がない。このような小さな身体に、無体だとは思うが。
……直接、体内に精を注ぐしかあるまい。
足を開かせ、後孔を探る。
そこはあまりに小さく、狭い。
無理をすれば裂けてしまうだろう。解れるよう、術をかけておかねば。
「雷音、何してんの!?」
元白が戻って来てしまった。
「精を注ぎ、蘇生する」
龍の精は、万病の薬になる。瀕死であろうが、蘇生できるほど。
そのことは、元白も知っていた。
自分の恩人だから、自分が助けたいと云うが。
まだ子供の身では、精など出ないであろう。もはや時間がない。
そう告げると、泣き出した。
*****
慣らした後孔に、ゆっくりと挿入した。
中はまだ、ほのかにあたたかい。
辛うじて生きている、という状態である。
ツガイとの初めての情交は、意識のある状態でしたかったが。
仕方あるまい。
愛しいツガイよ。
早く、目を覚ませ。そなたの瞳を見せておくれ。
そう願い、精を放った。
しかし。
目を覚ました愛しいツガイには、つれなくされ。
わたしに抱かれるくらいなら死んだほうがましだった、とまで云われてしまった。
それでも、諦めることなどできない。
わたしの目にはもう、ツガイしか映らないのだから。
わたしのツガイの名は、深町望というらしい。
わたしには、名乗ってもくれなかった。
しかし朱赫は、望に職を与えることで、気付かれず、皇宮にその身を留まらせたのだ。
よい臣下を持った。
図書の管理に困っていた青峰も、感謝しているようである。
望は優秀だった。
*****
しばらく経ち。
精と共に注ぎ込んだ龍気が切れ、望は倒れた。
青峰が分けようと提案しようとしたのを遮り、追い払い。
たしは望を騙し、抱いた。
こうすることでしか、龍気を与えられないのだと。
望は感じていた。
故に、何度か身体を重ねれば、わたしのものになるだろうと考えたのだ。
しかし。
そのような目論見はあっさりと見破られ。怒った望は、墨国へ行った。
もはや、見限られたものと思ったが。
望はわたしを許してくれた。
奇跡のようである。
こんなわたしを、好いてくれたのだ。
望は人の身であるにも関わらず、魚石を曇りなく磨き上げるほど、美しく純粋な心の持ち主であった。
つまらぬ姦計などせず、素直に想いを伝えれば、それで良かったのだ。
そして、誓いの石の前で望はわたしの龍玉を受け入れ。
銀龍と成り。
わたしと望は、正式にツガイとなったのである。
先代の王族が犯した罪により、大帝や四王だけでなく、王族のすべてが罰を受け。
王族すべて、輪廻転生することになったのだ。
そしてわたしと新しき四王は、神が発生させた卵より生じた。
故に、親は存在しない。親族も。
まだ幼体であったわたしに、皇帝代理の任は重いものだった。
模範となるべき先代皇帝も、それを支える四王もいない。皇帝不在の世界である。
文字通り、右も左もわからぬ状態に置かれ、苦労したが。
書庫にあった文献を読み漁り。畏れ多いと遠慮する大臣や官らをどうにか説得し。
先代の話を聞き出し、自分なりの皇帝像を作り上げ。
何とか皇帝代理としての対面を保てるように成ったと思う。
四王ら、部下もいるにはいるが。やはり、同じように成ったばかりであり、わたしを次代皇帝と慕っているのだ。頼るわけにもいかぬ。
重責を背負っていたのは、わたしだけではなかった。
まだ幼体である四王の双肩に、それぞれの国のすべてが掛けられていたのだから。
*****
わたしが成龍になり、代理ではない、皇帝の座に着いた時。
国民は心から安堵したという。
稀に見る、金色の龍。これは瑞兆に違いない、と。
先代皇帝の体色は、黄であった。
国民の期待を裏切るわけにいかない。わたしは、龍国の皇帝なのだから。
それからしばらく後。
羅刹国からの襲撃を跳ね除け、雷帝の名を世に轟かせた。
それには白龍王、元白の活躍あってこそだが。
元白はその戦いで命を落とし、生まれ変わったため、しばらくは子供の姿でいなくてはならなくなった。
身体の幼さには精神も引き摺られる。つまり、頭の中身も幼くなってしまった。
好奇心の強いやんちゃ坊主である。
小さく、まだ力も弱い。
地上や異世界に行って捕らえられたりしないよう、気をつけねば。
そう思っていた矢先であった。
元白が、脱走したのは。
捜索に出ようとしたら。
びしょ濡れの元白が飛び込んでくるなり、俺の恩人が死にそうだから助けて、と号泣したのだ。
話を聞けば。
龍の顎と呼ばれている、異世界への出入り口のひとつ。そこに水が溜まっていて、風に吹かれた勢いで落ちてしまい、驚いて、溺れてしまったところ。
そして、人間がそこに飛び込んで来て、自分を助けてくれたのだと云うのだ。
*****
たまたま美術品の整理に来ていた朱赫も一緒に異世界へ出てみると。
確かに、小さな子供が、龍の顎に溜まっていた水の中へと静かに沈みかけていたところであった。
顔色は白く、瀕死の状態に思われた。
壁には鉤のついた太い紐があった。それを上に投げるのに体力を使い果たしたのだろう。
元白を優先し、助けるために。
まだ子供である龍姿の元白など、人にとってみれば、ただの爬虫類にしか見えぬだろうに。
「陛下、濡れますよ。私が、」
「かまわん、元白の恩人だ」
子供を救い出そうとする朱赫を制し。わたしが水の中に入り、子供をすくい上げた。
水は、凍るほどに冷たかったが。
この子供は、か弱い人の身で、ここに入り。溺れていた元白を助けてくれたのだ。
まだ人に、かような慈悲の心があろうとは。
そして。
抱き上げて、わかった。
この芳香。
この子供こそ、わたしの唯一のツガイである、と。
「朱赫、これは、この子供は。わたしのツガイだ……!」
黄龍大帝となるべくして生まれ、400年。
ようやく、待ちに待ったツガイが現れたのだ。
よもや異世界に産まれ落ちていたとは思わなんだ。
道理で見つからぬ筈である。
「まことですか、では、急ぎ蘇生を施しましょう」
朱赫は子供の背負っていた荷物を抱え、飛んだ。
*****
急いで皇宮に戻り。
濡れた衣服を脱がせ、自分も脱ぎ、水気を飛ばす。
朱赫は元白に、とりあえず濡れた服を着替えなさい、と背を押した。
自分も濡れたので、着替えてくるという。
「陛下、彼の荷物は乾かして、倉庫に保管しておきますね」
「ああ、そうしてくれ」
もう、元の世界になど帰してやるつもりなどないが。
黒く美しい髪。色の白い肌。細い手足、華奢な身体。
どれもが魅力的に見える。
何と愛らしい子だろう。
たまらず、口付けてしまった。
柔らかい唇。
腕に抱き、氷のように凍えた身体を温めるが。
意識は戻らない。龍気を与えようにも、何故か拒否されてしまう。
仕方がない。このような小さな身体に、無体だとは思うが。
……直接、体内に精を注ぐしかあるまい。
足を開かせ、後孔を探る。
そこはあまりに小さく、狭い。
無理をすれば裂けてしまうだろう。解れるよう、術をかけておかねば。
「雷音、何してんの!?」
元白が戻って来てしまった。
「精を注ぎ、蘇生する」
龍の精は、万病の薬になる。瀕死であろうが、蘇生できるほど。
そのことは、元白も知っていた。
自分の恩人だから、自分が助けたいと云うが。
まだ子供の身では、精など出ないであろう。もはや時間がない。
そう告げると、泣き出した。
*****
慣らした後孔に、ゆっくりと挿入した。
中はまだ、ほのかにあたたかい。
辛うじて生きている、という状態である。
ツガイとの初めての情交は、意識のある状態でしたかったが。
仕方あるまい。
愛しいツガイよ。
早く、目を覚ませ。そなたの瞳を見せておくれ。
そう願い、精を放った。
しかし。
目を覚ました愛しいツガイには、つれなくされ。
わたしに抱かれるくらいなら死んだほうがましだった、とまで云われてしまった。
それでも、諦めることなどできない。
わたしの目にはもう、ツガイしか映らないのだから。
わたしのツガイの名は、深町望というらしい。
わたしには、名乗ってもくれなかった。
しかし朱赫は、望に職を与えることで、気付かれず、皇宮にその身を留まらせたのだ。
よい臣下を持った。
図書の管理に困っていた青峰も、感謝しているようである。
望は優秀だった。
*****
しばらく経ち。
精と共に注ぎ込んだ龍気が切れ、望は倒れた。
青峰が分けようと提案しようとしたのを遮り、追い払い。
たしは望を騙し、抱いた。
こうすることでしか、龍気を与えられないのだと。
望は感じていた。
故に、何度か身体を重ねれば、わたしのものになるだろうと考えたのだ。
しかし。
そのような目論見はあっさりと見破られ。怒った望は、墨国へ行った。
もはや、見限られたものと思ったが。
望はわたしを許してくれた。
奇跡のようである。
こんなわたしを、好いてくれたのだ。
望は人の身であるにも関わらず、魚石を曇りなく磨き上げるほど、美しく純粋な心の持ち主であった。
つまらぬ姦計などせず、素直に想いを伝えれば、それで良かったのだ。
そして、誓いの石の前で望はわたしの龍玉を受け入れ。
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