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登山していたら赤龍王のツガイにされました。

赤龍王のツガイ

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「ただいまー」

実家に帰ったら。
腰を抜かさんばかりに驚かれた。

うん、俺も永久の別れだと思ってた。


時間制限はあるけど、自分が着いていれば少しなら大丈夫だと朱赫が説明してる間に、荷物を取りに部屋に行った。
中国語のテキストと、菓子やパンのレシピ本。

そして、俺の宝物。

あ、青峰さんが好きそうな本も持っていくか。
ラノベ好きなんだよな。


部屋は、綺麗に掃除されていて。
でも、俺がいなくなった時のままだった。

胸が締め付けられるような感じがしたけど。……ここはもう、俺の帰る家ではないんだ。


*****


階段を降りてくと。
楽しげな笑い声が聞こえた。


「朔ちゃん、ピンクの龍なんだって?」
上の兄が笑いを噛み殺している。

朱赫、何の話してたの?

「すげえ見たい。絶対可愛いぞ」
下の兄も。うっせえ。


手土産に、俺が降らせた花を持ってきたそうだ。
縁起物なんだっけ?

それで、俺の龍姿の話になったのか。

「ほんとに男前の旦那様ねえ」
母は朱赫の美貌に釘付けである。

父は微妙な顔をしてる。


「あ、パンとか菓子作り、教わったの、あっちでもすごく役に立ってるよ。ありがとう」
「ほんと? 酵母持ってく?」
台所に行こうとしたけど。

「大丈夫。あっちで作ったから」
酵母は料理長が管理してくれてる。

「とても美味しかったです」
味を反芻してるのか、朱赫は、思わずみんなが見惚れてしまうような笑顔で言った。


「まあ、何だ。とにかく、……幸せそうで良かった」
父は洟を啜って。新聞で顔を隠した。

新聞、逆さだぞ?

「全身全霊をもって、幸せにすると誓います」
朱赫の宣言に、みんな頷いた。


セレブ生活はどうよー、などと兄達の質問攻めにあったりして。

そろそろ時間だというので、戻ることに。
一年に一度くらいは顔を出すと約束して。


またね、と言って家を出た。


*****


朱赫は俺の荷物を持ってくれるという。
つくづく優しいツガイである。大好き。……けっこう重いよ?


『これは?』
「教科書と、お菓子やパンのレシピと、青峰さんにあげる本と、アルバム」

俺の宝物だ。

赤ん坊の俺。子供の頃の俺。ほとんど病院での写真だが。
小学校の入学式、みんなで撮った写真。大学までの写真が貼ってある。

『子供の頃から可愛い』

病室での写真を開いて見せる。
「ここに写ってる子、もういないんだ」


俺以外の子は、みんな。
一人、また一人といなくなっていった。

友達がいなくなるのが怖くて。
しまいには、友達を作るのをやめていた。


自分だって、いつ”いなくなる”かわからなかったから。

大学でも、その癖は抜けなくて。
俺のことをサクヤンと呼んでいた、あいつの名前も覚えてない。


それで、いいんだ。


*****


夏国に戻ると。

目眩のように、くらっとした。
まだ、大丈夫な時間だったはずだけど。

疲れたのかな?


『朔也、』

朱赫に抱き締められて。
だんだん、楽になってきた。

ツガイに抱き締められて回復するなんて、便利な身体だな?


龍の精は、万病の薬にもなり、若さを保つという。
そのため、龍の男はかなり女からもてるようだ。

でも、不老長寿目当ての人間に狙われることもあるので、弱い個体は絶対に地上には降りないよう教育するとか。
本当に危ないんだな。


俺が事故で瀕死になった時も。
それで蘇生できるくらいの効果があったようだ。半死状態だった望ちゃんも、それで助かったとか。

でも、朱赫はさすがにあの状態じゃ勃たなかったと思う、と言った。

そりゃそうだ。
大勢のギャラリーの前で抱かれるのも、アレだよな……。

生命を分けて助けてくれた朱赫には、ほんと感謝しかない。


それと。異世界の人間が長くここに居るためには、龍気というものが必要で。
それは相手に受け取る気がないと、受け入れることができないという。今は龍玉があるから、与えられなくても大丈夫だというが。

さっき俺に、その龍気を流し込んだんだそうだ。
それで体力が回復したんだ。

朱赫は、最初この世界に俺を連れて来た時に、龍気を与えてみたという。
すんなり受け入れたので、もうすっかりツガイとして認められたとばかり思ってたらしい。

いや、言えよ。
異世界人の俺にそんな知識はないから。


精にも、龍気は豊富で。
望ちゃんは最初、陛下に騙されて抱かれてたという話だ。

エロテクに自信があったから、回数こなせば落とせる自信があったとか何とか。
バレた時にはすごい怒ってたって? 当たり前だよ。

よく受け入れる気になったなあ。懐がでかいにも程がある。


朱赫はそういう先人の失敗を見ていたから結婚式までは色々我慢していたんだ、と言いながら懐いてくるが。
それ、極端な例だからな?


*****


『……いい?』
抱き締められながらねだられて、頷く。

新婚だっていうのもあってか、隙あらばしようとする。
嫌じゃないから、いいけど。

さすがに明るいうちからだと、何となく罪悪感が芽生えるんだが。
まあいいか。


朱赫は香油を手にして。
いつものように慣らしていく。

『……そういえば、龍玉に願えば、ここ・・、濡れるようになるらしいよ』
ここ、と言いながら、中で指を動かされる。

え?
「う、嘘だろ? 男がそんな、……んっ、馬鹿、指動かすなって、」


人間が龍姿になれるくらいだし。願えば、そのくらいは可能だという。
陛下に、自分のツガイはそこまで自分を欲しがってくれたんだ、って散々自慢されたらしい。
思わず頭を抱えたくなった。

「陛下に忠告しといた方がいい。ベッドでのことを他人に言うのはマナー違反だから、嫌われるぞって」

『え、そうなの……!?』
びっくりしてるし。

龍の倫理感、どうなってるんだ。


「そうだよ。俺も聞かなかったことにしとくから。口止めしといた方がいいぞ」
『わかった……、』

残念そうに言うな。全くもう。


「いいから続き、」
朱赫の背に手を回して、頬にキスをすると。

嬉しそうに笑った。


*****


『……あれ?』

驚いたような声。
さすが、気付くの早いな。

俺も、願ってみたんだ。
受け入れるのに、香油とか使わないで済むように。

朱赫が喜ぶなら。
俺だって、出来る限りのことはしたいと思ってるんだからな。


『朔也……、』
「絶対、誰にも言うなよ?」

こくこくと頷いて。
ぎゅっと抱き締められる。

愛してるって? ……俺もだよ。


「ん、……っく、は、あ、あっ」
腰を、叩き付けるように中を穿たれて。それが、すごく気持ちいい。

『ああ、凄い。……吸い付いてくるのに、ぬるぬるだ』
そういうこと、言うなよ!

『朔也も、気持ちいいの? ここも中も、びしょびしょだね』
俺の性器を擦りながら、囁かれる。


ああもう!
龍がこんなにエロい生き物だなんて、知らなかった。

一年中発情可能なのは人間も同じだけど。
この精力でそれじゃ、たまったもんじゃないな。


『俺の可愛いツガイ。……朔也。何でこんなに愛おしいんだろう』

いくら抱いても飽きることがなくて。
むしろもっと抱きたくなると。


『ごめんね。……俺のせいで色々失って。それでも、朔也を手放せない』

「俺は何も失ってないよ。……大好きなツガイは得たけど」
家族よりも。元の生活よりも。

俺は、朱赫を選ぶよ。


『ああ、朔也……、没有你我君なしでは不能活生きていけない
俺も、そうだよ。

我无法ウォウーファ想象シャンシャン没有你的メイヨウニィダ世界シィジェ
貴方のいない世界なんて、想像できない。

「愛しているよ、朔也。私は君だけを、生涯愛し続ける」


朱赫は日本語で。俺は中国語。
ヘンだよな。

何だかくすぐったいが。
どうせ、誰も聞いてはいない。甘い言葉は、二人だけのものだ。


だから。
飽きるほどいっぱい、囁いて欲しい。

俺も同じだけ、返すから。




おわり
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