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黄龍大帝のツガイ
さよなら異世界
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俺は、龍の皇帝と結婚するってことを、軽く考えてたようだ。
まさか、自分がそんな長生きすることになるとか思ってなかったし。
龍のことも、何も知らなかった。
青峰に関連書類を出してもらって。
龍族の結婚や恋愛について、調べてみた。
逆鱗は、ツガイじゃなくても付けることは可能みたいだ。
結婚する相手は、必ずしも龍族とは限らない。
ツガイには目立つ印とかはなくて。
個々でこれだ! と感じる相手がツガイだとか。
インスピレーションかよ。
お互い勘違いだったら、どうするんだろうか。外せるのか、逆鱗。
運命のツガイであっても、相手が異種族の場合は断られることもあるとか。
その場合、生まれ変わるのを待つらしい。
何だよ、断れるのかよ。
絶対番わなくちゃいけないのかと思ってた。
*****
龍族はツガイとしか結婚しない生き物だけど、見つかるまではわりと自由に遊んでたりするらしい。
でも、ツガイを見つけたら、もう他に目移りは絶対にしないんだとか。
皇帝で、よりどりみどりなのに。雷音が後宮に妾とか置かなかったのは、いつか結ばれるツガイを悲しませたくないからだという理由だって。
純情か!
雷音が逆鱗を付けたのも、初めてのことだという。
雷音にしてみれば、待ちに待ったツガイだったわけだ。
そんな真剣なプロポーズだったのに。
こっちは愛も無いのにうっかり勢いで頷いちゃったとか、うっかりすぎるにもほどがある。
よく考えてみれば、あいつのツガイになるってことは。
ほぼ永遠に、あいつにヤられまくるってことじゃないか。
男の、嫁として。
ほだされてる場合じゃないだろ!?
俺に許可なく、勝手に逆鱗を付けたことにも怒らなくちゃいけなかったんだ。
首飾りを受け取って、特に何も考えず付けちゃってたけど。
あれで、ツガイの印を受け入れたと思われたんだよな。
迂闊すぎた。
もっと色々と、考えるべきだったのに。
「……う~~ん……やっぱ雷音との結婚はナシにしようかな」
『えええ!?』
青峰は、驚愕して本を取り落とした。
うろたえすぎじゃない?
「断りもなく勝手に逆鱗付けるような男は嫌かなって。あと冷静に考えてみたら、雷音のことを好きになれる気が全くしない」
『逆鱗については確かにそうですが、それはさすがに酷すぎませんか!?』
あ。
そういえば、青峰には言ってなかったんだっけ。
俺が今までこのフェロモン体質で、どれだけ嫌な目に遭って来たかを。
*****
山登りに至るまでの俺の半生を語った。
「……っていう訳で。俺にとってみれば雷音は別に命の恩人でも何でもないんだよね」
『はあ、それで、望殿がここの本を整理してくださることになったのですか……』
「青峰たちのおかげで、積極的に死にたい気持ちからは抜けたけど。永遠に男の嫁になる覚悟はないし、嫌だ」
でも。
俺がここにいられるのは、雷音のツガイだからって建前だし。
結婚しないとなると、龍気の補充は必要なんだよな。
どのみち、積みだ。
『んじゃ、あっちの世界に帰る?』
朱赫が、本棚の後ろから顔を出した。
立ち読みしてたようだ。
「え、戻してくれるの?」
青峰はおろおろして。
『夏王、そんな勝手に、』
『だって。本人にその気がないんじゃ、しょうがないじゃないか。こんなに嫌がってるんだよ?』
朱赫は肩を竦めて言った。
「ああ、生まれ変わりを待つのか。いいんじゃない? 次の人は雷音に惚れてくれればいいな」
『の、望殿……、』
図書室の整理はまだ終わってないけど。
分類の仕方を教えたので、後は自分でやってみるという。
俺の服や装備は、倉庫に保管してあった。
それに着替えて。
朱赫に、龍のあぎとまで連れてってもらう。
『さすがに水の中に放置するのは気が引けるから、山頂付近で降ろす、でいいよね?』
「うん。ありがとう朱赫」
『……陛下の心の安定が一番大事だからね。礼を言われることじゃないさ』
表情を曇らせた。
雷音を好きになれない俺とは、幸せにはならないだろうから。
生まれ変わりを待たせる、って判断したわけか。
臣下として、苦渋の決断だよな。
*****
ぶわ、と強い風が当たった。
見ると、龍のあぎとの中だった。
異世界から、あの山に戻って来たのか。
水溜りは、すっかり消えてなくなっていた。岩に染み出て抜けたのかな?
「ああ、元白はこの風に煽られて、水たまりに落ちたのか」
軽そうだったもんな。あのチビ龍。
『お恥ずかしい話で……はい、』
朱赫はピッケルとロープを回収して。
俺に渡してくれた。
「ありがと。これ首吊り用に買ったんだ。無いと困るとこだった」
『……え、死ぬ気なの?』
ぎょっとした顔してるけど。
「え、そのつもりで元の世界に戻したんじゃないの? 早く生まれ変わったほうがいいだろ?」
『いやいや、今すぐだなんて言ってない。人間なんて百年もしたら死ぬだろ? そんな早く死んでどうすんの!?』
「全財産この装備に換えたし。住むとこも職もないし。生きててもろくなことないから、この山に死にに来たんだって言ったじゃないか」
朱赫は唖然とした顔をして。
『……まいったな、そこまで嫌がってるのを戻すわけにもいかないし……かといって……う~ん、』
わしゃわしゃと頭をかいて。
その辺の足場に、俺を置いた。
『ちょっとここで待ってて。悪いようにはしないから。絶対、動かないで待っててくれ。な?』
と言って。
ひゅう、と飛んでいった。
何だろう。
何か他に、策でもあるのかな?
まさか、自分がそんな長生きすることになるとか思ってなかったし。
龍のことも、何も知らなかった。
青峰に関連書類を出してもらって。
龍族の結婚や恋愛について、調べてみた。
逆鱗は、ツガイじゃなくても付けることは可能みたいだ。
結婚する相手は、必ずしも龍族とは限らない。
ツガイには目立つ印とかはなくて。
個々でこれだ! と感じる相手がツガイだとか。
インスピレーションかよ。
お互い勘違いだったら、どうするんだろうか。外せるのか、逆鱗。
運命のツガイであっても、相手が異種族の場合は断られることもあるとか。
その場合、生まれ変わるのを待つらしい。
何だよ、断れるのかよ。
絶対番わなくちゃいけないのかと思ってた。
*****
龍族はツガイとしか結婚しない生き物だけど、見つかるまではわりと自由に遊んでたりするらしい。
でも、ツガイを見つけたら、もう他に目移りは絶対にしないんだとか。
皇帝で、よりどりみどりなのに。雷音が後宮に妾とか置かなかったのは、いつか結ばれるツガイを悲しませたくないからだという理由だって。
純情か!
雷音が逆鱗を付けたのも、初めてのことだという。
雷音にしてみれば、待ちに待ったツガイだったわけだ。
そんな真剣なプロポーズだったのに。
こっちは愛も無いのにうっかり勢いで頷いちゃったとか、うっかりすぎるにもほどがある。
よく考えてみれば、あいつのツガイになるってことは。
ほぼ永遠に、あいつにヤられまくるってことじゃないか。
男の、嫁として。
ほだされてる場合じゃないだろ!?
俺に許可なく、勝手に逆鱗を付けたことにも怒らなくちゃいけなかったんだ。
首飾りを受け取って、特に何も考えず付けちゃってたけど。
あれで、ツガイの印を受け入れたと思われたんだよな。
迂闊すぎた。
もっと色々と、考えるべきだったのに。
「……う~~ん……やっぱ雷音との結婚はナシにしようかな」
『えええ!?』
青峰は、驚愕して本を取り落とした。
うろたえすぎじゃない?
「断りもなく勝手に逆鱗付けるような男は嫌かなって。あと冷静に考えてみたら、雷音のことを好きになれる気が全くしない」
『逆鱗については確かにそうですが、それはさすがに酷すぎませんか!?』
あ。
そういえば、青峰には言ってなかったんだっけ。
俺が今までこのフェロモン体質で、どれだけ嫌な目に遭って来たかを。
*****
山登りに至るまでの俺の半生を語った。
「……っていう訳で。俺にとってみれば雷音は別に命の恩人でも何でもないんだよね」
『はあ、それで、望殿がここの本を整理してくださることになったのですか……』
「青峰たちのおかげで、積極的に死にたい気持ちからは抜けたけど。永遠に男の嫁になる覚悟はないし、嫌だ」
でも。
俺がここにいられるのは、雷音のツガイだからって建前だし。
結婚しないとなると、龍気の補充は必要なんだよな。
どのみち、積みだ。
『んじゃ、あっちの世界に帰る?』
朱赫が、本棚の後ろから顔を出した。
立ち読みしてたようだ。
「え、戻してくれるの?」
青峰はおろおろして。
『夏王、そんな勝手に、』
『だって。本人にその気がないんじゃ、しょうがないじゃないか。こんなに嫌がってるんだよ?』
朱赫は肩を竦めて言った。
「ああ、生まれ変わりを待つのか。いいんじゃない? 次の人は雷音に惚れてくれればいいな」
『の、望殿……、』
図書室の整理はまだ終わってないけど。
分類の仕方を教えたので、後は自分でやってみるという。
俺の服や装備は、倉庫に保管してあった。
それに着替えて。
朱赫に、龍のあぎとまで連れてってもらう。
『さすがに水の中に放置するのは気が引けるから、山頂付近で降ろす、でいいよね?』
「うん。ありがとう朱赫」
『……陛下の心の安定が一番大事だからね。礼を言われることじゃないさ』
表情を曇らせた。
雷音を好きになれない俺とは、幸せにはならないだろうから。
生まれ変わりを待たせる、って判断したわけか。
臣下として、苦渋の決断だよな。
*****
ぶわ、と強い風が当たった。
見ると、龍のあぎとの中だった。
異世界から、あの山に戻って来たのか。
水溜りは、すっかり消えてなくなっていた。岩に染み出て抜けたのかな?
「ああ、元白はこの風に煽られて、水たまりに落ちたのか」
軽そうだったもんな。あのチビ龍。
『お恥ずかしい話で……はい、』
朱赫はピッケルとロープを回収して。
俺に渡してくれた。
「ありがと。これ首吊り用に買ったんだ。無いと困るとこだった」
『……え、死ぬ気なの?』
ぎょっとした顔してるけど。
「え、そのつもりで元の世界に戻したんじゃないの? 早く生まれ変わったほうがいいだろ?」
『いやいや、今すぐだなんて言ってない。人間なんて百年もしたら死ぬだろ? そんな早く死んでどうすんの!?』
「全財産この装備に換えたし。住むとこも職もないし。生きててもろくなことないから、この山に死にに来たんだって言ったじゃないか」
朱赫は唖然とした顔をして。
『……まいったな、そこまで嫌がってるのを戻すわけにもいかないし……かといって……う~ん、』
わしゃわしゃと頭をかいて。
その辺の足場に、俺を置いた。
『ちょっとここで待ってて。悪いようにはしないから。絶対、動かないで待っててくれ。な?』
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