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幕間Ⅶ
記念日
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リンがこの世界、我が国に来て、もう5年になる。
この5年で、我が国はかなり発展した。
森の復活により製紙工場で紙が作られ、印刷工場で本を印刷する。それまで本の清書をしていた職人は皆、印刷工場で活躍している。
ゴムの加工も色々できるようになり、馬車にはゴムタイヤがつけられた。
靴底などの緩衝材だけでなく、ボールや風船などの遊び道具、”浄化”を持たない人用のコンドームなども作られた。
水も豊富に使えるようになり、自宅に風呂やシャワーを取り付ける一般家庭も出てきた。
トイレも水洗に替わり、殺菌消毒後堆肥にするアイデアは他国からも称賛された。
牧場では食肉用の牛、豚、鶏だけでなく、乳牛を多数育て。バターやチーズなどの乳製品も多く出回るようになった。
リンの希望で母体を酷使させないよう、乳牛一匹につき妊娠させるのは年に最大二回までと決め、生まれた子牛も人気で、子牛を見に人が集まるようになった。
サトウキビを栽培したので、塩湖の塩に加え、砂糖も安定供給されるようになり。
リンが様々な料理のレシピをスキート商会を通して発表したため、我が国だけでなく、周辺諸国の食生活も飛躍的に向上した。
最近はテングサを育て初め、あんみつや寒天ゼリーなどのスイーツが大人気だという。
*****
リンが”創造”した材料を増やす畑、加工する工場など。魔物との戦いで家や職を失った者の雇用にも役立っている。
スキート商会は、毎日忙しく。嬉しい悲鳴を上げている。
息子のラドクリフがリンを見る目が最近怪しいのが気になるところであるが。
リン本人は、冒険者協同組合からも一目置かれる最高レベルの冒険者となり、成犬姿のシロと共に狩りに出ては大物を狩ってくるという。
昨日も大蛇を討伐したらしく。
その肉で作ったという唐揚げをご馳走になった。皮は、鞄や財布などに加工するため、商会に預けたそうだ。
「旨い。蛇というから、骨っぽくて堅いと思っていたが。思ったり柔らかいね。あっさりした鶏肉のようだ」
「うん。あっさりしてるから、濃いめの下味付けて唐揚げにしてみたんだ」
肉を柔らかくするため、サッパロットの酵素を使ったという。
相変わらず、料理にこだわりを感じる。招かれざる客であろう私たちに、毎回手の込んだ料理を作ってくれる。
さすが調理師として10年以上のキャリア持ちだけある。
「そういえば、リンは5年前の今日、この世界に来たのだよね?」
誕生日はいつなのだろう?
とりあえず、毎年リンが来たこの日には、贈り物を持ってきているが。
*****
「どれどれ。わあ、レベル76だって」
リンはステータス画面を確認しているようだ。
「5年でそれは早いね」
「えへへ。……ウィルはレベルいくつ?」
リンは冒険者レベルのようだが。私の場合、魔物や盗賊の討伐だけでなく、国王としての功績でもレベルが上がるからな。
「私? 先日169になったよ」
「ええ、倍以上差があるじゃん……」
拗ねているリンも可愛い。
成長して、30センチほど背が伸びたが。相変わらず可愛い。
「あ、15歳になってた。こっちじゃ今日が誕生日みたい」
「何だと!?」
思わず腰を浮かしかけたが。まだ食事中なので、おとなしく座る。
「お酒解禁だ。わーい」
「誕生日だと教えてくれれば、祝いの品を用意したのに……」
「ウィルのは知ってる。1月1日だよね。リューセーもそうだった」
覚えていてくれるのは嬉しいが。
流星については、もう忘れて欲しい。黒歴史のようなものだ。
「あ、じゃあお祝いに歌って欲しいな。ウィルは声も良いし。”forever~星降る夜に、君と~”がいい」
よりによって。作詞作曲榊原流星のラブソングをリクエストするとは。
「とんだ拷問だ!」
*****
何処から聞いたか。
今日で成人だと聞きつけたスペンサー夫妻は、奮発して豚の丸焼きと、奥方はケーキを焼いて祝いに来た。
メイヤー師は教会の神職たち、冒険者協同組合からは組合長と副組合長、リンの顔見知りの冒険者がそれぞれ祝いの品を手に訪れ。スキート商会からはラドクリフが代表で酒や料理を持って来た。
今日はリンの誕生日である。
なるべく主役は働かせないようにしよう、との気遣いから、皆がこぞってリンから教わった料理を作ったのだが。
料理好きなリンは、我慢できなかったようで。プリンやゼリーなどのデザートを出していた。
この5年で、我が国はかなり発展した。
森の復活により製紙工場で紙が作られ、印刷工場で本を印刷する。それまで本の清書をしていた職人は皆、印刷工場で活躍している。
ゴムの加工も色々できるようになり、馬車にはゴムタイヤがつけられた。
靴底などの緩衝材だけでなく、ボールや風船などの遊び道具、”浄化”を持たない人用のコンドームなども作られた。
水も豊富に使えるようになり、自宅に風呂やシャワーを取り付ける一般家庭も出てきた。
トイレも水洗に替わり、殺菌消毒後堆肥にするアイデアは他国からも称賛された。
牧場では食肉用の牛、豚、鶏だけでなく、乳牛を多数育て。バターやチーズなどの乳製品も多く出回るようになった。
リンの希望で母体を酷使させないよう、乳牛一匹につき妊娠させるのは年に最大二回までと決め、生まれた子牛も人気で、子牛を見に人が集まるようになった。
サトウキビを栽培したので、塩湖の塩に加え、砂糖も安定供給されるようになり。
リンが様々な料理のレシピをスキート商会を通して発表したため、我が国だけでなく、周辺諸国の食生活も飛躍的に向上した。
最近はテングサを育て初め、あんみつや寒天ゼリーなどのスイーツが大人気だという。
*****
リンが”創造”した材料を増やす畑、加工する工場など。魔物との戦いで家や職を失った者の雇用にも役立っている。
スキート商会は、毎日忙しく。嬉しい悲鳴を上げている。
息子のラドクリフがリンを見る目が最近怪しいのが気になるところであるが。
リン本人は、冒険者協同組合からも一目置かれる最高レベルの冒険者となり、成犬姿のシロと共に狩りに出ては大物を狩ってくるという。
昨日も大蛇を討伐したらしく。
その肉で作ったという唐揚げをご馳走になった。皮は、鞄や財布などに加工するため、商会に預けたそうだ。
「旨い。蛇というから、骨っぽくて堅いと思っていたが。思ったり柔らかいね。あっさりした鶏肉のようだ」
「うん。あっさりしてるから、濃いめの下味付けて唐揚げにしてみたんだ」
肉を柔らかくするため、サッパロットの酵素を使ったという。
相変わらず、料理にこだわりを感じる。招かれざる客であろう私たちに、毎回手の込んだ料理を作ってくれる。
さすが調理師として10年以上のキャリア持ちだけある。
「そういえば、リンは5年前の今日、この世界に来たのだよね?」
誕生日はいつなのだろう?
とりあえず、毎年リンが来たこの日には、贈り物を持ってきているが。
*****
「どれどれ。わあ、レベル76だって」
リンはステータス画面を確認しているようだ。
「5年でそれは早いね」
「えへへ。……ウィルはレベルいくつ?」
リンは冒険者レベルのようだが。私の場合、魔物や盗賊の討伐だけでなく、国王としての功績でもレベルが上がるからな。
「私? 先日169になったよ」
「ええ、倍以上差があるじゃん……」
拗ねているリンも可愛い。
成長して、30センチほど背が伸びたが。相変わらず可愛い。
「あ、15歳になってた。こっちじゃ今日が誕生日みたい」
「何だと!?」
思わず腰を浮かしかけたが。まだ食事中なので、おとなしく座る。
「お酒解禁だ。わーい」
「誕生日だと教えてくれれば、祝いの品を用意したのに……」
「ウィルのは知ってる。1月1日だよね。リューセーもそうだった」
覚えていてくれるのは嬉しいが。
流星については、もう忘れて欲しい。黒歴史のようなものだ。
「あ、じゃあお祝いに歌って欲しいな。ウィルは声も良いし。”forever~星降る夜に、君と~”がいい」
よりによって。作詞作曲榊原流星のラブソングをリクエストするとは。
「とんだ拷問だ!」
*****
何処から聞いたか。
今日で成人だと聞きつけたスペンサー夫妻は、奮発して豚の丸焼きと、奥方はケーキを焼いて祝いに来た。
メイヤー師は教会の神職たち、冒険者協同組合からは組合長と副組合長、リンの顔見知りの冒険者がそれぞれ祝いの品を手に訪れ。スキート商会からはラドクリフが代表で酒や料理を持って来た。
今日はリンの誕生日である。
なるべく主役は働かせないようにしよう、との気遣いから、皆がこぞってリンから教わった料理を作ったのだが。
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