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Ⅷ
異世界で、過ごした時を思う。
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俺は15年と少し前。日本の地方公務員、保育園で調理師をしていた瀧 凛太郎として、地味に生きていた。
35歳の誕生日。仕事帰りに、倒れかけた顔見知りの子供が乗った自転車を起こそうとしていたら。停車中の自動車をすり抜けてきたバイクに撥ねられたところまでは記憶してる。
俺はその事故で死亡したらしい。子供が巻き込まれなかったのは良かったけど。
まさかそれが、世界の混乱を願う悪い神様の介入による想定外の事故だったとは。
神様に、本来俺は倒れかけた自転車に乗ってたシングルマザーの女性とそれが縁で結婚して、幸せな人生を送るはずだったと言われて。
お詫びとして、神様から色々チートな能力を与えられた上で。
異世界に転生することになったんだ。
*****
異世界では、容姿が変わることもなく、10歳に若返った自分の姿だった。
何もない荒野、リズリーで佇んでいたら。
その国の王子様であるウィリアムに保護されて、首都ロチェスターへ連れて行かれた。
そこで色々話を聞いて。魔法のある世界だけど、日本とは違って色々未発達な部分もあったので、神様のくれた能力が役立ちそうで良かった、と思った。
そのまま城で保護されそうになったものの、生前からの夢だったスローライフを送りたいと言ったら。
魔物の集団発生により死の荒野になったリズリーの土地を譲ってもらい、森などを蘇らせ、そこに理想の家を創って住むことになった。
しばらくして。
ウィリアムも俺と同じ、日本人の転生者だと知った。
でも、彼の場合は神様が転生させた訳じゃなかった。
神様から直接自分に合った職業を宣託される成人の儀式の時に、悪い神様によって前世の記憶を思い出させられた上に、世に混乱を招くようにと強力な闇魔法を与えられて。しばらくして送られてくる”神の使い”を誑かすように命じられたという。
ウィリアムの前世は何と、俺もファンだった榊原 流星。
芸能界の闇に絶望して自殺した、超大手芸能事務所ダニーズの元トップアイドルだった。
ウィリアムと事前に相談したおかげでおかしなものを”創造”することもなく、発展に繋げていった。
*****
ウィリアムだけでなく、騎士のオズワルドやウィリアムの側近オーソン。
スキート商会の人たちに、神職のプレストン。
森林管理人のスペンサー夫妻、冒険者協同組合の人たちなど。
外見が子供だったこともあってか、色々な人から目を掛けてもらって。
神様から番犬として贈られた狛犬のシロと一緒に、酪農家や冒険者として過ごした。
そして、この世界では成人となる15歳の誕生日。
大勢が集まって、盛大なパーティーを行ってくれた。
皆が帰った後、ウィリアムは俺がリクエストしたリューセーの歌を歌ってくれて。
ちょっとした誤解で、ウィリアムと身体を重ねることになった。
でも、自分が思ってたよりウィリアムのことを好きだと気づいて、めでたく両想いとわかった。
ウィリアムからプロポーズされて。
住み慣れたリズリーから王城のある首都ロチェスターへ移り住むことになったんだ。
白馬じゃなくて黒馬に乗ってるけど。
王子様に見染められて結婚、なんてまるでシンデレラストーリーのようだ。惜しむらくは両方とも男だってことだけど。
この世界、神様に祈れば狛犬が赤ちゃんを運んでくれるそうなので問題ないという親切さ。
俺なんて、神様からもらった能力がなければその辺にいるような、地味な日本人男子なのに。……いや、他に日本人男子的な外見の子はこの世界に居ないんだけど。
何でこんなことになっちゃったんだろう?
まあ、何かあると”神託”で助言してくれるくらい親切な神様が何も言わなかったってことは、このまま結婚しちゃってもいいのかな……?
*****
「そりゃ、あからさまに両想いでしたし。神様も野暮なことは言わないでしょ」
オズワルドは呆れたように言った。
初めて会った時も、ずっとウィリアムの顔ばっかり見てて、オズワルドとオーソンの存在に気付かなかった?
そこまであからさまだった?
ウィリアムも長く続いた魔物との戦いと、その最中に家族を失ったせいで。
それまで暗い顔ばっかりしていたのに、俺と逢ってからはずっと楽しそうだったとか。
そうなんだ……。
俺が見たの、ほぼ笑顔だったから気が付かなかった。
35歳の誕生日。仕事帰りに、倒れかけた顔見知りの子供が乗った自転車を起こそうとしていたら。停車中の自動車をすり抜けてきたバイクに撥ねられたところまでは記憶してる。
俺はその事故で死亡したらしい。子供が巻き込まれなかったのは良かったけど。
まさかそれが、世界の混乱を願う悪い神様の介入による想定外の事故だったとは。
神様に、本来俺は倒れかけた自転車に乗ってたシングルマザーの女性とそれが縁で結婚して、幸せな人生を送るはずだったと言われて。
お詫びとして、神様から色々チートな能力を与えられた上で。
異世界に転生することになったんだ。
*****
異世界では、容姿が変わることもなく、10歳に若返った自分の姿だった。
何もない荒野、リズリーで佇んでいたら。
その国の王子様であるウィリアムに保護されて、首都ロチェスターへ連れて行かれた。
そこで色々話を聞いて。魔法のある世界だけど、日本とは違って色々未発達な部分もあったので、神様のくれた能力が役立ちそうで良かった、と思った。
そのまま城で保護されそうになったものの、生前からの夢だったスローライフを送りたいと言ったら。
魔物の集団発生により死の荒野になったリズリーの土地を譲ってもらい、森などを蘇らせ、そこに理想の家を創って住むことになった。
しばらくして。
ウィリアムも俺と同じ、日本人の転生者だと知った。
でも、彼の場合は神様が転生させた訳じゃなかった。
神様から直接自分に合った職業を宣託される成人の儀式の時に、悪い神様によって前世の記憶を思い出させられた上に、世に混乱を招くようにと強力な闇魔法を与えられて。しばらくして送られてくる”神の使い”を誑かすように命じられたという。
ウィリアムの前世は何と、俺もファンだった榊原 流星。
芸能界の闇に絶望して自殺した、超大手芸能事務所ダニーズの元トップアイドルだった。
ウィリアムと事前に相談したおかげでおかしなものを”創造”することもなく、発展に繋げていった。
*****
ウィリアムだけでなく、騎士のオズワルドやウィリアムの側近オーソン。
スキート商会の人たちに、神職のプレストン。
森林管理人のスペンサー夫妻、冒険者協同組合の人たちなど。
外見が子供だったこともあってか、色々な人から目を掛けてもらって。
神様から番犬として贈られた狛犬のシロと一緒に、酪農家や冒険者として過ごした。
そして、この世界では成人となる15歳の誕生日。
大勢が集まって、盛大なパーティーを行ってくれた。
皆が帰った後、ウィリアムは俺がリクエストしたリューセーの歌を歌ってくれて。
ちょっとした誤解で、ウィリアムと身体を重ねることになった。
でも、自分が思ってたよりウィリアムのことを好きだと気づいて、めでたく両想いとわかった。
ウィリアムからプロポーズされて。
住み慣れたリズリーから王城のある首都ロチェスターへ移り住むことになったんだ。
白馬じゃなくて黒馬に乗ってるけど。
王子様に見染められて結婚、なんてまるでシンデレラストーリーのようだ。惜しむらくは両方とも男だってことだけど。
この世界、神様に祈れば狛犬が赤ちゃんを運んでくれるそうなので問題ないという親切さ。
俺なんて、神様からもらった能力がなければその辺にいるような、地味な日本人男子なのに。……いや、他に日本人男子的な外見の子はこの世界に居ないんだけど。
何でこんなことになっちゃったんだろう?
まあ、何かあると”神託”で助言してくれるくらい親切な神様が何も言わなかったってことは、このまま結婚しちゃってもいいのかな……?
*****
「そりゃ、あからさまに両想いでしたし。神様も野暮なことは言わないでしょ」
オズワルドは呆れたように言った。
初めて会った時も、ずっとウィリアムの顔ばっかり見てて、オズワルドとオーソンの存在に気付かなかった?
そこまであからさまだった?
ウィリアムも長く続いた魔物との戦いと、その最中に家族を失ったせいで。
それまで暗い顔ばっかりしていたのに、俺と逢ってからはずっと楽しそうだったとか。
そうなんだ……。
俺が見たの、ほぼ笑顔だったから気が付かなかった。
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