神様の手違いで死んだ俺、チート能力を授かり異世界転生してスローライフを送りたかったのに想像の斜め上をいく展開になりました。

篠崎笙

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幕間Ⅴ

ベッドとカレーの話で盛り上がる

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リンはスペンサー夫妻のために、家を作ってくれるという。
スペンサー夫妻は、狩猟の腕もさることながら、人柄も信頼できる。安心してリンのことを任せられる人材である。

「以前は森の中に管理小屋があったのだが。魔物の襲撃で壊されてしまってね。その上、管理する森自体がなくなり、困っていたのだ」

「うん。どういうのがいいかな? こっちの建物、中はお城とギルドしか見てない……」
「書くものがあれば図説できるが」

「はい、」
紙と鉛筆を出されたので。
簡単に、管理小屋の外観と間取りを描いた。

辺境で暮らすためには、馬と馬小屋、魔物や猛獣用の武器保管庫も必要である。


「盗賊を警戒するなら、いっそのこと、小規模な村にしてしまえばいいのでは? 教会も出来るのだし、冒険者協同組合の支部を作れば冒険者も集まり、防犯になる」
「あ、やっぱり来ちゃうんだ……」

「ああ。道を挟んだ向こう側を希望していたよ」


メイヤー師はもうすでに、職人を引き連れて来ていた。
あの勢いでは、教会は近日中に完成するだろう。


*****


「ウィルは、何か欲しいものとかある?」

あまり色々なお願いをするのは遠慮するべきだろうが。
譲れないものがある。

「個人的には、ベッドの寝心地をどうにかしたいね」


リンもやはり、この世界のベッドはいまいちだと思っていたようだ。
あれでも、前世の記憶を思い出してから、どうにか改善し、前よりは寝心地が良くなった状態なのだが。いかんせん、材料が足らない。

「ウォーターベッドやエアベッドは?」
「残念ながら、この世界には、ゴムやプラスチックが存在しない」

皮をつぎはぎしてマットレスを作っても、水漏れや強度的な問題がある。
プラスチック製品どころか。そもそも、この世界には石油や石炭も存在しないのだ。地球とは成り立ちが違うのだろう。


「……ゴムの木、生やしちゃってもいいかな?」
「いいとも。許可しよう」

リンは、ゴムの加工法も知っているそうだ。
ならば”ゴム製品”を作ってもらわずとも、ゴムの加工は、この国の新たな産業となるだろう。
それは大変ありがたいことである。


「ああ、食事のリクエストをしても良いだろうか?」

「俺に作れるものなら」
リンはそう言って頷いた。相変わらず謙虚である。

「おそらく、作り慣れてると思うよ? カレー。たまにどうしてもカレー食べたくなる時があってね……」

「ああ……、」
同情のこもった目で見られた。


「保育園だとお子様用の、小麦粉を使ったとろみのある甘いカレーだったよ」
「ああ、給食のカレーか。いいな」

「マサラを使った本格的なのも作れるけど。ナンやチャパティ、ラッシーも」
「本格的なのもいいね。贅沢だ」


*****


リンは、カレーについても詳しかった。
インドの地方料理がイギリスでカレーライスになり、日本にそれが渡り、今のように手軽に食べられるようになったそうだ。

こちらでも、いつかカレーライスが手軽に食べられるようになって欲しいものだ。
ライスならば、この世界でも味はいまいちだが存在する。カレーが美味ければ米の味くらい誤魔化せるだろう。

米の品種改良も進めていくべきか?


カレーの具材はシーフードか、豚肉か牛肉か。それとも鶏肉か。いっそのこと野菜も何も煮込んだ具無し派か。
後乗せでトッピングでもいい。揚げ物やチーズを載せてもいい。

野菜の種類も、基本はニンジン、玉ねぎ、ジャガイモだと思うが。
ジャガイモを入れるか入れないかでも、カレーにうるさい人は細かく争うようだ。

私はカレーなら何でもいい派である。
ナンでもライスでもいいし、具も何種類かあれば食べ飽きない。


出汁だしを使った、蕎麦屋とかで見る和風カレーもいいね」
「うん、とろっとしてて、美味しいよね」

カレーはライスだけでなく、カレー南蛮のように麺にからめても旨いだろう。カレーパンやタンドリーチキンも好きだ。

リンはタンドリーチキンも作れるという。聞いただけで、涎が出てきそうだ。
早く食べたいものだ。今から楽しみだ。

リンが作るものなら、どれも間違いなく美味だろう。


異世界に生まれ変わって。
まさかまた、カレーの話ができるとは予想だにしなかった。

それが、同じ日本人で、私の前世を知る人だとは。

運命の悪戯か。
それとも、どちらかの神の意図だろうか?
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