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異世界で、コンサート。

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「では、お返しに、」

ウィリアムは、シェイカーとカクテルグラスを浄化して。
さっきのパルフェタムールとジン、レモン果汁を入れて振った。

おお、シェイカーを振る姿も様になってる。
うわあ、かっこいい……。

これはモテるに決まってるよ!


「今宵の月のような君へ」
と、ウインクして。

花を添えたカクテルグラスをこちらへ滑らせた。ブルームーンだ。


さっぱりした口当たり。喉を滑る、キリっとした味わい。氷が均一で、欠片とか残ってないし。
目分量だったのに、ちょっと悔しいくらい美味しい。


こんなイケメンが、自分だけにカクテルを作ってくれるなんて。
女の子だったらイチコロだろう。

世の中不公平だ……! とチート能力持ちが言ってみる。


*****


それから、面白がったオズワルド達が色々なカクテルにチャレンジしだした。
物凄いまずいのやら、奇跡みたいに美味しいカクテルを生み出したけど、レシピが不明だったりして。

ビールやウイスキーの樽が空になった頃、酒宴は解散になった。


ラドクリフとか、すっかりべろんべろんに見えたのに。
皆、ちゃんとテーブルの上の皿やコップを片付けていく理性があったのに驚く。

アルコール耐性、強いのかな……。俺はまだ、身体がぽかぽかしてる。


残ったのは、当然のようにウィリアムと。
オズワルドとオーソン、プレストンといういつものメンツだった。

「では、そろそろリンのお願いを叶えてあげようか」
と言って。
アコースティックギターを頼まれたので、出した。

もしかして。
歌ってくれるの?


うわあ、ドキドキする。
椅子に腰かけて、ギターを調弦してる姿もかっこいいとかずるい。


ギターの旋律が、静かに流れる。
ベストアルバムにしか収録されてない、アコースティックバージョンだ。


*****


流星群の降る夜。大好きな”君”と二人で海に行って。砂浜に寝転がって満点の星空を見上げる、という内容の歌だ。
さすがに日本語じゃなくて、こっちの言葉にして歌ってるけど。

やっぱり、ウィリアムも、すごくいい声だ。リューセーにも負けてない。っていうか、ぶっつけ本番の生歌でこれって、相当上手いんじゃないか?
シロも傍に寄ってきて。うっとりと聴き惚れているようだ。


でも。こっちを見つめながら歌ってくれるのは。

何ていうか。
ものすごく、贅沢なんだけど!

ウィリアムの歌う”君”が、まるで、自分に向かって言ってるみたいで。落ち着かない気分になってしまう。


歌はサビに入った。
「君だけを愛している。心からそう思うよ」


うわあ。
そういえばこれ、ラブソングだった! これは恥ずかしい。

一番好きな曲とはいえ。
なんて歌をリクエストしてしまったんだ。俺ってば。


そりゃウィリアムだって、お酒が入ってでもないとできないよな。結構な量、飲んでた。

それでも音程が狂わないとか、さすがプロだ。
ギターの腕だって、衰えてないし。


ウィリアムには申し訳ないけど。
やっぱり、またこの歌が聴けて、嬉しい。


*****


「……星降る夜に、君と。永遠に……」

ウィリアムの長くて綺麗な指が、最後の音を弾いて。
夢のような時間が終わってしまった。


しばらく、余韻を味わうように。しんと静まり返っていた。


「陛下、こんな特技があったんですね!」
「素晴らしい!」
オズワルドとオーソンだけでなくプレストンも興奮して、立ち上がって拍手している。

「リン、」
ウィリアムは。どうだった? という風に首を傾けた。

あ、いけない。
つい、ぼーっとしてしまった。お礼を言わなきゃ。


「ありがとう。ほんともう、最高の、誕生日プレゼントだった……!」
リューセーガチ勢にタコ殴りにされても本望って感じだ。幸せ過ぎて、昇天しそうなくらい。

「ふふ、惚れ直したかな?」
頭を撫でられて。

「大好き……!」
思わず、ぎゅっと抱き着いてしまった。


ウィリアムは、驚いたように目を瞬かせて。
抱き返された。


*****


ついうっかり、ほとばしるファン心が出てしまったけど。
目の前であんな素晴らしい生歌を聴いたら、誰だってこうなると思う。


「おお、おめでとうございます」
「良かったですね、陛下」
「ああ、なるほど……。どうか、お幸せに」
皆、口々にお祝いしてくれている。


うん。
これまで生きてきた中で、一番幸せな誕生日だ。
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