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Ⅵ
異世界で、誕生日を祝われる。
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「あ、15歳になってた。こっちじゃ今日が誕生日みたい」
そういえば5年前の今日、この世界に来たんだよね、とウィリアムに言われて。
久しぶりにステータス画面を見て、気づいた。
どうやら俺の誕生日は、この世界に来た日に設定されているのだと。
俺が死んだのは、ちょうど35歳になった日。誕生日だった。
あっちでは9月15日だったけど、こっちの世界では5月1日で、だいぶずれてた。
一年365日、1月から12月まであって。暦があまり変わらないのは助かった。全然違ったら混乱するし。
でも、誕生日が変わってたのに今頃気づくなんて、俺もうっかりだなあ。
*****
「何だと!?」
国王になっても相変わらずうちにご飯を食……会議をしに来てるウィリアムが反応した。
キラキラした王子様だったウィリアムも、もう22歳か。
今でもキラキラしてるけど。
「お酒解禁だ。わーい」
ここでは15歳で成人なので、もう大人だ。
中身はおっさんなのに小さな子ども扱いは、なかなか辛いものがあったな……。
15歳になっても、あまり背は伸びてない。若返っただけで、肉体は前世とそっくりだからかな?
「誕生日だと教えてくれれば、祝いの品を用意したのに……」
いや、毎年、この国に来てくれた記念日だとか言って色々貰ってるから。もう充分です。
プレストンなんか、お祭りみたいに教会を挙げて盛り上げようとするし。
「ウィルのは知ってる。1月1日だよね。リューセーもそうだった」
リューセーは大晦日のカウントダウンライブで祝われてたし。
新年のお祝いと一緒に王様の誕生日おめでとう、と祝うので嫌でも覚える。嫌じゃないけど。
「あ、じゃあお祝いに歌って欲しいな。ウィルは声も良いし。”forever~星降る夜に、君と~”がいい」
作詞作曲、榊原流星。美少年 Ⅴの中でも一番好きな曲だ。
「とんだ拷問だ!」
*****
俺が今日で成人だと聞きつけたスペンサー夫妻は、豚の丸焼きとケーキを焼いて祝いに来てくれた。
プレストンをはじめ教会の皆や冒険者協同組合の知り合い、スキート商会からはラドクリフも来て。
ウッドデッキはお客さんでいっぱいになった。
大勢のお客さんに興奮したシロは、庭を走り回って皆の顔をほころばせた。
オズワルドとオーソンも、おめでとうと言ってくれた。
こんなに誕生日を祝ってもらえるなんて、前世を入れても初めてだ。
皆で、俺がレシピを発表したメニューをいっぱい作ってくれた。
カレーやシチュー、ハンバーグ。サンドイッチも。
今日は主役だから、と言われてメインディッシュまでは我慢したけど。
デザートはケーキ一つじゃ足りないだろうし。フルーツと生クリームをたっぷり盛ったプリンやゼリーを大量に作って振舞った。
それから、普段はあまり使わないように自重してるけど。今日は特別だ。こっちにはまだないものだし。
”創造”で、発砲日本酒に、ビール、ウィスキーの樽をいくつか出した。
ついでにカクテル用のリキュールとジュース、ソーダ水と水も。
シェイカーにクレームドカカオとグリーンペパーミント、フレッシュクリームを1/3ずつ入れて振る。
冷たくて、チョコミントみたいに甘いカクテル。グラスホッパーだ。
「乾杯、」
「成人おめでとう!」
「ん、美味しい」
久しぶりというか。こっちでは初めての酒になる。
「それは何ですか?」
「えーと、果実酒とかを混ぜた、カクテルっていうお酒」
で、いいかな。古代ローマからあったという説もあるし。説明が面倒だ。
「可愛いバーテンさん、私にも何か一杯ご馳走してくれないかね?」
ウィリアムに声を掛けられて。
「ジンライムとかバイオレットフィズならすぐ出来るよ」
シェイカーは腕がだるくなるからと、簡単なのを勧める俺だった。
「では、バイオレットフィズを」
皆、首を傾げている。
何語だよって感じだよね。
トールグラスに氷を入れて。ジンとパルフェタムールを無糖炭酸水で割って。レモンジュースとシュガーシロップを少し入れて、炭酸が飛ばない程度に軽く混ぜる。
菫の匂いがする、さっぱりしたカクテルだ。
「はいどうぞ、」
「ありがとう。……うん、美味しいよ」
ウィリアムは一口飲んで、微笑んだ。
思わず見惚れてしまうくらい、綺麗な笑顔だった。
そういえば5年前の今日、この世界に来たんだよね、とウィリアムに言われて。
久しぶりにステータス画面を見て、気づいた。
どうやら俺の誕生日は、この世界に来た日に設定されているのだと。
俺が死んだのは、ちょうど35歳になった日。誕生日だった。
あっちでは9月15日だったけど、こっちの世界では5月1日で、だいぶずれてた。
一年365日、1月から12月まであって。暦があまり変わらないのは助かった。全然違ったら混乱するし。
でも、誕生日が変わってたのに今頃気づくなんて、俺もうっかりだなあ。
*****
「何だと!?」
国王になっても相変わらずうちにご飯を食……会議をしに来てるウィリアムが反応した。
キラキラした王子様だったウィリアムも、もう22歳か。
今でもキラキラしてるけど。
「お酒解禁だ。わーい」
ここでは15歳で成人なので、もう大人だ。
中身はおっさんなのに小さな子ども扱いは、なかなか辛いものがあったな……。
15歳になっても、あまり背は伸びてない。若返っただけで、肉体は前世とそっくりだからかな?
「誕生日だと教えてくれれば、祝いの品を用意したのに……」
いや、毎年、この国に来てくれた記念日だとか言って色々貰ってるから。もう充分です。
プレストンなんか、お祭りみたいに教会を挙げて盛り上げようとするし。
「ウィルのは知ってる。1月1日だよね。リューセーもそうだった」
リューセーは大晦日のカウントダウンライブで祝われてたし。
新年のお祝いと一緒に王様の誕生日おめでとう、と祝うので嫌でも覚える。嫌じゃないけど。
「あ、じゃあお祝いに歌って欲しいな。ウィルは声も良いし。”forever~星降る夜に、君と~”がいい」
作詞作曲、榊原流星。美少年 Ⅴの中でも一番好きな曲だ。
「とんだ拷問だ!」
*****
俺が今日で成人だと聞きつけたスペンサー夫妻は、豚の丸焼きとケーキを焼いて祝いに来てくれた。
プレストンをはじめ教会の皆や冒険者協同組合の知り合い、スキート商会からはラドクリフも来て。
ウッドデッキはお客さんでいっぱいになった。
大勢のお客さんに興奮したシロは、庭を走り回って皆の顔をほころばせた。
オズワルドとオーソンも、おめでとうと言ってくれた。
こんなに誕生日を祝ってもらえるなんて、前世を入れても初めてだ。
皆で、俺がレシピを発表したメニューをいっぱい作ってくれた。
カレーやシチュー、ハンバーグ。サンドイッチも。
今日は主役だから、と言われてメインディッシュまでは我慢したけど。
デザートはケーキ一つじゃ足りないだろうし。フルーツと生クリームをたっぷり盛ったプリンやゼリーを大量に作って振舞った。
それから、普段はあまり使わないように自重してるけど。今日は特別だ。こっちにはまだないものだし。
”創造”で、発砲日本酒に、ビール、ウィスキーの樽をいくつか出した。
ついでにカクテル用のリキュールとジュース、ソーダ水と水も。
シェイカーにクレームドカカオとグリーンペパーミント、フレッシュクリームを1/3ずつ入れて振る。
冷たくて、チョコミントみたいに甘いカクテル。グラスホッパーだ。
「乾杯、」
「成人おめでとう!」
「ん、美味しい」
久しぶりというか。こっちでは初めての酒になる。
「それは何ですか?」
「えーと、果実酒とかを混ぜた、カクテルっていうお酒」
で、いいかな。古代ローマからあったという説もあるし。説明が面倒だ。
「可愛いバーテンさん、私にも何か一杯ご馳走してくれないかね?」
ウィリアムに声を掛けられて。
「ジンライムとかバイオレットフィズならすぐ出来るよ」
シェイカーは腕がだるくなるからと、簡単なのを勧める俺だった。
「では、バイオレットフィズを」
皆、首を傾げている。
何語だよって感じだよね。
トールグラスに氷を入れて。ジンとパルフェタムールを無糖炭酸水で割って。レモンジュースとシュガーシロップを少し入れて、炭酸が飛ばない程度に軽く混ぜる。
菫の匂いがする、さっぱりしたカクテルだ。
「はいどうぞ、」
「ありがとう。……うん、美味しいよ」
ウィリアムは一口飲んで、微笑んだ。
思わず見惚れてしまうくらい、綺麗な笑顔だった。
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