神様の手違いで死んだ俺、チート能力を授かり異世界転生してスローライフを送りたかったのに想像の斜め上をいく展開になりました。

篠崎笙

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異世界で、生命について考える。

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伝言のついでに、プレストンに水を所望された。
マイコップ持参だった。


「井戸の水より、リン様のお創りになられた聖水の方が格段に美味なもので」

湖が出来て、地下水量も増やしたので。教会や管理人小屋、農家の近くに井戸を設置することができた。
これで飲み水には困らないだろう、と安心してたのに。

プレストンの話を聞いた神職見習いや信者やらが、どうか聖水をお恵み下さいと通ってくるのはちょっと困ってる。


あの・・水が出る水道を作るべきだろうか。
峠とか、山にある湧き水みたいにして、ここからご自由にどうぞ、みたいな感じで。もうそれで行こう。


「シロ様も、リン様の聖水が一番ですよね~?」
「キャン!」
デッキで水を飲んでるシロに話しかけてる。

シロも別に返事しなくていいから。


*****


シロと一緒に、森で冒険者として素材採取や魔物や害獣退治などのクエストをこなしたり。
近くの畑で採れた野菜を分けてもらって、それで料理を作って振舞ったり。

そうしているうちに、あっという間に一年が過ぎていた。


ウィリアムは、前国王と第一王子の死を発表して王座を継いだ。
18歳の王様だ。

ワイバーンに見張り塔を壊された辺りから、薄々気付いてた国民もいたようだけど。
ウィリアムなりに、国王を継ぐにあたって、まずは復興が先だという目標があったので、それを遂げるまでは継がないでいたそうだ。


この一年のうちに、キングスレイは随分発展したと思う。
”創造”の力だけじゃなくて。ウィリアムと相談して色々考えたのが良かったんだと思う。

でも、うちに泊まった時、添い寝するのだけはやめて欲しい。全裸で。
そんなに嫌じゃないのが困る。


「シロ、おいで」
「ワオン!」

一年経っても大きくならないので、成長が遅いのかと思ってたら。魔物が現れた時に大きくなったからびっくりした。
マラミュートの成犬にしか見えないけど、クマよりも大きいので背中にも乗れる。


家に帰ると、ふわもこな子犬姿になる。
どっちの姿もカッコイイしカワイイので、ご近所さんからもアイドルみたいに人気だ。

実際にアイドルだった王子……じゃなかった国王様も、人気なんだけど。
人前でも気にせず俺のことを猫可愛がりするもんだから、少年趣味だって噂になってた。


*****


スキート商会からは定期的にラドクリフ少年が幌馬車で来て、消耗品などを届けてくれたり、買い取ってくれたりしている。
乳牛とニワトリはうちの庭で飼ってるので、うちが買うのは主に他の肉や穀類、塩などだ。

本当は、俺の能力があれば自給自足生活も可能だけど。
一方的に稼ぐだけじゃなく、経済を回さないといけないし。

「毎度。新しいお菓子を思いついたら教えてくれよな」
「まあ追々考えとく」


最近は、畑で作ったサトウキビと湖で育ててるテングサが人気だ。
俺が寒天で作るスイーツのレシピを発表したら、国内外から注文が来るようになったとか。

あんみつやトコロテンは喉越しが最高だって。

テングサも、本当は棒寒天にして渡した方が取り扱いしやすいんだろうけど。テングサの加工場もできたそうなので、素材のまま渡している。サトウキビもだ。
こうした新素材の流通で、魔物の大発生で家や職を失った人達にはすごく感謝されてると聞いた。
でもそれは、そうなるよう口添えしてくれたウィリアムのお陰なんだけど。


先日は、うっかり”乳牛”という、子牛を産まなくてもずっと乳を出すという牛を作ってしまって、罪深いことをしてしまった。

休みなく妊娠させられるよりはいいのかな、と思うけど。
牛乳の安定供給には、色々越えなければいけないハードルがあるんだな。

それを考えたらニワトリとか、食肉になる動物の問題とかあるから。いっそ食材全部を”創造”で作ってしまいたいけど。
それはそれで何か違う気がするし。


俺みたいな能力があるならともかく。
人間は、何かを殺さずに生きることは不可能だ。

身体の中では毎日微生物が生き死にしてるし。野菜を育てる時にも、害虫を殺してる。
豚や牛にも知能はあるし、魚にだって痛覚はある。食べることは殺すことだ。

でも、自分だけお綺麗でいようとは思わない。
植物や動物、あらゆる命に感謝して、頂こうと思う。
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