45 / 71
Ⅵ
異世界で、生命について考える。
しおりを挟む
伝言のついでに、プレストンに水を所望された。
マイコップ持参だった。
「井戸の水より、リン様のお創りになられた聖水の方が格段に美味なもので」
湖が出来て、地下水量も増やしたので。教会や管理人小屋、農家の近くに井戸を設置することができた。
これで飲み水には困らないだろう、と安心してたのに。
プレストンの話を聞いた神職見習いや信者やらが、どうか聖水をお恵み下さいと通ってくるのはちょっと困ってる。
あの水が出る水道を作るべきだろうか。
峠とか、山にある湧き水みたいにして、ここからご自由にどうぞ、みたいな感じで。もうそれで行こう。
「シロ様も、リン様の聖水が一番ですよね~?」
「キャン!」
デッキで水を飲んでるシロに話しかけてる。
シロも別に返事しなくていいから。
*****
シロと一緒に、森で冒険者として素材採取や魔物や害獣退治などのクエストをこなしたり。
近くの畑で採れた野菜を分けてもらって、それで料理を作って振舞ったり。
そうしているうちに、あっという間に一年が過ぎていた。
ウィリアムは、前国王と第一王子の死を発表して王座を継いだ。
18歳の王様だ。
ワイバーンに見張り塔を壊された辺りから、薄々気付いてた国民もいたようだけど。
ウィリアムなりに、国王を継ぐにあたって、まずは復興が先だという目標があったので、それを遂げるまでは継がないでいたそうだ。
この一年のうちに、キングスレイは随分発展したと思う。
”創造”の力だけじゃなくて。ウィリアムと相談して色々考えたのが良かったんだと思う。
でも、うちに泊まった時、添い寝するのだけはやめて欲しい。全裸で。
そんなに嫌じゃないのが困る。
「シロ、おいで」
「ワオン!」
一年経っても大きくならないので、成長が遅いのかと思ってたら。魔物が現れた時に大きくなったからびっくりした。
マラミュートの成犬にしか見えないけど、クマよりも大きいので背中にも乗れる。
家に帰ると、ふわもこな子犬姿になる。
どっちの姿もカッコイイしカワイイので、ご近所さんからもアイドルみたいに人気だ。
実際にアイドルだった王子……じゃなかった国王様も、人気なんだけど。
人前でも気にせず俺のことを猫可愛がりするもんだから、少年趣味だって噂になってた。
*****
スキート商会からは定期的にラドクリフ少年が幌馬車で来て、消耗品などを届けてくれたり、買い取ってくれたりしている。
乳牛とニワトリはうちの庭で飼ってるので、うちが買うのは主に他の肉や穀類、塩などだ。
本当は、俺の能力があれば自給自足生活も可能だけど。
一方的に稼ぐだけじゃなく、経済を回さないといけないし。
「毎度。新しいお菓子を思いついたら教えてくれよな」
「まあ追々考えとく」
最近は、畑で作ったサトウキビと湖で育ててるテングサが人気だ。
俺が寒天で作るスイーツのレシピを発表したら、国内外から注文が来るようになったとか。
あんみつやトコロテンは喉越しが最高だって。
テングサも、本当は棒寒天にして渡した方が取り扱いしやすいんだろうけど。テングサの加工場もできたそうなので、素材のまま渡している。サトウキビもだ。
こうした新素材の流通で、魔物の大発生で家や職を失った人達にはすごく感謝されてると聞いた。
でもそれは、そうなるよう口添えしてくれたウィリアムのお陰なんだけど。
先日は、うっかり”乳牛”という、子牛を産まなくてもずっと乳を出すという牛を作ってしまって、罪深いことをしてしまった。
休みなく妊娠させられるよりはいいのかな、と思うけど。
牛乳の安定供給には、色々越えなければいけないハードルがあるんだな。
それを考えたらニワトリとか、食肉になる動物の問題とかあるから。いっそ食材全部を”創造”で作ってしまいたいけど。
それはそれで何か違う気がするし。
俺みたいな能力があるならともかく。
人間は、何かを殺さずに生きることは不可能だ。
身体の中では毎日微生物が生き死にしてるし。野菜を育てる時にも、害虫を殺してる。
豚や牛にも知能はあるし、魚にだって痛覚はある。食べることは殺すことだ。
でも、自分だけお綺麗でいようとは思わない。
植物や動物、あらゆる命に感謝して、頂こうと思う。
マイコップ持参だった。
「井戸の水より、リン様のお創りになられた聖水の方が格段に美味なもので」
湖が出来て、地下水量も増やしたので。教会や管理人小屋、農家の近くに井戸を設置することができた。
これで飲み水には困らないだろう、と安心してたのに。
プレストンの話を聞いた神職見習いや信者やらが、どうか聖水をお恵み下さいと通ってくるのはちょっと困ってる。
あの水が出る水道を作るべきだろうか。
峠とか、山にある湧き水みたいにして、ここからご自由にどうぞ、みたいな感じで。もうそれで行こう。
「シロ様も、リン様の聖水が一番ですよね~?」
「キャン!」
デッキで水を飲んでるシロに話しかけてる。
シロも別に返事しなくていいから。
*****
シロと一緒に、森で冒険者として素材採取や魔物や害獣退治などのクエストをこなしたり。
近くの畑で採れた野菜を分けてもらって、それで料理を作って振舞ったり。
そうしているうちに、あっという間に一年が過ぎていた。
ウィリアムは、前国王と第一王子の死を発表して王座を継いだ。
18歳の王様だ。
ワイバーンに見張り塔を壊された辺りから、薄々気付いてた国民もいたようだけど。
ウィリアムなりに、国王を継ぐにあたって、まずは復興が先だという目標があったので、それを遂げるまでは継がないでいたそうだ。
この一年のうちに、キングスレイは随分発展したと思う。
”創造”の力だけじゃなくて。ウィリアムと相談して色々考えたのが良かったんだと思う。
でも、うちに泊まった時、添い寝するのだけはやめて欲しい。全裸で。
そんなに嫌じゃないのが困る。
「シロ、おいで」
「ワオン!」
一年経っても大きくならないので、成長が遅いのかと思ってたら。魔物が現れた時に大きくなったからびっくりした。
マラミュートの成犬にしか見えないけど、クマよりも大きいので背中にも乗れる。
家に帰ると、ふわもこな子犬姿になる。
どっちの姿もカッコイイしカワイイので、ご近所さんからもアイドルみたいに人気だ。
実際にアイドルだった王子……じゃなかった国王様も、人気なんだけど。
人前でも気にせず俺のことを猫可愛がりするもんだから、少年趣味だって噂になってた。
*****
スキート商会からは定期的にラドクリフ少年が幌馬車で来て、消耗品などを届けてくれたり、買い取ってくれたりしている。
乳牛とニワトリはうちの庭で飼ってるので、うちが買うのは主に他の肉や穀類、塩などだ。
本当は、俺の能力があれば自給自足生活も可能だけど。
一方的に稼ぐだけじゃなく、経済を回さないといけないし。
「毎度。新しいお菓子を思いついたら教えてくれよな」
「まあ追々考えとく」
最近は、畑で作ったサトウキビと湖で育ててるテングサが人気だ。
俺が寒天で作るスイーツのレシピを発表したら、国内外から注文が来るようになったとか。
あんみつやトコロテンは喉越しが最高だって。
テングサも、本当は棒寒天にして渡した方が取り扱いしやすいんだろうけど。テングサの加工場もできたそうなので、素材のまま渡している。サトウキビもだ。
こうした新素材の流通で、魔物の大発生で家や職を失った人達にはすごく感謝されてると聞いた。
でもそれは、そうなるよう口添えしてくれたウィリアムのお陰なんだけど。
先日は、うっかり”乳牛”という、子牛を産まなくてもずっと乳を出すという牛を作ってしまって、罪深いことをしてしまった。
休みなく妊娠させられるよりはいいのかな、と思うけど。
牛乳の安定供給には、色々越えなければいけないハードルがあるんだな。
それを考えたらニワトリとか、食肉になる動物の問題とかあるから。いっそ食材全部を”創造”で作ってしまいたいけど。
それはそれで何か違う気がするし。
俺みたいな能力があるならともかく。
人間は、何かを殺さずに生きることは不可能だ。
身体の中では毎日微生物が生き死にしてるし。野菜を育てる時にも、害虫を殺してる。
豚や牛にも知能はあるし、魚にだって痛覚はある。食べることは殺すことだ。
でも、自分だけお綺麗でいようとは思わない。
植物や動物、あらゆる命に感謝して、頂こうと思う。
50
お気に入りに追加
1,861
あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
胸キュンシチュの相手はおれじゃないだろ?
一ノ瀬麻紀
BL
今まで好きな人どころか、女の子にも興味をしめさなかった幼馴染の東雲律 (しののめりつ)から、恋愛相談を受けた月島湊 (つきしま みなと)と弟の月島湧 (つきしまゆう)
湊が提案したのは「少女漫画みたいな胸キュンシチュで、あの子のハートをGETしちゃおう作戦!」
なのに、なぜか律は湊の前にばかり現れる。
そして湊のまわりに起こるのは、湊の提案した「胸キュンシチュエーション」
え?ちょっとまって?実践する相手、間違ってないか?
戸惑う湊に打ち明けられた真実とは……。
DKの青春BL✨️
2万弱の短編です。よろしくお願いします。
ノベマさん、エブリスタさんにも投稿しています。

白雪姫の継母の夫に転生したっぽいんだが妻も娘も好きすぎるんで、愛しい家族を守るためにハッピーエンドを目指します
めぐめぐ
ファンタジー
※完結保証※
エクペリオン王国の国王レオンは、頭を打った拍子に前世の記憶――自分が井上拓真という人間であり、女神の八つ当たりで死んだ詫びとして、今世では王族として生まれ、さらにチート能力を一つ授けて貰う約束をして転生したこと――を思い出した。
同時に、可愛すぎる娘が【白雪姫】と呼ばれていること、冷え切った関係である後妻が、夜な夜な鏡に【世界で一番美しい人間】を問うている噂があることから、この世界が白雪姫の世界ではないかと気付いたレオンは、愛する家族を守るために、破滅に突き進む妻を救うため、まずは元凶である魔法の鏡をぶっ壊すことを決意する。
しかし元凶である鏡から、レオン自身が魔法の鏡に成りすまし、妻が破滅しないように助言すればいいのでは? と提案され、鏡越しに対峙した妻は、
「あぁ……陛下……今日も素敵過ぎます……」
彼の知る姿とはかけ離れていた――
妻は何故破滅を目指すのか。
その謎を解き明かし、愛する家族とのハッピーエンドと、ラブラブな夫婦関係を目指す夫のお話。
何か色々と設定を入れまくった、混ぜるな危険恋愛ファンタジー
※勢いだけで進んでます! 頭からっぽでお楽しみください。
※あくまで白雪姫っぽい世界観ですので、「本来の白雪姫は~」というツッコミは心の中で。
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。
★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします
*
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!?
しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です!
めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので!
本編完結しました!
『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編をはじめましたー!
他のお話を読まなくても大丈夫なようにお書きするので、気軽に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

小悪魔系世界征服計画 ~ちょっと美少年に生まれただけだと思っていたら、異世界の救世主でした~
朱童章絵
BL
「僕はリスでもウサギでもないし、ましてやプリンセスなんかじゃ絶対にない!」
普通よりちょっと可愛くて、人に好かれやすいという以外、まったく普通の男子高校生・瑠佳(ルカ)には、秘密がある。小さな頃からずっと、別な世界で日々を送り、成長していく夢を見続けているのだ。
史上最強の呼び声も高い、大魔法使いである祖母・ベリンダ。
その弟子であり、物腰柔らか、ルカのトラウマを刺激しまくる、超絶美形・ユージーン。
外見も内面も、強くて男らしくて頼りになる、寡黙で優しい、薬屋の跡取り・ジェイク。
いつも笑顔で温厚だけど、ルカ以外にまったく価値を見出さない、ヤンデレ系神父・ネイト。
領主の息子なのに気さくで誠実、親友のイケメン貴公子・フィンレー。
彼らの過剰なスキンシップに狼狽えながらも、ルカは日々を楽しく過ごしていたが、ある時を境に、現実世界での急激な体力の衰えを感じ始める。夢から覚めるたびに強まる倦怠感に加えて、祖母や仲間達の言動にも不可解な点が。更には魔王の復活も重なって、瑠佳は次第に世界全体に疑問を感じるようになっていく。
やがて現実の自分の不調の原因が夢にあるのではないかと考えた瑠佳は、「夢の世界」そのものを否定するようになるが――。
無自覚小悪魔ちゃん、総受系愛され主人公による、保護者同伴RPG(?)。
(この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる