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異世界で、会議する

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神職バートルアンプレストンと神職見習い数人。森の管理人、スペンサー夫妻がご近所さんになった。


それからしばらくして。
もう死の荒野ではなくなったリズリーの空き地を農地にするため、いくつかの世帯が引っ越してきた。
予定地は、今すぐでも農地にできるように加工済みだ。

貯水池や湖も出来て、これで水には困らなくなったと喜ばれているそうだ。

塩湖も、そこから採れる塩は上質だし。景観もすばらしく。
今や観光名所にもなってるとか。


時速70キロ以上で走る馬で一時間半、馬車で二時間はかかる距離なのに。
ウィリアムやオズワルド、オーソンは毎日のようにこっちに顔を出してはご飯を食べて帰って行った。晩御飯だけじゃなく、昼ご飯も食べていく時もある。
忙しい時でも、最低一週間に二回は来る有り様。

一応、巡回するって名目で来ているそうだ。
本職はいいのか訊いたら、俺の料理を食べたらもう満足できない胃袋になっちゃったんだって。
そう言われたら、嫌な気はしないというか、正直、嬉しい。

でも、毎日のように外食じゃ、結婚した時に奥さんに怒られないかな? 今は皆独身で、結婚しないのは神職のプレストンくらいだけど。
奥さんもここに連れてくる気だったりして。


*****


生まれ変わって、この世界に来て。
そろそろ生活の基盤も出来てきたと思う。

まだ完全には慣れてないけど。
俺も大人になったら、恋人とか作れるだろうか?

今度こそ、前世では邪魔された、幸せな結婚とやらが出来たらいいなあ。


せっかく国の代表が来てる訳だし。
国の発展に繋がるものを作る時は、ウィリアムと相談してから作ることにしてるので。

暇を見ては、何かと作戦会議だ。
オズワルドとオーソンには、席を外してもらっている。

というか、リビングルームでおやつを食べて待機してる。


書斎に本が欲しくなったし。スキート商会の協力のもと、試しにひとつ印刷会社を立ち上げてみることになった。

ウィリアムも凸版くらいは知ってたけど、何もない状態からやるのは大変なので二の足を踏んでたらしい。
記憶を取り戻してからほとんどずっと魔物と戦ってたそうだし。そんな暇もなかったんだろう。


「ウィルは、他に何か作りたいものとかある? さすがにパソコンとかは原理がわかんないから無理だと思うけど」
「では、電話も無理かな? あれば便利なのだけど」

電話か。スマフォじゃなく、古いやつなら作れることは作れる……と思う。
でも、さすがに中の仕組みまでは知らないし。そもそも電話回線が通じてない。

電話もパソコンも、電気がないと、ただの箱だ。


*****


「まずは発電所。それから変電所、電線が必要だよね……」
「発電か。そのことで我が国は大いに発展するだろうが。さすがにそこまでの改革は、やりすぎじゃないかな」

「だよねー、」
石炭や石油がない世界じゃ火力発電は難しい。
ダムを作って水力? 開発で、自然破壊とかになっちゃうかな。


「えー、『何でも望むものを作って良い、詳しく思い浮かべなくても問題ない』、だそうです」

ん?
プレストン? いつの間に会議に割り込んで来てたの?


「いつから聞いてたの?」
恐る恐る訊いたら。

「お二人がお話しされていた内容は、わたくしにはよくわかりませんでしたが。先ほど下った神託をお伝えしに参りました」


子供の頃から教会にいたので、自分は世間の物事を知らないため、自分は相談に乗れず残念だという。
何かの専門用語だと思ったようだ。

まあ、ある意味専門用語かも。異世界の。

それにしても。わざわざお勤め中の神職にそんな伝言を頼むとか。
内容といい、神様、過保護過ぎない? これが”神の加護”の力なのかな?


でも、言われてみれば。
発電機とか給湯器を作ってないのに、何故かお湯や電気がついてたのって、『電気を必要としない家電』を作っちゃってたのかもしれない。

水道も、水源の必要なかったり? プロパンガスのコンロは、火力が高いって知識があったから、作ったけど。
もしかして、ガスも別に必要なかったりする? 魔法で水も火も出せるわけだし。


そんなの、何でもアリじゃないか。
神様ってば、いくらお詫びだからって。とんでもない能力授けすぎだ。


……まあ、こうして神様の声が聴ける神職もいるし。もしやりすぎたら、注意してくれる……よな?
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