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Ⅴ
異世界で、カレーについて語る。
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「盗賊を警戒するなら、いっそのこと小規模な村にしてしまえばいいのでは? 教会も出来るのだし、冒険者協同組合の支部を作れば冒険者も集まり、防犯になる」
あ、やっぱり来ちゃうんだ。プレストン。
俺の住む家の、通りを挟んだ向こう側を希望してる? じゃあ、冒険者協同組合にも来てもらおうかな……。
全部自分でやろうとしないで。農作物は人を募集して望む作物を作ってもらう、という手もあるのか。
確かに、家庭菜園は趣味の範疇に留めておいたほうがいいかも。
仕事で使うものとなると、見た目も味も、かなりのクオリティを要求されるからな。
その道のプロに任せた方がいいか。雇用にも繋がるだろうし。
*****
「ウィルは、何か欲しいものとかある?」
「個人的には、ベッドの寝心地をどうにかしたいね」
ああ、やっぱり不満に思ってたんだ。本気の顔だった。
そうだよね。元の世界のベッドを知ってたら、この世界のベッドはもはや板だ。
あれでも、前世の記憶を思い出してからどうにか改善して、わりと寝心地が良くなった状態らしい。ウレタンとかないときついな。
羽毛は相当詰めないと敷布団にするには向かないし。
綿だって、ぎっしり詰めるとさすがに高額になってしまう。
綿とか布製品は輸入品がほとんどだっけ? 国同士の交易バランスを崩すのは駄目だろう。
”創造”の力は、なるべくなら、今ある職業の人たちを困らせないように使いたい。
「ウォーターベッドやエアベッドは?」
「残念ながら、この世界には、ゴムやプラスチックが存在しない」
そもそも、この世界には石油や石炭もない? 石炭紀が存在しない世界なのかな?
それじゃ手詰まりだ。
「……ゴムの木、生やしちゃってもいいかな?」
「いいとも。許可しよう」
あっさり次期国王の許可が下りた。
じゃあゴムの木生やしちゃおう。
ゴムの作り方なら、園児たちと一緒に観た教育番組でやってた。まさかそんな知識が役に立つとは思わなかった。何でも興味を覚えてみるものだな。
作るものリストでもメモしておこうかな。
*****
「ああ、食事のリクエストをしても良いだろうか」
「俺に作れるものなら」
頷いてみせる。
調理師としてのキャリアはけっこうあるし。料理番組とかもチェックしてよく見てたし。
給食に出るようなものならレシピが無くても、だいたいのメニューは作れる。あまりマニアックなのは知らないけど。
「おそらく、作り慣れてると思うよ? カレー。たまにどうしてもカレー食べたくなる時があってね……」
「ああ……、」
この世界、味付けって通常、塩を振るくらいなものだそうだし。
香辛料をこれでもかと使ったマサラから作ったカレーなんて、なかなかお目に掛かれないだろう。
前世の記憶を思い出してから、よく二年も我慢したと言いたい。
その上、つい最近までずっと、魔物と戦ってたみたいだし。
美味しいものいっぱい食べさせて、労いたい。
「保育園だとお子様用の、小麦粉を使ったとろみのある甘いカレーだったよ」
「ああ、給食のカレーか。いいな」
「マサラを使った本格的なのも作れるけど。ナンやチャパティ、ラッシーも」
「本格的なのもいいね。贅沢だ」
ウィリアムがすごく嬉しそうなので。
これは即急に作らないと、と使命感に燃える俺だった。
インドには皆が思い浮かべるようなカレーはなくて、香辛料を混ぜ合わせたカレー粉、マサラを基にした料理はあった。
いわゆるカレーライスの原型は、イギリスがインドを植民地支配してる時に伝わったものだ。
カレー粉を固めてルウにしたのは日本で、家庭でも手軽に作られるようになった。
シーフードか豚肉か牛肉か、ジャガイモは入れる派か。
出汁を使った蕎麦屋とかで見る和風カレーもいいな、などとカレーの話で大いに盛り上がったりしているうちに。
いつの間にか、眠ってしまったようだ。
*****
目が覚めたら、二階の寝室で寝ていた。
しかも、またしても、すっぽんぽんのウィリアムの腕の中で。
全裸の男に抱きしめられたまま寝ていたというのに。少しも嫌悪感が無いのがかえってこわい。
むしろぐっすり安眠してしまったくらいだ。
これがイケメンの包容力、抱かれたい芸能人ナンバーワン常連の実力というものか。
……って、ちょっと意味が違う気がするけど。
まあいいか。
あ、やっぱり来ちゃうんだ。プレストン。
俺の住む家の、通りを挟んだ向こう側を希望してる? じゃあ、冒険者協同組合にも来てもらおうかな……。
全部自分でやろうとしないで。農作物は人を募集して望む作物を作ってもらう、という手もあるのか。
確かに、家庭菜園は趣味の範疇に留めておいたほうがいいかも。
仕事で使うものとなると、見た目も味も、かなりのクオリティを要求されるからな。
その道のプロに任せた方がいいか。雇用にも繋がるだろうし。
*****
「ウィルは、何か欲しいものとかある?」
「個人的には、ベッドの寝心地をどうにかしたいね」
ああ、やっぱり不満に思ってたんだ。本気の顔だった。
そうだよね。元の世界のベッドを知ってたら、この世界のベッドはもはや板だ。
あれでも、前世の記憶を思い出してからどうにか改善して、わりと寝心地が良くなった状態らしい。ウレタンとかないときついな。
羽毛は相当詰めないと敷布団にするには向かないし。
綿だって、ぎっしり詰めるとさすがに高額になってしまう。
綿とか布製品は輸入品がほとんどだっけ? 国同士の交易バランスを崩すのは駄目だろう。
”創造”の力は、なるべくなら、今ある職業の人たちを困らせないように使いたい。
「ウォーターベッドやエアベッドは?」
「残念ながら、この世界には、ゴムやプラスチックが存在しない」
そもそも、この世界には石油や石炭もない? 石炭紀が存在しない世界なのかな?
それじゃ手詰まりだ。
「……ゴムの木、生やしちゃってもいいかな?」
「いいとも。許可しよう」
あっさり次期国王の許可が下りた。
じゃあゴムの木生やしちゃおう。
ゴムの作り方なら、園児たちと一緒に観た教育番組でやってた。まさかそんな知識が役に立つとは思わなかった。何でも興味を覚えてみるものだな。
作るものリストでもメモしておこうかな。
*****
「ああ、食事のリクエストをしても良いだろうか」
「俺に作れるものなら」
頷いてみせる。
調理師としてのキャリアはけっこうあるし。料理番組とかもチェックしてよく見てたし。
給食に出るようなものならレシピが無くても、だいたいのメニューは作れる。あまりマニアックなのは知らないけど。
「おそらく、作り慣れてると思うよ? カレー。たまにどうしてもカレー食べたくなる時があってね……」
「ああ……、」
この世界、味付けって通常、塩を振るくらいなものだそうだし。
香辛料をこれでもかと使ったマサラから作ったカレーなんて、なかなかお目に掛かれないだろう。
前世の記憶を思い出してから、よく二年も我慢したと言いたい。
その上、つい最近までずっと、魔物と戦ってたみたいだし。
美味しいものいっぱい食べさせて、労いたい。
「保育園だとお子様用の、小麦粉を使ったとろみのある甘いカレーだったよ」
「ああ、給食のカレーか。いいな」
「マサラを使った本格的なのも作れるけど。ナンやチャパティ、ラッシーも」
「本格的なのもいいね。贅沢だ」
ウィリアムがすごく嬉しそうなので。
これは即急に作らないと、と使命感に燃える俺だった。
インドには皆が思い浮かべるようなカレーはなくて、香辛料を混ぜ合わせたカレー粉、マサラを基にした料理はあった。
いわゆるカレーライスの原型は、イギリスがインドを植民地支配してる時に伝わったものだ。
カレー粉を固めてルウにしたのは日本で、家庭でも手軽に作られるようになった。
シーフードか豚肉か牛肉か、ジャガイモは入れる派か。
出汁を使った蕎麦屋とかで見る和風カレーもいいな、などとカレーの話で大いに盛り上がったりしているうちに。
いつの間にか、眠ってしまったようだ。
*****
目が覚めたら、二階の寝室で寝ていた。
しかも、またしても、すっぽんぽんのウィリアムの腕の中で。
全裸の男に抱きしめられたまま寝ていたというのに。少しも嫌悪感が無いのがかえってこわい。
むしろぐっすり安眠してしまったくらいだ。
これがイケメンの包容力、抱かれたい芸能人ナンバーワン常連の実力というものか。
……って、ちょっと意味が違う気がするけど。
まあいいか。
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