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Ⅱ
異世界で、経済を考える
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城に戻ると。
お腹が減っているだろう、と言われて。まず、食事することになった。
そういえばスキート商店でワインもどきを飲んだだけだった。微妙な味だったな……。
広い食堂。
食事の席にはウッドロー公爵と、ウィリアム、俺だけで。
オズワルドとオーソンは身分的な問題で同席できないという。ウィリアムは本気で自分の身分を隠す気があるのかと問いたい。
オズワルドは他の騎士と一緒に警備している。
食事は、ワインと黒くて硬めのパンと、目玉焼き。
野菜や肉などを食べやすい大きさにカットし、塩やスパイスを振って焼いたもの。カットフルーツ。
素材そのままの素朴な味というか。シンプルな料理が多かった。
普段から、こういう食事なんだそうだ。
肉などの質こそは多少上質でも、メニュー的には庶民が食べているものとそう変わらないらしい。
シチューやポトフなどの煮込み料理が少ないのは、水が足らないせいだろうか?
城内や街にも井戸はあるようだけど、全家庭でそれを潤沢に使えるほどの水量ではないそうだし。
硬いパンも、酪農が盛んでなく牛乳が貴重品な世界なら仕方ない。
やわらかいパンはバターをアホほど使うのだ。クロワッサンやパイ生地なんか、バターを塊でぶっ込む。フランス料理はダイエットには向いていない。
王宮だからといって、無駄遣いをしない姿勢は好感が持てるが。
慢性的な飲み水不足の問題は、早いところ解決させてあげたいところだ。
メニューにも、色々モノ申したい。調理師免許保持者の血が騒ぐ。
*****
衛生面はどうなのかと思い、訊いてみたら。
”浄化”の魔法が使えれば、身体を洗わなくても清潔は保てるという。
光魔法属性を持たない浄化希望者は、教会に行けばバートルアンがかけてくれる。
衛生上、最低週に一度は掛けるよう推奨しているそうだ。神職大忙しだな。
光魔法持ちのウィリアムが、では試しに、と、浄化魔法をかけてくれた。
確かに髪も肌も汚れが落ちて、さらっとしたような感じがする。
でも、お風呂入ってさっぱりしたい。
水の少ないこの国で、それは我儘だとわかってはいる。
他の人には言わず、自分だけこっそり風呂に入るのも可能だろう。
しかし。それは良心が咎める。飲み水にも困ってるのに、無駄遣いしてるようで。
せめて水不足問題を解決して。なんの憂いもなく入浴したいものだ。
「この辺に、川とか、水源はないの?」
「あるけど。遠いよ」
過去には城の近くにも川が通っていたけど、何度か災害があって埋まってしまったそうだ。
今残っている川は、国の外れにあって。ワインなどの工場もそこにあり、わざわざそこから運ばれてくるそうだ。
ほど近い森の中に泉もあることはあるが。
危険なモンスターが出るので、そこまで水を汲みに行く人もいないという。
「じゃあ、貯水池とか作っていい? 城壁の近くに空いてる土地があれば……、」
「……え?」
一瞬、戸惑ったような顔を見せたが。
「オーソン、」
ウィリアムはオーソンに、この辺りの地図を持ってくるよう命じた。
*****
ここ、キングスレイという国は、巨大な大陸の、ほぼ真ん中に位置していた。
海も遠く。塩は海水でなく他国からの輸入か、岩塩で賄っている。
降水確率はまあまあ高い方なので、植物は育つ。野菜や穀類、果物は順調に育つとのこと。
動物や魔物から食肉なども得られ、鉱山もあるので、武器作成は自国で賄える。
一部の果物や不足した野菜、布、宝石などは他国と取引している。隣国は広大な牧草地があり、羊を飼っているので布は潤沢だそうだ。ちょっと安心。
こう見ると、豊かな国に見えるけど。
この間起きた、魔物の大発生による損害はかなり大きなものだった。
魔物の数が極端に減り、広大な森が焼け野原になり。そのせいで回らなくなった産業もある。林業や鉄鋼、土木辺りかな。
魔物の素材を売って暮らしていた冒険者にも大打撃なわけか。
「じゃあ、明日はとりあえず貯水池の作成と、森の再生をしようと思います。いいですか?」
ウッドロー公爵の顔を見ると。
ウッドロー公爵は、慌ててウィリアムを見た。
「ああ。こちらからお願いしたいほどだ。やってもらえるとありがたい」
ウィリアムは、にっこり笑った。
最終決定はウィリアムが出すのに、ウッドロー公爵を間に挟む意味があるのだろうか。
まあいいか。
お腹が減っているだろう、と言われて。まず、食事することになった。
そういえばスキート商店でワインもどきを飲んだだけだった。微妙な味だったな……。
広い食堂。
食事の席にはウッドロー公爵と、ウィリアム、俺だけで。
オズワルドとオーソンは身分的な問題で同席できないという。ウィリアムは本気で自分の身分を隠す気があるのかと問いたい。
オズワルドは他の騎士と一緒に警備している。
食事は、ワインと黒くて硬めのパンと、目玉焼き。
野菜や肉などを食べやすい大きさにカットし、塩やスパイスを振って焼いたもの。カットフルーツ。
素材そのままの素朴な味というか。シンプルな料理が多かった。
普段から、こういう食事なんだそうだ。
肉などの質こそは多少上質でも、メニュー的には庶民が食べているものとそう変わらないらしい。
シチューやポトフなどの煮込み料理が少ないのは、水が足らないせいだろうか?
城内や街にも井戸はあるようだけど、全家庭でそれを潤沢に使えるほどの水量ではないそうだし。
硬いパンも、酪農が盛んでなく牛乳が貴重品な世界なら仕方ない。
やわらかいパンはバターをアホほど使うのだ。クロワッサンやパイ生地なんか、バターを塊でぶっ込む。フランス料理はダイエットには向いていない。
王宮だからといって、無駄遣いをしない姿勢は好感が持てるが。
慢性的な飲み水不足の問題は、早いところ解決させてあげたいところだ。
メニューにも、色々モノ申したい。調理師免許保持者の血が騒ぐ。
*****
衛生面はどうなのかと思い、訊いてみたら。
”浄化”の魔法が使えれば、身体を洗わなくても清潔は保てるという。
光魔法属性を持たない浄化希望者は、教会に行けばバートルアンがかけてくれる。
衛生上、最低週に一度は掛けるよう推奨しているそうだ。神職大忙しだな。
光魔法持ちのウィリアムが、では試しに、と、浄化魔法をかけてくれた。
確かに髪も肌も汚れが落ちて、さらっとしたような感じがする。
でも、お風呂入ってさっぱりしたい。
水の少ないこの国で、それは我儘だとわかってはいる。
他の人には言わず、自分だけこっそり風呂に入るのも可能だろう。
しかし。それは良心が咎める。飲み水にも困ってるのに、無駄遣いしてるようで。
せめて水不足問題を解決して。なんの憂いもなく入浴したいものだ。
「この辺に、川とか、水源はないの?」
「あるけど。遠いよ」
過去には城の近くにも川が通っていたけど、何度か災害があって埋まってしまったそうだ。
今残っている川は、国の外れにあって。ワインなどの工場もそこにあり、わざわざそこから運ばれてくるそうだ。
ほど近い森の中に泉もあることはあるが。
危険なモンスターが出るので、そこまで水を汲みに行く人もいないという。
「じゃあ、貯水池とか作っていい? 城壁の近くに空いてる土地があれば……、」
「……え?」
一瞬、戸惑ったような顔を見せたが。
「オーソン、」
ウィリアムはオーソンに、この辺りの地図を持ってくるよう命じた。
*****
ここ、キングスレイという国は、巨大な大陸の、ほぼ真ん中に位置していた。
海も遠く。塩は海水でなく他国からの輸入か、岩塩で賄っている。
降水確率はまあまあ高い方なので、植物は育つ。野菜や穀類、果物は順調に育つとのこと。
動物や魔物から食肉なども得られ、鉱山もあるので、武器作成は自国で賄える。
一部の果物や不足した野菜、布、宝石などは他国と取引している。隣国は広大な牧草地があり、羊を飼っているので布は潤沢だそうだ。ちょっと安心。
こう見ると、豊かな国に見えるけど。
この間起きた、魔物の大発生による損害はかなり大きなものだった。
魔物の数が極端に減り、広大な森が焼け野原になり。そのせいで回らなくなった産業もある。林業や鉄鋼、土木辺りかな。
魔物の素材を売って暮らしていた冒険者にも大打撃なわけか。
「じゃあ、明日はとりあえず貯水池の作成と、森の再生をしようと思います。いいですか?」
ウッドロー公爵の顔を見ると。
ウッドロー公爵は、慌ててウィリアムを見た。
「ああ。こちらからお願いしたいほどだ。やってもらえるとありがたい」
ウィリアムは、にっこり笑った。
最終決定はウィリアムが出すのに、ウッドロー公爵を間に挟む意味があるのだろうか。
まあいいか。
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