神様の手違いで死んだ俺、チート能力を授かり異世界転生してスローライフを送りたかったのに想像の斜め上をいく展開になりました。

篠崎笙

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異世界で、テストする。

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「ウィリアムさんは、何の魔法が得意なの?」

「ウィル、」
そう呼んでくれないと返事しないよ、などと言ってる。子供か。

まあいいか、ここは俺が譲ろう。

「……ウィル、は。何の魔法が得意なの?」
「雷が一番で、次に光と闇。少しだけ、火と土も使えるよ」
おお。すごいんだ。


ここには魔法属性を計測できる、特別な石があるそうだ。
その石に手をかざすと、その人の持っている属性によって石の色が変わるという。とても貴重なものらしい。


*****


ウィリアムは、このテストはできれば人の耳目のないところでしたいと言ったので。
応接室へ通されて。組合の人が、そこまでテストをする石を持ってきてくれた。


「こうするんだよ」
火魔法が得意だというオズワルドが、大きな白い石に、手をかざしてみせると。

石は、赤い色に明るく光った。少し、緑色も見える。これは風魔法の色らしい。

「わあ。……ウィルは?」
「さっき言ったとおりだよ。ほら」

強い紫の光に、白と黒。赤と茶が少し。
雷って、紫なんだ……。

ちょっとわくわくしながら、石に手をかざしてみる。


「あれ?」
……光らないんだけど。

「おかしいな。少なくとも、水魔法は確実に使えるのに」
ウィリアムも不思議そうだ。

”創造”の力だけってことかな、としょんぼりしていたら。


「いかがなさいました?」
組合所属だという魔法使いの人が顔を出した。

フード付きのローブ姿で木の杖を持った、いかにも魔法使いといった感じの人だ。
ローブの胸と背中には、組合のマークが入っている。

「あ、副組合長……、」
え? 偉い人?


*****


「魔法は使えるのに、石が反応しない? もしかしたら、無属性なのかもしれませんね」

「なるほど。その可能性があったな」
無属性というのは、どれも使えない、という意味ではなく。全種類の魔法が使える、とても貴重な人のことらしい。


じゃあちょっと試しに、的に向けて魔法を撃ってみましょう、と言われて。
人払いした練習場まで連れて行かれて。

副組合長やウィリアムたちが見本にやってくれたのを真似してやってみたら、全種類の魔法が出せた。

全種類の魔法が使えるなんて珍しい、冒険者協同組合に所属して賢者になりませんか、と熱心に誘われてしまったが。
今日は登録だけなので、とウィリアムが断った。


組合員の証として、赤い宝石のような石のついた金属製の腕輪を渡された。魔石だそうで。これに今日記述したりテストをした情報が入ってるらしい。
おお、異世界の技術だ。

この魔石は国民全員が持っている身分証明書みたいなもので。
冒険者組合に入っていれば、他の国へ行く時など、関所でこれを提示すれば入国税を払わなくて済むそうだ。犯罪歴のある人は門でチェックに引っ掛かって、入国を断られたりすることもあるとか。

次にロチェスターに入る時、これを提示すれば無料になる、だって?

ここって本来、入るのにお金がかかる地域だったのか。観光地みたいなもの? ウィリアム達と一緒だったので顔パスだったから、わからなかった。
王様の住む城がある街だし。無料にして誰でも入れるようにすると、犯罪者とかも入りやすくなるからかな?


「君は一生、免税だよ」
後で魔石に情報を追加しておく、と言われた。

いや、そんな特別扱いはしなくていいから……。


*****


外に出たら、もう陽が落ちかけていた。
そろそろ夕食の時間だというので、城に戻ることになった。

皆もこの腕輪を持ってるのかな、と思って腕を見たが、つけてなかった。


「私は、これに入ってる」
ウィリアムは、自分の剣の柄に嵌っている宝石を見せた。オズワルドも剣。

オーソンは、片眼鏡だという。皆、普段自分が持ち歩くものに魔石をつけるそうだ。

「騎士は寝る時も剣を手放さないものですからね」
オズワルドはそう言って、自分の剣を撫でた。ベッドの横に立てかけておいて、起きてすぐ手に取れるようにしておくそうだ。


「でも今は大々的に魔物を討伐した後なので、そこまで警戒しなくて大丈夫ですよ」
俺を見て、オズワルドは慌てて付け足した。

治安的に不安だと思われたら困るからかな?
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