神様の手違いで死んだ俺、チート能力を授かり異世界転生してスローライフを送りたかったのに想像の斜め上をいく展開になりました。

篠崎笙

文字の大きさ
上 下
6 / 71

異世界で、偉い人から話を聞く

しおりを挟む
広い荒野を抜けると、ちらほらと畑や民家が増えてきた。


この世界というか、この地域での建物は、主に木材で出来ているようだ。
道路は土だが、まっすぐ綺麗にならされている。あまりにも均等に整い過ぎているので、魔法でも使ったのだろうか、と思ったくらいだ。

それにしても、この距離の道路を均一に舗装するのは苦労しそうだ。よほどこの国の管理体制が整っているのだろう。国土交通省というか、専門の整備係がいるんだろう。


こうして、騎士たちが見回りしてくれているようだし。
これから自分が住むだろう国の治安が良さそうで、安心した。


*****


まっすぐな道を一時間半ほど走って、俺が連れて行かれたのは。

城下町、というのだろうか?
高い城壁に囲まれた、大きめの街だった。

城壁の正門らしき所にで門番をしていた兵たちからは最敬礼で迎えられ。
両脇には石造りの建物が並んでいる石畳の大通りを抜けた先には、これまた石造りの立派な城があった。イメージ的にドイツとかにありそうな、頑健な城だ。冬とか寒そう。


城門の前で。
後ろからひょい、と抱き上げられて、地面に降ろされた。

オズワルドとオーソンは、ウィリアムの馬を挟むように導きながら、うまやへ行ってしまった。
一人にしないで……、という気持ちで二人を見送っていたら。

ウィリアムが、慰めるように俺の肩をぽん、と叩いた。
自分がいるから心配するな、という意味だろうが。

ほら、一緒にいて落ち着く顔ってあるじゃないか。
ウィリアムはあまりに顔が整い過ぎてるから、こうして傍に居ると、何だか落ち着かない気持ちになってくる。ドキドキするというか。


ウィリアムと二人、兵士に案内されて。
城の、応接間っぽい部屋に通される。

そこで、エルマー・キンバリー=ウッドローと名乗る小太りのおっさんを紹介された。
身分は公爵だそうだ。

見るからに高価そうなフリルのシャツに刺繍の入った上着。口ひげが立派だ。


現在、この国の王様は外遊中で不在なので。
ウッドローという領地を長年治めているこの経験豊富な公爵が国王代理を務めているという。

そして俺は、”神の使い”だから当然の如く、国賓扱いなんだそうだ。


ひええ。
そんな大事おおごとにしないで欲しい。国の片隅でひっそりと農業とかできればそれで充分だから!


*****


この国のことはキンバリー公爵が説明してくれるというので。
まずはこの城の名前を訊いてみた。

この国がキングスレイという名だというのは、さっき聞いた。
で、ここはその中心地である、ロチェスター。

ならロチェスター城というのかと思ったが、残念ながら、この城には名前がついてないそうだ。ただの王城。
まあ江戸城や姫路城とかも、当時、地元の人からはそんな名称では呼ばれなかったみたいだし。そんなものか。


最初に俺がいたのは、リズリーという名の、僻地というか、この国の外れで。
かつては大きく豊かな森があった場所だそうだ。

そして、リズリーの森では、数年前に魔物が異常発生して。
この国の兵隊だけじゃなく、国内外から冒険者や傭兵まで集め、多数の死傷者も出しながらもどうにか魔物を討伐したものの、魔物の呪われた血で草木が枯れてしまい、一帯が荒野になったという。
呪いのせいで、この先百年ほどは草木も育たない状態らしい。


で。
ウィリアム一行は、討ち漏らしの魔物がいないか巡回していた時、荒野でぼんやり佇む俺を発見したわけだ。

それが”神の使い”だったので、大慌てでこの城に連れて来たんだ。


この国では、名字……姓があるのは貴族階級と一部の大商人だけだという。国王や領主になると更に名前、姓の後に治めている地名がつくそうだ。
なるほど、だから公爵はエルマー・キンバリー=ウッドローって名乗ったのか。

そして、クレーバーンという姓は、歴史上で何度か現れ、国に繁栄をもたらした神の使いが名乗った姓で。
この姓を名乗る者が現れたら、国を挙げて大切に保護するように、と伝わっているそうだ。


……じゃあ神様は、この世界で俺が権力者から手厚く保護されるように、この姓を名乗れって言ったのか?
過保護過ぎない?


「とりあえず、客室を用意させましょう。その間に工事を……」
「ああ、住まわせるにはどの部屋がいいかな。日当たりの良さそうな部屋が……、」

ぼんやりしていたら、公爵とウイリアムの間で何やら話が進んでいた。
いや、部屋とかわざわざ用意してくれなくていいから!

「ちょ、ちょっと待った!」


*****


見た目、子供の姿なせいか。
危うくお城でそのまま手厚く保護されてしまいそうになっていた。


とりあえず、神様からいただいた能力で、あの荒れた土地を蘇らせて。
そこで畑とか、ちょっとした酪農をさせてもらいながら暮らしたいのだと伝えた。

「そうですか……、」
城には住まないと聞いた公爵は、見るからに残念そうにうなだれた。ウィリアムも。

「しかし、今日はここに泊って行かれると良い。慣れない馬に乗って、さぞお疲れだろうし」

今からまたリズリーへ、もうひと往復させるのも可哀想だし。
その申し出は、ありがたく受けることにした。


「そうですね。では今のうちに、土地の権利書なども用意させましょう」
公爵が手を叩くと、使用人らしき人が来た。

リズリー一帯の土地の権利を俺に委任する、という書類を作ってくれるという。


あれ?
なんか、また話が大事おおごとになってきたような気がするんだけど……。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話

深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?

小悪魔系世界征服計画 ~ちょっと美少年に生まれただけだと思っていたら、異世界の救世主でした~

朱童章絵
BL
「僕はリスでもウサギでもないし、ましてやプリンセスなんかじゃ絶対にない!」 普通よりちょっと可愛くて、人に好かれやすいという以外、まったく普通の男子高校生・瑠佳(ルカ)には、秘密がある。小さな頃からずっと、別な世界で日々を送り、成長していく夢を見続けているのだ。 史上最強の呼び声も高い、大魔法使いである祖母・ベリンダ。 その弟子であり、物腰柔らか、ルカのトラウマを刺激しまくる、超絶美形・ユージーン。 外見も内面も、強くて男らしくて頼りになる、寡黙で優しい、薬屋の跡取り・ジェイク。 いつも笑顔で温厚だけど、ルカ以外にまったく価値を見出さない、ヤンデレ系神父・ネイト。 領主の息子なのに気さくで誠実、親友のイケメン貴公子・フィンレー。 彼らの過剰なスキンシップに狼狽えながらも、ルカは日々を楽しく過ごしていたが、ある時を境に、現実世界での急激な体力の衰えを感じ始める。夢から覚めるたびに強まる倦怠感に加えて、祖母や仲間達の言動にも不可解な点が。更には魔王の復活も重なって、瑠佳は次第に世界全体に疑問を感じるようになっていく。 やがて現実の自分の不調の原因が夢にあるのではないかと考えた瑠佳は、「夢の世界」そのものを否定するようになるが――。 無自覚小悪魔ちゃん、総受系愛され主人公による、保護者同伴RPG(?)。 (この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

異世界で王子様な先輩に溺愛されちゃってます

野良猫のらん
BL
手違いで異世界に召喚されてしまったマコトは、元の世界に戻ることもできず異世界で就職した。 得た職は冒険者ギルドの職員だった。 金髪翠眼でチャラい先輩フェリックスに苦手意識を抱くが、元の世界でマコトを散々に扱ったブラック企業の上司とは違い、彼は優しく接してくれた。 マコトはフェリックスを先輩と呼び慕うようになり、お昼を食べるにも何をするにも一緒に行動するようになった。 夜はオススメの飲食店を紹介してもらって一緒に食べにいき、お祭りにも一緒にいき、秋になったらハイキングを……ってあれ、これデートじゃない!? しかもしかも先輩は、実は王子様で……。 以前投稿した『冒険者ギルドで働いてたら親切な先輩に恋しちゃいました』の長編バージョンです。

弟勇者と保護した魔王に狙われているので家出します。

あじ/Jio
BL
父親に殴られた時、俺は前世を思い出した。 だが、前世を思い出したところで、俺が腹違いの弟を嫌うことに変わりはない。 よくある漫画や小説のように、断罪されるのを回避するために、弟と仲良くする気は毛頭なかった。 弟は600年の眠りから醒めた魔王を退治する英雄だ。 そして俺は、そんな弟に嫉妬して何かと邪魔をしようとするモブ悪役。 どうせ互いに相容れない存在だと、大嫌いな弟から離れて辺境の地で過ごしていた幼少期。 俺は眠りから醒めたばかりの魔王を見つけた。 そして時が過ぎた今、なぜか弟と魔王に執着されてケツ穴を狙われている。 ◎1話完結型になります

モフモフになった魔術師はエリート騎士の愛に困惑中

risashy
BL
魔術師団の落ちこぼれ魔術師、ローランド。 任務中にひょんなことからモフモフに変幻し、人間に戻れなくなってしまう。そんなところを騎士団の有望株アルヴィンに拾われ、命拾いしていた。 快適なペット生活を満喫する中、実はアルヴィンが自分を好きだと知る。 アルヴィンから語られる自分への愛に、ローランドは戸惑うものの——? 24000字程度の短編です。 ※BL(ボーイズラブ)作品です。 この作品は小説家になろうさんでも公開します。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

BLゲームのモブに転生したので壁になろうと思います

BL
前世の記憶を持ったまま異世界に転生! しかも転生先が前世で死ぬ直前に買ったBLゲームの世界で....!? モブだったので安心して壁になろうとしたのだが....? ゆっくり更新です。

処理中です...