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二人の記録を見ました。
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『これなら、喉を通るよね?』
輝く金髪。
天使のような美青年、ジュリアーノ・ベルルスコーニがドルチェ・クリスティアーニの新作を纏って立っていた。
さすが最速でトップモデルになっただけあって、立ち姿も決まっている。
あれは、あのベルルスコーニの、と話す声が聞こえる。
ベルルスコーニ家は、反ヴィットーリオ派の最大勢力だったけど。
その筆頭のミルコはもういないし。
ジュリアーノは、もう、敵じゃない。
*****
「Grazie del pensiero」
栄養ゼリーを受け取る。
これなら、口紅も落ちないし。ありがたい。
「No、 figurati」
おお、天使のウインクだ。
昔はガリガリなモデルが多かったけど。
今は不健康だと、モデル界ではダイエット禁止令が出てるそうで。
ショーの合間とかに素早く栄養が摂れるから、栄養ゼリーが人気なようだ。
『ショーは終わったのか?』
ヴィットーリオがジュリアーノへ視線を向けた。
ジュリアーノは、ホテルの方の披露宴の催しとして、フォーマルのファッションショーも行ってたとか。
大変だ。
『勿論。大成功で終わったので、こっちに来たんですよ。ドン・クリスティアーニ。レッロに頼まれたこともあったし』
どうぞ、と。
ヴィットーリオに封筒を渡した。
え、僕にも? 何だろう。
見れば、メッセージカードだった。
基から?
”稲葉君、結婚おめでとう。末永く幸せが続くことを祈ってます。追伸、高品質カカオありがとうって旦那に伝えといて”……?
ヴィットーリオがココアのお礼に、基に贈ったのかな?
義理堅いなあ。
ヴィットーリオの封筒は、お母さんからのメッセージだったようだ。
身の安全のため、引き離されて。
今はもう、新しい家庭を築いているらしい。
15年も経つんだし、それも仕方ないか。
カードには、”約束が叶ってよかったね。おめでとう、お幸せに”、って書いてあった。
ヴィットーリオのお母さんも覚えてたんだ。
結婚するって約束。よほど印象深かったんだろうな。
ルイジパパも、あの執念深さには驚いた、って言ってた。
白い家、じゃないけど。白い城に、犬がいて。
確かに昔した約束通りと言えば約束通りなんだけど。
ちょっと待て。
じゃあ僕は後で、白いエプロンをつけさせられるの!?
*****
急に会場が薄暗くなって。
マルチェッロにスポットライトが当たった。
マイクを持ってる。
『えー、テステス。……それじゃ始めましょう。恒例の、”ラブラブな二人の記録を写真で振り返ってみましょう”!』
拍手。
口笛吹いてる人もいる。待ってた、って声も。
え? どういうイベントなのこれ。
こっちじゃ恒例なの?
上からスクリーンが下がってきて。
そこに写真が投影された。
あ、僕が渡したアルバムの写真だ。
ヴィットーリオ……鷹ちゃんの、赤ん坊の頃の写真。
成程。これに使うために預かったのか。
すごい無表情の赤ん坊だよね……。
赤ん坊の頃から愛想が無いな、と笑い声が聞こえる。
でも、僕と一緒に写ってる写真は、どれも満面の笑顔で。
会場がざわついていた。
そこまで驚くことなのかな。
『我が従兄弟どのは、この頃から愛らしい幼馴染みに猛烈アタックしていたようです。そう、こちらは俺の可愛い弟、宗司です』
改めて見ると、べったりくっついてる写真ばっかりだった。
普通に懐かれてるんだと思ってたよ。
当時は。
*****
「oddio……」
子供の頃のヴィットーリオが、自分とここまで似ていたことを知ったジュリアーノは、天を仰いでいた。
しばらくして、納得したようで。
ああ、そういう訳か、と呟いてる。
僕が最初、ジュリアーノを鷹ちゃんだと勘違いした理由がわかったんだろうな。
間違えてもしょうがないよね?
まさか、こんな大きく育ってるなんて思わなかったし。
『しかしそんな二人は、俺のパパによって残酷にも引き裂かれてしまったのでした。必ず迎えに行く、再会したら結婚しよう、と約束をして』
お前はパパと呼ぶな、ってルイジパパに怒られてる。
それ、実の息子!
僕の中学、高校の写真と。
海外留学中のヴィットーリオの写真。
大学の法学部に入り、狭き門、司法試験に現役合格した、というところで。
おお、と称賛の声が上がった。
照れるなあ。
ヴィットーリオの経歴の方が耀かしいんだけどね。
ハーバード大学をスキップして卒業した後、18歳でクリスティアーニの首領になって。
20歳で企業の総帥になった。
『とにかく一刻も早くトップの座を得て愛する婚約者……と思い込んでいる宗司を迎えに行きたかったヴィックは、総帥になった直後、俺に代理を押し付けて、日本に飛んで行った訳です』
仕事部屋で缶詰め状態になって仕事してたようだし。
戻ってきたら更に一週間追加とか。
お兄ちゃん、ほんとお疲れ様……。
*****
『再会を果たすも、15年ぶりで。別人のように育ちすぎたため、幼馴染みだとは気付かれず。”誰?”と言われてショックを受けた首領の顔がこれです』
映し出されたのは。
周囲から同情と嘆きの声が漏れるような表情のヴィットーリオだった。
誰だろう、この写真撮ったの。
南郷さんかな?
ジュリアーノ、笑いすぎ!
『色々ありまして、幼馴染みだと理解され。想いも通じて。二人は今日、晴れて結婚式を挙げることとなりました。おめでとう!』
盛大な拍手と共に、会場が明るくなっていく。
その色々を話せ、と声が掛かる。
いや、マルチェッロはあえて端折ってくれたんだよ。
詳しく話したら、みんなドン引きだよ?
マフィアのみなさんも恐怖のどん底だよ?
『首領、乾杯の音頭を!』
みんな笑顔だ。
マフィアというより、親戚のおじさんたちって感じ。
あ、実際、親戚になるのか。
輝く金髪。
天使のような美青年、ジュリアーノ・ベルルスコーニがドルチェ・クリスティアーニの新作を纏って立っていた。
さすが最速でトップモデルになっただけあって、立ち姿も決まっている。
あれは、あのベルルスコーニの、と話す声が聞こえる。
ベルルスコーニ家は、反ヴィットーリオ派の最大勢力だったけど。
その筆頭のミルコはもういないし。
ジュリアーノは、もう、敵じゃない。
*****
「Grazie del pensiero」
栄養ゼリーを受け取る。
これなら、口紅も落ちないし。ありがたい。
「No、 figurati」
おお、天使のウインクだ。
昔はガリガリなモデルが多かったけど。
今は不健康だと、モデル界ではダイエット禁止令が出てるそうで。
ショーの合間とかに素早く栄養が摂れるから、栄養ゼリーが人気なようだ。
『ショーは終わったのか?』
ヴィットーリオがジュリアーノへ視線を向けた。
ジュリアーノは、ホテルの方の披露宴の催しとして、フォーマルのファッションショーも行ってたとか。
大変だ。
『勿論。大成功で終わったので、こっちに来たんですよ。ドン・クリスティアーニ。レッロに頼まれたこともあったし』
どうぞ、と。
ヴィットーリオに封筒を渡した。
え、僕にも? 何だろう。
見れば、メッセージカードだった。
基から?
”稲葉君、結婚おめでとう。末永く幸せが続くことを祈ってます。追伸、高品質カカオありがとうって旦那に伝えといて”……?
ヴィットーリオがココアのお礼に、基に贈ったのかな?
義理堅いなあ。
ヴィットーリオの封筒は、お母さんからのメッセージだったようだ。
身の安全のため、引き離されて。
今はもう、新しい家庭を築いているらしい。
15年も経つんだし、それも仕方ないか。
カードには、”約束が叶ってよかったね。おめでとう、お幸せに”、って書いてあった。
ヴィットーリオのお母さんも覚えてたんだ。
結婚するって約束。よほど印象深かったんだろうな。
ルイジパパも、あの執念深さには驚いた、って言ってた。
白い家、じゃないけど。白い城に、犬がいて。
確かに昔した約束通りと言えば約束通りなんだけど。
ちょっと待て。
じゃあ僕は後で、白いエプロンをつけさせられるの!?
*****
急に会場が薄暗くなって。
マルチェッロにスポットライトが当たった。
マイクを持ってる。
『えー、テステス。……それじゃ始めましょう。恒例の、”ラブラブな二人の記録を写真で振り返ってみましょう”!』
拍手。
口笛吹いてる人もいる。待ってた、って声も。
え? どういうイベントなのこれ。
こっちじゃ恒例なの?
上からスクリーンが下がってきて。
そこに写真が投影された。
あ、僕が渡したアルバムの写真だ。
ヴィットーリオ……鷹ちゃんの、赤ん坊の頃の写真。
成程。これに使うために預かったのか。
すごい無表情の赤ん坊だよね……。
赤ん坊の頃から愛想が無いな、と笑い声が聞こえる。
でも、僕と一緒に写ってる写真は、どれも満面の笑顔で。
会場がざわついていた。
そこまで驚くことなのかな。
『我が従兄弟どのは、この頃から愛らしい幼馴染みに猛烈アタックしていたようです。そう、こちらは俺の可愛い弟、宗司です』
改めて見ると、べったりくっついてる写真ばっかりだった。
普通に懐かれてるんだと思ってたよ。
当時は。
*****
「oddio……」
子供の頃のヴィットーリオが、自分とここまで似ていたことを知ったジュリアーノは、天を仰いでいた。
しばらくして、納得したようで。
ああ、そういう訳か、と呟いてる。
僕が最初、ジュリアーノを鷹ちゃんだと勘違いした理由がわかったんだろうな。
間違えてもしょうがないよね?
まさか、こんな大きく育ってるなんて思わなかったし。
『しかしそんな二人は、俺のパパによって残酷にも引き裂かれてしまったのでした。必ず迎えに行く、再会したら結婚しよう、と約束をして』
お前はパパと呼ぶな、ってルイジパパに怒られてる。
それ、実の息子!
僕の中学、高校の写真と。
海外留学中のヴィットーリオの写真。
大学の法学部に入り、狭き門、司法試験に現役合格した、というところで。
おお、と称賛の声が上がった。
照れるなあ。
ヴィットーリオの経歴の方が耀かしいんだけどね。
ハーバード大学をスキップして卒業した後、18歳でクリスティアーニの首領になって。
20歳で企業の総帥になった。
『とにかく一刻も早くトップの座を得て愛する婚約者……と思い込んでいる宗司を迎えに行きたかったヴィックは、総帥になった直後、俺に代理を押し付けて、日本に飛んで行った訳です』
仕事部屋で缶詰め状態になって仕事してたようだし。
戻ってきたら更に一週間追加とか。
お兄ちゃん、ほんとお疲れ様……。
*****
『再会を果たすも、15年ぶりで。別人のように育ちすぎたため、幼馴染みだとは気付かれず。”誰?”と言われてショックを受けた首領の顔がこれです』
映し出されたのは。
周囲から同情と嘆きの声が漏れるような表情のヴィットーリオだった。
誰だろう、この写真撮ったの。
南郷さんかな?
ジュリアーノ、笑いすぎ!
『色々ありまして、幼馴染みだと理解され。想いも通じて。二人は今日、晴れて結婚式を挙げることとなりました。おめでとう!』
盛大な拍手と共に、会場が明るくなっていく。
その色々を話せ、と声が掛かる。
いや、マルチェッロはあえて端折ってくれたんだよ。
詳しく話したら、みんなドン引きだよ?
マフィアのみなさんも恐怖のどん底だよ?
『首領、乾杯の音頭を!』
みんな笑顔だ。
マフィアというより、親戚のおじさんたちって感じ。
あ、実際、親戚になるのか。
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