52 / 56
マフィアの島で披露宴をしました。
しおりを挟む
今度はマルチェッロにエスコートされて会場に戻ると。
ヴィットーリオも着替えていて、白いスーツだった。
銀糸で刺繍が入っている。
これもまた凄く似合っていて。
思わず感嘆の溜め息が出るほど格好いい。
撮影隊がカメラを構えて、フラッシュが焚かれる。
「綺麗だよ。とても似合っている」
君だけに似合うようにデザインしたのだから当然かな、とか囁かれて。
口元に砂糖菓子を運ばれた。
あ、美味しい。
ついそのまま食べてしまったら、囃されてしまった。
お幸せにコールがあちこちから聞こえてくる。
うう、恥ずかしい……。
ヴィットーリオが恥をかかないように、って。
テーブルマナーとか頑張って特訓したんだけど。
こうやって食べさせようとしてくるんじゃ、覚えた意味無いじゃん!
*****
マルチェッロがドレスの説明をして。
やはりこれもヴィットーリオのデザインで、ティアラだけでも日本円で億は行ってるような金額が聞こえたけど。
僕には何も聞こえなかった。
僕個人に使ったのではなく、広告費だと考えよう。
ひええ、全て総帥が個人資産から出したとか。
怖いこと言わないでお兄ちゃん!
……今、ヴィットーリオがつけてるインカムから、武装した強盗団が現れたが、ホテルに入る前に鎮圧した、とか漏れ聞こえたんだけど。
マフィアの結婚式に乗り込もうとするなんて。
勇気のある強盗団だ……。蛮勇か。
もしかして、知らなかったのかな?
披露宴開始から、3時間ほど経った頃。
ヴィットーリオは席を立って、マイクを持った。
この後、余興も用意してあり、この会場は朝まで開けているので、どうぞお楽しみください、と告げた。
招待客を置いて、主役が帰っちゃうんだ?
まあ、島でも披露宴をやるからなんだけど。
あと数時間も我慢できないのか、みたいに囃す声が聞こえて。
ヴィットーリオに、ぐい、と腰を引き寄せられた。
『このように愛らしい花嫁を前にして、獣にならない男がいるとでも?』
挑戦的な笑みもかっこいいな、と見惚れてしまっていたら。
ひょい、とお姫様抱っこされた状態で。
盛大な拍手を受けながら退場した。
素顔出さなくて良かった、と心から思った。
恥ずかしくて死ねる。
*****
再びウエディングドレスに着替えた。
「口紅、あんまり落ちてないけど。ご飯食べれなかった? コルセットのせいかな? ちょい緩めようか?」
マルチェッロにメイクを直される。相変わらずネイティブすぎる日本語だ。
「なんか、緊張しちゃって……」
一応、ヴィットーリオがお菓子を食べさせてくれた、とは伝える。
「そうだよねー。知らない人ばっかだし、慣れてないとキツイね。もうちょい我慢してねー」
はいとりあえずカロリー補給、と。小さいトリュフチョコを口に放り込まれた。
ああ、甘さが五臓六腑に染みわたる……。
「親父がドアの前でうろうろしてるって。宗ちゃんをエスコートするの、楽しみにしてるみたい」
マルチェッロがインカムに耳を傾けて、うんざりした顔で言った。
いつの間にか宗ちゃんとか呼ばれている。
まあいいか。
坊やよりはずっとマシだし。
ルイジパパは結婚式の後、マフィアの客を迎えるために、一足先に島に戻っていたようだ。
それが、どうやら披露宴会場のホールまで、ルイジパパが再びエスコートしてくれるらしい。
わざわざこっちまで、迎えに来てくれたのか……。
「パパもお兄ちゃんも優しくて嬉しい」
「俺も可愛い弟が出来て嬉しいよ~! ……って、何でパパって言ってるの?」
「お義父さんじゃなく、パパって呼んで欲しいって」
「あのアホ親父……」
マルチェッロは蔑んだ眼差しをドアの方へ向けた。
*****
『準備できたよー』
『ではN-1班、そちらに向かいます』
ドアの前で待機していた南郷さんがインカムで会場に連絡してる。
『では、行こうか』
出されたルイジパパの腕に掴まって。
ベールは無いけど。
長いスカートを引き摺らないように、マルチェッロが後ろでスカートの裾を持ってくれている。
エスコートされながら、会場へ向かう。
こっちの披露宴にはアルテ・クリスティアーニ撮影隊は来ないようだ。
さすがに、表には出せない招待客ばかりだもんな。
100%マフィアと、その関係者だし。
会場への距離はそれほどないけど、僕たちの前後を南郷さんたち武装ボディガードが固めている、という物々しい状況だ。
反ヴィットーリオ派のほとんどは排除されたものの、油断は禁物だって。
おめでたい席くらいは、物騒なのは遠慮して欲しいね。
僕たちが会場に入ると、途端にざわついた。
男だという話だが、女ではないのか? とかいう声が聞こえる。
海千山千のマフィアも騙されるとか。
化粧ってすごい。
ざわつく人達を、ルイジパパがひと睨みで黙らせた。
自分の養子である、それが信じられないのか、ってことかな。
*****
『絶世の美姫に見えるだろうが、彼は間違いなく男性だ。私の我儘で、ドレスを身にまとっているだけで』
ヴィットーリオの声が響く。
雛壇で。
堂々とした立ち姿で待っていたヴィットーリオは、さっきとは雰囲気がまるで違うように思える。
大企業の総帥としての顔と、マフィアの首領の顔の違いかな?
会社ではまだ、猫被ってるようなものだったのかも。
「La ringrazio」
ルイジパパとエスコート役を交代して。
ヴィットーリオの手を取る。
「È la mia persona amata」
肩を抱かれて。
私の最愛の人だと、紹介される。
割れんばかりの拍手の音が響いて。
ヴィットーリオがすっ、と手を上げると。
音はぴたりと止んだ。
『これより、正式に血の掟の誓いを交わし、彼を我がクリスティアーニの血族とする』
ヴィットーリオも着替えていて、白いスーツだった。
銀糸で刺繍が入っている。
これもまた凄く似合っていて。
思わず感嘆の溜め息が出るほど格好いい。
撮影隊がカメラを構えて、フラッシュが焚かれる。
「綺麗だよ。とても似合っている」
君だけに似合うようにデザインしたのだから当然かな、とか囁かれて。
口元に砂糖菓子を運ばれた。
あ、美味しい。
ついそのまま食べてしまったら、囃されてしまった。
お幸せにコールがあちこちから聞こえてくる。
うう、恥ずかしい……。
ヴィットーリオが恥をかかないように、って。
テーブルマナーとか頑張って特訓したんだけど。
こうやって食べさせようとしてくるんじゃ、覚えた意味無いじゃん!
*****
マルチェッロがドレスの説明をして。
やはりこれもヴィットーリオのデザインで、ティアラだけでも日本円で億は行ってるような金額が聞こえたけど。
僕には何も聞こえなかった。
僕個人に使ったのではなく、広告費だと考えよう。
ひええ、全て総帥が個人資産から出したとか。
怖いこと言わないでお兄ちゃん!
……今、ヴィットーリオがつけてるインカムから、武装した強盗団が現れたが、ホテルに入る前に鎮圧した、とか漏れ聞こえたんだけど。
マフィアの結婚式に乗り込もうとするなんて。
勇気のある強盗団だ……。蛮勇か。
もしかして、知らなかったのかな?
披露宴開始から、3時間ほど経った頃。
ヴィットーリオは席を立って、マイクを持った。
この後、余興も用意してあり、この会場は朝まで開けているので、どうぞお楽しみください、と告げた。
招待客を置いて、主役が帰っちゃうんだ?
まあ、島でも披露宴をやるからなんだけど。
あと数時間も我慢できないのか、みたいに囃す声が聞こえて。
ヴィットーリオに、ぐい、と腰を引き寄せられた。
『このように愛らしい花嫁を前にして、獣にならない男がいるとでも?』
挑戦的な笑みもかっこいいな、と見惚れてしまっていたら。
ひょい、とお姫様抱っこされた状態で。
盛大な拍手を受けながら退場した。
素顔出さなくて良かった、と心から思った。
恥ずかしくて死ねる。
*****
再びウエディングドレスに着替えた。
「口紅、あんまり落ちてないけど。ご飯食べれなかった? コルセットのせいかな? ちょい緩めようか?」
マルチェッロにメイクを直される。相変わらずネイティブすぎる日本語だ。
「なんか、緊張しちゃって……」
一応、ヴィットーリオがお菓子を食べさせてくれた、とは伝える。
「そうだよねー。知らない人ばっかだし、慣れてないとキツイね。もうちょい我慢してねー」
はいとりあえずカロリー補給、と。小さいトリュフチョコを口に放り込まれた。
ああ、甘さが五臓六腑に染みわたる……。
「親父がドアの前でうろうろしてるって。宗ちゃんをエスコートするの、楽しみにしてるみたい」
マルチェッロがインカムに耳を傾けて、うんざりした顔で言った。
いつの間にか宗ちゃんとか呼ばれている。
まあいいか。
坊やよりはずっとマシだし。
ルイジパパは結婚式の後、マフィアの客を迎えるために、一足先に島に戻っていたようだ。
それが、どうやら披露宴会場のホールまで、ルイジパパが再びエスコートしてくれるらしい。
わざわざこっちまで、迎えに来てくれたのか……。
「パパもお兄ちゃんも優しくて嬉しい」
「俺も可愛い弟が出来て嬉しいよ~! ……って、何でパパって言ってるの?」
「お義父さんじゃなく、パパって呼んで欲しいって」
「あのアホ親父……」
マルチェッロは蔑んだ眼差しをドアの方へ向けた。
*****
『準備できたよー』
『ではN-1班、そちらに向かいます』
ドアの前で待機していた南郷さんがインカムで会場に連絡してる。
『では、行こうか』
出されたルイジパパの腕に掴まって。
ベールは無いけど。
長いスカートを引き摺らないように、マルチェッロが後ろでスカートの裾を持ってくれている。
エスコートされながら、会場へ向かう。
こっちの披露宴にはアルテ・クリスティアーニ撮影隊は来ないようだ。
さすがに、表には出せない招待客ばかりだもんな。
100%マフィアと、その関係者だし。
会場への距離はそれほどないけど、僕たちの前後を南郷さんたち武装ボディガードが固めている、という物々しい状況だ。
反ヴィットーリオ派のほとんどは排除されたものの、油断は禁物だって。
おめでたい席くらいは、物騒なのは遠慮して欲しいね。
僕たちが会場に入ると、途端にざわついた。
男だという話だが、女ではないのか? とかいう声が聞こえる。
海千山千のマフィアも騙されるとか。
化粧ってすごい。
ざわつく人達を、ルイジパパがひと睨みで黙らせた。
自分の養子である、それが信じられないのか、ってことかな。
*****
『絶世の美姫に見えるだろうが、彼は間違いなく男性だ。私の我儘で、ドレスを身にまとっているだけで』
ヴィットーリオの声が響く。
雛壇で。
堂々とした立ち姿で待っていたヴィットーリオは、さっきとは雰囲気がまるで違うように思える。
大企業の総帥としての顔と、マフィアの首領の顔の違いかな?
会社ではまだ、猫被ってるようなものだったのかも。
「La ringrazio」
ルイジパパとエスコート役を交代して。
ヴィットーリオの手を取る。
「È la mia persona amata」
肩を抱かれて。
私の最愛の人だと、紹介される。
割れんばかりの拍手の音が響いて。
ヴィットーリオがすっ、と手を上げると。
音はぴたりと止んだ。
『これより、正式に血の掟の誓いを交わし、彼を我がクリスティアーニの血族とする』
2
お気に入りに追加
296
あなたにおすすめの小説
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました
美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

家を追い出されたのでツバメをやろうとしたら強面の乳兄弟に反対されて困っている
香歌奈
BL
ある日、突然、セレンは生まれ育った伯爵家を追い出された。
異母兄の婚約者に乱暴を働こうとした罪らしいが、全く身に覚えがない。なのに伯爵家当主となっている異母兄は家から締め出したばかりか、ヴァーレン伯爵家の籍まで抹消したと言う。
途方に暮れたセレンは、年の離れた乳兄弟ギーズを頼ることにした。ギーズは顔に大きな傷跡が残る強面の騎士。悪人からは恐れられ、女子供からは怯えられているという。でもセレンにとっては子守をしてくれた優しいお兄さん。ギーズの家に置いてもらう日々は昔のようで居心地がいい。とはいえ、いつまでも養ってもらうわけにはいかない。しかしお坊ちゃん育ちで手に職があるわけでもなく……。
「僕は女性ウケがいい。この顔を生かしてツバメをしようかな」「おい、待て。ツバメの意味がわかっているのか!」美貌の天然青年に振り回される強面騎士は、ついに実力行使に出る?!
【完結】魔物をテイムしたので忌み子と呼ばれ一族から追放された最弱テイマー~今頃、お前の力が必要だと言われても魔王の息子になったのでもう遅い~
柊彼方
ファンタジー
「一族から出ていけ!」「お前は忌み子だ! 俺たちの子じゃない!」
テイマーのエリート一族に生まれた俺は一族の中で最弱だった。
この一族は十二歳になると獣と契約を交わさないといけない。
誰にも期待されていなかった俺は自分で獣を見つけて契約を交わすことに成功した。
しかし、一族のみんなに見せるとそれは『獣』ではなく『魔物』だった。
その瞬間俺は全ての関係を失い、一族、そして村から追放され、野原に捨てられてしまう。
だが、急な展開過ぎて追いつけなくなった俺は最初は夢だと思って行動することに。
「やっと来たか勇者! …………ん、子供?」
「貴方がマオウさんですね! これからお世話になります!」
これは魔物、魔族、そして魔王と一緒に暮らし、いずれ世界最強のテイマー、冒険者として名をとどろかせる俺の物語
2月28日HOTランキング9位!
3月1日HOTランキング6位!
本当にありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる