突然見知らぬイタリアの伊達男に拉致監禁され、脅されてHされた上に何故か結婚を迫られてしまいました。

篠崎笙

文字の大きさ
上 下
32 / 56

非日常的な体験をしました。

しおりを挟む
「嫌々女装をしてくれて。ホテルまで付き合ってくれて。その上、自分で準備をしてくれようとは……我慢できるか!」
バサッ、と洋服を脱ぎ捨てて。

すごい勢いでこっちに来るんだけど。


え?
覗いてたの!?

この鏡はマジックミラーで、電気をつけると寝室から丸見えになるって?
知らないよ、そんな常識!

じゃあ、脱ぐところから、全部見てたのか! エッチ!


ぎゅっと抱き締められて。
「可愛い私の宗司。これ以上私を夢中にさせて、どうするつもりだ?」

ヴィットーリオは物凄く興奮した様子で、息が荒い。
お腹に、熱いのがピタピタ当たってるんだけど。

どうするつもりも何も。
それ、僕の責任じゃなくない?


愛しているティアモ私の宝物テゾーロ ミオ
熱烈なキスをされて。


湯船の中で、突き入れられた。


*****


「あ、……いい、きもちい、」
逞しい肩にしがみついて。

指に感じる僅かなふくらみは、傷痕だ。
まだには爪を立てないよう気をつけないと。

僕を庇って、銃に撃たれて。
弾が体内に残っちゃったから、リッカルドがナイフでそれを抉り出して、縫った傷。

一週間くらいで抜糸して、だいぶ良いみたいだ。
もう塞がってるんだもんな。

治るの早すぎない?
痛そうなのは見るの嫌だし、ほっとしたけど。


「ヴィック。もう二度と、こんな怪我しちゃ嫌だよ」
肩の傷痕に触れて、告げる。

「君が望むなら、全力で回避しよう」
額にキスされて。

「ん、僕より先に死んだら、絶対許さないからな?」
頬にキスを返した。

軽い気持ちで言ったことだった。
でも。


「では、もし私が死を免れない場面になった時は、君を道連れにしよう」


あたたかいお湯の中なのに。
まるで冷水を浴びせかけられたように、ぞくりとした。


「当然、君が死ぬ時は、私も共に逝く。決して一人にはしない」
青い目は、僕だけを映している。


冗談ではなく、本気で。
死が二人を別つまで、じゃなくて。

死ぬ時ですら、離れることを許さない、というのか。


僕と出会うまでは、人間的な感情とか感覚が全く理解できなかったそうだし。
そんな事を言われたら普通の人は恐怖でドン引きだってこともわからないんだろう。

愛し合う二人なら、死出の旅路も共に逝くのが当たり前だと思ってるんだ。


実際に死線を掻い潜って。多くの死を目の当たりにしてきた男の、誓いの言葉だ。
嘘偽りない、本音に違いない。

実際、そんな直面に当たった場合。僕を道連れにして、一緒に死ぬ気だ。


何というか。
愛が重すぎるよ……。


*****


「……長生きしてね……?」
もはや長生きしてくれるのを願うしかない。

「ああ、一分一秒も長く君を見ていたいからな。幸い、私の方が年下なので、先に老衰することはないだろう」

人を年寄りみたいに言うな。
たった一歳だけじゃないか! そんなの誤差の範囲だっての。


君が死んだら生きていけない、じゃなくて。
死ぬ時は一緒、か。

端から聞いたらロマンティックな告白なんだろうけど。
何か違う……。

ああ、とんでもない男に見初められちゃったんだなあ。


「君のを含んだ湯を下水などに流してしまうのは心苦しいが……」

ヴィットーリオは名残惜しそうにお風呂の栓を抜いて。
泡だらけの浴槽を、シャワーでざっと流した。

清掃員に残り香を嗅がせるのも嫌だ、とか言ってるけど。

嗅がないよ!?
何で嗅ぐと思うわけ?


もしかして、自分基準!?

まさか普段、残り湯や枕のにおいを嗅いだりしてないよね?
とか聞けない。

肯定されたら、と思うと恐ろしすぎる。いや、100%嗅いでいると確信できる。

更に70%以上の確率で残り湯飲んでそうで怖い。
エキスとか言ってたし。

今度からもったいないとか言わないで、入ったらすぐ捨てよう。


*****


まだ身体に残っていた泡をシャワーで洗い流されて。
僕もヴィットーリオの泡を落としてやる。

何だかこうしてると、いちゃいちゃカップルに見えるな。

実際、結婚を約束した相手ではあるので、それも間違いじゃないのか。
でもまだ、いまいち実感がわかない。


タオルでわしゃわしゃとお互いの身体を拭きあった後。

バスローブで身体を包まれた状態で抱き上げられた。
いわゆるお姫様抱っこだ。

ベッドに寝かされたら。
天井にも鏡がついていることに気付いた。

すぐ横にも鏡。
風呂場の壁も鏡……というかマジックミラー。

うわ、趣味悪っ!


「最近は、鏡張りのホテルも減少してきているようで。希望通りの場所を探すのは苦労したものだ」
わざわざ探したんだ。

城の隣に理想のラブホテルを建設しようか、などと恐ろしいことを呟いている。

歴史と伝統のある古式ゆかしいマフィアの島に、トンデモ施設を作ろうとするのはやめて欲しい。
先祖に呪い殺されそう。


「こういう場所は、たまに行くから、いいんじゃないかな!」

「そうか。非日常における新たな刺激を愉しむ為の施設、という訳だな。成程。それで様々な形状の外観だったり、内装も奇抜なものが多いのか」
納得してくれたようだ。

良かった。
島の平和は守られた。


僕的にはヴィットーリオと再会してからというものの、ずっと非日常っていうか、非現実的なことばっかり続いてるけど。

そっか、いまいち現実味がないというか実感がわかないのは、まるで夢みたいな状況だからか。
納得した。ほぼ悪夢みたいなものだけど。


「では、を大いに愉しむとしよう」
夢のような美貌の持ち主であるヴィットーリオは、とてもいい笑顔で言った。


*****


「ほら、ちゃんと前をご覧。私の陰茎ペネを口いっぱいに食んでいる……そんなに美味しいかな?」
耳元で囁かれる。

「あ、んっ、……おいしい、からぁ。もっと、ぐちゅぐちゅして、」
自分のものとは思えない、甘えた声で。


こんな、うっとりとした顔で抱かれて。甘えた声で喘いでるのが自分だなんて、信じられない。

天井の鏡にも。目の前の鏡にも。
足を大きく開かされた状態で後ろから貫かれて、腰を揺らしている自分の姿が映っている。


部屋の照明は明るくて。
ヴィットーリオの性器が、間違いなく自分の中に入っているのが見えてしまう。

赤黒いのが出入りする度に、コンドームを被せられた僕のものが、ゆらゆら揺れている。


直視できないほど恥ずかしくて。
生々しくて。

いやらしい光景なのに。
つい、見てしまう。

視線を奪われる。


世にも美しい男が、自分を抱いて。
興奮して。

何度となく勃起して。
餓えた獣のように、貪っている姿を。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました

美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

処理中です...