突然見知らぬイタリアの伊達男に拉致監禁され、脅されてHされた上に何故か結婚を迫られてしまいました。

篠崎笙

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無事、首領と島へ帰還します。

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「せっかく君から貰った血を、無駄に流してしまったな?」
元通りに服を着込んだヴィットーリオは、ガーゼや服についた血を、名残惜しそうに見て呟いた。


いや、あげた覚えはない。
っていうか、気が付いたら勝手に抜き取られてたんだけど。

……まあいいか。

「貧血になりそうなら、また輸血しようか?」

さすがに、僕を庇って少なくない血を流した訳だし。
そのくらいはしてもいいかな……。

「では、後でお願いしよう」
いい笑顔だった。

ヴィットーリオ、本当に揺るぎないな……。


「あ、自分も血液型、同じですよ。AOのA。献血ご協力しましょうか?」
「間に合っている」

南郷さんの善意の提案を、ヴィットーリオはすげなく却下した。
男の血は要らない、って。

僕も男なんだけど!


*****


南郷さんは、首を傾げているリッカルドに、今の、日本語でした会話を訳した。
優しいな。別に訳さなくてもいいけど。


『あなたは血の気が多すぎるので、少しは抜いたほうがいいでしょう』
リッカルドは、呆れているような視線をヴィットーリオに向けた。

『ボスは冷酷、冷血とはよく言われてますけど。そうなんですか? まあ、局部的にはかなり”お熱”に見えますが』
南郷さんに訊かれて。

『この人、こと宗司様に関してはポンコツなので……』
リッカルドは素直な意見を言った。

『堂々と本人の目の前で悪口とはいい度胸だな、リコ?』

『愛は盲目。首領カポの愛情の深さを讃えているのですが?』
笑顔で会話してる。


やっぱり、仲良さそうだ。
リッカルドはもう15年も、ヴィットーリオの側についているそうだし。

ただでさえ、日本人の血が半分入ったヴィットーリオを疎ましく思っていたのに。
血族ではない、下町のチンピラ出身だったリッカルドを右腕アンダーボスにしたことも、ミルコは不愉快に思っていたようだ。

血統だけが全て。

価値観の古い人だったんだな。
いくら血筋がよくても、個体差とか、色々あるだろうに。


「では、。私たちの家に」
ヴィットーリオが、騎士のような所作で僕に手を差し出して。

僕はその手を取った。


*****


怪我をしているから重いものを持っちゃ駄目だって言ったのに。
羽根のように軽い、と抱えられてしまった。

傷口が開いたらどうするんだ。全く。

「これで、うちの者達に堂々と宗司を紹介できる」
ヴィットーリオは上機嫌だ。


不穏分子は全て特定して、したので。
やっと安心してここの人たちに僕のことを結婚相手だと紹介できる、と喜んでいる。

以前から、反ヴィットーリオ派の存在には警戒していて。
関係者が命を狙われたりするだろうと、正式に紹介するのを思いとどまっていたようだ。

ヴィットーリオのお母さんが引き離されたのも、そういった理由で。
僕を一時的にルイジ・クリスティアーノの養子にしたのは、そうした方が安全だから、という理由だった。

でも、そういう大事な話は当事者である僕に、ちゃんと話しておいて欲しかった。

余計な心配を掛けたくなかった、って。
何も話されないほうが不安だよ!


*****


城に戻ったら、大騒ぎだった。

首領が一族の裏切り者に襲撃される、なんて。
そりゃ大事件だ。


僕が攫われたのを盗聴器で知ったヴィットーリオは、仕事部屋から出たところを襲撃されたそうだ。
それにしている間に、ミルコは僕をさらって、島を出てしまった訳だ。


後に残されたのは、図書室でおろおろしてるジョルジョことジュリアーノだけで。
逃亡先も知らされてなかった。

ブラフでヘリコプターを飛ばしたり、モーターボートなどいくつか走らせていたため、どれを追いかけるか悩んでいた時。
南郷さんが”立派なクルーザー、青と白の船体”だと発言したため、逃げた船の特定ができたそうだ。


南郷さんが潜伏して僕を警護しているから、無事だろうことはわかっていたけど。
心配で、気が気でなかったという。

ヴィットーリオたちは、秘密の通路に隠していた高速艇でミルコのクルーザーを追いかけて。
高速艇をクルーザーの脇につけて飛び乗り、船にいた裏切り者たちを速やかに制圧したらしい。

時間稼ぎを命じられていた南郷さんも、さすがに冷や冷やしていたそうだけど。


城内で銃撃戦もした後だったのに、他に怪我をした様子はなかった。
そこまでは無傷だったのかな?

ヴィットーリオって、とんでもなく強いんだ。


船室に入って来た時のヴィットーリオ、すごい迫力だったっけ。
長年マフィアとして経験を積んできたはずだろうミルコも、思わず従っちゃってたくらいだし。

ああいった修羅場を、いくつも乗り越えてきたんだろうな。
まだ若いのに、大勢から首領として慕われるのも納得だ。


城に待機していた人たちは、肩に傷を負いながらも平気な顔をして僕を抱えて戻ってきたヴィットーリオの帰還を、大喜びして迎えてくれた。

ああ、そうか。大した怪我じゃないから大丈夫だって安心させるために、部下たちにアピールする目的だったのかな?
さすが首領。立派だ。

でも、早く降ろして欲しい。
縫ったばかりの傷口が開かないか、心配なんだけど。


*****


ヴィットーリオは城に戻ったその足で、城の人たちに僕のことを結婚相手だと紹介して回った。
僕を腕に抱いたまま。


食堂へ行って。
城の台所を仕切っている、料理長のパオラさんを紹介された。

黒髪に緑の目のふくよかな女性で、ここのおふくろさん的存在らしい。
みんなから、マンマ・パオラと呼ばれてるそうだ。

他にもサブの料理人が数人、デザート専門の料理人、食材の下処理専門、皿洗い専門の係もいるとか。台所だけでもたいへんな大所帯だ。


城勤めの人、総勢百人以上になるのかな?
改めて、クリスティアーニという組織の規模の大きさに唖然とするばかりだ。

その上、世界中に子会社があるんだから。
とんでもない。


城の全員が席に座れるという大きな食堂だけど。
なるべく全員の食事時間をずらすように調整しているそうだ。

それは、万が一食中毒とかになった場合、全員が一度にダウンしないように、らしい。
色々考えられてるんだな。
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