突然見知らぬイタリアの伊達男に拉致監禁され、脅されてHされた上に何故か結婚を迫られてしまいました。

篠崎笙

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待ちに待っていた面会日……のはずでした。

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Tiティ  ricordoリコルド  di meディ メ?」

とりあえず。
自分のことを覚えているか、聞いてみた。


chi sei君は誰?」
Mi chiamo私の名前は 宗司・稲葉。Come tiあなたの chiami名前は?」

Sono私は  Giorgioジョルジョ・ Gabrieleガブリエーレ


ジョルジョ・ガブリエーレ?
別人か。

名前が変わった、っていう可能性もないことはないけど。
やっぱり、そうか。


*****


Purtroppo残念だけどNon mi覚えて ricordoない.」
鷹ちゃんに良く似た彼は、申し訳なさそうに言った。

たとえ本人だとしても、幼い頃の記憶が無いんじゃ、名乗ってもわかるはずないし。
それに。

この子は、たぶん。

GrazieありがとうSonoあなたに contento会えて di vederti嬉しかった
お礼を言う。


知らない、覚えてない、と言われたけど。
不思議と、失望感はなかった。

あんなに、逢いたいと思っていた相手なのに。


「Don Cristiani……?」
は、不安そうな様子で、ヴィットーリオを見ている。


「君は……、イタリア語を話せたのか?」
ヴィットーリオに、驚いたように聞かれた。

「はい、第二外国語がイタリア語だったので、挨拶程度なら……」


「そうか……、tornateトルナテ nelleネッレ vostreヴォストレ stanzaスタンツァ
途中からは、ジョルジョに言ったようだ。

はい、」
彼は一礼して、部屋を出て行った。


5分にも満たない面会だった。


*****


ヴィットーリオは、懐中時計を懐に仕舞った。

「知り合いに似ている、ということだが。ジョルジョに似た知り合いとは、どういった関係だったのかね?」
こちらに向き直って、訊かれた。


あれ? 鷹ちゃん……知り合いに似てるから、あの子のことが気になってたんだってこと、言ったっけ?
会話の流れとかから、類推したのかな?

人心掌握もトップの基本能力だからかな。


「知り合いというか、赤ん坊の頃からの幼馴染みです。突然いなくなっちゃって。それ以来、連絡もなく、行方がわからなくて……」

探そうにも、手がかりも何もないけど。
ずっと会いたいな、と思っていた事を告げた。


「ほう、もしかして、君の初恋の相手だったのかね?」

何でそんな、興味津々な様子なんだろうか。
意外にゴシップ好き?

「今思えば、そうだったのかも……。今まで、好きだって思えたのは、母以外はその子くらいだったし」


「成程。で、今のジョルジョが、その幼馴染みだったと? あれは5年ほど前、ここに預けられたのだがね。記憶が無く、名前も、こちらでつけられたものだ」
グイグイ来るなあ。

そうなんだ。
名前も違うけど。記憶もなかったのか……。


「最初は、遠くから見たらそっくりだし、近くで見ても似てるとは思ったけど。違和感があるし。あの子はどう見ても15、6歳で、20歳になったばかりの年齢には見えないから。……残念だけど、別人だと思います」

名前を聞く前から、別人だってことは何となくわかってたけど。
一縷の望みにかけてみたかったというか。


「そうか。……もし、その幼馴染みと再会できたら、どうする?」

何だろう。
妙に前のめりで訊いてくるけど。

鷹ちゃんを探してくれるとでも?
……まさかな。そこまで親切じゃないだろう。


*****


「僕の事を覚えてくれてたら、嬉しいな、って」

「……欲の無いことだ」
ヴィットーリオは明後日の方向を向いて、肩を竦めた。


それにしても。
さっきから、楽しそうな様子だ。

何で上機嫌なんだろうか。
僕の探し人が人違いで、盛大に空振ったのが面白いとか? だとしたら趣味が悪すぎるけど。


tornateトルナテ nelleネッレ vostreヴォストレ stanzaスタンツァ。……何と言ったかわかるか?」

突然、何だろう。
イタリア語の聞き取り能力テストかな?

さっき、ジョルジョに言ってた言葉だ。

「自分の部屋に戻って……?」
部屋に戻るように、とか。そういう意味だよね。


Rispostaリスポスタ correttaコレッタ。そう、正解だ。では、これは理解できるかね?」


ヴィットーリオは再びこちらを向いて。
真顔で言った。

Ti amoティアモ tanto タントconコン tuttoトゥット il cuoreイルクオーレ

「え? ええと、心の底からあなたを愛しています?」

満足そうに頷いている。
よかった、正解だ。


Siスィ pregaプレーガ di ディsposarsiスポーサルスィ
あ、これはわかる。

「結婚してください」
「よろしい、では結婚しよう」


*****


「…………えっ!?」

思わず、まじまじとヴィットーリオの顔を見返してしまったけど。
真顔だった。

冗談を言っている訳ではないようだ。


今の。
イタリア語を日本語に訳してみろ、って流れじゃなかったの!?


「イタリア語は理解しているのだろう? ならば、私の想いはもう伝わっているはずだ」
「……って?」

ヴィットーリオは、不自然に視線を泳がせた。

「……Io amoロアモ solo teソロテdulcineaドゥルチネーア、と。言ったのを、聞いていたのだろう? 他にも……、」
珍しく歯切れが悪いな。


ロアモソロテ。
君だけを愛している。

イタリア語では、愛してるって。
何度も囁かれたっけ。


まさか。
じゃあ、あれは。

「えっ、あれ、僕に言ってたの!?」

「君以外の誰に、愛を囁いたと思ったのかね!? 他に誰も居ない、あの場で!?」


そんな理解できない、みたいな顔をされても。
こっちが理解不能だ。

「だって。あなたは僕の母……母さんが好きだったんじゃ……?」

Come mai何だって? 君という唯一無二の存在を産んでくれた夏子さんには心から感謝しているが。彼女に対し、恋愛感情は、一切、持っていない!」
スタッカートがついてそうなくらい、はっきりと言い切った。


「私はあの日、宗司を。……他でもない、君を迎えに行ったんだ」


*****


え?
母さんじゃなくて。僕を、迎えに来たって!?

ってことは。


一体化したいとか、全部血を入れ替えたいとか、食べてしまいたいとか。
あの、異常なまでの行動は、全部。

母さんにじゃなく。
僕に対してのものだったわけ……!?


何で?
こんな美形に、そんなに執着されるような覚えはないけど。

僕は昔、会ったことがあるのか?
この人と?

でも、こんな美形、一度見たら忘れないだろうし。
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