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謎の美少年と面会することになりました。
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勝手に大学を休学させられて、バイトも辞めさせられて。
外国の島に誘拐されて、地下室に閉じ込められて。
一日中男に犯されたり、男性器を喉奥まで咥え込まされたり。
それでいて、甲斐甲斐しく世話をされたり。
それだけじゃなく、血を抜かれたり、輸血されたり。
それまで普通の大学生だった僕にはハードすぎる生活を送らされているけど。
何故だか、悲観的な気分にはならなかった。
手荒には扱われてない、というか。
大切にされているような気がするからだろうか?
それは、母さんの身代わりだからかな。
以前、鼻とか口の辺りが似てるって言われたことがあるから。
目は似てないんだと思う。
だから、目を閉じさせるんだろう。
あと。
一週間我慢すれば、あの子と会えるっていう希望があるから。
どうにか耐えられた。
*****
ヴィットーリオは、慣れた手つきで輸血の仕度をしている。
腕が良い人がやると、注射って痛くないんだって初めて知った。
注射の扱いに慣れたマフィアか……。意味を考えると、本当に怖いな……。
ヴィットーリオは、あまり脱がないけど。身体のあちこちに古傷がいっぱいあった。
刃物や、恐らく銃痕っぽい傷痕。
マフィアだけあって、抗争とかで撃たれたり刺されたりしたのかもしれない。
応急手当とか、そういうので覚えたのかな。
僕から抜いた血を、うっとりとした様子で注射している。
その様子は、どう見ても非合法な薬物を打ってるようにしか見えない。
もう二度と会えない人と、血液を通して一体化しているような気分なんだろうか。
「あの、母とは、いつ会ったんですか?」
答えてもらえるかわからなかったけど。
気になっていたので聞いてみた。
「ハハ? ……ああ、夏子さんか。そうだな、最後に顔を見たのは15年前だが」
普通に答えてくれた。
15年前か。
そんなに昔なんだ。
日本に旅行中とかで、偶然、パートしてた母さんと出会ったのかな?
童顔で、子持ちには見られないって言ってたし。
僕のことも、実の息子じゃなくて、年の離れた弟に間違えられたことがしょっちゅうあったっけ。
*****
「じゃあ、僕が6歳で……、あなたが高校生か、大学生くらいの時かな? 母が人妻で子持ちだと、ご存知だったんですか?」
「……大学生?」
ヴィットーリオは眉間に皺を寄せた。
「君は私の年齢を、何歳だと思っているのかね?」
「え? 30前後くらい……ですよね?」
伝統あるクリスティアーニの総帥に選ばれるんだから、色々下積みも経験してきているはずだし。
まさか、それ以下ってことはないだろうと思う。
ヴィットーリオは、眉間を指で押さえている。
「……たとえば。マルチェッロは何歳に見えると?」
マルチェッロ。
今、ヴィットーリオの代わりに仕事をしてる、茶髪の色男か。
「若く見えたけど、25、6歳くらいですかね?」
ちゃらちゃらしたように見せてたけど、常識人っぽかったし。
最年少幹部みたいな印象だった。
「ああ、26歳だ。では、リッカルドは?」
あの怖い顔をした側近の人か。
「老けて見えるけど。意外と若そうな感じだから、35歳くらいかも」
「正解だ。……それで、何故、私を30歳くらいだと思った?」
あれ? 怒ってる?
「キャリアとかありそうなので。あと、言動とか、総合的に……あ、もしかして、若く言いすぎちゃいました?」
「…………」
ヴィットーリオは不機嫌そうな顔をして。
その後何度聞いても、自分の年齢を答えてはくれなかった。
どうやら、ご機嫌を損ねてしまったようだ。
意外と子供っぽいところがあるんだな。
*****
ここに攫われてから、一週間経った。
身体は、すっかりヴィットーリオに抱かれるのに慣らされてしまった。
入ってない状態に、違和感を覚えるくらいに。
僕も一週間ぶりに鎖から解放されて。男性用の服を着ることが許されたけど。
両手足首のリングはそのままで。
首には首輪もつけられた。
ご丁寧に、リード付きだった。
そんなものを着けなくても、この島からは逃げられないっていうのに。
城の周囲には番犬が放たれてて、マフィアの人もうろうろしてて。
海には人喰い鮫。
そんな状況で逃げられるなんて、天才マジシャンか超能力者くらいしかいないのでは?
犬みたいにリードを引っ張られて歩くのかと思ったら。
ひょい、と抱き上げられて運ばれてしまった。
小型愛玩犬じゃないんだから。
鷹ちゃんそっくりなあの子とは、応接室で、5分だけ面会を許されている。
ああ、緊張するなあ。
何て言おう。
ノックの音がして。
「avanti」
ヴィットーリオの合図で、部屋に入って来た。
鷹ちゃんが、あの頃のまま、大きくなったような容姿の。
ふわりとした金髪に縁取られた、少女のような可愛らしい顔。
まるで天使みたいだ。
*****
「Da seduto」
命じられて。
恐る恐る、正面のソファーに腰掛けている。
ヴィットーリオが怖い顔してるから、怯えちゃってるじゃないか。
ヴィットーリオは懐中時計を取り出して、よし、と言った。
今から5分か。
まずは、本人確認からかな。
一応、聞いてみよう。
「えっと、……鷹ちゃん?」
「Può ripetere?」
不思議そうに、小首を傾げている。
声は……どことなく、似てる気がする。
少し低くなったくらいで。
もう15年も前だし、日本語を忘れたのかもしれない。
と思っていたら。
「ああ、言い忘れたが。彼は幼い頃の記憶を失っていて、イタリア語以外理解できなかったのだった」
え……。
何で今、それを言うのかな……。
まあいいか。
外国の島に誘拐されて、地下室に閉じ込められて。
一日中男に犯されたり、男性器を喉奥まで咥え込まされたり。
それでいて、甲斐甲斐しく世話をされたり。
それだけじゃなく、血を抜かれたり、輸血されたり。
それまで普通の大学生だった僕にはハードすぎる生活を送らされているけど。
何故だか、悲観的な気分にはならなかった。
手荒には扱われてない、というか。
大切にされているような気がするからだろうか?
それは、母さんの身代わりだからかな。
以前、鼻とか口の辺りが似てるって言われたことがあるから。
目は似てないんだと思う。
だから、目を閉じさせるんだろう。
あと。
一週間我慢すれば、あの子と会えるっていう希望があるから。
どうにか耐えられた。
*****
ヴィットーリオは、慣れた手つきで輸血の仕度をしている。
腕が良い人がやると、注射って痛くないんだって初めて知った。
注射の扱いに慣れたマフィアか……。意味を考えると、本当に怖いな……。
ヴィットーリオは、あまり脱がないけど。身体のあちこちに古傷がいっぱいあった。
刃物や、恐らく銃痕っぽい傷痕。
マフィアだけあって、抗争とかで撃たれたり刺されたりしたのかもしれない。
応急手当とか、そういうので覚えたのかな。
僕から抜いた血を、うっとりとした様子で注射している。
その様子は、どう見ても非合法な薬物を打ってるようにしか見えない。
もう二度と会えない人と、血液を通して一体化しているような気分なんだろうか。
「あの、母とは、いつ会ったんですか?」
答えてもらえるかわからなかったけど。
気になっていたので聞いてみた。
「ハハ? ……ああ、夏子さんか。そうだな、最後に顔を見たのは15年前だが」
普通に答えてくれた。
15年前か。
そんなに昔なんだ。
日本に旅行中とかで、偶然、パートしてた母さんと出会ったのかな?
童顔で、子持ちには見られないって言ってたし。
僕のことも、実の息子じゃなくて、年の離れた弟に間違えられたことがしょっちゅうあったっけ。
*****
「じゃあ、僕が6歳で……、あなたが高校生か、大学生くらいの時かな? 母が人妻で子持ちだと、ご存知だったんですか?」
「……大学生?」
ヴィットーリオは眉間に皺を寄せた。
「君は私の年齢を、何歳だと思っているのかね?」
「え? 30前後くらい……ですよね?」
伝統あるクリスティアーニの総帥に選ばれるんだから、色々下積みも経験してきているはずだし。
まさか、それ以下ってことはないだろうと思う。
ヴィットーリオは、眉間を指で押さえている。
「……たとえば。マルチェッロは何歳に見えると?」
マルチェッロ。
今、ヴィットーリオの代わりに仕事をしてる、茶髪の色男か。
「若く見えたけど、25、6歳くらいですかね?」
ちゃらちゃらしたように見せてたけど、常識人っぽかったし。
最年少幹部みたいな印象だった。
「ああ、26歳だ。では、リッカルドは?」
あの怖い顔をした側近の人か。
「老けて見えるけど。意外と若そうな感じだから、35歳くらいかも」
「正解だ。……それで、何故、私を30歳くらいだと思った?」
あれ? 怒ってる?
「キャリアとかありそうなので。あと、言動とか、総合的に……あ、もしかして、若く言いすぎちゃいました?」
「…………」
ヴィットーリオは不機嫌そうな顔をして。
その後何度聞いても、自分の年齢を答えてはくれなかった。
どうやら、ご機嫌を損ねてしまったようだ。
意外と子供っぽいところがあるんだな。
*****
ここに攫われてから、一週間経った。
身体は、すっかりヴィットーリオに抱かれるのに慣らされてしまった。
入ってない状態に、違和感を覚えるくらいに。
僕も一週間ぶりに鎖から解放されて。男性用の服を着ることが許されたけど。
両手足首のリングはそのままで。
首には首輪もつけられた。
ご丁寧に、リード付きだった。
そんなものを着けなくても、この島からは逃げられないっていうのに。
城の周囲には番犬が放たれてて、マフィアの人もうろうろしてて。
海には人喰い鮫。
そんな状況で逃げられるなんて、天才マジシャンか超能力者くらいしかいないのでは?
犬みたいにリードを引っ張られて歩くのかと思ったら。
ひょい、と抱き上げられて運ばれてしまった。
小型愛玩犬じゃないんだから。
鷹ちゃんそっくりなあの子とは、応接室で、5分だけ面会を許されている。
ああ、緊張するなあ。
何て言おう。
ノックの音がして。
「avanti」
ヴィットーリオの合図で、部屋に入って来た。
鷹ちゃんが、あの頃のまま、大きくなったような容姿の。
ふわりとした金髪に縁取られた、少女のような可愛らしい顔。
まるで天使みたいだ。
*****
「Da seduto」
命じられて。
恐る恐る、正面のソファーに腰掛けている。
ヴィットーリオが怖い顔してるから、怯えちゃってるじゃないか。
ヴィットーリオは懐中時計を取り出して、よし、と言った。
今から5分か。
まずは、本人確認からかな。
一応、聞いてみよう。
「えっと、……鷹ちゃん?」
「Può ripetere?」
不思議そうに、小首を傾げている。
声は……どことなく、似てる気がする。
少し低くなったくらいで。
もう15年も前だし、日本語を忘れたのかもしれない。
と思っていたら。
「ああ、言い忘れたが。彼は幼い頃の記憶を失っていて、イタリア語以外理解できなかったのだった」
え……。
何で今、それを言うのかな……。
まあいいか。
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