5 / 56
地下室に監禁されてしまいました。
しおりを挟む
「わ、」
ひょい、と肩に担ぎ上げられて。
ヴィットーリオは強面の男達を振り切り、城の中に入った。
「Sul serio?」
「Aspetti un attimo!」
目の前で城門を閉められた男達が叫んでるけど、完全無視してる。
いいのかな……。
「……あれ?」
窓からこっちを見ている、金髪の少年に気付いた。
美少女みたいな容姿で。金髪で。
綺麗な青い目。
大好きだった幼馴染みと、そっくりに見える。
あの子は、まさか。
「……鷹ちゃん……?」
ヴィットーリオは、僕の視線の先にいた少年に気付いて。
「Ritorna nella stanza!」
部屋に戻れ、と命令した。
すると彼はびくっとして、すぐに身を翻してしまった。
「あの、今の人は……?」
「あれは、君には関係のない人間だ」
帰ってきたのは、氷のように冷たい声だった。
*****
「Quanto tempo! È da un secolo che non ci sentiamo!」
玄関を通り過ぎたところで。
茶髪の美形が笑顔で声を掛けてきた。
久しぶり、今世紀中連絡を取り合ってなかった、って言ってた……?
そんなに長い間!?
1999年だとしても、もう20年は前では?
イタリアンジョークかな? と首を傾げていたら。
「あ、君、日本人かな? こんちにはー」
流暢な日本語で話しかけられた。
イントネーションも自然だ。
「こんにちは」
挨拶をされると、つい返してしまう日本人気質。
「俺はね、マルチェッロ・クリスティアーノ。ヴィックの従兄弟だよ」
ヴィックは、ヴィットーリオの愛称か。
しかし、この人も日本語上手いな。
見た目は典型的ラテン系なのに。従兄弟だと言う割に、全然似てない。
わりとイケメンだけど、ヴィットーリオとは比べ物にならないな……などと失礼なことを考えてしまった。
「この子が、例の子?」
「ああそうだ。……レッロ、あと一週間ほど、代行を頼む」
「Cosa!? そんなに!? Dai Dai Dai、殺す気かよ! まだ子供じゃないか!」
マルチェッロは、美形が台無しなほど目を剥いている。
何の話だろうか。
「こう見えて成人済みだ。死なせない。身体に覚えさせるだけだ」
「caspita、これが東洋の神秘……。って、それなら三日で充分じゃ……俺も殺す気かー!?」
不安そうなマルチェッロの声を後に。
ヴィットーリオは僕を肩に担いだまま、城の中をどんどん進んで行った。
*****
階段を降りて。
地下室に入ったようだ。
中は、明るくて広い部屋だった。
今まで背後にぴったりくっついて来ていた怖い顔の人は、ここまでは入ってこないようだ。
部屋の真ん中には、どん、と大きな天蓋ベッドが設置されてあった。
あんなの、映画とかでしか見たことがないけど。
実際に使う人いたんだ……。
「うわ、」
その天蓋ベッドに放り投げられて。
足首を掴まれて、カチリと何かを取りつけられた。
冷やりとした感触。
何だこれ。
……3センチくらいの平たい輪っかに、鎖?
驚いている間に、両手と両足首に謎のリングを嵌められた。
鎖は、右足首のリングについていて。
鎖の先は、ベッドの下に隠れているようだ。
「これは、特殊な磁石で作られた枷だ。……こうして、」
スイッチのようなものを操作すると、両手首が引き寄せられた。
リング同士がくっついて、びくともしない。
「信号を与えることで、手首同士、足首同士だけでなく、手首と足首を繋げることも可能だ」
枷? 拘束具か。
「……何で、こんなものを……?」
ヴィットーリオは僕を見下ろして。
ネクタイを外した。
「言っただろう。君をここに閉じ込め、飼うためだと」
*****
この島は、テスタ島といって。
難攻不落、天然の要塞のようなものだという。
城も同じ名前で呼ばれているとか。ヴィットーリオの名字と同じだ。
やっぱり、というか予想通りというか。
クリスティアーニはイタリアの由緒正しき……と言っていいのかわからないけど、マフィアだった。
禁酒法よりも前から存在してるらしい。
何でそんな古式ゆかしきイタリアンマフィアの後取りと、うちの母さんが知り合いなんだよ!?
しかも、どういった理由で、その息子である僕を攫って、飼うって話になる訳!?
昔の鷹ちゃんみたいな愛らしい美少年とかならともかく。
僕なんて、そこら辺にいる普通の大学生だってのに。
……ベッドサイドに置かれたそれは。
ローション?
あと、何かいかがわしい物体が。
あれは、ディルドってやつだよね。動くのがバイブだっけ?
何でそんなモノがここに。
……まさか。
こんな、相手に困ってるとは思えないような超美形な男が。
「まさか、僕に、いかがわしい事をするつもりじゃ……ない、ですよね?」
ヴィットーリオは、優雅に腕のカフスボタンを外している。宝石がついてて高そうだな……などと考えてる場合じゃない。
「いかがわしい? no、これから、sesso……性行為をするつもりだが?」
はっきりと断言されてしまった。
「犯罪! 合意を得ないわいせつ行為は犯罪だから!」
強引にイタリアまで誘拐されちゃったし。
犯罪行為とか、今更だけど。
*****
「……さっき、君が気にしていた男がいたな?」
さっきの。
鷹ちゃんっぽい子のことかな?
でも、二十歳になったばかりにしては、若すぎるようなのが気に掛かるんだよな。
外国人ってすぐ老けるイメージがあるけど。
日本人の血が入ってるから、あんまり老けてないのかな?
それに、あれが鷹ちゃんだとしたら、僕のことを覚えてるはずだと思うんだ。
僕は情けないことに、あんまり変わってない……と思うし。
ヴィットーリオ総帥に部屋に戻れって命令されたから、声を掛けられなかっただけかな?
「あれは、うちで身柄を預かっている者だ。……その待遇は、私の一存でどうとでもなる」
意味深な言い方をして。
「待遇って。まさか、よ……あの人に、ひどい事をするつもりじゃ……」
あんな美少女みたいな容姿だ。
色々と、不穏な想像をしてしまう。
ヴィットーリオはそれには答えず、にやりと笑った。
「……これから行うのは、合意の上の性行為、だ。いいな?」
確認されて。
頷くしかなかった。
具体的な脅し言葉を使わないなんて。
マフィアって、卑怯だ。
ひょい、と肩に担ぎ上げられて。
ヴィットーリオは強面の男達を振り切り、城の中に入った。
「Sul serio?」
「Aspetti un attimo!」
目の前で城門を閉められた男達が叫んでるけど、完全無視してる。
いいのかな……。
「……あれ?」
窓からこっちを見ている、金髪の少年に気付いた。
美少女みたいな容姿で。金髪で。
綺麗な青い目。
大好きだった幼馴染みと、そっくりに見える。
あの子は、まさか。
「……鷹ちゃん……?」
ヴィットーリオは、僕の視線の先にいた少年に気付いて。
「Ritorna nella stanza!」
部屋に戻れ、と命令した。
すると彼はびくっとして、すぐに身を翻してしまった。
「あの、今の人は……?」
「あれは、君には関係のない人間だ」
帰ってきたのは、氷のように冷たい声だった。
*****
「Quanto tempo! È da un secolo che non ci sentiamo!」
玄関を通り過ぎたところで。
茶髪の美形が笑顔で声を掛けてきた。
久しぶり、今世紀中連絡を取り合ってなかった、って言ってた……?
そんなに長い間!?
1999年だとしても、もう20年は前では?
イタリアンジョークかな? と首を傾げていたら。
「あ、君、日本人かな? こんちにはー」
流暢な日本語で話しかけられた。
イントネーションも自然だ。
「こんにちは」
挨拶をされると、つい返してしまう日本人気質。
「俺はね、マルチェッロ・クリスティアーノ。ヴィックの従兄弟だよ」
ヴィックは、ヴィットーリオの愛称か。
しかし、この人も日本語上手いな。
見た目は典型的ラテン系なのに。従兄弟だと言う割に、全然似てない。
わりとイケメンだけど、ヴィットーリオとは比べ物にならないな……などと失礼なことを考えてしまった。
「この子が、例の子?」
「ああそうだ。……レッロ、あと一週間ほど、代行を頼む」
「Cosa!? そんなに!? Dai Dai Dai、殺す気かよ! まだ子供じゃないか!」
マルチェッロは、美形が台無しなほど目を剥いている。
何の話だろうか。
「こう見えて成人済みだ。死なせない。身体に覚えさせるだけだ」
「caspita、これが東洋の神秘……。って、それなら三日で充分じゃ……俺も殺す気かー!?」
不安そうなマルチェッロの声を後に。
ヴィットーリオは僕を肩に担いだまま、城の中をどんどん進んで行った。
*****
階段を降りて。
地下室に入ったようだ。
中は、明るくて広い部屋だった。
今まで背後にぴったりくっついて来ていた怖い顔の人は、ここまでは入ってこないようだ。
部屋の真ん中には、どん、と大きな天蓋ベッドが設置されてあった。
あんなの、映画とかでしか見たことがないけど。
実際に使う人いたんだ……。
「うわ、」
その天蓋ベッドに放り投げられて。
足首を掴まれて、カチリと何かを取りつけられた。
冷やりとした感触。
何だこれ。
……3センチくらいの平たい輪っかに、鎖?
驚いている間に、両手と両足首に謎のリングを嵌められた。
鎖は、右足首のリングについていて。
鎖の先は、ベッドの下に隠れているようだ。
「これは、特殊な磁石で作られた枷だ。……こうして、」
スイッチのようなものを操作すると、両手首が引き寄せられた。
リング同士がくっついて、びくともしない。
「信号を与えることで、手首同士、足首同士だけでなく、手首と足首を繋げることも可能だ」
枷? 拘束具か。
「……何で、こんなものを……?」
ヴィットーリオは僕を見下ろして。
ネクタイを外した。
「言っただろう。君をここに閉じ込め、飼うためだと」
*****
この島は、テスタ島といって。
難攻不落、天然の要塞のようなものだという。
城も同じ名前で呼ばれているとか。ヴィットーリオの名字と同じだ。
やっぱり、というか予想通りというか。
クリスティアーニはイタリアの由緒正しき……と言っていいのかわからないけど、マフィアだった。
禁酒法よりも前から存在してるらしい。
何でそんな古式ゆかしきイタリアンマフィアの後取りと、うちの母さんが知り合いなんだよ!?
しかも、どういった理由で、その息子である僕を攫って、飼うって話になる訳!?
昔の鷹ちゃんみたいな愛らしい美少年とかならともかく。
僕なんて、そこら辺にいる普通の大学生だってのに。
……ベッドサイドに置かれたそれは。
ローション?
あと、何かいかがわしい物体が。
あれは、ディルドってやつだよね。動くのがバイブだっけ?
何でそんなモノがここに。
……まさか。
こんな、相手に困ってるとは思えないような超美形な男が。
「まさか、僕に、いかがわしい事をするつもりじゃ……ない、ですよね?」
ヴィットーリオは、優雅に腕のカフスボタンを外している。宝石がついてて高そうだな……などと考えてる場合じゃない。
「いかがわしい? no、これから、sesso……性行為をするつもりだが?」
はっきりと断言されてしまった。
「犯罪! 合意を得ないわいせつ行為は犯罪だから!」
強引にイタリアまで誘拐されちゃったし。
犯罪行為とか、今更だけど。
*****
「……さっき、君が気にしていた男がいたな?」
さっきの。
鷹ちゃんっぽい子のことかな?
でも、二十歳になったばかりにしては、若すぎるようなのが気に掛かるんだよな。
外国人ってすぐ老けるイメージがあるけど。
日本人の血が入ってるから、あんまり老けてないのかな?
それに、あれが鷹ちゃんだとしたら、僕のことを覚えてるはずだと思うんだ。
僕は情けないことに、あんまり変わってない……と思うし。
ヴィットーリオ総帥に部屋に戻れって命令されたから、声を掛けられなかっただけかな?
「あれは、うちで身柄を預かっている者だ。……その待遇は、私の一存でどうとでもなる」
意味深な言い方をして。
「待遇って。まさか、よ……あの人に、ひどい事をするつもりじゃ……」
あんな美少女みたいな容姿だ。
色々と、不穏な想像をしてしまう。
ヴィットーリオはそれには答えず、にやりと笑った。
「……これから行うのは、合意の上の性行為、だ。いいな?」
確認されて。
頷くしかなかった。
具体的な脅し言葉を使わないなんて。
マフィアって、卑怯だ。
2
お気に入りに追加
295
あなたにおすすめの小説

鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
美人に告白されたがまたいつもの嫌がらせかと思ったので適当にOKした
亜桜黄身
BL
俺の学校では俺に付き合ってほしいと言う罰ゲームが流行ってる。
カースト底辺の卑屈くんがカースト頂点の強気ド美人敬語攻めと付き合う話。
(悪役モブ♀が出てきます)
(他サイトに2021年〜掲載済)
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞


元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
【短編】乙女ゲームの攻略対象者に転生した俺の、意外な結末。
桜月夜
BL
前世で妹がハマってた乙女ゲームに転生したイリウスは、自分が前世の記憶を思い出したことを幼馴染みで専属騎士のディールに打ち明けた。そこから、なぜか婚約者に対する恋愛感情の有無を聞かれ……。
思い付いた話を一気に書いたので、不自然な箇所があるかもしれませんが、広い心でお読みください。

被虐趣味のオメガはドSなアルファ様にいじめられたい。
かとらり。
BL
セシリオ・ド・ジューンはこの国で一番尊いとされる公爵家の末っ子だ。
オメガなのもあり、蝶よ花よと育てられ、何不自由なく育ったセシリオには悩みがあった。
それは……重度の被虐趣味だ。
虐げられたい、手ひどく抱かれたい…そう思うのに、自分の身分が高いのといつのまにかついてしまった高潔なイメージのせいで、被虐心を満たすことができない。
だれか、だれか僕を虐げてくれるドSはいないの…?
そう悩んでいたある日、セシリオは学舎の隅で見つけてしまった。
ご主人様と呼ぶべき、最高のドSを…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる