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大和撫子、砂漠の王子に攫われる
そして、幸せな一日を
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「……んん、」
目が覚めたら。
世にも美しい美貌の青年が、俺の目の前にあって。
ふっと微笑んだ。
完璧に美しい裸体を惜しげもなく晒し、横になっている。
……起きたなら服着ろや。
人の寝顔を、幸せそうに眺めてるんじゃない。
全くもう。
あんなに純情そうな少年だったのに。
こんな絶倫淫獣王子に育つとは、誰が想像できただろうか。
「……こんなイケメンに育ちやがって、生意気な」
張りのある肌を、ぺしぺし叩いてやる。
あれ?
何か、小さいアスランが出てくる夢を見てたような……。
……イブン王子の夢、だったのかな? アスランの小さい頃とそっくりだっていうし。
父親にも母親にも似てないのに、末弟はそっくりって面白い。
といっても、将来全く同じに育つかはわからないけど。
お揃いの格好して並ばせたら面白そうだな……って。
母さんたちみたいな発想してしまった。
†††
「ユキヤは私の顔、好きかね?」
「ん? 綺麗だと思うよ? 顔が好きかと聞かれると、好きかなぁ」
見てても見飽きないし。
「私の顔は祖父、……先代の王に似ているらしい」
「ああ、失礼なマスコミにブチ切れて、それ以来この国が記者立ち入り禁止になったっていう、あの?」
王子はくすりと笑った。
「そう、その先王だ。すぐに癇癪を起こし、人や物に当たるので、恐れられていた。私もしばらくの間、腫れ物に触れるように扱われていたものだ」
「……顔が似てるからって、性格まで一緒じゃないのに」
「恐怖と暴力の記憶というのは、なかなか消えぬものだ。記憶のすり替えを待つしかない」
そう、静かに言った。
達観してるなあ。
そうせざるを得なかったんだろうけど。
しかし、どんなに腹が立っても、手を出したりせず穏やかな笑顔でいるよう心がけているのに、何故私は魔王呼ばわりされているのだろう、と言う。
……キレてるのに穏やかな笑顔されたら、余計怖いんじゃない?
ともあれ、末の王子も生まれ。
顔は祖父似でも穏やかな子だったので、ようやく周囲の誤解も解けてきたようだ。
イブン王子、なつっこくて可愛いもんな。
英語苦手だけど、聖歌で兄上と兄嫁のご結婚を祝うために英語の歌詞を頑張って覚えました! って言ってて。
すっっごく可愛かった……。
こちらの王子は、幼少時代から腫れ物扱いで育ったこともあり、異国で不安な中、親切にされたのでうっかり女装男子高校生に惚れてしまったのだろうか?
吊り橋効果みたいな?
その気持ちを10年も保ち続けるとか、凄いよな。
†††
「……残念だな……」
「どうした?」
「雷で記憶吹っ飛んでなかったらアスランと再会して、どんな感じだったのか知りたかったのにな」
え、あの時の子供がこんな育ったの? とか。
良かった、これ返したかったんだ、とか言ってブレスレット返しちゃったり?
イブン王子みたいな小さくて可愛い子が、こんなにでかくなって現れて、王子だって言われてプロポーズされたら腰抜かすよ。
シンデレラもびっくり、まるで御伽噺のような話じゃないか。
惜しむらくは、姫の性別が男だったことだけど。
10年越しのプロポーズに。
俺は、何て答えただろう?
「”こんなイケメンに育ちやがって、生意気な”ではないのか?」
含み笑いをして。
この野郎。
寝起きの言葉までいちいち記憶してるなっての。
……まあ、そうかもな。
意外と、そんなもんかもしれない。
†††
「私との思い出を覚えていたかった、忘れているのが残念だと思ってくれることが、私は嬉しい」
アスランは嬉しそうだ。
「俺はそれより源氏物語や時代劇のDVD観て、偉い人っぽい口調で日本語覚えようと頑張る姿とか、超見たかったなー」
うっかり江戸っ子みたいなべらんめえ口調になってても面白いけど。
今度教えてみようかな。
「私は、私の知らない時間を過ごしたユキヤの全てを見たいが?」
甘い微笑みを向けられて。
まるでバカップルみたいな会話してることに気付いた。
……みたいじゃねえ、そのものだよ!
アスランの知らない、俺の時間、か。
んー、……仕事してたことくらいしか記憶にないな。
「アスランがいなかった時、どういう風に過ごしてたかなんて。もうすっかり忘れちゃったよ」
目が覚めたら隣りにいるのが当たり前で。
そんな当たり前が、とても幸せなことだって。俺は思うよ。
「私もだ」
そう言って。アスランは俺の額に、おはようのキスを落とした。
願わくば。
こんな何でもない、幸せな日が。
当たり前みたいに、いつまでも続きますように。
おわり
目が覚めたら。
世にも美しい美貌の青年が、俺の目の前にあって。
ふっと微笑んだ。
完璧に美しい裸体を惜しげもなく晒し、横になっている。
……起きたなら服着ろや。
人の寝顔を、幸せそうに眺めてるんじゃない。
全くもう。
あんなに純情そうな少年だったのに。
こんな絶倫淫獣王子に育つとは、誰が想像できただろうか。
「……こんなイケメンに育ちやがって、生意気な」
張りのある肌を、ぺしぺし叩いてやる。
あれ?
何か、小さいアスランが出てくる夢を見てたような……。
……イブン王子の夢、だったのかな? アスランの小さい頃とそっくりだっていうし。
父親にも母親にも似てないのに、末弟はそっくりって面白い。
といっても、将来全く同じに育つかはわからないけど。
お揃いの格好して並ばせたら面白そうだな……って。
母さんたちみたいな発想してしまった。
†††
「ユキヤは私の顔、好きかね?」
「ん? 綺麗だと思うよ? 顔が好きかと聞かれると、好きかなぁ」
見てても見飽きないし。
「私の顔は祖父、……先代の王に似ているらしい」
「ああ、失礼なマスコミにブチ切れて、それ以来この国が記者立ち入り禁止になったっていう、あの?」
王子はくすりと笑った。
「そう、その先王だ。すぐに癇癪を起こし、人や物に当たるので、恐れられていた。私もしばらくの間、腫れ物に触れるように扱われていたものだ」
「……顔が似てるからって、性格まで一緒じゃないのに」
「恐怖と暴力の記憶というのは、なかなか消えぬものだ。記憶のすり替えを待つしかない」
そう、静かに言った。
達観してるなあ。
そうせざるを得なかったんだろうけど。
しかし、どんなに腹が立っても、手を出したりせず穏やかな笑顔でいるよう心がけているのに、何故私は魔王呼ばわりされているのだろう、と言う。
……キレてるのに穏やかな笑顔されたら、余計怖いんじゃない?
ともあれ、末の王子も生まれ。
顔は祖父似でも穏やかな子だったので、ようやく周囲の誤解も解けてきたようだ。
イブン王子、なつっこくて可愛いもんな。
英語苦手だけど、聖歌で兄上と兄嫁のご結婚を祝うために英語の歌詞を頑張って覚えました! って言ってて。
すっっごく可愛かった……。
こちらの王子は、幼少時代から腫れ物扱いで育ったこともあり、異国で不安な中、親切にされたのでうっかり女装男子高校生に惚れてしまったのだろうか?
吊り橋効果みたいな?
その気持ちを10年も保ち続けるとか、凄いよな。
†††
「……残念だな……」
「どうした?」
「雷で記憶吹っ飛んでなかったらアスランと再会して、どんな感じだったのか知りたかったのにな」
え、あの時の子供がこんな育ったの? とか。
良かった、これ返したかったんだ、とか言ってブレスレット返しちゃったり?
イブン王子みたいな小さくて可愛い子が、こんなにでかくなって現れて、王子だって言われてプロポーズされたら腰抜かすよ。
シンデレラもびっくり、まるで御伽噺のような話じゃないか。
惜しむらくは、姫の性別が男だったことだけど。
10年越しのプロポーズに。
俺は、何て答えただろう?
「”こんなイケメンに育ちやがって、生意気な”ではないのか?」
含み笑いをして。
この野郎。
寝起きの言葉までいちいち記憶してるなっての。
……まあ、そうかもな。
意外と、そんなもんかもしれない。
†††
「私との思い出を覚えていたかった、忘れているのが残念だと思ってくれることが、私は嬉しい」
アスランは嬉しそうだ。
「俺はそれより源氏物語や時代劇のDVD観て、偉い人っぽい口調で日本語覚えようと頑張る姿とか、超見たかったなー」
うっかり江戸っ子みたいなべらんめえ口調になってても面白いけど。
今度教えてみようかな。
「私は、私の知らない時間を過ごしたユキヤの全てを見たいが?」
甘い微笑みを向けられて。
まるでバカップルみたいな会話してることに気付いた。
……みたいじゃねえ、そのものだよ!
アスランの知らない、俺の時間、か。
んー、……仕事してたことくらいしか記憶にないな。
「アスランがいなかった時、どういう風に過ごしてたかなんて。もうすっかり忘れちゃったよ」
目が覚めたら隣りにいるのが当たり前で。
そんな当たり前が、とても幸せなことだって。俺は思うよ。
「私もだ」
そう言って。アスランは俺の額に、おはようのキスを落とした。
願わくば。
こんな何でもない、幸せな日が。
当たり前みたいに、いつまでも続きますように。
おわり
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