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大和撫子、砂漠の王子に攫われる

自覚した気持ち

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『命を助けられた礼をする為に招待したのに。このようなことに巻き込んでしまい、まことに申し訳なかった』


ハマド国王は、俺に対して心底申し訳無さそうに謝罪したけど。
石油相の裏切りは、現国王ハマドのせいじゃないし。

むしろ俺が謀反計画を聞いて、攫われた結果、こうしてクーデターは実行前に阻止されて。犯人も捕まったし。

俺も、ハマド国王も無事だった。
それって、凄くラッキーなことじゃないか?


「この国の”神様のお使い”にも会うことができたし。改めて、自分の気持ちにも気付けたから、かえって良かったかも」

アスランはそっぽ向いているので、シャオフーが訳してくれた。

「おお、女神イラーハよ……」
ハマド国王は跪いて俺を見上げた。

祈るな。


「……いい加減、俺が男だって教えたほうが良くない?」

「いえ、ハマドは殿下から聞いて雪哉様が男性だと知っているはずですが。頭が良くないので新しい情報をアップデートできないのかもしれませんね」
シャオフーは笑顔で言った。


シャオフーは、何で俺のことは様付けで呼ぶのに、ハマド国王を呼び捨てにするの!?
当たりもなんか、辛辣じゃないかな……?

同い年みたいだし、知り合いなのだろうか。
同級生?


†††


予定では日帰りだったんだけど。

もう夜も遅いし、疲れただろう、と。
王宮の客間に一泊させてもらうことになった。勿論、ちゃんと警護もつけてくれるそうだ。


客間もゴージャスだった。
風呂の浴槽なんて、金だよ、金。ゴールデン・バス! 蛇口も金だ。

これはさすがにメッキだよね? 強度的に。

前の王、相当やらかしたって聞いたけど。
浪費癖でもあったのかなあ?


アスランは民族服を脱いで、上半身裸になっている。
……いいカラダしてるよなぁ。

もはや羨ましいという気持ちにもならない。
自分には縁が無いものと諦めざるを得ないというか。


もう、いいカラダはアスランがいるからそれで充分、って気持ちが心の大半を占めていた。

自分がマッチョになって誰かを抱き締めるより。
アスランになら、抱き締められるのも悪くないかな、と思ってる。


†††


「先程言っていた、改めて気付いた気持ち、とは何だ?」
さっきからずっと、気になってたようだ。

「んー、ここでは、あんまり言いたくないんだけど……」


「む、何だ。夫である私に言いたくないことなのか?」
眉間に皺を寄せた。

だから、なんだよ。
人の話をちゃんと聞けっての。

いいけど。

「いや、オタワのおっさんに襲われかけたって言ったじゃん? それが凄く嫌で、凄く気持ち悪かったんだよな……」


「す、すまない。言いたくないのなら、言わなくてもよい」
拗ねていたのが、顔色を変えた。

嫌なことを思い出させて、嫌な気持ちにさせたって、後悔してるんだ。
アスランのこういうとこが、好きだなって思う。


「大丈夫。足首触られたくらいだから。昔、電車内で痴漢に遭った事もあるし。そんなもんだ」
たぶん女の子に間違えられて、なんだろうけど。

あ、あのおっさんもそうか。

幼女とか言ってたし。
うわ、思い出すだにキモッ! 最悪だあのゲス野郎。


極刑になればいい。


†††


「…………」
アスランの眉間に、更に皺が寄ってる。

「で。アスランの時は、セクハラされてもそれほど嫌じゃなかったなー、とか考えてた」


腰を抱かれたり、背中とかにキスされたりしたけど。
結婚式の後、抱かれちゃったりもしたけど。

アスランの場合、俺のことを、単なる性欲の捌け口にした訳じゃなくて。

ずっと好きだった相手と、愛を確かめ合いたくて、わけだし。
誤解はあったけど。気持ちは純粋だった。

それに、相当我慢してただろうに。
無理矢理突っ込んだりせず、ちゃんと俺のこと、気遣ってくれた。

思い返せば、まんざらでもなかったかな……って。
我ながら現金だ。


「それで、俺ってば、自分で思ってたよりアスランのこと、愛しちゃってたんだなって。気付いたわけ」

「ユキヤ……!」
告げた直後、アスランが飛びついてきて。

「私がどんなに嬉しいか、わかるか?」

ぎゅっと抱き締められて。
キスをされた。


「愛している、ユキヤ。……全身でこの愛を伝えたいのだが、いいか?」

アスランはすっかりその気になってしまっている。
股間の王子は最高潮クライマックスだ。

……絶対こうなると思ってたんだ。
予想通りだ。


ここ、他国の客室だし!
他人のうちでしたくなかったから、ここでは言いたくなかったんだよ!!


†††


「駄目。ここ、人んちだからそういうことするの、やだ」

興奮して迫ってくるアスランの胸板を押す。
当然ながら、びくともしないけど。

何なのこの力の差!

「大丈夫だ。新婚の夫婦が泊まるのだぞ? 向こうもそれは当然のことと想定している」
「いやいや、余計にイヤだよ!!」

少しも大丈夫な部分がないっての!

「見ろ、ベッドサイドにローションとコンドームワークゥも用意してあるだろう?」
振り向けば、本当に用意されていた。

ひええ。
そんな気遣いは不要、ノーサンキューだってば!!


「ユキヤ……、駄目か?」
懇願するように、額や頬、鼻の頭にキスを落とされる。

全くもう。

結局俺も、実のところはたかったりして。
強くは拒めないのだった。

嫌なことはとっとと忘れ去りたい。
キモイおっさんに迫られた記憶なんて、綺麗サッパリ拭い去りたいからな。


「……風呂、入ってからなら、」
そう言うと。

アスランは凄い勢いで頷いて、ダッシュでお湯を溜めに行った。


王子様なのに、自分で風呂の準備とかできるんだ、と一瞬感心したけど。
留学経験があるんだっけ?

王族はそれぞれ専門の使用人がいて。
食事や風呂、着替えすら自分ではしないっていうけど。

そういえば、アスランは着替えとか、全部自分でやっちゃってるなあ。


めくるめく一週間も。
ぐったりした俺を風呂入れたりとかの世話は、だいたいアスランがやってくれてた。

でもおしぼりやタオル、食事の用意をして寝室に持って来てたのはシャオフーだったらしい。俺の裸を見せたくないからって、顔を合わせはしなかったけど。


一番大変だったのはシャオフーか。
側近なのに、色々やらせすぎだよ……。
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