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エピローグ・近衛顕正の幸福
結婚式への準備
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ジジイの遺言により、半年以内に籍を入れることが条件にあったことを話した上で。
結婚式よりも先に婚姻届けを出すことを了承してもらった。
もし今、私が事故か病気で倒れた場合。
現状、周はただの居候でしかない。私の財産は愛する周に譲りたいし、最期を看取って欲しいと思っている。だから、籍を入れたいのだと。
その為に強引なことをしてきたというのに。周は喜んで快諾してくれたのだった。
可憐で愛らしく、心優しい妻を得ることができたのだ。
少しはあのクソジジイにも、感謝していい……と思わなくもない。
*****
午後休を取り、二人で役所に行った時は、心が躍った。
周はこれで、私の妻になるのだと。
嬉しさのあまり、その場で周を抱き上げて、ぐるぐる回りたい気持ちだったが。
人目があったので、何とか堪えた。
そのまま家に帰って新妻を抱き締め、愛し合いたいところだったが。残念ながら急な仕事が入ってしまったので、社に戻ることになった。
「私の祖父と君の祖母の喪が明ける来年まで、正式に発表するのは待たないといけないが。本日をもって、君は私の妻になったんだな……」
車の中、幼妻を見つめ、感無量になる。
「君を幸せにすると誓う」
周の小さな手を握り、心から誓った。
「……もう、充分幸せですよ?」
嬉しそうに私を見上げ、そんな可愛らしいことを。
ああ、何故こんな時に、仕事など……!
「君は欲がない。もっともっと幸せにしてやりたい」
「ぼくも、顕正さんのことを幸せにしたいと思います」
周の身体を抱き寄せ、告げる。
「……愛している、周」
「ぼくも……愛してます」
「そういうのは自宅で、人目のない場所でお願いします。それと、念のため後部座席でもシートベルトの着用を」
「……ああ、」
喬任は少し、空気を読んで欲しい。
*****
周は私と相談し、私立K大の総合経営学部に進むことを選んだ。
周の学力は問題ないのだが。お目付け役の綾小路君の学力がやや危ういとのことだった。
そして、翌年二月。合格発表の日。
周は主席合格で。綾小路君も何とか合格したようだ。
「おめでとう、周」
「周さま、合格おめでとうございます」
「周様、流石でございます……!」
喬任だけでなく、爺までも一緒に来ていた。
発表は自分の目で見たいと楽しみにしていた周には黙っていたが。
実のところ、主席合格の通知は来ていたので。家ではすでに祝い膳の用意をさせていた。
「ここで沢山勉強して。僅かでも、顕正さんのお手伝いが出来たらいいと思います」
私の支えになりたいのだと、健気なことを言う。
「ああ、待っているよ」
早く、私の可愛い右腕が来ることを。
「愛妻が傍に居たら、デレデレして仕事にならない気がしますけどね」
喬任の嫌味に。
私は大袈裟に肩を竦めてみせた。
「酷いな喬任、私は家族の幸せのために、仕事はきちんとこなすぞ?」
家族だけではなく。
社員たちの幸せを守るために努力する。
それは、私にとっても幸せなことなのだと、周に教えて貰った。
*****
ジューンブライド。
六月に結婚式を挙げた花嫁は、幸せになるという。
くだらない迷信だと思っていたが。
今は違う。
愛する者には少しでも幸せになってもらいたい。だから、こういったジンクスに縋るのだ。
どうしても、六月中には式を挙げたかった。
うちのジジイと周の祖母殿の喪が明けた、六月末。
待ちに待った、結婚式である。
喬任は最後まで渋っていたが。
周本人は私の希望を優先したいと言ってくれ、服飾部門からの熱烈な要望もあり。
周の衣装は白無垢の花嫁衣装と、服飾部門の本気を見せたウエディングドレスとなった。
婚約指輪は、久世家に預けられていた指輪をサイズ直しをしたものと、指輪と同じ宝石のネクタイピンを贈った。
結婚指輪はシンプルに、プラチナのリングにした。
神前式は本家の大座敷で、家族のみで行うことにした。
周には家族が居ないので、穂積一家を呼んだ。
白無垢に綿帽子を被り、薄化粧を施した周は、天女のように美しかった。
式の間、嬉しさにゆるみそうになる頬を引き締めるのはかなり困難だった。
私の横にいるのは、白無垢の似合う、清らかな花嫁だ。
さすがに結婚式前日には挿入をせず、素股で我慢したのだが。
周のほうが我慢できなくなってしまったようで、泣きながら後ろに挿れて欲しい、と淫らに悶え、おねだりしていた姿からは想像できないほど。
「もう、そんなえっちな顔しないでください」
どうやら何を考えていたか、ばれてしまっていたようだ。
可愛い花嫁から、拗ねたような顔で肘でつつかれるのもまた、幸せである。
*****
記念写真を撮り。
家の寝所で、すぐにでも白無垢を脱がして抱きたかったが。
私服に着替えて、教会へ移動である。
教会に移動し、控え室でタキシードに着替える。
ウエディングドレスのデザイン画はチェックしたが、仕上がりは見てのお楽しみだ。
教会で結婚式を挙げるのだが。
宗教上の問題で、結婚の宣誓をするのは神父でなく牧師である。
いちいちそんなことを気にする者は居ないだろうが。
結婚式よりも先に婚姻届けを出すことを了承してもらった。
もし今、私が事故か病気で倒れた場合。
現状、周はただの居候でしかない。私の財産は愛する周に譲りたいし、最期を看取って欲しいと思っている。だから、籍を入れたいのだと。
その為に強引なことをしてきたというのに。周は喜んで快諾してくれたのだった。
可憐で愛らしく、心優しい妻を得ることができたのだ。
少しはあのクソジジイにも、感謝していい……と思わなくもない。
*****
午後休を取り、二人で役所に行った時は、心が躍った。
周はこれで、私の妻になるのだと。
嬉しさのあまり、その場で周を抱き上げて、ぐるぐる回りたい気持ちだったが。
人目があったので、何とか堪えた。
そのまま家に帰って新妻を抱き締め、愛し合いたいところだったが。残念ながら急な仕事が入ってしまったので、社に戻ることになった。
「私の祖父と君の祖母の喪が明ける来年まで、正式に発表するのは待たないといけないが。本日をもって、君は私の妻になったんだな……」
車の中、幼妻を見つめ、感無量になる。
「君を幸せにすると誓う」
周の小さな手を握り、心から誓った。
「……もう、充分幸せですよ?」
嬉しそうに私を見上げ、そんな可愛らしいことを。
ああ、何故こんな時に、仕事など……!
「君は欲がない。もっともっと幸せにしてやりたい」
「ぼくも、顕正さんのことを幸せにしたいと思います」
周の身体を抱き寄せ、告げる。
「……愛している、周」
「ぼくも……愛してます」
「そういうのは自宅で、人目のない場所でお願いします。それと、念のため後部座席でもシートベルトの着用を」
「……ああ、」
喬任は少し、空気を読んで欲しい。
*****
周は私と相談し、私立K大の総合経営学部に進むことを選んだ。
周の学力は問題ないのだが。お目付け役の綾小路君の学力がやや危ういとのことだった。
そして、翌年二月。合格発表の日。
周は主席合格で。綾小路君も何とか合格したようだ。
「おめでとう、周」
「周さま、合格おめでとうございます」
「周様、流石でございます……!」
喬任だけでなく、爺までも一緒に来ていた。
発表は自分の目で見たいと楽しみにしていた周には黙っていたが。
実のところ、主席合格の通知は来ていたので。家ではすでに祝い膳の用意をさせていた。
「ここで沢山勉強して。僅かでも、顕正さんのお手伝いが出来たらいいと思います」
私の支えになりたいのだと、健気なことを言う。
「ああ、待っているよ」
早く、私の可愛い右腕が来ることを。
「愛妻が傍に居たら、デレデレして仕事にならない気がしますけどね」
喬任の嫌味に。
私は大袈裟に肩を竦めてみせた。
「酷いな喬任、私は家族の幸せのために、仕事はきちんとこなすぞ?」
家族だけではなく。
社員たちの幸せを守るために努力する。
それは、私にとっても幸せなことなのだと、周に教えて貰った。
*****
ジューンブライド。
六月に結婚式を挙げた花嫁は、幸せになるという。
くだらない迷信だと思っていたが。
今は違う。
愛する者には少しでも幸せになってもらいたい。だから、こういったジンクスに縋るのだ。
どうしても、六月中には式を挙げたかった。
うちのジジイと周の祖母殿の喪が明けた、六月末。
待ちに待った、結婚式である。
喬任は最後まで渋っていたが。
周本人は私の希望を優先したいと言ってくれ、服飾部門からの熱烈な要望もあり。
周の衣装は白無垢の花嫁衣装と、服飾部門の本気を見せたウエディングドレスとなった。
婚約指輪は、久世家に預けられていた指輪をサイズ直しをしたものと、指輪と同じ宝石のネクタイピンを贈った。
結婚指輪はシンプルに、プラチナのリングにした。
神前式は本家の大座敷で、家族のみで行うことにした。
周には家族が居ないので、穂積一家を呼んだ。
白無垢に綿帽子を被り、薄化粧を施した周は、天女のように美しかった。
式の間、嬉しさにゆるみそうになる頬を引き締めるのはかなり困難だった。
私の横にいるのは、白無垢の似合う、清らかな花嫁だ。
さすがに結婚式前日には挿入をせず、素股で我慢したのだが。
周のほうが我慢できなくなってしまったようで、泣きながら後ろに挿れて欲しい、と淫らに悶え、おねだりしていた姿からは想像できないほど。
「もう、そんなえっちな顔しないでください」
どうやら何を考えていたか、ばれてしまっていたようだ。
可愛い花嫁から、拗ねたような顔で肘でつつかれるのもまた、幸せである。
*****
記念写真を撮り。
家の寝所で、すぐにでも白無垢を脱がして抱きたかったが。
私服に着替えて、教会へ移動である。
教会に移動し、控え室でタキシードに着替える。
ウエディングドレスのデザイン画はチェックしたが、仕上がりは見てのお楽しみだ。
教会で結婚式を挙げるのだが。
宗教上の問題で、結婚の宣誓をするのは神父でなく牧師である。
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