上 下
28 / 36

迎える朝

しおりを挟む
顕正さんの腕が、前に回されて。
後ろから、ぎゅっと抱き締められる。

「君がもうすぐ私の伴侶になってくれると思うと、喜びで胸が躍るようだ……」
背中に伝わる鼓動は速い。

ぼくの心臓も、たぶん顕正さんと同じか、それ以上にときめいているに違いない。


お風呂の中で、顕正さんが勃起してしまったので。
お尻はもう無理だからと、太股に挟んで、してもらった。

後ろから擦られて。
ぼくも気持ち良くなってしまって。


危うく、のぼせてしまうところだった。


*****


朝、目を覚まして。
目の前にあった肌色に頬を寄せる。……顕正さんの胸に。


「起きたのかな? おはよう」
頭を撫でられる。

「……おはようございます」

「まだ眠い? 起床時間には早いから、もう少し寝ていても構わないぞ?」
優しい声と手に、眠ってしまいたくなるけれど。

「いいえ、もう少し、こうしていてもいいですか?」
逞しい背に、手を回す。


さらっとした手触りだ。痕跡はお風呂で洗い流したせいか、さっぱりした身体。
昨夜の出来事など、まるで無かったかのように思える。

でも、ぼくの身体の奥には、まだ顕正さんが入っているような違和感が残っている。

疼痛というより、甘い痛みというのか。
不思議な感覚だ。


「……昨夜、君と結ばれたのだとは、まだ信じられない……」
抱き寄せられて、そう言われた。

どうやら、同じようなことを考えていたようだ。


「ぼくは信じられますよ? まだ、ここに貴方が入っているような感覚が残ってますから」
お腹に手を当てて、告げる。

「……っ!」
顕正さんの性器が反応したのがわかった。

昨夜、あんなにしたのに。


「傷にはなっていなかったが。少し腫れていたな。初めてだというのに、無理をさせてすまなかったね」
指先で、を撫でられた。

指が滑る感触からして、軟膏を塗られていたようだ。
いつの間に。

ぼくが寝ている間に、怪我をしていないか確認して、手当てをされたのだろうか?
恥ずかしい。


*****


「昨夜のことは、謝らないでください。言ったでしょう? それほど、ぼくのことを欲しいと思ってくれたの、嬉しかった……」
「……全く、君は……!」

抱き締められて。
噛みつかれるようなキスをされた。


「ん、……う、」

お腹に当たる、顕正さんの性器。
凄く熱い。

昨夜見た、あの、張り詰めていて血管の浮いた状態の性器を思い出す。

赤黒くて、キノコみたいに傘が張っていて。硬くて、大きかった。
あれが自分の中に入ったなんて、信じられないけど。

あの痛みと快感、内臓を内側から圧迫されるような感覚は。夢でも何でもない、現実のものだった。


「……っは、」
口を塞がれていた唇が離れて。額にキスをされる。

「まだ痛いようだし。……でして、いいか?」

顕正さんの手が、ぼくの太股の間を撫でた。
太股で擦って、射精することを素股というらしい。

「そんなに痛くはないですよ? まだ入っている気がするだけで」


「……君は、私をこれ以上メロメロにさせて、どうするつもりなんだ!?」
ぼくを抱き締める腕の力が強くなった。

メロメロ?


一度だけ、挿入して。
あとは太股で擦って、射精した。

食事の時間ギリギリになるまで、して。
慌ててシャワーを浴びた。


自分の部屋に着替えに行こうと思い、立ち上がろうとしたら。
何故だか足に力が入らなくて、よろけてしまったので。顕正さんに着替えを手伝ってもらうことになってしまった。

「大丈夫? 今日は学校を休むことにするか」
「大丈夫です。こういうことでいちいちお休みしてしまっては、悪いことをした気になってしまうでしょう?」

顕正さんは、苦笑したような顔をして微笑んで。
ぼくの頭を撫でてくれた。


幸せだ。


*****


大丈夫だと言ったのに。

顕正さんはぼくを抱き上げたまま食堂に運んで。
椅子の座席に、やわらかい円形のクッションを置かせた。

それを見て、岩倉の視線が厳しくなった。

お尻が痛くなった理由に気付いたようで。
未婚の身なのに、はしたない真似をするな、と怒られるかと思ったら。


「……若?」
「言い訳はしない。何とでも責めるがいい」

いい年した大人のくせに我慢できないなんて、それも翌朝影響が出るほどがっつくなんてどんでもない、と延々と説教をされることになったのは、顕正さんの方だった。
やっぱり岩倉はぼくに甘い気がする。


喬任には、痛み止めを渡された。
消炎鎮痛剤だそうだ。これは恥ずかしい。

「岩倉、顕正さんを怒らないで。……合意なので……」

「しかしですな、」
岩倉は言い足りないようで、渋い顔をしている。


「そろそろ出立の時間ですので、ここまでと致しましょう。検めの儀には御膳所で台所頭に鴨の血でも用意させます。それで良いですね?」
喬任がそう言って。

出勤と通学のために、車を出しに行った。


御膳所はキッチンのことで、台所頭と言うのは、お城の本丸で料理を作る人のトップ、つまりシェフのことだそうだ。
お屋敷は洋風なのに……。有名店で働いていたというシェフも、戸惑っていないだろうか。

給料明細の役職名も、そう書かれているのかな?


ここの使用人たちの名称が、それぞれどうなっているのか気になって来た。
お医者さんを御典医とか呼んでたりして。

今度詳しく訊いてみよう。フットマンは何になるのかな……。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

悩ましき騎士団長のひとりごと

きりか
BL
アシュリー王国、最強と云われる騎士団長イザーク・ケリーが、文官リュカを伴侶として得て、幸せな日々を過ごしていた。ある日、仕事の為に、騎士団に詰めることとなったリュカ。最愛の傍に居たいがため、団長の仮眠室で、副団長アルマン・マルーンを相手に飲み比べを始め…。 ヤマもタニもない、単に、イザークがやたらとアルマンに絡んで、最後は、リュカに怒られるだけの話しです。 『悩める文官のひとりごと』の攻視点です。 ムーンライト様にも掲載しております。 よろしくお願いします。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

お客様と商品

あかまロケ
BL
馬鹿で、不細工で、性格最悪…なオレが、衣食住提供と引き換えに体を売る相手は高校時代一度も面識の無かったエリートモテモテイケメン御曹司で。オレは商品で、相手はお客様。そう思って毎日せっせとお客様に尽くす涙ぐましい努力のオレの物語。(*ムーンライトノベルズ・pixivにも投稿してます。)

オメガなパパとぼくの話

キサラギムツキ
BL
タイトルのままオメガなパパと息子の日常話。

フローブルー

とぎクロム
BL
——好きだなんて、一生、言えないままだと思ってたから…。 高二の夏。ある出来事をきっかけに、フェロモン発達障害と診断された雨笠 紺(あまがさ こん)は、自分には一生、パートナーも、子供も望めないのだと絶望するも、その後も前向きであろうと、日々を重ね、無事大学を出て、就職を果たす。ところが、そんな新社会人になった紺の前に、高校の同級生、日浦 竜慈(ひうら りゅうじ)が現れ、紺に自分の息子、青磁(せいじ)を預け(押し付け)ていく。——これは、始まり。ひとりと、ひとりの人間が、ゆっくりと、激しく、家族になっていくための…。

恋愛騎士物語1~孤独な騎士の婚活日誌~

凪瀬夜霧
BL
「綺麗な息子が欲しい」という実母の無茶な要求で、ランバートは女人禁制、男性結婚可の騎士団に入団する。 そこで出会った騎兵府団長ファウストと、部下より少し深く、けれども恋人ではない微妙な距離感での心地よい関係を築いていく。 友人とも違う、部下としては近い、けれど恋人ほど踏み込めない。そんなもどかしい二人が、沢山の事件を通してゆっくりと信頼と気持ちを育て、やがて恋人になるまでの物語。 メインCP以外にも、個性的で楽しい仲間や上司達の複数CPの物語もあります。活き活きと生きるキャラ達も一緒に楽しんで頂けると嬉しいです。 ー!注意!ー *複数のCPがおります。メインCPだけを追いたい方には不向きな作品かと思います。

理香は俺のカノジョじゃねえ

中屋沙鳥
BL
篠原亮は料理が得意な高校3年生。受験生なのに卒業後に兄の周と結婚する予定の遠山理香に料理を教えてやらなければならなくなった。弁当を作ってやったり一緒に帰ったり…理香が18歳になるまではなぜか兄のカノジョだということはみんなに内緒にしなければならない。そのため友だちでイケメンの櫻井和樹やチャラ男の大宮司から亮が理香と付き合ってるんじゃないかと疑われてしまうことに。そうこうしているうちに和樹の様子がおかしくなって?口の悪い高校生男子の学生ライフ/男女CPあります。

放課後教室

Kokonuca.
BL
ある放課後の教室で彼に起こった凶事からすべて始まる

処理中です...