異世界でチート過ぎる三毛猫にされた俺は、オオカミ騎士から溺愛されてます。

篠崎笙

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凱旋帰国

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帰りは足取りも軽く。
もはや襲撃に備えることもない。

海の見える温泉にも、明るいうちに入ることができてユキミも満足そうだった。


そうして、長いようで短かった遠征も終わり。
我々はシルヴェスター王国へ帰還した。

俺はツガイを得たので、グレゴリーにも勝つ自信はあったが。

皆は、まさかこうして一人も欠けることなく、無事帰還できるとは思っていなかったようだ。
それほどの脅威、強敵であった。


*****


首都に入った時点で、陛下より、すぐに王城へ向かうよう伝言が入ったので。
スウェーンはうちに、ユキミの礼服一式を受け取りに走った。

俺たちはこのままの格好で行くが。
ユキミには正装をさせたい。このために作らせたのだから。


英雄の帰還を祝い、首都や周辺の住民等がいっぱいに沿道に集まり、大歓迎してくれた。

戦いの様子は、映写石で記録して、その都度戦況報告を城へ送っていたので、皆ユキミの活躍を知っているのである。
望遠台の巨大スクリーンで、適当に編集したものを流していたようだ。


ジャスパーの教え子の学士達も集まって、こちらへ手を振っていた。
先生がいつでも映写石目線で笑った、と言ってる。

ああ、やたら仕草が芝居がかってると思ったら。
何やってんだか。

帰りに温泉でのぼせて、イアソンにお姫様抱っこされて運ばれてる情けない姿、流してやろうか?


城門に着く前に、スウェーンが戻ってきた。

城の控え室の使用許可も取ってきたらしい。
相変わらず、優秀な従者である。


王城に並ぶ兵士達も、割れんばかりの拍手で出迎えてくれた。

控え室で、ユキミは礼服に着替えた。
とてもよく似合ってて可愛い。

できれば誰にも見せずに隠しておきたいくらいだが。見せびらかしたい気持ちもある。


スウェーンは自分は従者だからと辞退しようとしたが。
授与式には全員強制参加である。

全員に、戦功勲章と、勲一等、最高勲章を与えられた。
国の英雄であると王が認めた、という証だ。

これは騎士にとって、最高の名誉である。


*****


「貴君らの活躍は映写石でしかと見た。まことに大儀であった。貴君らは、我が国が誇る英雄である」
褒美は望みのものを取らせよう、との言葉に。

「このまま、この国でアレックスのツガイとして住んでいいですか?」
ユキミの申し出に、陛下は目を瞬かせた。

そんなことでよいのか? と困惑して俺を見ている。
最大の功労者である。望みのものは何だろうと用意するというのに。

ユキミは無欲すぎるのだ。
だからこそ、神子として選ばれたのだろう。

俺は陛下に、大きく頷いてみせた。


「無論。是非とも末永く我が国に滞在していただきたい。我が養子としてシルヴェスターの籍に入れ、侯爵の地位を与えてもよいのだが。どうかな?」
もはや孫を見る目だった。

「ととととんでもない!」

ユキミは文字通りぴょんと飛び上がった。
可愛い。

「アレックスと一緒にいられれば、それで充分です」

ユキミ……。


「ほっほっほぅ、ツガイとは離れたくないか。ならば、遊撃騎士補佐の職位を与えよう。いつでも一緒にいられるぞ」
「ありがとうございます!」

甘い。
陛下まで、デレッデレに甘い。


ユキミは気付いてないようだが、遊撃騎士の補佐ということは、王国騎士団で二番目の地位である。
つまり、アーノルドたちの上司になるんだぞ?

皆、まったく気にしてないようだが。


俺は、褒美に休暇を願った。
交渉の末、一週間、なんとかもぎ取った。


*****


旅の仲間としばしの別れ。
ようやく我が家へ帰れる。いざ往かん、愛の巣へ。


と。
ユキミが突然立ち止まって。

眠くなったのかと思ったら。
なんと、神に呼び出されていたようだ。


神より、直々に労いのお言葉をいただき、元の世界に帰るかとの誘いを断ったという。

どうしても帰れないのならともかく。
こんな危険な世界に、わざわざ留まるなんて。

俺だって、ようやく手にした愛おしいツガイを離したくはない。
だが。

この世界は、ユキミには厳しすぎる。合わないのではないかと思っていた。


しかしユキミは、向こうに残した家族よりも。
安寧な生活よりも。

俺と共に生きることを、選んでくれたのだ。


その想いに、応えたい。

何があっても、俺が守ろう。
王命よりも、最優先で。


愛している。俺のツガイ。

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