異世界でチート過ぎる三毛猫にされた俺は、オオカミ騎士から溺愛されてます。

篠崎笙

文字の大きさ
上 下
44 / 52
アレックス

俺のツガイが小悪魔可愛い

しおりを挟む
しばらく走らせると、見晴らしの良い場所に着いたので。
昼食と、作戦会議だ。


「てへ、ばれちゃった」
おっさんがかわいこぶるな。

案の定、ジャスパーの正体はあっさりイアソンにバレたようだ。


ジャスパーは、皆に軽く自己紹介した。
一人だけジャスパーの正体を知らなかったティグリスは、仲間はずれにされて怒っていたが。

本人が内緒にして欲しい、と言ったんだから仕方ないだろう。
結局バレたが。


「ボスのグレゴリーの姿は、守護獣を”ケモノ”に変容させられる時に一度見ただけだが。あれは、とんでもなく強い獣だった。正直、こっちの勝ち目はないと思った」

守護獣を無理矢理引き摺り出し、変容させて。再び憑かせると。性格も頭の中身も獣のようになり、知能も落ち、攻撃的になる。
”ケモノ”化したら、二度と元の姿には戻れない、と思われていた。

「ところが。こっちの神子サンのがとんでもなかった。銀狼の騎士も、”ケモノ”を吹っ飛ばせるようだし。もう負ける気はしないね」


ジャスパーは服の構成を組み替える魔法を解き、王国魔術師の制服に変えた。
特級医療魔法師のイアソンは白地に赤のラインが入った制服だが、特級魔術師の制服は白地に金だ。

ユキミの前に、跪いて。
「シルヴェスター王国特級魔術師ジャスパー=ルウェリン。神子様の力となるべく、尽力致します」

まるで舞台の一シーンのようで、決まっていたが。


「特級なのにつかまっちゃったんだ……」
ユキミは容赦なかった。

「面目ない……」
ジャスパーは耳としっぽをへたれさせていた。


*****


会議の結果。
次の潜伏地には、ユキミも連れて行くことになった。


ジャスパーの件もあり、話し合いで解決するならその方がいい、という意見が多く出た。
ユキミなら、人死に無しで済むかもしれないと。

こちらとしても、皆殺しは本意ではない。
もちろん万全の体制を整えて臨むが。


ユキミは自分のしっぽを見ながら言った。
「それにしても、猫がそんな貴重な生き物だなんて知らなかったよ」

動物の猫自体が絶滅危惧種であり、さらにその守護獣となると滅多にみられない。
猫だとひと目でわかるのは、生物学者くらいだという。

「俺の実家の庭、いっぱいいたけどな。にゃんこ」

「ファレル家は希少生物の保護活動もしてますので。少しずつ、増えてきてますよ」
スウェーンは俺より実家に詳しいな。

「そんな希少生物をハゲさせたんだ。アレックス」
「姿を見るなり逃げるようになりましたね」

くっ、俺の心の傷を。

「反省してるっての。何でユキミにそんな話をバラすんだ」
「主人のためを思って注意を促すのは従者として当然でしょう」


ユキミが、すり寄るように近付いてきた。
まさに、猫のように。

「俺はいくら撫でられても、ストレスでハゲたりしないよ? アレックスの手、気持ちいいし」
あどけないのに、色っぽい仕草で。

「ユキミ……、」
俺の腕の間から、するりと抜けて。

「今は駄目」
と、茶を淹れてるアーノルドのとこへ行ってしまった。


「俺のツガイが小悪魔すぎる……」

猫のような気まぐれさ。
そこが可愛くて。とても愛おしいのだが。


*****



馬車を近場の村に預け、この先の目的地へは、馬で行くことにした。

俺はユキミと。
馬車の二頭はスウェーン、イアソンとジャスパーで分かれて行く。

意外にも、ジャスパーは乗馬が苦手だったらしい。


ユキミに魔法師と魔術師の違いを問われ、答えたり。
浮かれてしまいそうなのを我慢する。

特級なのに、何故ジャスパーがあっさり捕まってしまったのか考えていたのだろう。

「ヒグマって、かわいい小熊だった?」

「いや、ティグリスよりでかい、かわいくない大きなクマだった」
ジャスパーが答える。

ああ、可愛かったから、ジャスパーも勝てなかったと思ったのか。


「心配するな。ユキミが世界で一番可愛い」

ユキミは俺を見上げた。
潤んだような大きな目。じっと見られると、そわそわしてしまう。

ああ、本当に可愛い……。


「えへへ、」
ユキミは俺の腕にすりすりして。

めちゃくちゃ可愛い。
抱き締めたいが、馬に乗っているので危険だ。


「俺もかわいいツガイが欲しい……」
ジャスパーが心底羨ましそうに呟いているのが聞こえた。

ははは、羨ましいだろう。


*****


目的地近くで、魔力の気配がした。


『ようこそいらっしゃい。シルヴェスター王国騎士団の皆様方』
”シルフの伝言”か。

『仲間の多くを失い、こちらは大損害です。平和的に話し合いをしたいので、この先の建物へ来て欲しいのですが』


平和的、だと?
……これはさすがに。

「罠だね!」
ユキミは耳をぴるぴるさせて言った。

何故、そんな嬉しそうに……。

イアソンはそこをあえて行くのが男だ! とか言ってるが。
お前、過信して死にかけたばっかりだろうが……。


少し先に、木造の家屋があった。

何年か前に作られたものだろう。比較的新しい。
火薬や爆弾のにおいはしない。

ジャスパーも危険はなさそうだ、と言ってる。
しかし、これは。


「罠などありませんよ。どうぞお入りください」
羊の顔をした男が顔を出した。

「わたしの名はオウィス。領主をしておりました」

「領主が何故、”ケモノ”に?」
アーノルドが相手をしているので、俺は家屋の中をあらためることにする。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている

迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。 読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)  魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。  ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。  それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。  それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。  勘弁してほしい。  僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる

クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。 ★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

【完結】第三王子は、自由に踊りたい。〜豹の獣人と、第一王子に言い寄られてますが、僕は一体どうすればいいでしょうか?〜

N2O
BL
気弱で不憫属性の第三王子が、二人の男から寵愛を受けるはなし。 表紙絵 ⇨元素 様 X(@10loveeeyy) ※独自設定、ご都合主義です。 ※ハーレム要素を予定しています。

異世界転移して美形になったら危険な男とハジメテしちゃいました

ノルジャン
BL
俺はおっさん神に異世界に転移させてもらった。異世界で「イケメンでモテて勝ち組の人生」が送りたい!という願いを叶えてもらったはずなのだけれど……。これってちゃんと叶えて貰えてるのか?美形になったけど男にしかモテないし、勝ち組人生って結局どんなん?めちゃくちゃ危険な香りのする男にバーでナンパされて、ついていっちゃってころっと惚れちゃう俺の話。危険な男×美形(元平凡)※ムーンライトノベルズにも掲載

処理中です...