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アレックス
俺のツガイが小悪魔可愛い
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しばらく走らせると、見晴らしの良い場所に着いたので。
昼食と、作戦会議だ。
「てへ、ばれちゃった」
おっさんがかわいこぶるな。
案の定、ジャスパーの正体はあっさりイアソンにバレたようだ。
ジャスパーは、皆に軽く自己紹介した。
一人だけジャスパーの正体を知らなかったティグリスは、仲間はずれにされて怒っていたが。
本人が内緒にして欲しい、と言ったんだから仕方ないだろう。
結局バレたが。
「ボスのグレゴリーの姿は、守護獣を”ケモノ”に変容させられる時に一度見ただけだが。あれは、とんでもなく強い獣だった。正直、こっちの勝ち目はないと思った」
守護獣を無理矢理引き摺り出し、変容させて。再び憑かせると。性格も頭の中身も獣のようになり、知能も落ち、攻撃的になる。
”ケモノ”化したら、二度と元の姿には戻れない、と思われていた。
「ところが。こっちの神子サンのがとんでもなかった。銀狼の騎士も、”ケモノ”を吹っ飛ばせるようだし。もう負ける気はしないね」
ジャスパーは服の構成を組み替える魔法を解き、王国魔術師の制服に変えた。
特級医療魔法師のイアソンは白地に赤のラインが入った制服だが、特級魔術師の制服は白地に金だ。
ユキミの前に、跪いて。
「シルヴェスター王国特級魔術師ジャスパー=ルウェリン。神子様の力となるべく、尽力致します」
まるで舞台の一シーンのようで、決まっていたが。
「特級なのにつかまっちゃったんだ……」
ユキミは容赦なかった。
「面目ない……」
ジャスパーは耳としっぽをへたれさせていた。
*****
会議の結果。
次の潜伏地には、ユキミも連れて行くことになった。
ジャスパーの件もあり、話し合いで解決するならその方がいい、という意見が多く出た。
ユキミなら、人死に無しで済むかもしれないと。
こちらとしても、皆殺しは本意ではない。
もちろん万全の体制を整えて臨むが。
ユキミは自分のしっぽを見ながら言った。
「それにしても、猫がそんな貴重な生き物だなんて知らなかったよ」
動物の猫自体が絶滅危惧種であり、さらにその守護獣となると滅多にみられない。
猫だとひと目でわかるのは、生物学者くらいだという。
「俺の実家の庭、いっぱいいたけどな。にゃんこ」
「ファレル家は希少生物の保護活動もしてますので。少しずつ、増えてきてますよ」
スウェーンは俺より実家に詳しいな。
「そんな希少生物をハゲさせたんだ。アレックス」
「姿を見るなり逃げるようになりましたね」
くっ、俺の心の傷を。
「反省してるっての。何でユキミにそんな話をバラすんだ」
「主人のためを思って注意を促すのは従者として当然でしょう」
ユキミが、すり寄るように近付いてきた。
まさに、猫のように。
「俺はいくら撫でられても、ストレスでハゲたりしないよ? アレックスの手、気持ちいいし」
あどけないのに、色っぽい仕草で。
「ユキミ……、」
俺の腕の間から、するりと抜けて。
「今は駄目」
と、茶を淹れてるアーノルドのとこへ行ってしまった。
「俺のツガイが小悪魔すぎる……」
猫のような気まぐれさ。
そこが可愛くて。とても愛おしいのだが。
*****
馬車を近場の村に預け、この先の目的地へは、馬で行くことにした。
俺はユキミと。
馬車の二頭はスウェーン、イアソンとジャスパーで分かれて行く。
意外にも、ジャスパーは乗馬が苦手だったらしい。
ユキミに魔法師と魔術師の違いを問われ、答えたり。
浮かれてしまいそうなのを我慢する。
特級なのに、何故ジャスパーがあっさり捕まってしまったのか考えていたのだろう。
「ヒグマって、かわいい小熊だった?」
「いや、ティグリスよりでかい、かわいくない大きなクマだった」
ジャスパーが答える。
ああ、可愛かったから、ジャスパーも勝てなかったと思ったのか。
「心配するな。ユキミが世界で一番可愛い」
ユキミは俺を見上げた。
潤んだような大きな目。じっと見られると、そわそわしてしまう。
ああ、本当に可愛い……。
「えへへ、」
ユキミは俺の腕にすりすりして。
めちゃくちゃ可愛い。
抱き締めたいが、馬に乗っているので危険だ。
「俺もかわいいツガイが欲しい……」
ジャスパーが心底羨ましそうに呟いているのが聞こえた。
ははは、羨ましいだろう。
*****
目的地近くで、魔力の気配がした。
『ようこそいらっしゃい。シルヴェスター王国騎士団の皆様方』
”シルフの伝言”か。
『仲間の多くを失い、こちらは大損害です。平和的に話し合いをしたいので、この先の建物へ来て欲しいのですが』
平和的、だと?
……これはさすがに。
「罠だね!」
ユキミは耳をぴるぴるさせて言った。
何故、そんな嬉しそうに……。
イアソンはそこをあえて行くのが男だ! とか言ってるが。
お前、過信して死にかけたばっかりだろうが……。
少し先に、木造の家屋があった。
何年か前に作られたものだろう。比較的新しい。
火薬や爆弾のにおいはしない。
ジャスパーも危険はなさそうだ、と言ってる。
しかし、これは。
「罠などありませんよ。どうぞお入りください」
羊の顔をした男が顔を出した。
「わたしの名はオウィス。領主をしておりました」
「領主が何故、”ケモノ”に?」
アーノルドが相手をしているので、俺は家屋の中を検めることにする。
昼食と、作戦会議だ。
「てへ、ばれちゃった」
おっさんがかわいこぶるな。
案の定、ジャスパーの正体はあっさりイアソンにバレたようだ。
ジャスパーは、皆に軽く自己紹介した。
一人だけジャスパーの正体を知らなかったティグリスは、仲間はずれにされて怒っていたが。
本人が内緒にして欲しい、と言ったんだから仕方ないだろう。
結局バレたが。
「ボスのグレゴリーの姿は、守護獣を”ケモノ”に変容させられる時に一度見ただけだが。あれは、とんでもなく強い獣だった。正直、こっちの勝ち目はないと思った」
守護獣を無理矢理引き摺り出し、変容させて。再び憑かせると。性格も頭の中身も獣のようになり、知能も落ち、攻撃的になる。
”ケモノ”化したら、二度と元の姿には戻れない、と思われていた。
「ところが。こっちの神子サンのがとんでもなかった。銀狼の騎士も、”ケモノ”を吹っ飛ばせるようだし。もう負ける気はしないね」
ジャスパーは服の構成を組み替える魔法を解き、王国魔術師の制服に変えた。
特級医療魔法師のイアソンは白地に赤のラインが入った制服だが、特級魔術師の制服は白地に金だ。
ユキミの前に、跪いて。
「シルヴェスター王国特級魔術師ジャスパー=ルウェリン。神子様の力となるべく、尽力致します」
まるで舞台の一シーンのようで、決まっていたが。
「特級なのにつかまっちゃったんだ……」
ユキミは容赦なかった。
「面目ない……」
ジャスパーは耳としっぽをへたれさせていた。
*****
会議の結果。
次の潜伏地には、ユキミも連れて行くことになった。
ジャスパーの件もあり、話し合いで解決するならその方がいい、という意見が多く出た。
ユキミなら、人死に無しで済むかもしれないと。
こちらとしても、皆殺しは本意ではない。
もちろん万全の体制を整えて臨むが。
ユキミは自分のしっぽを見ながら言った。
「それにしても、猫がそんな貴重な生き物だなんて知らなかったよ」
動物の猫自体が絶滅危惧種であり、さらにその守護獣となると滅多にみられない。
猫だとひと目でわかるのは、生物学者くらいだという。
「俺の実家の庭、いっぱいいたけどな。にゃんこ」
「ファレル家は希少生物の保護活動もしてますので。少しずつ、増えてきてますよ」
スウェーンは俺より実家に詳しいな。
「そんな希少生物をハゲさせたんだ。アレックス」
「姿を見るなり逃げるようになりましたね」
くっ、俺の心の傷を。
「反省してるっての。何でユキミにそんな話をバラすんだ」
「主人のためを思って注意を促すのは従者として当然でしょう」
ユキミが、すり寄るように近付いてきた。
まさに、猫のように。
「俺はいくら撫でられても、ストレスでハゲたりしないよ? アレックスの手、気持ちいいし」
あどけないのに、色っぽい仕草で。
「ユキミ……、」
俺の腕の間から、するりと抜けて。
「今は駄目」
と、茶を淹れてるアーノルドのとこへ行ってしまった。
「俺のツガイが小悪魔すぎる……」
猫のような気まぐれさ。
そこが可愛くて。とても愛おしいのだが。
*****
馬車を近場の村に預け、この先の目的地へは、馬で行くことにした。
俺はユキミと。
馬車の二頭はスウェーン、イアソンとジャスパーで分かれて行く。
意外にも、ジャスパーは乗馬が苦手だったらしい。
ユキミに魔法師と魔術師の違いを問われ、答えたり。
浮かれてしまいそうなのを我慢する。
特級なのに、何故ジャスパーがあっさり捕まってしまったのか考えていたのだろう。
「ヒグマって、かわいい小熊だった?」
「いや、ティグリスよりでかい、かわいくない大きなクマだった」
ジャスパーが答える。
ああ、可愛かったから、ジャスパーも勝てなかったと思ったのか。
「心配するな。ユキミが世界で一番可愛い」
ユキミは俺を見上げた。
潤んだような大きな目。じっと見られると、そわそわしてしまう。
ああ、本当に可愛い……。
「えへへ、」
ユキミは俺の腕にすりすりして。
めちゃくちゃ可愛い。
抱き締めたいが、馬に乗っているので危険だ。
「俺もかわいいツガイが欲しい……」
ジャスパーが心底羨ましそうに呟いているのが聞こえた。
ははは、羨ましいだろう。
*****
目的地近くで、魔力の気配がした。
『ようこそいらっしゃい。シルヴェスター王国騎士団の皆様方』
”シルフの伝言”か。
『仲間の多くを失い、こちらは大損害です。平和的に話し合いをしたいので、この先の建物へ来て欲しいのですが』
平和的、だと?
……これはさすがに。
「罠だね!」
ユキミは耳をぴるぴるさせて言った。
何故、そんな嬉しそうに……。
イアソンはそこをあえて行くのが男だ! とか言ってるが。
お前、過信して死にかけたばっかりだろうが……。
少し先に、木造の家屋があった。
何年か前に作られたものだろう。比較的新しい。
火薬や爆弾のにおいはしない。
ジャスパーも危険はなさそうだ、と言ってる。
しかし、これは。
「罠などありませんよ。どうぞお入りください」
羊の顔をした男が顔を出した。
「わたしの名はオウィス。領主をしておりました」
「領主が何故、”ケモノ”に?」
アーノルドが相手をしているので、俺は家屋の中を検めることにする。
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