上 下
23 / 52
幸見

やきもちとおしおき

しおりを挟む
アレックスの身体は、鍛えられてて。
引き締まった筋肉のラインとか、すごくかっこいいと思う。腹筋割れてるし。

こうしてあらためて見ると。
こんな強くてかっこいい騎士が、もてないわけないよな、と思う。


俺は何もかも、アレックスがはじめてだけど。
アレックスは、そうじゃないよな。慣れた感じしたし。

……あ、なんかムカついてきた。


「むー」
湯船の中を泳いで、アレックスから離れる。

『猫って泳げるのか……』
「俺、元々泳げるし。猫じゃないし」

『犬の方が泳ぎは上手だぞ?』
と、捕まってしまった。


「犬じゃなくて、狼だろ……」
つん、と明後日の方向を向いてしまう。


*****


『俺の可愛いツガイは、どうしてそんなに拗ねてるのかな?』
頬ずりされる。


だって。
……言ったら、嫉妬してるって思われるし。

そんなの、恥ずかしいし。


「教えない」
顔をそむけたら。

『ふうん?』
ぎゅっと抱き締められて。

教えてあげないつもりだったのに。
身体に訊かれてしまった。


アレックスの、以前の相手を想像して。
嫉妬してたって。

無理矢理、言わされてしまった。

無理矢理言わせてごめん、って謝ってくれたけど。
アレックスは、ものすごく嬉しそうだった。


自分も俺が他の人と仲良くしてるのを見たら、めちゃくちゃ妬くって言った。
昨日も、そう言ってたっけ? 他の男に触らせるなって。

こんなかっこいい人が、そこまで俺にベタ惚れだなんて。
ほんとに信じられないんだけど。


ちょっと可愛いものの前では崩れるちゃうけど、普段は凛々しくて、すごく強くてかっこいい騎士様で。
公爵家で育ちも相当良いし、お金持ちだし。

俺がツガイだってわかる前から、優しかった。

異世界から呼んだのは自分だから、その後の人生も責任取るつもりだったって。
友達にも優しいし、従者にも寛大だ。

強いから、心が広いのかな?


*****


やっぱり、アレックスってば、すごくモテていたようだ。
でも、女の人からの誘いに乗ったことはあるけど。付き合うまでに到った相手はいないって。

つまり。付き合ってはいなかったけど、エッチはしたんだよな?

何人としたかは聞いてない。
上手いし、かなり経験積んでると思う。

そりゃ、面白くはないけど。

狼にとってツガイは、人生に1人きりの相手だから。
この腕は、もう、俺だけのものなんだ。

そう思えば、嬉しいな。
って、俺もかなりベタ惚れじゃないか。

まあいいか
ツガイだし。しょうがないよな。


しかも、ツガイの体液には回復効果もあるらしくて。
俺にとってもアレックスにとっても、愛し合うのはいいことなんだって。

そうか。だから、初めての時も痛くなかったし。
朝になっても、疲れが残ってないし、身体も軽かったんだ。

気持ちいいし、リスクが全くないとか。
異世界、ちょっとどころか、かなり俺に都合よすぎない?


……なんて。
俺も、相当色ボケしてる感じだ。


*****


『朝方までイチャイチャしてたわりに、やたら元気だな……』
ティグリスがげんなりしてた。

何で知ってるんだろ?
まさか、他の部屋にまで聞こえたのかな? 恥ずかしい……。

『ああ、ツガイ同士だからな』
アレックスは平然と。どこか得意げに答えた。

やっぱり、こういうのも経験の差かな……。


みんなで朝風呂に入ってきたらしい、イアソンとジャスパーとアーノルドが来た。
面白い組み合わせだなあ。

『いやあ、すごい筋肉だったよな、イアソンのカラダ!』
『ええ、見事な肉体でした。騎士に欲しいくらいです』
『やめてよ恥ずかしい……それよりその年齢でその肉体維持してるジャスパーのがすごくない?』

『猟師とかして山暮らしだったからかねぇ。聖騎士サンもいいカラダしてるよな』
『恐れ入ります……ルウェリン殿も素晴らしい筋肉をお持ちで』


なんか、互いに筋肉を褒めあってる……。
仲良いな。

俺には褒められるような筋肉はないから仲間には入れないけど。ちょっと、見てみたかったかもしれない。
風呂での3人の会話とか、面白そう。


『面白かったですよ。三者三様で』

スウェーンもいたんだ、その中に。
ちょっと想像つかない。

「仲間に入れば良かったのに」
さぞカオスな光景が広がったことだろう。ちょっと見たい。


『私はただの従者ですし。決して自慢できる肉体ではありませんので、片隅にて気配を消しておりました』

スウェーンは細身に見えるけど。
弓を引く力も強そうだし、イアソンみたいな細マッチョなんじゃないの?

それに。
「……ただの従者は、気配を消さないと思う……」

『いえ、従者には気配を消すスキルが必須なのです』
きっぱり言い切った。

本来、使用人というのは見えない、いない者として扱われるらしい。
貴族の間ではそれが常識なんだとか。知らなかった。


『私の主人マスターは変わり者ですので。居る者を見えない振りはできないと駄々をこねるものですから。困ったものです……』

スウェーンは微笑んだ。
昔のことを思い出してるのか、優しい笑みだった。

やっぱり、アレックスは優しいよね。


*****


次の場所には、幹部クラスの”ケモノ”がいるという。

そのクラスになると、もう潜伏とかしていないで、堂々と悪神の礼拝堂を建設しているらしい。
その集落すべて、”ケモノ”に占拠されたとか。


さすがにそれだけの規模となると。
「ジャスパーや、昨日の魔術師たちみたいに、脅されて仲間入りした人もいそうだね」

『そうだなあ。数が多いと、そういった見極めが難しくなってくるな』
ジャスパーが頷いた。


「じゃあ、上からゴーレムをドーン! と落として一網打尽作戦とか駄目か……」
『全員悪人で、まとめて殲滅できればいいんだけどね……』

イアソンは集落まるごと結界で包んで焼却作戦とか考えてた。


『お前のツガイ、わりと殺意が高すぎないか?』
『ゴーレムドーンとかいかにもにゃんこっぽくて無邪気じゃないか』
『猫というのは、無邪気にネズミをなぶる生き物ですよ?』

ティグリスは、アレックスとアーノルドから猫について講義されてた。
楽しそうだな。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

不夜島の少年~兵士と高級男娼の七日間~

四葉 翠花
BL
外界から隔離された巨大な高級娼館、不夜島。 ごく平凡な一介の兵士に与えられた褒賞はその島への通行手形だった。そこで毒花のような美しい少年と出会う。 高級男娼である少年に何故か拉致されてしまい、次第に惹かれていくが……。 ※以前ムーンライトノベルズにて掲載していた作品を手直ししたものです(ムーンライトノベルズ削除済み) ■ミゼアスの過去編『きみを待つ』が別にあります(下にリンクがあります)

元暗殺者の少年は竜人のギルドマスターに囲われる

ノルねこ
BL
暗殺者の少年は、魔王討伐メンバーで、今は冒険者ギルド・ライムギルドのギルドマスターをしている竜人レオンハルトの暗殺に失敗し、彼に所属していた暗殺者ギルドを壊滅させられる。 行き場を失った名無しの少年、暗殺者ナンバーKはレオンハルトに捕らえられ、「ケイ」という名で冒険者兼ギルド職員として働き始める。 辺境のライムギルドの受付には色々な冒険者が来る。そんな冒険者たちとの触れ合いと、冒険者生活、自分のことをつがいだと言って口説いてくるレオンハルトとのまったりスローライフを不定期連載でお送りします。 レオンハルト(魔王討伐メンバー、元SSS級冒険者、ギルマス、竜人)×ケイ(元暗殺者の少年、ギルド受付と冒険者兼業) 軽いふれあいはありますが、本格的なえっちは後半です。別カプにはあります。作者はレオンハルトに「執筆スピード上げてケイを早く成人させろ!」と怒られた! 作中のおまけと補遺を後書きで登場人物がしてくれます。本文より長くなる場合も…。 ※BLはファンタジー。竜や竜人の生態は全て作者の創作です。チキュウやニホンなど、似たような名前が出てきますが、実際の地球や日本とは名前が似ているだけの別物です。 別サイトでも掲載中。

猫が崇拝される人間の世界で猫獣人の俺って…

えの
BL
森の中に住む猫獣人ミルル。朝起きると知らない森の中に変わっていた。はて?でも気にしない!!のほほんと過ごしていると1人の少年に出会い…。中途半端かもしれませんが一応完結です。妊娠という言葉が出てきますが、妊娠はしません。

転生したらBLゲーの負け犬ライバルでしたが現代社会に疲れ果てた陰キャオタクの俺はこの際男相手でもいいからとにかくチヤホヤされたいっ!

スイセイ
BL
夜勤バイト明けに倒れ込んだベッドの上で、スマホ片手に過労死した俺こと煤ヶ谷鍮太郎は、気がつけばきらびやかな七人の騎士サマたちが居並ぶ広間で立ちすくんでいた。 どうやらここは、死ぬ直前にコラボ報酬目当てでダウンロードしたBL恋愛ソーシャルゲーム『宝石の騎士と七つの耀燈(ランプ)』の世界のようだ。俺の立ち位置はどうやら主人公に対する悪役ライバル、しかも不人気ゆえ途中でフェードアウトするキャラらしい。 だが、俺は知ってしまった。最初のチュートリアルバトルにて、イケメンに守られチヤホヤされて、優しい言葉をかけてもらえる喜びを。 こんなやさしい世界を目の前にして、前世みたいに隅っこで丸まってるだけのダンゴムシとして生きてくなんてできっこない。過去の陰縁焼き捨てて、コンプラ無視のキラキラ王子を傍らに、同じく転生者の廃課金主人公とバチバチしつつ、俺は俺だけが全力でチヤホヤされる世界を目指す! ※頭の悪いギャグ・ソシャゲあるあると・メタネタ多めです。 ※逆ハー要素もありますがカップリングは固定です。 ※R18は最後にあります。 ※愛され→嫌われ→愛されの要素がちょっとだけ入ります。 ※表紙の背景は祭屋暦様よりお借りしております。 https://www.pixiv.net/artworks/54224680

【完結】糸と会う〜異世界転移したら獣人に溺愛された俺のお話

匠野ワカ
BL
日本画家を目指していた清野優希はある冬の日、海に身を投じた。 目覚めた時は見知らぬ砂漠。――異世界だった。 獣人、魔法使い、魔人、精霊、あらゆる種類の生き物がアーキュス神の慈悲のもと暮らすオアシス。 年間10人ほどの地球人がこぼれ落ちてくるらしい。 親切な獣人に助けられ、連れて行かれた地球人保護施設で渡されたのは、いまいち使えない魔法の本で――!? 言葉の通じない異世界で、本と赤ペンを握りしめ、二度目の人生を始めます。 入水自殺スタートですが、異世界で大切にされて愛されて、いっぱい幸せになるお話です。 胸キュン、ちょっと泣けて、ハッピーエンド。 本編、完結しました!! 小話番外編を投稿しました!

異世界転移したら何故か獣化してたし、俺を拾った貴族はめちゃくちゃ犬好きだった

綾里 ハスミ
BL
高校生の室谷 光彰(むろやみつあき)は、登校中に異世界転移されてしまった。転移した先で何故か光彰は獣化していた。化物扱いされ、死にかけていたところを貴族の男に拾われる。しかし、その男は重度の犬好きだった。(貴族×獣化主人公)モフモフ要素多め。 ☆……エッチ警報。背後注意。

鳥籠の中の宝物

胡宵
BL
幼い頃に誘拐され10年間監禁されてきた陽向(ひなた)。そんなある日、部屋に入ってきたのは見たことのない男だった。

普通の男子高校生ですが異世界転生したらイケメンに口説かれてますが誰を選べば良いですか?

サクラギ
BL
【BL18禁】高校生男子、幼馴染も彼女もいる。それなりに楽しい生活をしていたけど、俺には誰にも言えない秘密がある。秘密を抱えているのが苦しくて、大学は地元を離れようと思っていたら、もっと離れた場所に行ってしまったよ? しかも秘密にしていたのに、それが許される世界? しかも俺が美形だと? なんかモテてるんですけど? 美形が俺を誘って来るんですけど、どうしたら良いですか? (夢で言い寄られる場面を見て書きたくなって書きました。切ない気持ちだったのに、書いたらずいぶん違う感じになってしまいました) 完結済み 全30話 番外編 1話 誤字脱字すみません。お手柔らかにお願いします。

処理中です...